病気と健康の話

【人間ドック】BMI より「脂肪の場所」―新しい肥満の定義と、効く食事・効かない食事―

はじめに ― 体重計は、あなたの体の「中身」を語らない

健康診断で「BMI が高めですね」と言われたものの、血圧も血糖もコレステロールも正常。「太っているけれど健康」と感じたことはありませんか。反対に、体型はほっそりしているのに、血糖値や中性脂肪で引っかかる方もいらっしゃいます。BMI(体格指数:体重 kg÷身長 m の二乗)は便利な物差しですが、同じ数字の人どうしでも、体の中で起きていることは大きく異なります。
2026 年 6 月、米国内分泌学会の学術誌 The Journal of Clinical Endocrinology &Metabolism に、ペニントン生物医学研究センターの Rodriguez と Ravussin による総説「Does metabolically healthy obesity really exist?(代謝的に健康な肥満は本当に存在するのか)」が掲載されました(Rodriguez & Ravussin, 2026)。結論は、「健康な肥満」という分類は不安定で誤解を招きやすく、臓器の働きそのものを見て肥満を評価すべきだ、というものです。同時期に、オランダ・マーストリヒト大学の Blaak らは NutritionReviews 誌で、同じ食事指導でも約 3 割の人には効果が乏しいこと、そして「体のタイプ」に合わせた精密栄養(プレシジョン・ニュートリション)が糖尿病予防の新たな鍵になりうることを総説しました(Muijsenberg et al., 2026)。
本コラムでは、この 2 本の論文に欧米の最新研究 8 件を加えて、「なぜ同じ BMI でもリスクが違うのか」「新しい肥満の定義は何を変えるのか」「自分に合う食事はどう見つけるのか」を、できるだけわかりやすくご説明します。

1. 「健康な肥満」という考え方 ― 定義次第で 3 倍も変わる不思議

1980 年代から、肥満があっても血圧・血糖・脂質に異常がない人たちがいることが知られ、「代謝的に健康な肥満(MHO:Metabolically Healthy Obesity)」と呼ばれるようになりました。反対に、異常を抱える肥満は「代謝的に不健康な肥満(MUO)」と呼ばれます。一見わかりやすい分類ですが、Rodriguez らの総説は、この概念の最大の弱点が「統一された定義がないこと」にあると指摘しています(Rodriguez & Ravussin, 2026)。
実際、研究によって、メタボリックシンドロームの項目が「0 個なら健康」とするものもあれば「2 個まで健康」とするものもあり、血圧や血糖の基準値もまちまちです。その結果、同じ集団でも定義を変えるだけで MHO の割合が約 3 倍も変動し、大規模コホートでは 4.2%から 36.6%までばらつきました。米国の国民健康栄養調査(NHANES III)では、肥満者のうち MHO に該当する人は、メタボリックシンドロームがないことを基準にすると 47%、インスリン感受性を基準にすると 32%、全項目が正常であることを求めると 10%にまで減ってしまいました(Rodriguez & Ravussin, 2026)。
さらに、本当にすべての代謝指標が正常な人は、BMI30 以上の肥満者で 7.5%、BMI36 以上ではわずか 1%にすぎないというデータもあります。つまり「健康な肥満」の多くは、物差しを甘くしたことで生まれた、見かけ上の健康である可能性が高いのです。総説の著者らは、肥満は代謝の病気だけでなく、変形性膝関節症、腰痛、睡眠時無呼吸、喘息、うつ、認知機能低下、そして最大 13 種類のがんとも関係することを強調し、代謝の数値が正常でも「肥満」と診断された時点で経過観察とリスク低減を始めるべきだと述べています(Rodriguez& Ravussin, 2026)。

2. 「健康な肥満」は通過点 ― 10 年で約半数が「不健康」へ

MHO のもうひとつの問題は、その状態が長続きしないことです。Rodriguez らがまとめた長期研究では、10 年および 20 年の追跡で、MHO だった人の約半数が代謝的に不健康な状態へ移行していました。英国バイオバンクの 38 万 1,363 人を対象とした研究では、肥満が続いた人のうち3人に1人が、わずか3〜5年でMUOに移行していました(Rodriguez & Ravussin,2026)。50 歳の時点で MHO にとどまっている人は、定義にかかわらず 1〜4%しかいないという報告もあります。
しかも、「健康な」肥満の時期であっても、標準体重で代謝的に健康な人と比べると、心血管病や全死亡のリスクは高いことが複数のメタ解析で示されています。総説の図 2 は、BMI32、腹囲 85cm、血圧 118/78mmHg の「健康な肥満」の人が、年月とともに腹囲 93cm、血圧 140/93mmHg、空腹時血糖の上昇、HDL コレステロールの低下を経て、MUO へと移っていく典型的な経過を描いています。著者らは、この移行の主な原因は特別な体質ではなく、「肥満にさらされ続ける時間」そのものだろうと結論づけています(Rodriguez & Ravussin,2026)。
一方で、MHO という考え方にも利点はあります。女性、若年、BMI が低め、腹囲が小さい、非喫煙といった条件の人ほど MHO を長く保ちやすく、これらはまさに生活習慣で働きかけられる目標です。また、糖尿病のリスクが高い群を優先して減量治療を行うと、1 人の糖尿病発症を防ぐのに必要な治療人数が低リスク群の 120 人から 24 人へと大きく下がるという報告もあり、限られた医療資源を「リスクの高い人」に集中させる考え方の根拠にもなっています(Rodriguez & Ravussin, 2026)。

3. 差を生むのは脂肪の「場所」と「質」、そして遺伝子

では、同じ体脂肪量でも、なぜ健康状態に差が出るのでしょうか。Rodriguez らの総説によれば、MHO の人は皮下脂肪、とくに太ももやお尻など下半身に脂肪をためやすく、内臓脂肪や、肝臓・筋肉・心臓などにたまる「異所性脂肪」が少ない傾向があります。脂肪組織が新しい脂肪細胞を作ったり、血管を伸ばしたりして健やかに広がることができる人は、あふれた脂肪が臓器にしみ出すことを防げるのです。加えて、ミトコンドリア(細胞のエネルギー工場)の機能が保たれ、慢性炎症が少なく、心肺持久力が高いことも特徴として挙げられています(Rodriguez & Ravussin, 2026)。
Blaak らの総説も同じ点を強調しています。脂肪の絶対量よりも、お腹まわり(上半身)にたまるか、お尻や太もも(下半身)にたまるかという分布のほうが代謝の健康をよく予測し、さらに脂肪組織の「働き」――脂肪をため込む余力や炎症の程度――が心代謝リスクを左右するというのです(Muijsenberg et al., 2026)。
遺伝子の研究もこの考え方を後押ししています。米国マウントサイナイ医科大学の Loos らのグループは、英国バイオバンクの 45 万 2,768 人の遺伝情報を解析し、「体脂肪を増やすのに、心代謝リスクはむしろ下げる」方向に働く遺伝的変異を 205 の遺伝子領域で見つけ、それらを 8 つのサブタイプに分類しました(Chami et al., Nat Med 2025)。体重が多くても病気になりにくい人がいる理由の一部は、遺伝的な「脂肪のため方」の違いで説明できるということです。ただし、これは「遺伝だから仕方ない」という意味ではありません。どこに脂肪がたまっているかを実際に測り、自分のタイプを知ることこそが大切なのです。

4. BMI から「臓器の働き」へ ― 臨床的肥満と前臨床的肥満

こうした流れを受けて、2025 年に医学誌 Lancet Diabetes & Endocrinology の国際委員会は、肥満の新しい診断基準を発表しました(Rubino et al., 2025)。まず BMI だけでなく、腹囲・ウエストヒップ比・ウエスト身長比、あるいは DXA 法などで測った体脂肪率によって「過剰な脂肪があること」を確認します。そのうえで、肥満によって臓器や体の機能に障害が出ている状態を「臨床的肥満(clinical obesity)」、脂肪は過剰でも臓器の機能がまだ保たれている状態を「前臨床的肥満(preclinical obesity)」と分けるのです。
臨床的肥満の診断基準は、成人では 12 の臓器・系統にまたがる 18 項目です。睡眠時無呼吸、息切れや喘鳴、心不全や心房細動、血圧上昇、高血糖・脂質異常・低 HDL の組み合わせ、線維化を伴う脂肪肝(MASLD)、アルブミン尿を伴う腎機能低下、尿失禁、月経異常や男性性腺機能低下、膝や股関節の痛み、下肢のリンパ浮腫、そして日常生活動作の制限などが含まれ、どれか 1 つがあれば臨床的肥満と診断されます。代謝の数値が正常でも、膝の痛みや息切れが肥満によるものであれば「臨床的肥満」になる点が、従来の「健康な肥満」との決定的な違いです。この枠組みには、すでに 76 以上の専門学会が賛同しています(Rodriguez &Ravussin, 2026)。
欧州肥満学会(EASO)も 2024 年に同じ方向性の新しい枠組みを Nature Medicine 誌に発表し、肥満を「脂肪の量と分布、そしてそれがもたらす健康障害」で捉える慢性疾患と位置づけ、BMI に加えてウエスト身長比など腹部の脂肪を重視した評価と、一人ひとりに合わせた管理を求めています(Busetto et al., Nat Med 2024)。「体重を量って終わり」の時代から、「どの臓器にどんな影響が出ているかを診る」時代へと、肥満医療は大きく舵を切ったのです。

5. 新しい定義で見えてきたもの ― 本当にリスクが高いのは誰か

新しい定義を実際の集団にあてはめた研究が、2025 年以降つぎつぎに発表されています。米国の 30 万 1,026 人を対象とした All of Us コホートでは、従来の BMI 基準で肥満とされた人は 42.9%でしたが、新基準では 68.6%に増えました。BMI は高くなくても腹囲などが基準を超える「隠れた肥満」が多数見つかったためです。そして臨床的肥満の人は、糖尿病、心血管イベント、全死亡のリスクが明らかに高いことが確認されました(Fourman et al.,JAMA Netw Open 2025)。
ドイツ人間栄養研究所とハーバード大学の共同研究では、米国 NHANES とドイツの EPICPotsdam コホートを解析し、肥満が確認された成人の 80%以上がすでに臨床的肥満に該当し、肥満でも臨床基準も満たさない人と比べて心血管病のリスクが 2.8 倍、2 型糖尿病のリスクが 7.9 倍高いことが示されました。注目すべきは、同じ研究のなかの TULIP 研究で、生活習慣介入によって 3%以上体重が減った人では臨床的肥満の割合が 71%から 57%に下がり、53人中 14 人が臨床的肥満から「寛解」したことです(Schiborn et al., Nat Commun 2026)。
わずかな減量でも、臓器の働きは回復しうるということです。
一方、課題も指摘されています。代謝の項目は「高血糖・高中性脂肪・低 HDL の 3 つがそろう」ことを求めるため、1 つか 2 つだけ異常がある人が「前臨床的」と判定され、治療の機会を逃すおそれがあるのです(Rodriguez & Ravussin, 2026)。また日本人を含むアジア人は、欧米人より低い BMI で糖尿病などを起こしやすく、腹囲の基準を欧米仕様にすると臨床的肥満が大幅に少なく見積もられてしまうことも韓国の研究で示されています(Rodriguez& Ravussin, 2026)。新しい定義は「数字を見る」から「人を診る」への転換ですが、その運用には医師の目が欠かせません。

6. 同じ食事でも、効く人と効かない人がいる

肥満のタイプが人それぞれなら、効く食事も人それぞれのはずです。Blaak らの総説によれば、一般的な健康食の指導は、糖尿病予備群の人の糖尿病発症を最大で 50%減らす力があります。しかしその一方で、参加者の約 30%は指導に反応しない、あるいは続けられないことがわかっています(Muijsenberg et al., 2026)。この「効かない 3 割」をどう救うかが、精密栄養学の出発点です。
たとえば、欧州の大規模試験をまとめて再解析した研究では、空腹時血糖が 5.6〜6.9mmol/L(約 100〜125mg/dL)の糖尿病予備群で肥満のある人は、精製された炭水化物の多い食事では、体重が戻りやすく最大で 4 倍にも達しました。一方、同じ人たちが食物繊維の多い低グリセミック負荷の食事をとると、しっかり体重が減りました。血糖値が正常な人では、食事の違いによる差はほとんどみられませんでした(Muijsenberg et al., 2026)。
腸内細菌も鍵を握ります。食物繊維を分解するプレボテラ菌が多い人は、全粒穀物を中心とした高繊維食で 6 か月間に平均 3.15kg 多く体脂肪が減りましたが、プレボテラ菌が少ない人では食事による差がありませんでした。また、地中海食で高 GI 食と低 GI 食を比べた試験では、女性のほうが高 GI 食による食後血糖の悪化を受けやすいという性差も報告されています(Muijsenberg et al., 2026)。「何を食べるか」の答えは、血糖値、インスリン、腸内細菌、性別によって変わりうるのです。

7. 「自分に合う食事」の最前線 ― 肝臓型と筋肉型、そしてアプリ

精密栄養学で最も注目されているのが、オランダで行われた PERSON 試験です(Trouwborstet al., Cell Metab 2023)。インスリンの効きが悪い場所に着目し、太り気味の 242 人を「肝臓のインスリン抵抗性が強いタイプ(肝臓型)」と「筋肉のインスリン抵抗性が強いタイプ(筋肉型)」に分けました。そして 12 週間、オリーブオイルなど一価不飽和脂肪酸を多く含む食事か、低脂肪・高たんぱく・高食物繊維の食事のどちらかを、体重が変わらないよう摂取してもらいました。
その結果、肝臓型の人は一価不飽和脂肪酸の多い食事で、筋肉型の人は低脂肪・高たんぱく・高繊維の食事で、インスリン感受性、炎症の指標である CRP、中性脂肪がより大きく改善しました。自分のタイプに合った食事をとった群では、全身のインスリン感受性が約20%改善したのに対し、合わない食事の群では約 5%にとどまりました。しかも参加者の76%は血糖が正常な人たちで、体重を減らさなくても食事の組み合わせを変えるだけで代謝が改善したのです(Trouwborst et al., 2023; Muijsenberg et al., 2026)。
英国・米国で行われた ZOE METHOD 試験では、347 人を、腸内細菌や食後の血糖・中性脂肪の反応にもとづいてアプリで個別に食事を指導する群と、米国の標準的な食事ガイドラインで指導する群に分けて 18 週間追跡しました。個別指導群では中性脂肪が有意に低下し(差−0.13mmol/L)、体重、腹囲、HbA1c も改善しましたが、LDL コレステロールには差がありませんでした(Bermingham et al., Nat Med 2024)。ただし、精密栄養学はまだ発展途上です。Blaak らは、遺伝子検査にもとづく食事指導は大規模試験で上乗せ効果を示せていないこと、PERSON 試験が対象にできたのは高リスク者の 27.6%にすぎないことを挙げ、残りの人に最適な食事を見つける研究が必要だと述べています(Muijsenberg et al., 2026)。市販の「遺伝子ダイエット」に飛びつく前に、まずは医療機関で測れる指標から自分のタイプを知ることをおすすめします。

8. 今日からできる実践 ― 自分の「タイプ」を知り、続けられる食事
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まず大切なのは、BMI だけで安心も悲観もしないことです。腹囲を測り、ウエスト身長比(腹囲÷身長)が 0.5 を超えていないか確認しましょう。血液検査では空腹時血糖と HbA1cに加えて、空腹時インスリンからインスリン抵抗性の指標(HOMA-IR)を計算できます。肝臓の脂肪は腹部超音波で、内臓脂肪は CT で、筋肉量と体脂肪の分布は体組成計で評価できます。これらを組み合わせることで、「前臨床的肥満なのか臨床的肥満なのか」「肝臓型か筋肉型か」といった自分の位置がみえてきます。
食事の土台としては、ハーバード大学が 3 つのコホートの 20 万 5,852 人を最長 32 年追跡した研究が参考になります。数ある食事パターンのなかで、インスリンを上げにくい食事(精製穀物、甘い飲み物、加工肉、フライドポテトなどを控え、野菜、豆、全粒穀物、ナッツ、コーヒーなどを中心とする)が最も強く主要な慢性疾患のリスク低下と関連し、そのハザード比は 0.58 でした(Wang et al., Nat Med 2023)。インスリンの過剰分泌や炎症といった「病気の仕組み」に狙いを定めた食事が、一般的な健康食以上に有効である可能性を示しています。
そのうえで、検査結果に応じて調整します。空腹時血糖が高めの方は精製炭水化物を減らして食物繊維を増やすこと、脂肪肝が目立つ方はオリーブオイルやナッツなど脂質の「質」を見直すこと、筋肉のインスリン抵抗性が疑われる方はたんぱく質と食物繊維を意識しながら筋力トレーニングを組み合わせること――こうした「タイプ別の微調整」が、精密栄養学の考え方を日常に生かす現実的な方法です。そして何より、続けられることが最大の効果を生みます。

おわりに ― 「何 kg か」より「体の中で何が起きているか」

「健康な肥満」は、最新の研究では多くが一時的な通過点であり、時間とともに代謝の病気や臓器の障害へ進みやすいことがわかってきました。だからこそ、肥満医療は BMI という一つの数字から、脂肪の分布と臓器の働きを診る方向へと大きく変わりつつあります。そして食事も、誰にでも同じ指導をする時代から、一人ひとりの体のタイプに合わせて選ぶ時代へと進もうとしています。
まんかいメディカルクリニックでは、腹部 CT による内臓脂肪の評価、超音波による脂肪肝の確認、InBody による体組成測定を組み合わせ、運動療法や必要に応じて GLP-1 受容体作動薬を含む肥満治療を行っております。内科は日曜・祝日も診療しています。「健診では BMIだけ指摘された」「自分に合う食事がわからない」という方は、どうぞお気軽にご相談ください。体重の数字の向こう側にある、あなたの体の本当の姿を一緒に確かめましょう。

FAQ ― よくあるご質問

Q1. BMI は高いけれど、血圧も血糖も正常です。このままで大丈夫ですか?

現時点で検査値が正常なのは良いことですが、安心しきるのは早いかもしれません。研究では「代謝的に健康な肥満」の人の約半数が 10〜20 年で代謝の異常をきたし、英国の38 万人の研究では 3 人に 1 人が 3〜5 年で移行していました。また標準体重の健康な人と比べると、心血管病のリスクは高いとされています(Rodriguez & Ravussin, 2026)。腹囲や脂肪肝、睡眠時無呼吸、膝の痛みなど、代謝以外の影響がないかも含めて、定期的に確認することをおすすめします。

Q2. 「臨床的肥満」と「前臨床的肥満」は、何が違うのですか?

どちらも体脂肪が過剰な状態ですが、臨床的肥満は肥満が原因で臓器や体の機能に障害が出ている状態、前臨床的肥満は脂肪は多いものの臓器の機能がまだ保たれている状態を指します(Rubino et al., 2025)。臨床的肥満は 12 の臓器・系統にわたる 18 項目のいずれかで診断され、心血管病のリスクは 2.8 倍、2 型糖尿病は 7.9 倍との報告があります(Schiborn et al., 2026)。前臨床的肥満の段階で生活習慣を整えることが、進行を防ぐ最大のチャンスです。

Q3. 遺伝子検査を受ければ、自分に合うダイエット法がわかりますか?

現時点では、遺伝子検査にもとづく食事指導が一般的な指導より優れているという確かな証拠はありません。欧州の Food4Me 試験や米国の大規模試験などでは、遺伝子情報を加えても効果の上乗せは確認されませんでした(Muijsenberg et al., 2026)。一方、肝臓型・筋肉型といったインスリン抵抗性のタイプや、血糖値・インスリン値にもとづく食事の選び方には、臨床試験で効果が示されつつあります(Trouwborst et al., 2023)。
まずは医療機関で測れる血液検査や体組成から始めるのが現実的です。

Q4. 糖質制限と脂質制限、結局どちらが良いのでしょうか?

「誰にとっても正解」の食事はなく、体のタイプによって向き不向きがあることがわかってきました。PERSON 試験では、肝臓のインスリン抵抗性が強い人はオリーブオイルなど良質な脂質の多い食事で、筋肉のインスリン抵抗性が強い人は低脂肪・高たんぱく・高繊維の食事で、より大きく代謝が改善しました(Trouwborst et al., 2023)。また空腹時血糖が高めの方は、精製された炭水化物を控えた低グリセミック負荷の食事で体重が減りやすいと報告されています(Muijsenberg et al., 2026)。極端な制限より、検査に合わせた調整がおすすめです。

Q5. 体重が少し減っただけでも、意味はありますか?

十分に意味があります。ドイツの TULIP 研究では、生活習慣介入で 3%以上の減量を達成した人のうち、臨床的肥満の割合が 71%から 57%へ下がり、53 人中 14 人が臨床的肥満から寛解しました(Schiborn et al., 2026)。また PERSON 試験では、体重を変えずに食事の組み合わせを変えるだけでもインスリン感受性が約 20%改善しています(Trouwborst et al., 2023)。治療の目標は「体重を減らすこと」そのものではなく、臓器の働きを取り戻すことです。小さな変化を積み重ねていきましょう。

参考文献

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  2. Muijsenberg A, Canfora EE, Blaak EE. Metabolic phenotypes, genotypes, and gut
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※本コラムは医学的情報の提供を目的としたものであり、個別の診断・治療を代替するものではありません。気
になる症状がある方は医療機関にご相談ください。

記事監修者田場 隆介

医療法人社団 青山会 まんかいメディカルクリニック 理事長

医療法人社団青山会代表。兵庫県三田市生まれ、三田小学校、三田学園中学校・同高等学校卒業。 1997(平成9)年岩手医科大学医学部卒業、町医者。聖路加国際病院、淀川キリスト教病院、日本赤十字社医療センター、神戸市立医療センター中央市民病院を経て、2009(平成21)年医療法人社団青山会を継承。 2025年問題の主な舞台である地方の小都市で、少子高齢化時代の主役である子どもと高齢者のケアに取り組んでいる。

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