病気と健康の話

【健康寿命】1日たった4分でいい―「高強度×毎日」が心臓と命を守る新時代の運動処方―

はじめに ― 「忙しくて運動する時間がない」という言い訳が、もう通用しない時代

「健康のために運動した方がよいのは分かっています。でも、ジムに通う時間も、ジョギングする時間もないんです。」 ― 外来診療をしていると、このお悩みを毎日のように耳にします。実際、世界保健機関(WHO)が推奨する「週 150 分以上の中強度〜高強度の運動」は、日本でも欧米でも、達成できている成人は 3〜4 割程度に過ぎません。働き盛り世代、子育て世代、介護世代では、まとまった運動時間を確保すること自体が現実的に難しいのが正直なところでしょう。

しかし、ここ数年で運動医学の常識が大きく書き換えられつつあります。「長時間まとめて運動する」のではなく、「1 日数分でいいから、強めの運動を毎日コツコツ積み上げる」ことで、心臓病・脳卒中・がん・死亡リスクを劇的に下げられることが、英国 UK バイオバンクや NHANES(米国国民健康栄養調査)などの大規模研究で次々と示されてきたのです。

例えば、2026 年に英国スポーツ医学会誌(British Journal of Sports Medicine: BJSM)に掲載された最新研究(Liang ら、2026 年)では、加速度計で測った客観的な運動量と心肺フィットネス(VO₂max)を 1 万 7,088 人で同時に解析し、「週 150 分の運動は心血管リスクを約 8〜9%しか下げない一方、より大きな効果(30%以上のリスク減)を得るには週 560〜610 分の運動が必要」という、ガイドラインの「最低ライン」を超える知見が報告されました(1)。これは決して「150 分では足りない、もっと運動しろ」という単純な話ではありません。むしろ重要なのは「同じ時間を使うなら、強度を上げた方が圧倒的に効率がよい」という事実です。

本コラムでは、欧米の権威ある最新論文 10 件を引用しながら、「短時間でいいから、強く、毎日」という新しい運動の処方箋を、エビデンスベースで分かりやすく解説します。階段を駆け上がる、急ぎ足で買い物に行く、子どもと本気で遊ぶ ― そんな日常の「ちょっとした本気」が、あなたの心臓と血管を守る最強の予防薬になりうることを、ぜひ最後までお読みください。

1. 運動は「最強の予防薬」 ― ガイドラインの「150 分」の正体

現在、世界中の運動ガイドラインは、WHO の 2020 年版(Bull ら、BJSM、2020 年)を基準としています。これは「成人は週 150〜300 分の中強度運動、または週 75〜150 分の高強度運動、もしくはその組み合わせ」を推奨しています(2)。日本の厚生労働省や米国の運動ガイドライン(2018 年版)もこれにほぼ準拠しており、「とにかく 150 分」が世界共通の目標として浸透してきました。

ガルシアらの大規模メタ解析(BJSM、2023 年)は、約 200 万人以上を含む大規模な前向きコホート研究を統合し、運動量と心血管疾患・がん・死亡リスクの「用量反応関係」を詳細に分析しました(3)。その結果、現在ほぼ運動をしていない方が週 8.75 MET 時間程度(週 150 分の早歩きにほぼ相当)まで運動量を増やすだけで、全死亡が約 23%、心血管疾患が約 17%、がんが約 7%減少することが示されました。さらに重要な発見は、「運動量を増やせばリスクは下がり続けるが、ある程度で頭打ちになる」という非線形の関係 ― つまり、最初の数分の運動が最も効率がよいということです。これは、現在まったく運動していない方にとって朗報です。「いきなり週 150 分は無理」と思わず、「まずは 1 日数分から」始めるだけでも、心臓を守る効果は確実に得られるのです。

ところが、冒頭で紹介した Liang らの BJSM 2026 年論文は、別の重要な視点を加えました(1)。加速度計という客観的な測定機器を使い、心肺フィットネス(VO₂max)で層別化して解析すると、週 150 分の運動による心血管リスク減少効果はわずか 8〜9%にとどまり、30%以上の大きなリスク減を得るには週 560〜610 分(つまり 1 日約 80 分)の運動が必要、という結果でした。従来の「150 分で 20〜30%減」というメッセージは、自己申告(質問紙)の運動量を使った研究が中心で、運動量を過大評価していた可能性があるのです。

ここから導かれる新しい考え方は、「150 分は最低限の入口」「もっと大きな効果が欲しければ運動量を増やす ― ただし、長時間をまとめて確保できない場合は、強度で勝負する」というものです。次章以降では、この「強度」というカギを使って、忙しい現代人でも実行可能な最新の運動処方をご紹介します。

2. VILPA 革命 ― 1 日 3〜4 分の「本気」が体を変える

「VILPA(ヴィルパ)」という言葉をご存じでしょうか。Vigorous Intermittent Lifestyle Physical Activity、日本語に訳すと「日常生活に組み込まれた、断続的な高強度の身体活動」となります。簡単に言えば、「ジムでもジョギングでもなく、日常の中で息が弾むくらいの強さで体を動かす、ほんの数十秒〜数分の活動」のことです。階段を駆け上がる、バス停まで小走りする、子どもと本気で追いかけっこをする、重い買い物袋を持って早足で歩く ― これらすべてが VILPA に該当します。

シドニー大学の Stamatakis 教授らは、英国 UK バイオバンクで加速度計を装着した「普段ほとんど運動しない成人」約 2 万 5 千人を約 7 年間追跡し、その結果を世界最高峰の医学誌 Nature Medicine(2022 年)に発表しました(4)。驚くべきことに、1 日わずか 4.4 分の VILPA を行う人は、まったく行わない人と比べて、全死亡リスクが 26〜30%、心血管疾患による死亡リスクが 32〜34%、がん死亡リスクが 26〜30%も低かったのです。しかも、この VILPA の 92.3%は 1 分以内の短いバウト(運動の塊)で構成されていました。つまり、「1 分未満の高強度活動を、1 日に数回」だけで、これほどの効果が得られるという、画期的な知見だったのです。

同グループは 2023 年、JAMA Oncology(米国医師会雑誌・腫瘍学)に、VILPA とがん発症の関係を解析した研究を発表しました(5)。2 万 2,398 人の非運動者を 6.7 年追跡した結果、1 日 3〜4 分の VILPA でがん全体の発症リスクが 17〜18%減、1 日 4.5 分の VILPA では運動関連がん(乳がん・大腸がん・肺がんなど 13 種類)の発症リスクが 31〜32%も減少していました。「がん予防のためにジムに通う時間はない」 ― そう感じている方にも、希望の光が見えてきたわけです。

さらに 2024〜2025 年、Stamatakis らは英国スポーツ医学誌(BJSM)に、心血管イベント(心筋梗塞・心不全・脳卒中・心血管死)と VILPA の関係を性差を含めて解析した報告を出しました(6)。非運動者の女性約 1 万 3 千人において、1 日中央値 3.4 分の VILPA は、心血管イベント全体のリスクを 45%、心不全リスクを 67%も減少させました。これは、降圧薬やスタチン(コレステロール薬)を上回る効果サイズです。男性ではやや効果が弱いものの、女性では「1 日たった 3 分の本気」が、心臓を守る最強の手段の一つとなる可能性が示されたのです。

3. 「短く、強く」が時間効率の王道 ― 高強度運動はどこまで効くのか

では、「強い運動」は、「弱い運動」と比べてどれくらい時間効率がよいのでしょうか。この問いに正面から答えたのが、Ahmadi らの European Heart Journal(2022 年)の研究「Vigorous physical activity, incident heart disease, and cancer: how little is enough?(高強度身体活動 ― どれだけ少なくても十分なのか?)」です(7)。

彼らは UK バイオバンクの 7 万 1,893 人を加速度計で追跡し、高強度運動の最小限有効量と最適量を算出しました。結果は驚くべきもので、週わずか 12〜15 分の高強度運動で、全死亡・心血管疾患・がん発症リスクがそれぞれ 15〜18%低下し、最適量(最もリスクが低くなる量)はわずか週 46〜57 分(1 日 6〜8 分相当)で、リスク減少幅は 31〜36%にも達しました。つまり、「ジムで 1 時間ヘトヘトになる必要はない、毎日数分の本気で十分」というメッセージが、欧州心臓病学会の旗艦誌から発信されたのです。

中強度運動と高強度運動の「効率」を直接比較した研究もあります。Wang らの JAMA Internal Medicine(2021 年)は、米国成人 40 万 3,681 人を対象に、運動の「強度比率」と死亡率の関係を解析しました(8)。同じ総運動量(MVPA)を行う人の中で、高強度運動(VPA)の比率が高い人ほど、全死亡リスクが有意に低下していました。具体的には、高強度運動の比率が MVPA の 50〜75%を占める人は、まったく高強度運動を含まない人と比べて、全死亡リスクが約 17%低かったのです。「同じ時間運動するなら、強度を上げた方が得」という、運動処方の新しい原則がここに示されています。

Stamatakis らが 2025 年に Circulation(米国心臓協会の旗艦誌)に発表した最新研究(9)は、さらに踏み込んでいます。彼らは「Incidental physical activity(日常の偶発的身体活動)」 ― つまり、運動とは意識せず日常生活の中で行われる身体活動 ― の強度別の心血管保護効果を解析しました。結果、「1 分の高強度日常活動は、約 3.4 分の中強度活動、または 35〜49 分の軽強度活動と同等の心血管保護効果を持つ」ことが示されました。1 日 4.6 分の高強度日常活動だけで、心血管疾患による死亡リスクが 38%、全死亡リスクが 50%減少していたのです。これは、「忙しくて運動の時間がない人ほど、強度で勝負する」という戦略が極めて合理的であることを意味しています。

4. 「運動スナック」 ― 1 日数回の数分間で心肺機能を鍛える

近年、運動医学の分野で「Exercise Snacks(運動スナック)」という新しいコンセプトが急速に注目されています。これは、お菓子のように「短時間(5 分以内)・高頻度(1 日複数回)」で身体活動を摂取する、というアイデアです。階段を駆け上がる、自宅でその場ジャンプを 20 秒する、スクワットを 30 秒する ― これらを 1 日に 2〜3 回、合間に行うだけで、心肺フィットネスが改善することが分かってきました。

スペイン・オビエド大学の Rodríguez らは 2026 年(オンライン版 2025 年)、英国スポーツ医学誌(BJSM)に「運動スナック」のシステマティックレビュー・メタ解析を発表しました(10)。11 件のランダム化比較試験(計 414 名)を統合した結果、運動スナック(5 分以下のバウトを 1 日 2 回以上、週 3 回以上、4〜12 週間)は、座りがちな成人や高齢者の心肺フィットネス(VO₂peak)を有意に改善することが示されました。さらに、コンプライアンス(継続率)は約 91%、アドヒアランス(処方通り実行できた率)も約 83%と非常に高く、「時間がない」「やる気が出ない」という運動の二大障壁を克服する実用的な方法であることが確認されました。

運動スナックの代表例は階段昇りです。古典的な Boreham(2005 年)の研究以来、複数の RCT で「1 日 3 回、30 秒〜1 分の階段ダッシュを週 3〜5 日、6〜8 週間」だけで、若年成人や運動不足の女性の VO₂peak(最大酸素摂取量)が小さいながらも有意に向上することが繰り返し示されています。これは、ガイドラインに沿って週 150 分のジョギングをした場合と同等の効果が、合計わずか週 15 分以下の時間で得られることを意味し、まさに「時間効率の革命」と言えるでしょう。

Ahmadi らが Lancet Public Health(2023 年)に発表した研究(補 2)も、この方向性を支持しています。彼らは非運動者を解析し、「1〜2 分の短い高強度バウトを 1 日に複数回」行うパターンが、心血管イベント(MACE)と死亡を有意に減らすことを示しました。1 分未満のバウトを 1 日に数回行うだけで、心血管イベントと全死亡が約 30〜40%減少していました。つまり、まとまった運動時間を確保できなくても、日常の中で「短く強く」を繰り返すだけで、十分すぎる予防効果が得られるのです。

5. 「毎日」の力 ― 週末まとめ運動と毎日コツコツ、どちらが効くか

「平日は忙しいから、週末にまとめて運動すればいい」 ― これは「Weekend Warrior(週末戦士)」と呼ばれる運動パターンで、欧米でも日本でも非常に多く見られます。果たして、これは「毎日コツコツ運動する」のと比べて効果は同じなのでしょうか。

ハーバード大学の Khurshid らは、世界最高峰の医学誌の一つ JAMA(2023 年)に、加速度計で測定した weekend warrior パターンと心血管疾患発症の関係を発表しました(補 1)。UK バイオバンクの約 9 万人を 6 年以上追跡した結果、「週 150 分以上の中〜高強度運動」を達成している限り、それを 1〜2 日にまとめて行う weekend warrior 型(週末集中型)も、3 日以上に分散させる「regular 型(分散型)」も、心房細動・心筋梗塞・心不全・脳卒中のリスク減少効果はほぼ同等でした。これは「総量さえ確保できれば、頻度はそれほど大きな問題ではない」という、画期的な結果でした。

ただし、注意点があります。Liang らの 2026 年 BJSM 論文(1)が指摘するように、心肺フィットネス(VO₂max)を上げて長期的な健康寿命を伸ばすには、運動の継続性 ― つまり「毎日、または週に多くの日数で運動すること」が重要であることが、生理学的にも疫学的にも示唆されています。週末 2 日だけの集中運動は、心血管イベントの予防には十分有効ですが、CRF を底上げして「身体能力そのもの」を高めるには、毎日の継続が望ましいのです。

また、Del Pozo Cruz らの JAMA Internal Medicine(2022 年)研究(補 3)は、加速度計で歩数とその「強度」を測定し、UK バイオバンクの 7 万 8,500 人を追跡しました。1 日の歩数が増えるほど(約 1 万歩までは)、全死亡・心血管疾患・がんのリスクが直線的に低下し、さらに「Peak-30 cadence」(連続 30 分間で最も速かったペース)という「強度」指標が高い人は、同じ歩数でも追加的にリスクが低い、という結果でした。やはり、毎日歩く ― それも、たまに早足を混ぜる ― という戦略が、最も実用的で効果が大きいと言えるでしょう。

6. なぜ「強い運動」が効くのか ― 心肺フィットネス(CRF)という鍵

短時間の高強度運動が、なぜこれほどまでに心臓と血管を守るのでしょうか。鍵は「心肺フィットネス(Cardiorespiratory Fitness: CRF)」、つまり最大酸素摂取量(VO₂max)の改善にあります。CRF は、心臓・血管・肺・骨格筋・ミトコンドリアの総合的な能力を反映する、いわば「体の発電所」の出力です。米国心臓協会(AHA)は 2016 年、CRF を「クリニカル・バイタルサイン(臨床的生命徴候)」と位置づけ、血圧や脈拍と同じように臨床で評価すべき指標と宣言しました(Ross ら、Circulation、2016 年、補 4)。

Liang らの 2026 年 BJSM 論文(1)では、メンデルランダム化解析(遺伝子情報を使った因果推論)により、遺伝的に決まった CRF が高い人ほど、心不全リスクが有意に低い(オッズ比 0.79)ことが示されました。これは、CRF が心臓を守る独立した因子であることを、観察研究の枠を超えて支持する強力な証拠です。

ここで重要なのは、CRF を効率よく上げる方法こそが「高強度運動」だということです。Ahmadi らの European Heart Journal 論文(7)が示したように、高強度運動は中強度運動と比べて、同じ時間で VO₂max を効率よく改善します。これは、高強度運動が心臓のストロークボリューム(1 回拍出量)、骨格筋ミトコンドリア密度、毛細血管密度、内皮機能を急速に改善するためです。さらに、短時間の高強度運動は、運動後数時間にわたり代謝が亢進する「EPOC(運動後過剰酸素消費)」を引き起こし、脂肪燃焼や血糖管理にも貢献します。

Liang らが 2026 年 BJSM 論文で提示した「CRF 層別の運動処方マトリックス」(1)は、極めて実用的なツールです。例えば、低 CRF の方(VO₂max 25 mL/kg/min 以下、運動不足の中高年に多い)が心血管リスクを 30%下げるには週 610 分の運動が必要ですが、高 CRF の方(VO₂max 40 mL/kg/min 以上)は週 560 分で同じ効果が得られます。つまり、「まず短時間の高強度運動で CRF を上げ、その後同じ運動量でも大きな効果が出る体に変えていく」という戦略が、最も合理的なのです。

7. 実践編 ― 今日からできる「短く・強く・毎日」の運動処方

ここまでのエビデンスを踏まえ、明日から実践できる具体的なメニューを提案します。重要なのは、「日常生活の中で『息が弾むくらいの強さ』を、1 日合計 5〜10 分積み上げる」ことです。これだけで、心血管疾患・がん・死亡のリスクが 20〜40%下がる可能性が、本コラムで紹介した 10 本の論文すべてから一貫して示されています。

【朝】通勤駅のエレベーター・エスカレーターを使わず、階段を一気に駆け上がる(目安:3〜5 階分、約 1 分)。これだけで、ほぼ全力に近い高強度運動になります。

【昼】昼食後、職場のフロアを早足で 5 分間歩く。会話ができるが歌は歌えない程度のペース(中〜高強度)を意識します。座りっぱなしを 30 分ごとに数分間中断するだけでも、血糖や中性脂肪の上昇を抑えられることが分かっています。

【夕方】帰宅後、自宅で「その場ジャンプ 20 秒」「スクワット 30 秒」「腕立て伏せ 30 秒」を、それぞれ 30 秒の休憩を挟んで 3 セット行う。合計わずか 5 分で、HIIT(高強度インターバルトレーニング)に近い効果が得られます。

【夜】家事(掃除機がけ・洗濯物を干す・庭仕事)を、いつもより少し速めに、息が弾むくらいの本気度で行う。これも立派な VILPA です。Stamatakis ら(9)が示したように、運動とは意識せず行う日常活動でも、強度を上げれば心臓を守る効果は得られます。

ただし、これらの運動を始める前に必ず注意していただきたいのが、安全性の確認です。高血圧・糖尿病・心臓病・関節疾患などをお持ちの方、また 50 歳以上で運動習慣のない方は、いきなり高強度運動を始めると、まれに心血管イベントや整形外科的外傷の引き金になる可能性があります。当院では、運動療法を始める前のリスク評価(安静時心電図、運動負荷試験、頚動脈エコー、血管年齢測定、必要時に胸部 CT など)を、内科・呼吸器内科の知見を踏まえて行っています。

おわりに ― 「忙しさ」を理由にしない、新しい運動の常識

本コラムで紹介した 10 本の最新エビデンスが共通して示しているのは、次のシンプルなメッセージです:「運動は、長くなくてよい。強く、毎日、コツコツ積み上げよ」。週 150 分のジョギングが取れなくても、1 日 4 分の VILPA で死亡リスクは約 30%下がり、毎日数本の階段ダッシュで心肺フィットネスは確実に向上します。「忙しい」「時間がない」 ― これらの言い訳は、もはや科学的に通用しません。

まんかいメディカルクリニックでは、「運動療法施設」の指定を受けており、医師・健康運動指導士、管理栄養士の連携のもと、お一人おひとりの体力・持病・生活スタイルに合わせた、安全で効果的な運動処方をご提供しています。CT・超音波装置を活用したリスク評価、CGM(持続血糖モニター)による糖代謝評価、GLP-1 受容体作動薬や運動療法プログラムを組み合わせた予防医療の実践、日曜・祝日診療など、忙しい現役世代の方にも通いやすい体制を整えております。

「持病があるから」と諦めるのではなく、「自分の体に合った『短く・強く・毎日』を見つける」 ― そのお手伝いを、当院にぜひお任せください。あなたの人生 100 年時代を、心臓も血管も脳も若々しく駆け抜けるための、最も確実で、最も安価で、副作用のない処方箋。それが「毎日の少しの本気の運動」です。

FAQ ― よくあるご質問

Q1. 高血圧や糖尿病の持病があっても、高強度運動をしてよいのですか?

結論から言えば、適切なリスク評価を経た上で、ほとんどの方にとって高強度運動は「むしろ強く推奨される」治療です。Liang ら(BJSM、2026 年)の研究では、心肺フィットネス(CRF)が低い方ほど、同じ運動量で得られる心血管リスク減少効果が大きく、特に持病のある方こそ運動の恩恵を最大限受けられることが示されています(1)。ただし、コントロール不良の高血圧(180/110 mmHg 以上)、不安定狭心症、重度の心不全、最近の心筋梗塞などがある場合は、運動負荷試験や心電図、心エコーによる安全性評価が必須です。当院では、内科・呼吸器内科の連携のもと、運動開始前のリスク層別化を行い、お一人おひとりに最適な運動処方を作成しています。「自己流で運動して心臓発作を起こす」ことを避けるためにも、持病のある方は必ず事前にご相談ください。

Q2. 50 歳を過ぎていても、今から始めて効果はありますか?

強く「はい」と答えられます。Stamatakis ら(Nature Medicine、2022 年)の研究対象は、平均年齢 62 歳の「普段運動しない英国成人」でした(4)。それでも、1 日たった 4.4 分の VILPA で、全死亡リスクが 26〜30%、心血管死亡リスクが 32〜34%減少していました。同じグループの BJSM 論文(6)では、平均年齢 60 代の女性で、1 日 3.4 分の高強度活動が心不全リスクを 67%減らすことが示されています。つまり、運動を始めるのに「遅すぎる」ということはありません。むしろ、運動不足の期間が長い方ほど、運動を始めた時のリスク減少幅は大きくなる傾向にあります。当院では、運動療法施設として、フレイル(虚弱)予防や転倒予防を意識した、シニア世代向けの安全な運動処方も得意としています。

Q3. 「息が弾む」運動とは、具体的にどれくらいの強さですか?

運動強度の目安として、医学的には「会話テスト」が広く使われます。中強度運動は「会話はできるが歌は歌えない」程度(早歩き、軽いジョギング、ゆっくりした水泳など)、高強度運動は「短い言葉しか話せない、息が弾む」程度(階段ダッシュ、本気のジョギング、テニス、サッカーなど)を指します。心拍数で言えば、中強度は最大心拍数の 50〜70%(50 歳なら約 85〜120 拍/分)、高強度は 70〜85%(50 歳なら約 120〜145 拍/分)が目安です。スマートウォッチやスマホアプリで心拍数を測りながら運動すると、自分の運動強度を客観的に把握できて便利です。当院では、ご希望の方には運動負荷試験で個別の目標心拍数を算出し、安全な運動強度を数字でお示ししています。

Q4. 階段昇りや家事だけで本当に十分なのですか? ジムには通わなくてよいのでしょうか?

Stamatakis ら(Circulation、2025 年)の研究は、まさにこの問いに答えています(9)。彼らは「Incidental Physical Activity(意識せず日常生活で行う身体活動)」を加速度計で測定し、1 日 4.6 分の高強度日常活動だけで、心血管死亡リスクが 38%、全死亡リスクが 50%減少することを示しました。「1 分の高強度活動は、約 3.4 分の中強度活動、または 35〜49 分の軽強度活動と同等」という驚くべき結果も報告されています。つまり、ジムに通えなくても、階段を駆け上がる・急ぎ足で家事をする・子どもと本気で遊ぶ ― これらを意識的に行うだけで、心血管疾患を予防する効果は十分に得られます。もちろん、ジムでの本格的な筋トレや有酸素運動も素晴らしい選択肢ですが、「忙しくてジムに行けない」ことを言い訳にする必要はもうないのです。

Q5. 子どもや高齢の親にも、この「短く・強く・毎日」は当てはまりますか?

基本的には、すべての年齢層に当てはまります。WHO 2020 ガイドライン(Bull ら、BJSM、2020 年)では、子ども・若者(5〜17 歳)には 1 日平均 60 分以上の中〜高強度運動、成人には週 150〜300 分の中強度または週 75〜150 分の高強度運動、高齢者には筋力・バランス運動を含む活動的な生活を推奨しています(2)。ただし、子どもの場合は遊びの中で自然に高強度活動が含まれるため、特別な処方は不要です。高齢者の場合は、転倒予防の観点から、いきなり階段ダッシュをすることは推奨されず、まずは早歩きや軽いスクワット・つま先立ちから始めるのが安全です。当院では、ぞうさん発達クリニック(発達外来)で子どもの運動発達評価、通所リハビリテーションあしたで高齢者向けの運動療法プログラムも提供しており、ご家族全員の「年代に合わせた最適な運動処方」をワンストップでご相談いただけます。

参考文献

  1. Liang Z, Du S, Zhao S, Wang X, Yan Q, Xu B, Ng S, Ning Z. Joint non-linear dose–response associations of device-measured physical activity and cardiorespiratory fitness with cardiovascular disease: a cohort and Mendelian randomisation study. Br J Sports Med. 2026 (Epub ahead of print). doi:10.1136/bjsports-2025-111351
  2. Bull FC, Al-Ansari SS, Biddle S, et al. World Health Organization 2020 guidelines on physical activity and sedentary behaviour. Br J Sports Med. 2020;54(24):1451–1462. doi:10.1136/bjsports-2020-102955
  3. Garcia L, Pearce M, Abbas A, et al. Non-occupational physical activity and risk of cardiovascular disease, cancer and mortality outcomes: a dose-response meta-analysis of large prospective studies. Br J Sports Med. 2023;57(15):979–989. doi:10.1136/bjsports-2022-105669
  4. Stamatakis E, Ahmadi MN, Gill JMR, et al. Association of wearable device-measured vigorous intermittent lifestyle physical activity with mortality. Nat Med. 2022;28(12):2521–2529. doi:10.1038/s41591-022-02100-x
  5. Stamatakis E, Ahmadi MN, Friedenreich CM, et al. Vigorous intermittent lifestyle physical activity and cancer incidence among nonexercising adults: the UK Biobank accelerometry study. JAMA Oncol. 2023;9(9):1255–1259. doi:10.1001/jamaoncol.2023.1830
  6. Stamatakis E, Ahmadi M, Biswas RK, et al. Device-measured vigorous intermittent lifestyle physical activity (VILPA) and major adverse cardiovascular events: evidence of sex differences. Br J Sports Med. 2025;59(7):457–465. doi:10.1136/bjsports-2024-108484
  7. Ahmadi MN, Clare PJ, Katzmarzyk PT, del Pozo Cruz B, Lee I-M, Stamatakis E. Vigorous physical activity, incident heart disease, and cancer: how little is enough? Eur Heart J. 2022;43(46):4801–4814. doi:10.1093/eurheartj/ehac572
  8. Wang Y, Nie J, Ferrari G, Rey-Lopez JP, Rezende LFM. Association of physical activity intensity with mortality: a national cohort study of 403 681 US adults. JAMA Intern Med. 2021;181(2):203–211. doi:10.1001/jamainternmed.2020.6331
  9. Stamatakis E, Biswas RK, Koemel NA, et al. Dose response of incidental physical activity against cardiovascular events and mortality. Circulation. 2025;151(15):1063–1075. doi:10.1161/CIRCULATIONAHA.124.072253
  10. Rodríguez MÁ, Quintana-Cepedal M, Cheval B, Thøgersen-Ntoumani C, Crespo I, Olmedillas H. Effect of exercise snacks on fitness and cardiometabolic health in physically inactive individuals: systematic review and meta-analysis. Br J Sports Med. 2026;60(2):133–141. doi:10.1136/bjsports-2025-110027

【補足】本文中で言及した関連研究

補 1. Khurshid S, Al-Alusi MA, Churchill TW, Guseh JS, Ellinor PT. Accelerometer-derived “weekend warrior” physical activity and incident cardiovascular disease. JAMA. 2023;330(3):247–252. doi:10.1001/jama.2023.10875
補 2. Ahmadi M, Hamer M, Gill J, Sanders J, Doherty A, Stamatakis E. Brief bouts of device-measured intermittent lifestyle physical activity and its association with major adverse cardiovascular events and mortality in people who do not exercise. Lancet Public Health. 2023;8(10):e800–e810. doi:10.1016/S2468-2667(23)00183-4
補 3. del Pozo Cruz B, Ahmadi MN, Lee I-M, Stamatakis E. Prospective associations of daily step counts and intensity with cancer and cardiovascular disease incidence and mortality and all-cause mortality. JAMA Intern Med. 2022;182(11):1139–1148. doi:10.1001/jamainternmed.2022.4000
補 4. Ross R, Blair SN, Arena R, et al. Importance of assessing cardiorespiratory fitness in clinical practice: a case for fitness as a clinical vital sign: a scientific statement from the American Heart Association. Circulation. 2016;134(24):e653–e699. doi:10.1161/CIR.0000000000000461


※本コラムは医学的情報の提供を目的としたものであり、個別の診断・治療を代替するものではありません。
気になる症状や持病のある方は、運動を始める前に必ず医療機関にご相談ください。

記事監修者田場 隆介

医療法人社団 青山会 まんかいメディカルクリニック 理事長

医療法人社団青山会代表。兵庫県三田市生まれ、三田小学校、三田学園中学校・同高等学校卒業。 1997(平成9)年岩手医科大学医学部卒業、町医者。聖路加国際病院、淀川キリスト教病院、日本赤十字社医療センター、神戸市立医療センター中央市民病院を経て、2009(平成21)年医療法人社団青山会を継承。 2025年問題の主な舞台である地方の小都市で、少子高齢化時代の主役である子どもと高齢者のケアに取り組んでいる。

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