病気と健康の話

【血糖値】昼食後 2〜3 時間、甘いものが欲しくなりませんか?―別腹ではなく「インスリン抵抗性」かもしれません―

はじめに ― 血糖値が正常でも、体の中では「静かな異変」が進んで
いる

昼食をしっかり食べたのに、午後 3 時ごろになると甘いものに手が伸びている。血糖値は正常なのに、お腹まわりは年々増え、肝機能や中性脂肪が少しずつ悪くなっている。
こうした背景に、ひとつの共通した体の状態が隠れていることがあります。それが「インスリン抵抗性」です。
インスリン抵抗性は、2 型糖尿病の前段階として知られていますが、それだけではありません。高血圧、脂質異常症、脂肪肝、内臓脂肪型肥満、さらには心筋梗塞や脳卒中、一部のがんにまでつながる、生活習慣病の「共通の土台」であることが、欧米の大規模研究から明らかになってきました。米国カリフォルニア大学の Liu と Yang が 2026 年に The Journal of Nutrition 誌に発表した総説は、食事が引き起こすインスリンの過剰反応こそが慢性疾患予防の鍵であり、今こそ臨床に実装すべき時だと論じています。
本コラムでは、「インスリン抵抗性とは何か」「なぜ良くないのか」という 2 つの問いを主題に据え、冒頭の「午後の甘いもの欲」がなぜインスリン抵抗性のサインになりうるのかを、Nature Metabolism 誌や New England Journal of Medicine 誌などに発表された最新の研究をもとに解説します。そのうえで、インスリン抵抗性を早期に見つけ、食事と運動で改善していくための具体的な方法をお伝えします。

1. インスリン抵抗性とは何か ― 「鍵」は出ているのに「扉」が開か
ない

インスリンは膵臓から分泌されるホルモンで、食事で血液中に増えたブドウ糖を、筋肉・肝臓・脂肪組織の細胞に取り込ませ、血糖値を下げる働きをしています。細胞の表面にはインスリンを受け取る「受容体」があり、インスリンという鍵が受容体という鍵穴に差し込まれると、ブドウ糖を取り込む扉が開く、というイメージです。インスリン抵抗性とは、この鍵を差し込んでも扉が開きにくくなった状態、つまり「インスリンが分泌されているのに、細胞がその指令に反応しにくくなった状態」を指します。
扉が開きにくくなると、膵臓は「もっと鍵を増やせば開くはずだ」と判断し、インスリンの分泌量を増やします。これが「高インスリン血症」です。初期の段階では、大量のインスリンによってなんとか血糖値は正常範囲に保たれるため、健康診断の空腹時血糖値や HbA1c には異常が現れません。しかし膵臓は長年にわたり過重労働を強いられ、やがて分泌が追いつかなくなると、血糖値が上昇して糖尿病と診断されます。米国の医師らによる啓発団体「Insulin Resistance」(insulinresistance.org)は、この高インスリン血症の時期が血糖値の異常に 10 年以上先行しうること、そしてこの時期こそが介入の好機であることを強調しています。
インスリン抵抗性の最大の原因は、内臓脂肪の蓄積と、それに伴う慢性的な炎症です。内臓脂肪から放出される炎症性物質や遊離脂肪酸が、筋肉や肝臓のインスリン信号を妨げます。
加えて、運動不足による筋肉量の減少、睡眠不足、ストレス、そして精製炭水化物の多い食事による繰り返しのインスリン過剰分泌が、インスリン抵抗性を悪化させる主要な要因であることが、多くの研究で示されています。

2. なぜ良くないのか① ― 空腹・過食・体重増加の悪循環をつくる

インスリン抵抗性が良くない第一の理由は、それが「太りやすく、空腹を感じやすい体」をつくることです。インスリンは血糖値を下げるだけでなく、脂肪の分解を抑え、ブドウ糖や脂肪酸を脂肪細胞に蓄える「貯蔵ホルモン」でもあります。高インスリン血症の状態では、食べたエネルギーが優先的に脂肪組織に押し込まれ、血液中で利用できるエネルギーが食後数時間で急減します。米国ハーバード大学の Ludwig らが 2021 年に American Journal of Clinical Nutrition 誌で詳述した「炭水化物-インスリンモデル」は、この状態を脳が「燃料不足」と誤認し、空腹感を強めてエネルギー消費を抑える、と説明しています。
この仕組みを実際の人間で大規模に確かめたのが、2021 年に Nature Metabolism 誌に発表された Wyatt らの研究です。健康な成人 1,070 名に持続血糖測定器(CGM)を装着し、8,624 回の標準化された朝食を解析したところ、食後 2〜3 時間に血糖値が空腹時のベースラインより下がる「グルコース・ディップ(血糖値の谷)」が大きい人ほど、空腹感が強く、次の食事までの時間が短く、1 日のエネルギー摂取量が多いことが示されました。谷が最も大きいグループは最も小さいグループより、1 日あたり 312kcal(95%信頼区間 226〜398kcal)多く食べていたのです。この「谷」は、過剰に分泌されたインスリンが血糖値を下げすぎた結果であり、冒頭の「午後の甘いもの欲」の正体そのものです。
ここに悪循環が生まれます。インスリン抵抗性があると、インスリンが過剰に出て血糖値の谷が深くなり、空腹から過食して内臓脂肪が増え、内臓脂肪がさらにインスリン抵抗性を悪化させる。ただし公平を期せば、米国 NIH の Hall らが 2021 年に Nature Medicine 誌に発表した入院比較試験では、炭水化物の多い低脂肪・植物性食のほうがケトン食より自由摂取時のエネルギー摂取量が 1 日約 690kcal 少なく、インスリンだけで食欲のすべてが説明できるわけではないことも示されています。インスリン抵抗性は「重要な一因」であって「唯一の原因」ではない、という冷静な理解が必要です。

3. なぜ良くないのか② ― 血管・肝臓・全身をむしばむ「共通の土
台」

インスリン抵抗性が良くない第二の理由は、糖尿病になる前から、全身の臓器に静かにダメージを与え続けることです。高インスリン血症は、腎臓でのナトリウム再吸収を増やして血圧を上げ、肝臓での中性脂肪の合成を促して脂質異常症と脂肪肝を引き起こし、血管内皮の機能を低下させて動脈硬化を進めます。いわゆる「メタボリックシンドローム」は、インスリン抵抗性という一本の幹から伸びた枝である、と考えるとわかりやすいでしょう。
食事の面からこの関係を裏づけたのが、カナダ・マクマスター大学の Jenkins らが 2021 年に New England Journal of Medicine 誌に発表した国際 PURE 研究です。5 大陸 20 か国、13万 7,851 名を約 10 年間追跡した結果、血糖値とインスリンを急激に上げるグリセミック・インデックス(GI)の高い食事をとる人は、低い人に比べて、心血管疾患または死亡の複合リスクが、心血管疾患の既往がある人で 1.51 倍、既往がない人で 1.21 倍高いことが示されました。Liu と Yang(J Nutr, 2026)の総説も、看護師健康調査などの大規模コホートにおいて、高グリセミック・ロード食が冠動脈疾患、HDL コレステロール低下、中性脂肪上昇、高感度CRP の上昇(全身性炎症)と関連することを整理しています。
さらに、インスリンは細胞の増殖を促すホルモンでもあるため、慢性的な高インスリン血症は大腸がんや乳がん、膵臓がんなど一部のがんのリスク上昇とも関連することが疫学研究で繰り返し報告されています。米国糖尿病学会(ADA)の「Standards of Care in Diabetes—2026」が、糖尿病の診断を待たずに「前糖尿病」や心血管代謝リスクの段階から積極的な生活習慣介入を推奨しているのは、まさにこの「糖尿病になる前の害」を重く見ているからにほかなりません。

4. 血糖値だけでは見抜けない ― 「インスリン需要」という新しい物
差し

インスリン抵抗性の厄介な点は、通常の健康診断では見えにくいことです。空腹時血糖値やHbA1c は「血糖値が上がってしまった結果」を見る指標であり、その手前で膵臓がどれだけ無理をしているかは映し出しません。Liu と Yang(J Nutr, 2026)は、従来の GI やグリセミック・ロード(GL)に加えて、食品がどれだけインスリンを引き出すかを示す「食事性インスリン需要(dietary insulin demand: dID)」という概念を臨床に導入すべきだと提唱しています。
重要なのは、インスリンの分泌は炭水化物だけで決まるわけではないという事実です。同総説によれば、たんぱく質やアミノ酸(特にロイシン、イソロイシン)、脂質、食品の物理的構造、複数の食品の組み合わせがインスリン分泌に独立して影響し、小麦たんぱく質の加水分解物とロイシン、フェニルアラニンを炭水化物と一緒に摂ると、炭水化物単独より食後 2 時間目のインスリン反応が約 103%高くなった実験が紹介されています。一方で、食品インスリン指数(fII)の低い混合食は、高 fII 食に比べて 8 時間のインスリン反応を健康成人で 53%、2 型糖尿病患者で 41%低下させました。つまり「血糖値を上げない食事」と「インスリンを出させない食事」は重なりつつも同じではないのです。
個人差も見逃せません。英国キングス・カレッジ・ロンドンの Berry らが 2020 年に Nature Medicine 誌に発表した PREDICT 1 研究(1,002 名、双生児を含む)では、同じ食事に対する食後インスリン反応の個人差のうち、遺伝で説明できる割合はわずか9%で、食後血糖値反応の48%よりはるかに低いものでした。インスリンの反応は、食事内容、睡眠、運動、腸内細菌叢、食べる時間帯といった「変えられる要因」に大きく左右されるということであり、これは裏を返せば、インスリン抵抗性は生活習慣で改善できる余地が大きいということを意味します。

5. インスリン抵抗性は子どものうちから始まっている ― 小児 17 試
験のメタ解析

インスリン抵抗性は中高年だけの問題ではありません。小児期の肥満は、高インスリン血症、インスリン抵抗性、慢性炎症、内臓脂肪や肝臓への異所性脂肪蓄積を伴い、これらが成人期まで持ち越されて 2 型糖尿病や心血管疾患の生涯リスクを高めることが知られています。
2026 年に BMC Endocrine Disorders 誌に発表された Khorshidi らのシステマティックレビューとメタ解析は、過体重・肥満の小児・思春期を対象に、炭水化物の量や質を調整した食事がインスリン抵抗性に与える影響を、17 件のランダム化比較試験から検証したものです。
その結果、炭水化物を調整した食事(低 GI 食および炭水化物制限食)は、対照食と比べてインスリン抵抗性の指標である HOMA-IR を有意に改善しました(加重平均差−0.43、95%信頼区間−0.83〜−0.03)。注目すべきはサブグループ解析で、低 GI 食をカロリー制限と組み合わせた場合には空腹時インスリンが 3.05μIU/mL 低下し、HOMA-IR が 0.65 改善した一方、炭水化物を単純に減らしただけの食事では空腹時インスリンも HOMA-IR も有意な改善を示しませんでした。また、炭水化物を総エネルギーの 46〜65%に保った「バランス型」の低 GI 食で、HOMA-IR の改善が確認されています。
この結果が示唆するのは、インスリン抵抗性の改善において大切なのは炭水化物を「減らす」ことよりも「質を選ぶ」ことだという点です。そして、こうした食事の効果が子どものうちから確認できるということは、インスリン抵抗性が早期から始まり、早期から介入できる病態であることを意味しています。ご家族に糖尿病や肥満の方がいる場合、お子さんの体重や食習慣を早めに見直すことは、将来への大きな投資になります。

6. インスリン抵抗性をどう見つけるか ― 血液検査・体組成・CGM

インスリン抵抗性は、通常の健診項目に少し検査を加えるだけで、かなりの精度で評価できます。最も簡便なのは、空腹時の血糖値とインスリン値から計算する「HOMA-IR」です。一般に1.6以下が正常、2.5以上でインスリン抵抗性ありと判断されます。Khorshidiら(2026)のメタ解析でも主要評価項目として用いられている、国際的に標準的な指標です。75g 経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)でインスリンも同時に測定すれば、血糖値が正常でもインスリンが過剰に分泌されている「隠れインスリン抵抗性」を見つけることができます。
体組成の評価も欠かせません。インスリン抵抗性の主因である内臓脂肪は、体重や BMI だけではわかりません。InBody などの体組成計で筋肉量と体脂肪量を分けて測定し、腹部 CT で内臓脂肪面積を直接測定すれば、「体重は普通なのに内臓脂肪が多い」「筋肉が少なくインスリンの受け皿が小さい」といった状態を客観的に把握できます。超音波検査による脂肪肝の評価も、肝臓のインスリン抵抗性を反映する重要な所見です。
そして、日常生活の中でインスリン抵抗性の「影」を見るのが、腕に貼る持続血糖測定器(CGM)です。Wyatt ら(2021)が示したように、食後の血糖値の急上昇とそれに続く深い谷は、インスリンの過剰反応を映す鏡です。ただし、米国 NIH の Hengist らが 2025 年に AmericanJournal of Clinical Nutrition 誌に発表した研究では、糖尿病のない成人が同じ食事を 2回食べても CGM の反応は同一人物内で大きくばらつくことが示されており、1 回の測定で食品の善し悪しを断定することはできません。2 週間程度の記録から繰り返し現れるパターンをつかみ、血液検査や体組成と合わせて医師が総合的に解釈することが大切です。

7. インスリン抵抗性を改善する ― 今日からできる食べ方と動き方

インスリン抵抗性は、適切に介入すれば改善が期待できる病態です。第一の柱は、インスリンを過剰に出させない食べ方です。米国コーネル大学の Shukla らが 2017 年に BMJ Open Diabetes Research & Care 誌に発表したクロスオーバー試験では、2 型糖尿病患者が同じ食事を「野菜とたんぱく質を先に、炭水化物を最後に」食べると、炭水化物を最初に食べた場合に比べて食後血糖値の上昇が約半分に抑えられ、インスリン分泌も有意に低下しました。
食べる順番を変えるだけで膵臓の負担が減る、きわめて実践しやすい方法です。第二の柱は、炭水化物の「質」です。Khorshidi ら(2026)のメタ解析が示したように、極端な糖質制限よりも、総エネルギーの 45〜65%を全粒穀物や食物繊維の豊富な食品でとるバランス型の低 GI 食のほうが、インスリン抵抗性の改善につながります。Liu と Yang(2026)が提案する「GL 交換法」は、従来のカロリー交換表を「血糖値とインスリンを上げる力」に基づいて組み替える実践的な方法で、白米を雑穀米や玄米に、白いパンを全粒粉パンに置き換え、甘い飲み物を控えることがその第一歩です。
第三の柱は運動、とりわけ筋肉を使うことです。筋肉はブドウ糖の最大の受け皿であり、運動中はインスリンがなくても筋肉がブドウ糖を取り込むため、運動はインスリン抵抗性に対する最も強力な「薬」と言えます。食後 10〜15 分の歩行は食後血糖値のピークを抑え、週2〜3 回の筋力トレーニングは受け皿そのものを大きくします。ADA の「Standards of Care in Diabetes—2026」も、糖尿病の有無にかかわらず、食後の身体活動、有酸素運動と筋力トレーニングの併用、食物繊維と全粒穀物を中心とした食事パターンを推奨しています。十分な睡眠とストレス管理も、インスリン感受性を保つうえで欠かせない要素です。

おわりに ― 「血糖値が正常」で安心せず、その手前の異変に目を向
ける

インスリン抵抗性とは、インスリンという鍵が効きにくくなり、膵臓が過剰なインスリンで血糖値を無理やり正常に保っている状態です。それが良くない理由は、空腹と過食と内臓脂肪の悪循環をつくること、そして糖尿病と診断されるはるか前から血管・肝臓・全身に害を及ぼし、心筋梗塞や脳卒中、脂肪肝、一部のがんの土台となることにあります。「午後の甘いもの欲」や「健診は正常なのに増え続ける体重」は、この静かな異変が発しているサインかもしれません。
幸いなことに、インスリン抵抗性は「変えられる要因」に大きく左右され、食べる順番、炭水化物の質、運動、睡眠によって改善が期待できます。まんかいメディカルクリニックでは、内分泌・糖尿病の専門的な診療のもと、HOMA-IR や OGTT(インスリン同時測定)による評価、InBody による体組成測定、CT・超音波による内臓脂肪・脂肪肝の評価、CGM による血糖値の見える化、そして管理栄養士・理学療法士と連携した食事・運動療法を組み合わせ、「病気になる前」の段階からの介入を行っています。日曜・祝日も診療しておりますので、気になる方はお気軽にご相談ください。

FAQ ― よくあるご質問

Q1. インスリン抵抗性と糖尿病は何が違うのですか?

インスリン抵抗性は「インスリンが効きにくくなった状態」、糖尿病は「その結果として血糖値が上がってしまった状態」です。インスリン抵抗性があっても、膵臓が大量のインスリンを出して補っている間は血糖値は正常に保たれます。insulinresistance.orgが強調するように、この高インスリン血症の期間は糖尿病の発症に 10 年以上先行することがあり、血糖値が正常でも心血管や肝臓への害はすでに始まっています。Jenkins ら(NEJM, 2021)の研究が示すように、血糖値とインスリンを急上昇させる食事は糖尿病の有無にかかわらず心血管リスクを高めるため、「糖尿病ではないから大丈夫」とは言えないのです。

Q2. 健康診断の血糖値や HbA1c が正常なら、インスリン抵抗性はないと考えてよいですか?

いいえ、そうとは限りません。空腹時血糖値や HbA1c は、膵臓がインスリンを増やして補いきれなくなった後に初めて異常を示す指標です。インスリン抵抗性を直接評価するには、空腹時インスリンを測定して HOMA-IR を計算するか、75g 経口ブドウ糖負荷試験でインスリンを同時測定する必要があります。また Wyatt ら(Nature Metabolism, 2021)の研究対象は糖尿病のない健康な成人でしたが、その中でも食後の血糖値の谷と過食の関係がはっきりと確認されており、「健診は正常」の方の中にもインスリンの過剰反応を起こしている方が少なくないと考えられます。腹囲の増加、脂肪肝、中性脂肪の上昇、HDLコレステロールの低下がある方は、一度評価を受けることをおすすめします。

Q3. インスリン抵抗性は治りますか?

改善は十分に期待できます。Berry ら(Nature Medicine, 2020)の PREDICT 1 研究では、食後インスリン反応の個人差のうち遺伝で説明できるのはわずか 9%で、残りは食事・睡眠・運動・腸内細菌叢といった修正可能な要因によるものでした。Khorshidi ら(BMC Endocrine Disorders, 2026)のメタ解析では、質のよい炭水化物を中心とした低 GI 食によって HOMA-IR が有意に改善し、Shukla ら(2017)の試験では食べる順番を変えるだけでインスリン分泌が減少しています。内臓脂肪の減少と筋肉量の増加が伴えば、インスリン感受性は大きく回復します。ただし、膵臓の機能が長年の過重労働で低下してしまう前に始めることが重要です。

Q4. 糖質制限をすればインスリン抵抗性は改善しますか?

極端な糖質制限が最善とは限りません。Khorshidi ら(2026)のメタ解析では、炭水化物を単純に減らした食事では空腹時インスリンも HOMA-IR も有意に改善せず、総エネルギーの45〜65%を質のよい炭水化物でとる「バランス型の低 GI 食」で改善が見られました。またLiu と Yang(J Nutr, 2026)が整理したように、インスリン分泌は炭水化物だけでなく、たんぱく質の種類や食品の組み合わせにも左右されます。さらに Hall ら(Nature Medicine,2021)の入院試験では、炭水化物の多い低脂肪・植物性食のほうがケトン食より自由摂取時のエネルギー摂取量が少ないという結果も報告されています。大切なのは炭水化物を「減らす」ことより、食物繊維が豊富で血糖値とインスリンを緩やかに上げる食品を「選ぶ」ことです。

Q5. CGM(持続血糖測定器)でインスリン抵抗性はわかりますか?

CGM はインスリンそのものを測るものではありませんが、インスリンの過剰反応の「影」を日常生活の中で見ることができます。Wyatt ら(2021)が示したように、食後の急上昇と、それに続く食後 2〜3 時間の深い谷は、インスリンが過剰に分泌されたサインです。ただし、Hengist ら(Am J Clin Nutr, 2025)の研究では、糖尿病のない成人が同じ食事を 2 回食べても CGM の反応は大きくばらつくことが示されており、1 回の測定で結論を出すことはできません。当院では、CGM の 2 週間の記録を、HOMA-IR などの血液検査、InBody による体組成、CT・超音波による内臓脂肪・脂肪肝の評価と組み合わせて総合的に判断し、ADA の「Standards of Care in Diabetes—2026」に沿った食事・運動の計画をご提案しています。

参考文献

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参考サイト: Insulin Resistance (insulinresistance.org). Insulin resistance: what it is andwhy it matters. https://insulinresistance.org/insulin-resistance

まんかいメディカルクリニック

※本コラムは医学的情報の提供を目的としたものであり、個別の診断・治療を代替するものではありません。気
になる症状がある方は医療機関にご相談ください。

記事監修者田場 隆介

医療法人社団 青山会 まんかいメディカルクリニック 理事長

医療法人社団青山会代表。兵庫県三田市生まれ、三田小学校、三田学園中学校・同高等学校卒業。 1997(平成9)年岩手医科大学医学部卒業、町医者。聖路加国際病院、淀川キリスト教病院、日本赤十字社医療センター、神戸市立医療センター中央市民病院を経て、2009(平成21)年医療法人社団青山会を継承。 2025年問題の主な舞台である地方の小都市で、少子高齢化時代の主役である子どもと高齢者のケアに取り組んでいる。

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