痛風

足の親指の付け根が赤く腫れ激痛が走る…そんな経験はありませんか?
その症状は「痛風」かもしれません。
痛風とは、体内の尿酸が結晶化し、関節に激しい炎症を引き起こす病気です。
95%以上の痛風患者は6mg/dL以上の尿酸値を示しており、高尿酸血症の状態が長引くほど、発作を繰り返すリスクが高まると言われています。
痛風の原因や症状、高尿酸血症との違い、そして最新の検査方法から具体的な治療法、合併症の予防策まで解説します。

■痛風の原因と症状

痛風は、適切な治療を行えば痛みを抑え、発作の発生を防ぐことができる病気です。痛風について、その原因や症状、高尿酸血症との違いなどを解説します。

痛風を理解する:定義とメカニズム

私たちの体の中では、細胞が活動した結果として「プリン体」という物質が作られます。このプリン体は、最終的に「尿酸」という老廃物に変化します。健康な状態であれば、尿酸は腎臓でろ過され、尿として体の外に排出されます。

しかし、何らかの原因で尿酸が作られすぎる、あるいは尿酸の排出がうまくいかなくなると、血液中に尿酸が溜まってしまいます。この状態を「高尿酸血症」といいます。高尿酸血症が続くと、血液中の尿酸は飽和状態になり、溶けきれなくなった尿酸は針のような結晶となって、主に足の親指の付け根などの関節に溜まっていきます。この尿酸結晶が関節の中で炎症を引き起こし、激しい痛みや腫れなどの症状が現れるのです。これが痛風発作です。痛風発作は、ある日突然起こります。多くの場合、足の親指の付け根の関節で発症しますが、足首、膝、手首など、他の関節に起こることもあります。

痛風の主な原因5つ:遺伝、食生活、生活習慣など

痛風の原因は多岐に渡りますが、主な原因として下記の5つが挙げられます。

遺伝的要因痛風は遺伝的な影響を受けやすい病気です。両親が痛風の場合、子どもも痛風になりやすい傾向があります。これは、尿酸の代謝に関わる遺伝子が受け継がれるためと考えられています。
食生活プリン体を多く含む食品(レバー、エビ、白子、カツオ、イワシなど)を過剰に摂取すると、体内で尿酸が過剰に作られ、高尿酸血症につながりやすくなります。また、アルコールには尿酸の排出を阻害する作用があるため、過剰摂取は痛風のリスクを高めます。
生活習慣肥満は、尿酸の産生を増加させ、排出を減少させるため、痛風のリスクを高めます。また、運動不足も尿酸値を上昇させる要因となります。特にストレスは、自律神経のバランスを崩し尿酸の代謝に悪影響を与えます。
薬剤利尿剤などは、尿酸の排出を阻害し尿酸値を上昇させます。尿酸生成抑制薬とともに内服する必要があります。服用している薬がある場合は、医師に相談しましょう。
腎機能の低下腎臓は尿酸を排出する重要な臓器です。腎臓の機能が低下すると、尿酸が排出されにくくなり、痛風のリスクが高まります。

痛風で現れる症状4つ:関節の痛み、腫れ、発赤など

痛風発作の主な症状は、以下の4つです。

関節の激しい痛み痛風発作の痛みは非常に激しく、「風が吹いても痛い」と表現されるほどの激痛を伴う場合もあります。安静にしていてもズキズキと痛むこともあり、歩行や日常生活に支障をきたすこともあります。
関節の腫れ患部の関節が赤く腫れ上がります。腫れは数日間続くことがあり、靴が履けない、患部に触れると痛いなどの症状が現れることもあります。
関節の発赤腫れ上がった関節は、熱を持ち、赤くなります。これは炎症反応によるものです。
発熱痛風発作が起こると発熱を伴うこともあります。これは、体内で炎症反応が起こっているサインです。

痛風と高尿酸血症の違い

痛風と高尿酸血症は密接に関連していますが、別のものです。高尿酸血症は、血液検査で尿酸値が高い状態を指します。高尿酸血症であっても、必ずしも痛風を発症するわけではありません。自覚症状がない場合も多いです。

一方、痛風は、高尿酸血症が原因で起こる関節の炎症性疾患です。高尿酸血症の状態が続くと、尿酸が結晶化し、関節に沈着することで、激しい痛みを伴う痛風発作が起こります。

つまり、高尿酸血症は痛風の原因となる状態であり、痛風は高尿酸血症が進行した結果として発症する病気と言えます。食事療法や生活習慣の改善によって、高尿酸血症を改善することは、痛風の予防につながります。痛風発作を繰り返すと関節が変形したり、腎臓に負担がかかり慢性腎臓病を引き起こす可能性があります。適切な治療と生活管理によって、痛風発作の発生を防ぐことが重要です。

■痛風の検査と診断方法

痛風は、尿酸が体の中に溜まりすぎることで起こる病気です。早期に発見し、適切な治療を始めることが大切です。そのためには、的確な検査と診断が必要です。ここでは、痛風の検査方法について説明します。

痛風の診断は、いくつかの基準を組み合わせて行います。

血液検査(尿酸値測定)血液検査では、血液中の尿酸の量(尿酸値)を測ります。尿酸値が高いほど痛風の可能性が高まります。一般的に、血液中の尿酸値が7mg/dLを超えると高尿酸血症と診断されます。英国で行われた研究では、痛風発作を起こした人の95%以上が6mg/dL以上の尿酸値だったと報告されており、高尿酸血症の状態が長引くほど、痛風発作を繰り返すことが示されています。
関節液検査痛風発作が起きている関節に針を刺し、関節液を採取して顕微鏡で調べます。尿酸は、血液中に溶けきれなくなると、針のような結晶になります。この検査では、関節液の中にこの尿酸結晶が含まれているかを確認します。尿酸結晶が見つかれば、痛風と確定診断されます。この検査は、他の原因で関節が痛む病気と区別するためにも重要な検査です。
臨床症状血液検査や関節液検査の結果だけでなく、症状も診断の重要な手がかりになります。痛風は、足の親指の付け根など特定の関節に突然、激しい痛みと腫れが起こるのが特徴です。また、発作を繰り返す傾向もあります。これらの症状は、医師が痛風を疑う最初のきっかけとなることが多いです。

痛風の画像検査:X線、CT、MRI、超音波検査

痛風の診断は、主に血液検査、関節液検査、そして臨床症状に基づいて行われます。しかし、これらの検査だけでは診断が難しい場合や、痛風の進行具合、合併症の有無などを詳しく調べたい場合に、画像検査を行うことがあります。それぞれの画像検査の特徴を以下にまとめます。

X線検査痛風発作の急性期には、骨や関節の変化はあまり見られません。しかし、痛風を長年患っていると、関節が破壊されたり、尿酸塩結晶の塊が沈着して骨が変形したりすることがあります。X線検査では、このような骨の変化を確認できます。
CT検査CT検査は、X線検査よりも詳細な骨や関節の状態を調べることができます。尿酸塩結晶の沈着部位や範囲をより正確に把握するのに役立ちます。
MRI検査MRI検査は、骨や関節だけでなく、軟骨や靭帯、腱などの軟部組織の状態を詳しく評価することができます。痛風によってこれらの組織が炎症を起こしているかどうかなどを確認できます。
超音波検査超音波検査は、関節内の炎症や尿酸塩結晶の沈着をリアルタイムで観察することができます。体に負担が少ない検査で、痛風の早期診断にも役立ちます。

痛風の鑑別診断:他の関節炎との見分け方

痛風は、他の関節炎と症状が似ていることがあり、区別が難しい場合があります。特に、関節リウマチ、変形性関節症、偽痛風などは痛風と間違われやすい病気です。それぞれの病気の特徴を比較することで、より正確な診断が可能になります。

項目痛風関節リウマチ変形性関節症偽痛風
好発部位足の親指の付け根が多い手足の指の関節膝、股関節膝が多い
症状突然の激しい痛み、腫れ、発赤朝のこわばり、関節の痛み、腫れ関節の痛み、腫れ、変形関節の痛み、腫れ
検査尿酸値上昇、関節液中に尿酸結晶リウマトイド因子陽性X線検査で関節の変形関節液中にピロリン酸カルシウム結晶
その他強い運動後、ストレス環境下、暴飲暴食後に発症しやすい左右対称に症状が現れることが多い加齢とともに発症リスクが高まる高齢者に多い

これらの特徴を踏まえ、医師は患者さんの症状や検査結果を総合的に判断して診断を下します。自己判断で放置すると、適切な治療が遅れ、症状が悪化してしまう可能性があります。関節の痛みや腫れが気になる場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

■痛風の治療法3選:薬物療法、食事療法など

痛風発作は安静にしていてもズキズキと痛み、歩くことも困難になるほどの激痛です。尿酸値が高い状態が続くと、尿酸が結晶化して関節に蓄積し、炎症を引き起こします。この炎症こそが、痛風発作の正体です。痛風の治療は、この激しい痛みを鎮め、発作の再発を防ぐことを目標に行われます。主な治療法として、薬物療法、食事療法、そして生活習慣の改善の3つの柱があります。

薬物療法:急性期、慢性期、予防薬

痛風の薬物療法は、発作の時期や重症度に応じて、使用する薬剤が異なります。痛風発作の急性期には、炎症を抑え、痛みを和らげるために、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、コルヒチン、ステロイドなどが用いられます。これらの薬剤は、即効性があり、痛風発作の症状を速やかに緩和する効果が期待できます。従来よりコルヒチン1 mg内服1時間後0.5mgを内服する、少量コルヒチン投与法が用いられて来ましたが、非ステロイド抗炎症薬と比較しても臨床効果の差はほとんどないと言われています。

一方で慢性期、つまり痛風発作が治まっている時期には、尿酸値を下げる薬物療法が中心となります。尿酸値を下げる薬には、尿酸の産生を抑える薬と、尿酸の排泄を促す薬の2種類があります。これらの薬剤を状態に合わせて使い分けることで、尿酸値を適切な範囲にコントロールし、痛風発作の再発を予防します。痛風と慢性腎臓病(CKD)を合併している場合は、腎臓への負担を考慮して、薬剤の選択や投与量を慎重に調整する必要があります。腎機能別に薬剤の安全性と有効性を層別化して評価した研究は不足しており、エビデンスに基づいた治療選択が重要です。

さらに、痛風発作を繰り返す患者さんには、発作の予防を目的とした薬物療法が行われます。痛風発作を繰り返すと、関節が変形したり、腎臓に負担がかかったりするリスクが高まります。予防薬を使用することで、これらの合併症を防ぎ、健康な関節と腎臓を守ることができます。

食事療法:プリン体、アルコール、水分摂取、ブラックコーヒー

食事療法は、痛風の治療と予防に欠かせない要素です。食事の内容を改善することで、尿酸値をコントロールし、痛風発作のリスクを低減することができます。特に注意すべきは、プリン体、アルコールです。

プリン体は、尿酸の元となる物質です。レバー、白子、いわし、エビなど、プリン体を多く含む食品は、尿酸値を上昇させるため、摂取量を控えめにしましょう。アルコールも、尿酸値を上昇させる作用があるため、過剰な摂取は避けるべきです。特にビールはプリン体も含まれているため、注意が必要です。水分は、尿酸を尿中に溶かし出し、体外への排泄を促進する働きがあります。積極的に水分を摂取することで、尿酸値の上昇を抑える効果が期待できます。

さまざまな食事療法の効果を検証した研究では、食事療法単独では血清尿酸値への影響は小さく、痛風の長期的な経過に大きな変化は見られないという結果が出ています。しかし、特定の食品を避けることで、痛風発作の頻度を減らせる可能性も示唆されています。また、コーヒーに多く含まれるポリフェノールによって、コーヒーの摂取量が多いほど痛風の発症リスクが低下する傾向が認められています。

生活習慣の改善:運動、肥満対策

痛風の治療と予防には、薬物療法や食事療法だけでなく、生活習慣の改善も重要です。適度な運動と肥満対策は、尿酸値のコントロールに効果的です。適度な運動は、尿酸値を下げるだけでなく、ストレス軽減や生活習慣病の予防にも役立ちます。ただし、激しい運動は、かえって尿酸値を上昇させる可能性があるため、ウォーキングや軽いジョギングなど、無理のない範囲で行うことが大切です。肥満も、尿酸値を上昇させる要因の一つです。バランスの取れた食事と適度な運動を心がけ、適正体重を維持することで、痛風のリスクを低減することができます。体重減少は、痛風の予防と治療の両方に効果的であることが研究で示されています。

■痛風の合併症と予防策

痛風を放置するとどうなるのでしょうか?合併症のリスクを理解し、適切な予防策を講じることが重要です。

痛風の合併症4つ:腎臓病、尿路結石、心血管疾患など

高尿酸血症の影響は関節にとどまりません。腎臓、尿路、心臓や血管など、全身に様々な合併症を引き起こす可能性があります。主な合併症として、以下の4つが挙げられます。

腎臓病尿酸は腎臓から排泄されます。高尿酸血症が続くと腎臓に負担がかかり、腎機能が低下する可能性があります。尿酸塩結晶が腎臓に詰まり、尿路結石を形成することもあります。尿路結石は腎臓の機能をさらに損ない、慢性腎臓病へと進行するリスクを高めます。慢性腎臓病が進行すると、最終的には人工透析が必要となる場合もあります。
尿路結石:尿中の尿酸濃度が高くなると、尿酸塩結晶が析出しやすくなります。これらの結晶が尿路で固まり、結石を形成します。これが尿路結石です。尿路結石は激しい痛みや血尿を引き起こし、場合によっては手術が必要になることもあります。腎臓で結石が形成されると、腎機能の低下につながる可能性があります。
心血管疾患痛風は、動脈硬化のリスクを高め、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患につながります。高尿酸血症は血管内皮機能障害や炎症を引き起こし、動脈硬化を促進する可能性があるため注意が必要です。
痛風結節痛風結節は、尿酸塩結晶が皮膚の下に塊として沈着したものです。耳たぶ、指、肘、アキレス腱などに発生しやすい傾向があります。通常は痛みはありませんが、大きくなると皮膚が破れて感染症を起こす可能性があります。

これらの合併症は、高尿酸血症を放置することで引き起こされる可能性があります。合併症を予防するためには、痛風を早期に発見し、適切な治療を継続することが重要です。特に、慢性腎臓病(CKD)を合併している場合、痛風の治療はより複雑になります。CKDのステージが進行するにつれて、腎機能が低下するため、薬剤の選択や投与量を慎重に調整する必要があります。しかし、高度CKDにおける尿酸低下療法のエビデンスは不足しており、腎機能別に薬剤の安全性と有効性を層別化して評価した研究は不足しているのが現状です。そのため、専門機関による推奨事項も現状では一致していない部分があります。

痛風発作の予防:食事療法、生活習慣改善

痛風発作の予防には、食事療法と生活習慣の改善が非常に重要です。食事療法では、尿酸値を上昇させるプリン体の摂取を控える必要があります。それ以上に、アルコールは尿酸の産生を促進し排泄を抑制するため飲酒は避けるべきです。水分を十分に摂取することで、尿酸の排泄を促す効果が期待できます。また、毎朝のコーヒーの摂取により痛風発作のリスクが低下する可能性があります。生活習慣の改善としては、適度な運動と肥満の解消が重要です。適度な運動は尿酸値を下げ、肥満は高尿酸血症のリスクを高めるため、適切な体重管理が必要です。急激な減量は尿酸値を上昇させる可能性があるため、ゆっくりとした減量を心がけましょう。ストレスも尿酸値を上昇させる要因となるため、ストレスを溜め込まない生活を心がけることも重要です。

痛風発作時の対処法:安静、冷却、鎮痛薬

痛風発作が起きた場合は、まず患部を安静にし、冷やし弾性包帯で固定することが重要です。横になった際には、患部を高い位置に保つことで腫れを軽減することができます。痛みが強い場合は、医師の指示に従って鎮痛薬を服用しましょう。自己判断で市販薬を服用するのではなく、必ず医師に相談することが大切です。痛みが治まっても、尿酸値を下げる治療を継続することが重要です。

■痛風の長期管理:定期的な検査と治療継続

痛風は、一度発症すると完治が難しい病気です。そのため、長期的な管理が必要となります。定期的に病院を受診し、血液検査で尿酸値や腎機能をチェックしましょう。医師の指示に従って、尿酸値を下げる薬を継続的に服用することも大切です。自己判断で薬の服用を中止すると、痛風発作が再発する可能性があります。痛風発作が起きなくても、定期的な検査と治療を継続することで、合併症のリスクを減らすことができます。

■まとめ

痛風について、原因や症状、検査方法、治療法、合併症などを解説しました。痛風は、尿酸が体内に蓄積することで起こる病気で、激しい関節の痛みや腫れを引き起こします。主な原因は遺伝的要因、食生活、生活習慣、薬剤、腎機能の低下などです。

早期発見・早期治療が大切で、血液検査や関節液検査で診断します。治療は薬物療法、食事療法、生活習慣の改善を組み合わせ、痛みを抑え、発作の再発を防ぎます。放置すると、腎臓病、尿路結石、心血管疾患などの合併症を引き起こす可能性があります。

痛風かもしれないと思ったら、自己判断せず、医療機関を受診しましょう。専門家の指導のもと、適切な治療と生活管理を続けることで、痛みをコントロールし、合併症を予防し、健康な生活を送ることができます。

参考文献

  • Danve A, Sehra ST, Neogi T. Role of Diet in Hyperuricemia and Gout.
  • Farquhar H, Stamp LK, Fisher M, Mount DB, Hill CL, Pisaniello HL, Vargas-Santos AB, Choi HK, Terkeltaub R, Gaffo AL. Management of gout in chronic kidney disease: a G-CAN Consensus Statement on the research priorities.
  • McCormick N, Yokose C, Challener GJ, Joshi AD, Tanikella S, Choi HK. Serum Urate and Recurrent Gout.

前のページに戻る