【食事療法】2026年最新エビデンス: ベジタリアンは本当にがん予防になるのか?世界180万人データで検証
Dunneram et al., British Journal of Cancer, 2026
■この記事のポイント
- 世界9か国・180万人以上を対象とした過去最大規模の菜食とがんリスク研究の結果を解説
- 魚食(ペスカタリアン)や菜食(ベジタリアン)は複数のがんリスクを下げる可能性がある
- 一方で、完全菜食(ヴィーガン)は大腸がんリスクが高い傾向も報告された
- 菜食でもがんリスクが上がる部位があり、栄養素の偏りへの注意が必要
- 食事だけでなく、定期的な検診が重要
■今回解説する研究について
2026年2月、British Journal of Cancer誌に掲載されたDunneram ら(オックスフォード大学を中心とする国際共同研究グループ)による論文「Vegetarian diets and cancer risk: pooled analysis of 1.8 million women and men in nine prospective studies on three continents」を中心に解説します。英国・米国・台湾・インドの9つの前向きコホート研究から合計181万7,477人のデータを統合し、中央値16年間の追跡調査で合計22万件以上の発がんを分析した、この分野で過去最大規模の研究です。
「野菜中心の食事はがん予防になる」という話を耳にしたことはないでしょうか?直感的には正しそうですが、実際のところエビデンスはどうなのでしょうか。
菜食主義(ベジタリアン)の食事は、肉・魚を一切食べず、乳製品や卵は摂る食事スタイルです。完全菜食(ヴィーガン)はさらに乳製品・卵も除外します。これらの食事は一般的に食物繊維・カロテノイド・ビタミンCが豊富で、飽和脂肪酸や動物性たんぱく質が少ない特徴を持ちます。
今回紹介する研究は、肉食者を基準として、①鶏肉のみ食べる人(ポルトリーイーター)、②魚のみ食べる人(ペスカタリアン)、③ベジタリアン、④ヴィーガンの4つのグループに分け、17種類のがんリスクとの関係を調べた史上最大規模の研究です。以下、がん種ごとに詳しく解説します。
■1.消化管のがん(大腸がん・食道がん・胃がん・膵臓がん・肝臓がん)
大腸がん
魚食(ペスカタリアン)で15%のリスク低下。しかし、完全菜食(ヴィーガン)では40%のリスク上昇という驚くべき結果に。
大腸がんは日本でも罹患数第1位の非常に身近ながんです。加工肉・赤身肉との関係については、国際がん研究機関(IARC)や世界がん研究基金(WCRF)が「大腸がんのリスクを高める」と結論づけており、菜食系の食事が有利と思われがちです。しかし今回の研究の結果は少々複雑でした。
| ペスカタリアン | ベジタリアン | ヴィーガン | |
|---|---|---|---|
| リスク | HR 0.85 | HR 1.03 | HR 1.40 |
| 有意性 | 肉食者比で15%リスク低下 (95%CI: 0.77–0.93) ※統計的に有意 | 有意差なし(95%CI: 0.94–1.13) | 肉食者比で40%リスク上昇 (95%CI: 1.12–1.75)※統計的に有意 |
魚食の大腸がんリスク低下については、魚に含まれる長鎖n-3系多価不飽和脂肪酸(EPA・DHA)が大腸粘膜の炎症を抑制する可能性が有力な機序として挙げられています。欧州の大規模研究でも魚の摂取と大腸がんリスク低下の関連が報告されています(Aglago et al., 2020)。
※※ヴィーガンの大腸がんリスク上昇について
ヴィーガンの大腸がんリスク上昇という結果は非常に注目されます。ただしこの結果は、7か国のヴィーガン合計わずか93例のがん発生に基づくため、解釈には慎重さが必要です。また、最初の4年間を除外した感度解析では統計的有意差が消失しました(HR 1.25, 95%CI: 0.95–1.64)。研究者らが指摘する重要なメカニズムはカルシウム摂取量の不足です。ヴィーガンは乳製品ゼロのため、本研究に参加した全コホートでカルシウム摂取量が最低であり、中央値は590mg/日と、英国基準の700mg/日を下回っていました。カルシウムは大腸がんに対して予防的に働く可能性がWCRFによって指摘されており、さらに長鎖n-3系脂肪酸の摂取がゼロに近いことも関与すると考えられています。
食道がん(扁平上皮がん)
ベジタリアンで食道扁平上皮がんのリスクが約2倍に。この発見は見逃せません。
食道がんには大きく2種類あります。日本人に多い扁平上皮がん(SCC)と、欧米人に多い腺がん(AC)です。今回の研究では、ベジタリアンにおいて食道扁平上皮がんのリスクが約2倍(HR 1.93, 95%CI: 1.30–2.87)に上昇するという、驚くべき結果が示されました。この関連は感度解析でも再現性があり、4年間を除外した分析ではさらにリスクが高まる傾向(HR 2.09)、非喫煙者限定でも同様(HR 2.93)でした。
この結果を理解するうえで参考になるのが、中央アジアや中国の一部地域のデータです。これらの地域では食道扁平上皮がんの発生率が極めて高く、その原因の一つとして動物性たんぱく質・ビタミンB2(リボフラビン)・亜鉛の摂取不足が指摘されています。リボフラビンと亜鉛はいずれも動物性食品に豊富に含まれる栄養素であり、菜食の場合に不足しやすいことが知られています(Li et al., 2017; Yang et al., 2022)。EPIC-Oxfordの研究では、ベジタリアンのリボフラビン・鉄・セレン・亜鉛の摂取不足が報告されており、ヴィーガンではさらにビタミンA・ヨウ素の不足も加わります。
※※重要な注意点
この結果は英国の3つのコホートにおけるベジタリアン31例のがん発生に基づくもので、絶対数は少ない点に注意が必要です。ただし、リスクの大きさ(約2倍)と感度解析での一貫性は看過できません。ベジタリアンの方は特にリボフラビン(ビタミンB2)・亜鉛の十分な摂取を意識することが重要です。
食道がん(腺がん)・胃がん・肝臓がん
食道腺がん・胃がん・肝臓がんについては、肉食者と菜食系の各グループで統計的に有意なリスク差は認められませんでした。これらのがんに対して菜食が明確な保護効果を発揮するというエビデンスは現時点では得られていません。
膵臓がん
ベジタリアンで膵臓がんのリスクが21%低下。ただし喫煙の影響を除くと差が小さくなる点に注意。
膵臓がんは予後不良で知られる難治性のがんです。今回の研究では、ベジタリアンにおいて膵臓がんのリスクが21%低下(HR 0.79, 95%CI: 0.65–0.97)しました。しかし、「非喫煙者のみ」に限定した感度解析では統計的有意差が消失しました(HR 0.84, 95%CI: 0.64–1.10)。ベジタリアンは喫煙率が低い傾向があるため、この差の一部は食事ではなく喫煙習慣の違いによって説明される可能性があります。WCRF でも「膵臓がんと食事の関係は現時点では不明」とされており、この結果の解釈は慎重に行う必要があります。
■2.肺がん
非喫煙者では菜食とのリスク差は認められなかった。肺がんにおいて喫煙は圧倒的な主要因。
肺がんの解析では、喫煙による残余交絡を避けるため、非喫煙者のみを対象として主解析を実施しました。その結果、肉食者と菜食系の各グループで、非喫煙者に限定した場合には統計的に有意なリスク差は認められませんでした。
一方、喫煙者を含む全員を対象に詳細な喫煙補正を行った補足解析では、ポルトリーイーター(HR0.83)とペスカタリアン(HR0.82)で小幅なリスク低下が見られましたが、研究者たちはこれも「残余交絡による可能性が高い」と結論づけています。
※※クリニックからのコメント
肺がんのリスクを下げる最も重要な生活習慣は、食事の変更ではなく禁煙です。食事の種類よりも喫煙の影響がはるかに大きく、食事によって喫煙リスクを相殺することはできません。禁煙外来などのご相談もお受けしておりますので、お気軽にご相談ください。
■3.生殖器系のがん(乳がん・子宮内膜がん・卵巣がん・前立腺がん)
乳がん
ペスカタリアンで7%、ベジタリアンで9%の乳がんリスク低下。特に閉経後の女性で顕著。
乳がんは女性に最も多く、今回の研究では合計6万1,368例という大きな解析対象数でした。ペスカタリアンでHR 0.93(95%CI: 0.88–0.98)、ベジタリアンでHR 0.91(95%CI: 0.86–0.97)と、両グループで統計的に有意なリスク低下が認められました。
特に注目すべき点は、このリスク低下が閉経後の女性に限定されており(ペスカタリアン: HR 0.91、ベジタリアン: HR 0.89)、閉経前女性では有意差がなかったことです。BMI調整前に比べてBMI調整後にリスク低下がやや緩和されたことから、乳がんリスク低下の一部はBMIの差(菜食者は一般的にBMIが低い)を介した間接効果によることが示唆されます。
WCRF は「アルコール以外の食事と乳がんの関係については説得力のあるエビデンスは限られる」としており、今回のリスク低下についても「BMIや生活習慣全体の違いが反映されている可能性」も含めて理解することが重要です。
子宮内膜がん・卵巣がん
子宮内膜がん・卵巣がんについては、いずれのグループでも肉食者と比べて統計的に有意なリスク差は認められませんでした。現時点では、食事の種類がこれらのがんのリスクに大きく影響するとのエビデンスはありません。
前立腺がん
鶏肉食(ポルトリー)で7%、ベジタリアンで12%の前立腺がんリスク低下。ただしコホート間のばらつきが大きく解釈に注意。
前立腺がんの解析では、ポルトリーイーターでHR 0.93(95%CI: 0.88–0.98)、ベジタリアンでHR0.88(95%CI: 0.79–0.97)という有意なリスク低下が観察されました。ただし、コホート間の異質性(I²)が高く(63〜68%)、喫煙者を除外した感度解析では有意差が消失しました(ポルトリー: HR 0.98、ベジタリアン: HR 0.99)。PSA検診の受診率の違いによるバイアスの可能性も考慮する必要があります。
「動物性たんぱく質の摂取量が多いと血中IGF-1が高まり前立腺がんリスクが上がる」という仮説(Watling et al., 2021)との整合性は見られますが、感度解析での消失を考えると、さらなる研究が必要な段階です。
■4.泌尿器系のがん(腎臓がん・膀胱がん)
腎臓がん
腎臓がんは今回の研究で最も一貫性の高い結果が得られた部位の一つ。ペスカタリアン・ベジタリアンで約27〜28%のリスク低下。
腎臓がんは今回の研究において最も一貫性が高い知見として評価された部位です。感度解析においても一貫したリスク低下が確認されました。
| 解析条件 | ペスカタリアン | ベジタリアン |
|---|---|---|
| 主解析(全体) | HR 0.73 (0.58–0.93) ✓ | HR 0.72 (0.57–0.92) ✓ |
| 前4年除外(感度解析) | HR 0.70 (0.53–0.92) ✓ | HR 0.70 (0.54–0.93) ✓ |
| 非喫煙者のみ | HR 0.72 (0.51–1.02) | HR 0.64 (0.46–0.88) ✓ |
コホート間の異質性(I²)もほぼゼロ(0〜7%)と低く、各研究での結果が非常に一貫しています。2025年のTongらの研究では、植物性食事実践者の血中において腎臓がん早期マーカーであるKIM-1(kidney injury molecule-1)の濃度が肉食者と比べて顕著に低いことが49,615人の解析で示されており(Tong et al., 2025)、生物学的メカニズムが解明されつつあります。
膀胱がん
膀胱がんについては、いずれの食事グループでも肉食者との間に統計的に有意なリスク差は認められませんでした。WCRFの結論とも整合しています。
■5.血液のがん(非ホジキンリンパ腫・多発性骨髄腫・白血病)
多発性骨髄腫
ベジタリアンで多発性骨髄腫のリスクが約31%低下。血液がんの中で最も注目される知見。
多発性骨髄腫は、骨髄の形質細胞が異常に増殖する血液がんです。ベジタリアンにおいて肉食者比でHR 0.69(95%CI: 0.51–0.93)、約31%のリスク低下が確認されました。BMI調整前後でもHRは変化しなかったことから(いずれも0.69)、BMIの差では説明できない食事そのものの保護効果が示唆されます。
ただし感度解析(前4年除外)ではHR 0.75(95%CI: 0.54–1.05)と有意差が消失し、非喫煙者限定でもHR 0.76(95%CI: 0.53–1.10)と有意差はなくなりました。ベジタリアン64例という症例数の少なさも考慮が必要で、さらなる研究が求められます。
非ホジキンリンパ腫・白血病
非ホジキンリンパ腫(NHL)および白血病については、いずれの食事グループでも肉食者との間に統計的に有意なリスク差は認められませんでした。
■食事グループ別のがんリスク全体像
| がん種 | ペスカタリアン | ベジタリアン | ヴィーガン | ポルトリー |
|---|---|---|---|---|
| 大腸 | ↓ 15% | 差なし | ↑ 40% | 差なし |
| 食道SCC 膵臓 | 差なし 差なし | ↑ 93% ↓ 21%* | — 差なし | 差なし 差なし |
| 乳房 | ↓ 7% | ↓ 9% | 差なし | 差なし |
| 前立腺 腎臓 | 差なし ↓ 27% | ↓ 12%* ↓ 28% | 差なし — | ↓ 7%* 差なし |
| 多発性骨髄腫 | 差なし | ↓ 31%* | 差なし | 差なし |
✓=感度解析でも一貫 *=一部感度解析では有意差消失 —=症例数不足で解析なし
■6.この研究の意義と限界:正しく理解するために
「ベジタリアン食はすべてのがんを予防する」でも「ヴィーガンはがんになりやすい」でもなく、食事の種類によって特定のがんリスクが変化する可能性がある、というのが現時点での正確な理解です。
この研究の最大の強みは規模と質です。181万人規模のデータを9か国・3大陸にわたって統合し、年齢・喫煙・飲酒・BMI・運動習慣など多くの交絡因子を統計的に調整した高品質なデザインです。
一方で以下の限界点も把握しておく必要があります:
- 食事は自己申告(食物摂取頻度調査票)であり、測定誤差が避けられない
- ヴィーガンの症例数が少なく、ヴィーガンに関する結果は特に慎重な解釈が必要
- 英国・米国の参加者が全体の大多数を占め、日本を含むアジア地域への一般化には注意が必要
- 家族歴・がん検診受診歴など未計測のリスク因子による残余交絡の可能性
- 食事の「種類」しか評価しておらず、食品の加工度・調理方法は考慮されていない
※※院長からのまとめコメント
「ベジタリアンになればがんを予防できる」という単純な話ではありません。重要なのは、特定ながん(特に腎臓がん)では菜食や魚食が保護的に働く可能性が一貫したデータで示された一方、栄養素の偏りによって別のがん(食道扁平上皮がん、大腸がん)リスクが上がる可能性も示されたということです。「健康的な食事とは何かを完全に除外することではなく、栄養バランスを整えること」です。特に菜食や植物中心の食事を実践されている方は、カルシウム・ビタミンB12・ビタミンD・亜鉛・鉄分・長鎖n-3系脂肪酸などの栄養素が不足していないか、定期的に確認することが大切です。
■よくある質問(FAQ)
エビデンスに基づいてお答えします。
Q1. ベジタリアンになれば、がん全体のリスクが下がると考えてよいですか?
エビデンスに基づく回答
単純に「ベジタリアンになればがん全体が減る」とは言えません。今回の181万人を対象とした大規模研究(Dunneram et al., 2026)では、ベジタリアンにおいて膵臓がん・乳がん・前立腺がん・腎臓がん・多発性骨髄腫のリスク低下が認められた一方で、食道扁平上皮がんのリスクが約2倍に上昇するという結果も示されました。すなわち、特定のがんには保護的に、別のがんにはリスクを高める方向に働く可能性があります。重要なのは「何を食べないか」よりも「何を十分に摂取しているか」です。ビタミンB2(リボフラビン)・亜鉛・カルシウム・ビタミンB12・長鎖n-3系脂肪酸などが不足すると、むしろ特定のがんリスクが高まる可能性があります。菜食を実践される場合は、これらの栄養素を意識的に補うことが大切です。また定期的ながん検診との組み合わせが最も効果的です。
Q2. 完全菜食(ヴィーガン)のほうが、ベジタリアンよりがんに強いですか?
エビデンスに基づく回答
今回の研究データを見る限り、「ヴィーガンのほうがベジタリアンよりがんに強い」とは言えません。むしろ逆の結果が大腸がんで示されました。ヴィーガンでは大腸がんのリスクが肉食者と比べて40%高い傾向が示されており(HR 1.40, 95%CI: 1.12–1.75)、これはベジタリアン(差なし)と対照的な結果です。ただしこの結果はヴィーガン93症例という少数に基づき、前4年を除外した感度解析では有意差が消失します。研究者らはこの大腸がんリスク上昇の主な原因として、ヴィーガンのカルシウム摂取量の低さ(中央値590mg/日、推奨値700mg/日を下回る)と長鎖n-3系脂肪酸のゼロ摂取を挙げています。食事スタイルの「厳格さ」ではなく「栄養の充足度」が鍵です。
Q3. 魚だけは食べる「ペスカタリアン」が一番がん予防に有利なのでしょうか?
エビデンスに基づく回答
今回の研究においてペスカタリアン(魚は食べるが肉は食べない)は、大腸がん(15%低下)・乳がん(7%低下)・腎臓がん(27%低下)で一貫したリスク低下が示されており、全体的に見るとバランスの良い結果でした。食道扁平上皮がんや大腸がんのリスク上昇も認められませんでした。魚が含む長鎖n-3系多価不飽和脂肪酸(EPA・DHA)は大腸粘膜の炎症抑制に、カルシウムの充足(乳製品も摂取可能)は大腸がんへの保護的作用に寄与すると考えられます(Aglago et al., 2020)。ただし「ペスカタリアンが最善」と断言することは難しく、魚の種類・調理法・全体的な食事バランスが重要です。日本人は元来魚摂取が多く、この研究の結論が直接当てはまるかは検討が必要です。
Q4. 菜食を実践する場合、特に注意すべき栄養素はありますか?
エビデンスに基づく回答
今回の研究をはじめ、複数のエビデンスが菜食で不足しやすい栄養素として以下を挙げています(Sobiecki et al., 2016; EPIC-Oxford研究): 【ベジタリアンで不足しやすい栄養素】 ビタミンB12(神経機能・造血に必須)、ビタミンD(骨代謝・免疫)、鉄分(貧血予防)、亜鉛(免疫・細胞修復)、セレン(抗酸化)、長鎖n-3系脂肪酸(EPA・DHA) 【ヴィーガンではさらに追加で注意が必要】 カルシウム(骨・大腸がん予防)、ビタミンA、リボフラビン(ビタミンB2・食道がん予防)、ヨウ素(甲状腺機能) 特にビタミンB12は植物性食品からはほぼ摂取できないため、サプリメントや強化食品による補充が推奨されます(米国栄養士会も推奨)。血液検査でビタミンB12・葉酸・ビタミンD・鉄分などの状態を定期的に確認することをお勧めします。
Q5. がん予防のために、今日から実践できる食事のポイントを教えてください。
エビデンスに基づく回答
今回の研究を含む複数の大規模研究とWCRFのガイドラインから、以下の実践的ポイントが導き出されます。急に食事スタイルを極端に変えるよりも、段階的なバランスの改善が現実的です: ①赤身肉・加工肉を減らし、魚・豆類に置き換える:加工肉(ソーセージ・ベーコン等)は大腸がんリスクを高めることがIARCによって確認されています。週数回、魚や豆腐・豆類に置き換えることから始めましょう。 ②野菜・果物・全粒穀物・豆類を積極的に摂る:食物繊維は大腸がん予防のエビデンスがあります(WCRF)。1日に少なくとも400g以上の野菜・果物を目指しましょう。 ③アルコールは最小限に:アルコールは大腸がん・乳がん・肝臓がん等のリスク因子であることがIARCによって確認されています。 ④禁煙・体重管理・運動を組み合わせる:食事単独よりも、禁煙・適正体重の維持・定期的な運動との組み合わせが最もがん予防効果が高いとされています。 ⑤定期的ながん検診を受ける:食事でリスクが下がっても、ゼロにはなりません。大腸内視鏡・乳がん検診・前立腺がん(PSA)検査など、年齢・性別に応じた定期検診が不可欠です。
参考文献
- Dunneram Y, Lee JY, Watling CZ, et al. Vegetarian diets and cancer risk: pooled analysis of 1.8 million women and men in nine prospective studies on three continents. British Journal of Cancer. 2026. https://doi.org/10.1038/s41416-025-03327-4
- Sobiecki JG, Appleby PN, Bradbury KE, Key TJ. High compliance with dietary recommendations in a cohort of meat eaters, fish eaters, vegetarians, and vegans. Nutr Res.2016;36:464–77.
- Bouvard V, Loomis D, Guyton KZ, et al. Carcinogenicity of consumption of red and processed meat. Lancet Oncol. 2015;16:1599–600.
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- Lauby-Secretan B, Scoccianti C, Loomis D, et al. Body fatness and cancer—viewpoint of the IARC working group. N Engl J Med. 2016;375:794–8.
※ 本記事は医療情報の提供を目的としており、特定の食事法や治療を推奨するものではありません。個人の健康状態や既往症によって適切な食事管理は異なります。食事の大幅な変更や健康上の不安がある場合は、必ず医師または管理栄養士にご相談ください。記載された研究データは原著論文に基づくものですが、医学的研究は継続的に更新されます。最終更新:2026年3月
記事監修者田場 隆介
医療法人社団 青山会 まんかいメディカルクリニック 理事長
医療法人社団青山会代表。兵庫県三田市生まれ、三田小学校、三田学園中学校・同高等学校卒業。 1997(平成9)年岩手医科大学医学部卒業、町医者。聖路加国際病院、淀川キリスト教病院、日本赤十字社医療センター、神戸市立医療センター中央市民病院を経て、2009(平成21)年医療法人社団青山会を継承。 2025年問題の主な舞台である地方の小都市で、少子高齢化時代の主役である子どもと高齢者のケアに取り組んでいる。
