病気と健康の話

【心房細動】やさしすぎず・多すぎず、心臓に「ちょうどいい」運動量 ―運動と心房細動のU字関係

はじめに ― 「やればやるほど体に良い」?

「運動は体に良い。だから、たくさんやればやるほど良いはずだ」。多くの方がそう考えていらっしゃると思います。実際、ウォーキングやジョギングを習慣にしている方は、高血圧・糖尿病・心筋梗塞・認知症など、ほとんどあらゆる生活習慣病のリスクが低いことが繰り返し示されてきました。ところが、心臓のリズムの病気である「心房細動(しんぼうさいどう)」に限ってみると、話は少し違ってきます。運動しない人は心房細動になりやすい一方で、マラソンや自転車、クロスカントリースキーなどを長年かなりの量こなしてきた持久系アスリートでも、心房細動が増えることが知られてきたのです。
2026 年 10 月、欧州心臓病学会(ESC)の予防心臓病学の専門誌 European Journal of Preventive Cardiology に、この問題に正面から答える大規模な解析が発表されました。英国レスター大学のDaviesらが37研究・約130万人のデータを統合し、運動量と心房細動の関係が「U 字型」になることを、初めてメタ解析として数量的に示したのです(Davies et al., Eur J Prev Cardiol 2026)。同じ年には、ESC の別の専門誌European Heart Journal Open に「アスリートの心房細動リスクは、種目ではなく“走行距離”で決まる」という論説も掲載されました(Myrstad et al., Eur Heart J Open 2026)。本コラムでは、これらの最新論文と米国心臓協会(AHA)の科学的声明、欧米のガイドラインをもとに、「運動の効果はU字」という考え方と、心臓にとって“ちょうどいい運動量”を、一般の方にもわかりやすく解説します。

1. 心房細動とは ― 脳梗塞の5倍リスクにつながる「心臓の不整脈」

心房細動とは、心臓の上の部屋である「心房」が1分間に300回以上も不規則に震え、心臓全体の拍動がバラバラになってしまう不整脈です。動悸、息切れ、疲れやすさといった症状が出ることもありますが、まったく自覚症状がなく、健康診断の心電図で初めて見つかる方も少なくありません。世界の患者数は3,300万人を超え、55歳以上の人が生涯のうちに心房細動を発症する確率は37%にのぼると報告されています(Chung et al., Circulation 2020)。
心房細動が怖いのは、不整脈そのものよりも、その「合併症」です。心房の中で血液がよどむと血栓(血の塊)ができやすくなり、それが脳に飛ぶと重い脳梗塞を起こします。心房細動があると虚血性脳卒中のリスクはおよそ5倍に高まり、心不全や死亡のリスクも上昇します(Davies et al., Eur J Prev Cardiol 2026)。加齢は最大の危険因子ですが、肥満、高血圧、糖尿病、睡眠時無呼吸、飲酒、喫煙、そして「運動不足」など、生活習慣で変えられる危険因子も数多く知られています。AHA の科学的声明は、これらへの対策を、抗凝固療法・心拍数のコントロール・リズムのコントロールに続く、心房細動治療の「第4の柱」と位置づけています(Chung et al., Circulation 2020)。

2. あらためて運動の効果は「U字」 ― 130万人のメタ解析が示したもの

Davies らの研究の最大の特徴は、研究ごとにバラバラだった運動量の物差しを、「MET 時/週(メッツ時/週)」という共通の単位にそろえた点にあります。MET とは運動の強さを表す単位で、安静に座っている状態を1とし、普通の速さの歩行がおよそ3〜4、ジョギングが7〜10 程度に相当します。この強さに1週間の運動時間を掛けたものがMET時/週で、1週間の「運動の総量」を示す指標です。研究チームは、2024 年版の成人身体活動コンペンディウム(運動ごとのエネルギー消費量の国際的な一覧表)を用いて、37研究・合計1,298,291人の運動量をこの単位に換算し、心房細動の起こりやすさとの関係を曲線として描き出しました(Davies et al., Eur J Prev Cardiol 2026)。
その結果、まったく運動しない状態から運動量を増やしていくと、心房細動のリスクはいったん下がり、週およそ26 MET時で最も低くなりました(オッズ比0.86)。ところが、そこからさらに運動量を増やし続けると、曲線はゆっくりと上向きに転じ、週およそ78 MET 時を超えると、運動しない人よりもかえってリスクが高くなったのです(オッズ比 1.54)。運動量を横軸、リスクを縦軸にとると、まさにアルファベットの「U」の字を描くことになります。研究チームは、この 78 MET 時/週を「よく鍛えた持久系アスリートの強度で、週 6〜7時間のランニング・自転車・水泳を行う量」に相当すると説明しています。
大切なのは、この U 字の「谷底」と「上り坂」の位置です。世界保健機関(WHO)が推奨する「週150〜300分の中等度運動、または週75〜150分の高強度運動」は、換算すると週9〜22 MET 時にあたり、まさに曲線の谷底付近に位置しています。リスクが上がり始めるのは、推奨量の3倍以上、一般の方がなかなか到達しない運動量の領域なのです。

3. 「適度な運動」は心房細動を防ぐ ― 一般の人では22%のリスク低下

U 字の左側、つまり「運動しなさすぎ」の領域から見ていきましょう。Daviesらの解析では、一般の人々を対象とした 22 研究をまとめると、最も活動的なグループは、最も運動しないグループに比べて心房細動になるリスクが22%低いという結果でした(オッズ比0.78)。質の低い研究を除いても、心電図で確認された心房細動だけに絞っても、この傾向は変わりませんでした(Davies et al., Eur J Prev Cardiol 2026)。
AHA の科学的声明も、運動不足はそれ自体が心房細動の独立した危険因子であり、肥満・高血圧・糖尿病といった他の危険因子を通じても心房細動を増やすと整理しています(Chung et al., Circulation 2020)。注目すべきは、運動が「肥満による心房細動リスクの上乗せ」を部分的に打ち消すことです。同声明で紹介されたノルウェーの HUNT 研究では、肥満があっても身体活動が多い人は、運動しない肥満の人に比べて心房細動のリスクが 22%低いことが示されています。また、米国の女性8万人以上を対象とした研究では、週9 MET時を超える運動をしている人で心房細動が約10%少なく、スウェーデンの女性3万6千人の研究では、毎日40分以上の歩行や自転車で約19%の低下が見られました。
さらに、心肺機能(体力)そのものが重要であることもわかっています。過体重・肥満の心房細動患者を追跡したオーストラリアのCARDIO-FIT研究では、体力が1 MET向上するごとに不整脈の再発が9%減り、2 MET以上向上した人では、減量の効果に上乗せする形で再発のない人が2倍に増えました(Chung et al., Circulation 2020)。「体力をつける」ことは、心房細動の予防にも治療にも、確かな意味を持っているのです。

4. アスリートはなぜ心房細動になりやすいのか ― 2.74倍、男性では4.21倍

一方、U字の右側、「運動しすぎ」の領域はどうでしょうか。Daviesらが持久系アスリートを対象とした 15 研究を統合したところ、アスリートは一般の人に比べて心房細動のリスクが2.74倍高いという結果でした。男女別にみると、男性アスリートでは4.21倍と顕著に高い一方、女性アスリートでは明確な上昇は確認されませんでした(Davies et al., Eur J Prev Cardiol 2026)。ただし女性のデータはわずか4研究しかなく、エリート女性持久系アスリートだけを対象とした質の高いスウェーデンの研究では 2.68 倍の上昇が報告されているため、「女性は安全」と結論づけることはできません。
元トップレベル選手の研究は、さらに印象的な数字を示しています。オーストラリアのFlannery らは、世界レベルで活躍した元ボート選手121人(平均62歳)を調べ、心房細動の有病率が22%にのぼること、年齢と性別をそろえた英国バイオバンクの対照者11,495人では3%にすぎないことを報告しました(Flannery et al., Eur Heart J 2025)。また、4年間の追跡でも新たな心房細動の発症は選手で 6%、対照群で 2%でした。高血圧や肥満などの一般的な危険因子は両群で大きく変わらなかったにもかかわらず、です。
AHA の声明も、持久系アスリートの心房細動リスクが高いことを認めつつ、「その上昇はガイドライン推奨量をはるかに超える運動量でのみ観察され、そうした量に到達するのは米国人の1%未満である」と強調しています(Chung et al., Circulation 2020)。つまり、健康のためにジョギングやウォーキングを楽しんでいる大多数の方にとって、これは「心配すべき話」ではなく、「上限がどこにあるかを知っておく話」なのです。

5. 「種目ではなく、走行距離」 ― 生涯の累積トレーニング量という視点

では、アスリートの心房細動リスクを決めているのは何でしょうか。ベルギーの De Paepeらは、45 歳以上の健康な男性3,939 人(Master@Heart 研究)を対象に、「これまでの人生で持久系運動に費やした合計時間」と心房細動・心房粗動の関係を調べました。生涯の運動時間が1,778 時間以下のグループの有病率は 4.8%でしたが、12,231 時間を超えるグループでは9.6%と約 2倍に上昇し、年齢・体格・飲酒・高血圧などを調整したオッズ比は2.16でした。累積1,000 時間ごとにリスクは2%ずつ上がる計算になります(De Paepe et al., Eur Heart J Open 2026)。
この研究では、自転車は心房細動と関連していた一方、ランニングと水泳では独立した関連が見られなかったことから、「種目による違い」も議論されました。これに対してノルウェーのMyrstad らは論説の中で、ノルウェーのクロスカントリースキー愛好家の研究でもオッズ比は約1.9、運動歴10年ごとに16%ずつリスクが上がるなど、多くの研究で驚くほど似た「約2倍」という数字が出ていることを指摘しました。そして、現時点のエビデンスでは、心房細動リスクとより確かに結びついているのは種目ではなく「マイレージ(積み重ねた運動量)」だと結論づけています(Myrstad et al., Eur Heart J Open 2026)。論説のタイトルそのものが「It’s not the sport, it’s the mileage(種目ではない、走行距離だ)」です。
同じ論説は、年齢とともにアスリートの心房細動の有病率が上がることも示しています。55〜60歳のランナー・自転車愛好家では5〜10%、65〜70歳の自転車・スキー愛好家では10~18%、平均 80 歳近いクロスカントリースキー愛好家では28.5%に達していました。長年続けてきた高い運動量は、年齢を重ねてから心房細動という形で表れることがある、ということです。

6. 心臓の中で何が起きているのか ― 心房の拡大、線維化、そして迷走神経

なぜ、運動のしすぎが心房細動につながるのでしょうか。Davies らは、不整脈が起こる仕組みを説明する「クーメルの三角形」という考え方を用いて整理しています。長期間の激しい持久系トレーニングにより、心臓には、不整脈が起こりやすい土台(心房の拡大や線維化)、不整脈を後押しする調整因子(迷走神経=ブレーキ役の自律神経の緊張の高まり)、そして不整脈の引き金(心房からの期外収縮)の 3 つがそろいやすくなる、という考え方です(Davies et al., Eur J Prev Cardiol 2026)。
鍛えられたアスリートの心臓は、たくさんの血液を送り出せるよう大きくなります。これは「スポーツ心臓」と呼ばれる正常な適応ですが、どこからが病的な変化になるのかは、まだはっきりわかっていません。ベルギーのDausin らは、男性持久系アスリート 151 人の心拍数データを胸ベルト型センサーで客観的に記録し、心臓MRIの所見と照らし合わせました。その結果、心臓の容積の大きさを最もよく説明したのは運動の「強度」よりも「時間」、それも低〜中強度で長く運動した時間でした(Dausin et al., Eur Heart J 2026)。強度より量が心臓の形を変えるという結果は、「走行距離」説とよく一致しています。
一方で、すべてのアスリートが心房細動になるわけではありません。元ボート選手の研究では、遺伝的な体質(多遺伝子リスク)が運動量と同じくらい、あるいはそれ以上に重要な可能性も指摘されています(Flannery et al., Eur Heart J 2025)。さらにDaviesらは、多くの研究で活動的なグループほど飲酒量が多い傾向があったことを挙げ、アルコールが隠れた要因になっている可能性にも注意を促しています。心房細動の原因は、運動量だけでなく、年齢・体格・遺伝・飲酒・血圧などが重なり合って決まると考えるのが妥当です。

7. すでに心房細動がある方こそ運動を ― ACTIVE-AF試験と欧米ガイドライン

「心房細動と診断されたので、運動は控えたほうがよいのでは」と心配される方がいらっしゃいます。しかし最新のエビデンスは、むしろ逆の方向を示しています。オーストラリアで行われたACTIVE-AF試験では、発作性または持続性の心房細動がある患者120人(平均65歳)を、運動指導士による6か月間の運動プログラム群と通常治療群に無作為に割り付けました。12 か月後に不整脈が再発していなかった人は、運動群で40%、通常治療群で20%と、運動群で 2 倍に達し、症状の重さも有意に改善しました(Elliott et al., JACC Clin Electrophysiol 2023)。
こうした結果を受け、欧米の最新ガイドラインはそろって運動を治療の一部に位置づけています。2023 年の米国 ACC/AHA/ACCP/HRS ガイドラインは、生活習慣と危険因子の改善を心房細動管理の「柱」とし、週210分を目標とした中等度〜高強度の運動トレーニングを推奨しています(Joglar et al., Circulation 2024)。2024 年の ESC ガイドラインも、「AF-CARE」という管理の枠組みの最初の項目に併存疾患と危険因子の管理を置き、発作性・持続性心房細動の方には体力向上と再発予防のための個別化された運動プログラムを推奨しています。あわせて、10%以上の減量、飲酒を週3杯(アルコール30g)以下に抑えることなども推奨されています(Van Gelder et al., Eur Heart J 2024)。
AHA の声明でも、2 か月間の中等度の持続的な運動で症状と生活の質が改善した試験や、ヨガで発作の頻度が減った研究が紹介されています(Chung et al., Circulation 2020)。運動は、心房細動の方にとって「避けるもの」ではなく、「薬やカテーテル治療と並ぶ治療の一つ」になりつつあるのです。ただし、運動量の上限やトレーニングの強さについては、個々の心臓の状態によって適切な範囲が異なるため、主治医と相談しながら決めることが大切です。

8. U 字の「谷底」を日常に置き換える ― 週26 MET時はどのくらい?

では、心房細動の観点から見た“ちょうどいい運動量”は、日常生活ではどのくらいになるのでしょうか。Daviesらの曲線で最もリスクが低かった週26 MET時は、およそ次のように置き換えられます。早歩き(約4 MET)なら週6〜7時間、つまり1日1時間弱。ジョギング(約7〜8 MET)なら週3時間半前後。ややペースの速いランニング(約10 MET)なら週2時間半ほどです。WHOの推奨量(週9〜22 MET時)をしっかり満たし、少し上回るくらいが「谷底」にあたる、と考えるとわかりやすいでしょう。
反対に、リスクが上がり始めた週78 MET時は、鍛えた持久系アスリートの強度で週6〜7時間、ランニングなら月に 250〜300km 以上を何年も走り続けるような水準です。フルマラソンを目指して練習量を増やす市民ランナーの方も、この数字は一つの参考になるでしょう。ただし、Daviesらは、エビデンスの確実性はGRADE評価で「非常に低い」とし、同じMET値でも、鍛えたアスリートと一般の人では心臓への負担が同じとは限らないと注意を促しています(Davies et al., Eur J Prev Cardiol 2026)。78 という数字は「ここを超えたら危険」という境界線ではなく、「この辺りから上は注意深く見ていく」という目安として受け止めてください。
また、心房細動以外の健康効果まで含めて考えると、運動の上限はそれほど心配する必要はありません。米国の10万人以上を約30年追跡したハーバード大学のLeeらの研究では、推奨量の2〜4倍(中等度運動で週300〜600 分、高強度運動で週150〜300分)の運動をしていた人で全死亡が最大31%低く、推奨量の4倍を超える人でも心血管系への有害な影響は見られませんでした。効果は頭打ちになっても、マイナスには転じなかったのです(Lee et al., Circulation 2022)。運動不足の害は、運動しすぎの害よりもはるかに大きく、はるかに多くの人に関わる問題であることを、あらためて強調しておきたいと思います。

おわりに ― 「やめる」のではなく「量を知る」

最新の研究は、運動と心房細動の関係が「多いほど良い」直線ではなく、「適量で最もリスクが低くなる」U 字の曲線であることを示しました。まったく運動しないことは心房細動の危険因子であり、WHOが推奨する量から少し上回る程度の運動(週26 MET時前後、早歩きなら1 日1時間弱)が、心臓のリズムを守る“ちょうどいい量”と考えられます。リスクが上がるのは、鍛えたアスリートが何年にもわたって積み重ねるような非常に多い運動量の領域であり、その鍵は種目よりも「積み重ねた量」にあります。大切なのは運動を恐れてやめることではなく、自分の運動量を知り、年齢や体調に合わせて調整していくことです。
長年マラソンや自転車、トライアスロンなどを続けてきた方で、動悸や脈の乱れ、急に走れなくなった、息切れが強くなったといった変化を感じたら、早めに心電図で確認することをおすすめします。心房細動は症状がなくても見つかることがあり、早期発見が脳梗塞の予防につながります。まんかいメディカルクリニックでは、心電図や心臓の超音波検査(心エコー)による評価に加え、運動療法の専門的な知見をもとに、一人ひとりに合った運動量のご提案を行っています。日曜・祝日も診療しておりますので、運動と心臓について気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。

FAQ ― よくあるご質問

Q1. 毎日ジョギングをしています。心房細動が心配なので、運動をやめたほうがよいですか?

やめる必要はありません。Davies らのメタ解析で心房細動のリスクが上がり始めたのは、鍛えた持久系アスリートの強度で週6〜7時間に相当する、週およそ78 MET時以上の運動量でした(Davies et al., Eur J Prev Cardiol 2026)。1 日 30〜60 分程度のジョギングであれば、多くの場合はむしろリスクが最も低い「谷底」付近にあたります。AHA の声明も、推奨量の中等度運動は心房細動を増やさず、減らす可能性があるとしています(Chung et al., Circulation 2020)。ただし、動悸や脈の乱れを感じたときは、運動量にかかわらず心電図で確認しましょう。

Q2. 心房細動と診断されました。運動しても大丈夫ですか?

多くの場合、適切な運動はむしろ推奨されます。ACTIVE-AF 試験では、6 か月間の運動プログラムを受けた心房細動患者で、12か月後に不整脈が再発していなかった人が40%と、通常治療群の20%の2倍でした(Elliott et al., JACC Clin Electrophysiol 2023)。2024年ESC ガイドラインと2023 年米国ガイドラインも、個別化された運動を治療の一部として推奨しています(Van Gelder et al., Eur Heart J 2024; Joglar et al., Circulation 2024)。ただし、心拍数のコントロール状況や心機能、抗凝固薬の内服などによって適した運動は異なりますので、始める前に主治医とご相談ください。

Q3. マラソンや自転車など、心房細動になりやすい種目はありますか?

ベルギーの研究では、自転車が心房細動と独立して関連し、ランニングや水泳では関連が見られませんでした(De Paepe et al., Eur Heart J Open 2026)。しかし、この研究は自己申告に基づく横断研究で、種目の違いを確かめるには限界があります。ノルウェーの研究者による論説は、ランナー、スキー、自転車、ボートなど多くの研究で同じような約2倍のリスク上昇が見られることから、現時点では「種目よりも、生涯に積み重ねた運動量(マイレージ)」の方が確かに関連していると結論づけています(Myrstad et al., Eur Heart J Open 2026)。

Q4. 女性も、運動のしすぎで心房細動になりやすいのですか?

現時点でははっきりわかっていません。Davies らの解析では、男性アスリートの心房細動リスクは 4.21 倍でしたが、女性アスリートでは明確な上昇は確認されませんでした。一方で、一般の女性では活動的な人ほど心房細動のリスクが 36%低いという結果が得られています(Davies et al., Eur J Prev Cardiol 2026)。女性は心房が比較的小さいことがリスクの低さに関わる可能性がありますが、エリート女性持久系アスリートを長期追跡した研究では 2.68 倍の上昇も報告されており、女性のデータは不足しています。女性の方も、動悸などの症状があれば遠慮なく検査を受けてください。

Q5. 自分の運動量が多すぎないか、どうやって確かめればよいですか?

まずは1週間の運動の「時間」と「強さ」を記録してみましょう。早歩きなら約4、ジョギングなら約7〜8、速いランニングなら約10 を時間に掛けると、おおよそのMET 時/週がわかります。週26 MET時前後が心房細動リスクの最も低い目安で、週78 MET時を超える状態が何年も続いている場合は、一度心電図や心エコーで心臓の状態を確認しておくと安心です(Davies et al., Eur J Prev Cardiol 2026)。スマートウォッチやスマートフォンの活動記録は運動量の把握に役立ちますが、不整脈の通知が出た場合は必ず医療機関で心電図による確認を受けてください(Chung et al., Circulation 2020)。

参考文献

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8. Van Gelder IC, Rienstra M, Bunting KV, et al. 2024 ESC Guidelines for the management of
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※本コラムは医学的情報の提供を目的としたものであり、個別の診断・治療を代替するものではありません。気になる症状がある方は医療機関にご相談ください。

記事監修者田場 隆介

医療法人社団 青山会 まんかいメディカルクリニック 理事長

医療法人社団青山会代表。兵庫県三田市生まれ、三田小学校、三田学園中学校・同高等学校卒業。 1997(平成9)年岩手医科大学医学部卒業、町医者。聖路加国際病院、淀川キリスト教病院、日本赤十字社医療センター、神戸市立医療センター中央市民病院を経て、2009(平成21)年医療法人社団青山会を継承。 2025年問題の主な舞台である地方の小都市で、少子高齢化時代の主役である子どもと高齢者のケアに取り組んでいる。

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