【糖尿病】糖尿病の本当の敵は「血糖値」ではない―GLP-1・SGLT2 で診断時から心臓と腎臓を守る新常識と、GLP-1 を使う女性が知るべき 5 つの注意点【ADA/EASD 2026 最新版】―
はじめに ― 「HbA1c が下がれば安心」
健康診断で「血糖値が高め」「HbA1c が 6.5%を超えています」と言われたとき、多くの方は「血糖値を下げること」が糖尿病治療のすべてだと考えるのではないでしょうか。間違いなく、血糖値は大切な指標です。しかし、2 型糖尿病の方の命や生活の質を本当に左右しているのは、血糖値そのものよりも、がん、心筋梗塞や脳卒中、心不全、慢性腎臓病、脂肪肝、筋力の低下といった「高血糖と一緒に起こってくる病気(併存疾患)」です。
2026 年、米国糖尿病学会(ADA)と欧州糖尿病学会(EASD)は、4 年ぶりとなる 2 型糖尿病管理の合同コンセンサスレポートを発表しました(Davies et al., Diabetologia/Diabetes Care2026)。最大のメッセージは、治療の焦点を「高血糖の管理」から「2 型糖尿病とそれに伴う複数の長期的疾患(MLTCs)の包括的な管理」へと広げることです。そして、臓器を守る効果が証明された SGLT2 阻害薬や GLP-1 受容体作動薬(GLP-1 RA)を、診断時から使うことも視野に入れるよう求めています。
本コラムでは、この最新コンセンサスと欧米の主要な臨床試験・メタ解析をもとに、(1)なぜ「診断時から」臓器保護薬を考えるのか、(2)メトホルミンの位置づけはどう変わったのか、(3)心血管疾患・慢性腎臓病・心不全がある方に早期の併用療法が勧められる理由、(4)どれほど薬が進歩しても生活習慣が治療の土台であること、そして(5)GLP-1 受容体作動薬の使用者の多くを占める女性が知っておくべき注意点を、わかりやすく解説します。
1.「血糖値の管理」から「併存疾患の管理」へ ― 20 年ぶりの転換
ADA/EASD のコンセンサスは 2006 年から改訂を重ねてきましたが、2026 年版はそのタイトルからして変化しています。これまでの「高血糖の管理」という枠組みから、「2 型糖尿病とその関連する長期的疾患への、先を見越した統合的ケア」へと視野を広げたのです(Davies et al., 2026)。コンセンサスの中心に描かれた図では、ケアの目標が「合併症の予防」と「生活の質の最適化」の 2 つに集約され、その周囲を「環境と社会的要因」「複雑な病態生理」「生涯を通じたケア」が取り囲んでいます。
この図でとくに印象的なのが、信号機のイラストとともに記された「血糖管理だけに注目しないこと(Do not just focus on glycemic management)」という一文です。目指すべき目標として、心臓と腎臓の保護、身体機能、幸福感と生活の質、体重管理と肥満関連合併症への対応が並べられています。さらに、従来の目・腎臓・足・心血管の定期チェックに加え、心不全、脂肪肝(MASLD)、睡眠時無呼吸症候群、身体機能、不安や抑うつなどの心の健康、歯周病、男女それぞれの健康、ワクチン接種状況までを「追加のサーベイランス項目」として
挙げています。
背景にあるのは、2 型糖尿病の方は一般の方に比べて、こうした多疾患併存のリスクが根本的に高いという事実です。しかもそのリスクは診断の早い段階では見過ごされやすく、たとえば腎臓病のスクリーニング率は依然として低いままです(Davies et al., 2026)。コンセンサスは、糖尿病を「血糖値の病気」ではなく「慢性・進行性の全身疾患」として捉え直し、治療の成果も「寛解(血糖値の正常化)」だけではなく、臓器保護や機能的な健康、長期予後で評価すべきだと提言しています。
2. なぜ「診断時から」なのか ― SGLT2 阻害薬と GLP-1 受容体作動薬
の臓器保護効果
2026 年版コンセンサスの要約(アブストラクト)は、SGLT2 阻害薬および/または GLP-1 関連薬を、診断時を含むより早い段階から用いることで臓器を保護し、長期予後を改善すべきだと明記しています(Davies et al., 2026)。SGLT2 阻害薬(ダパグリフロジン〈フォシーガ〉、エンパグリフロジン〈ジャディアンス〉など)は、尿から糖を排出させる飲み薬で、心血管イベント、心不全による入院、腎機能の低下、総死亡を減らすことが大規模試験で示されています。
GLP-1 受容体作動薬(セマグルチド〈オゼンピック/リベルサス/ウゴービ〉、デュラグルチドなど)や、GIP/GLP-1 受容体作動薬チルゼパチド(マンジャロ/ゼップバウンド)についても、エビデンスが急速に積み上がっています。10 件のランダム化比較試験を統合したメタ解析では、GLP-1 受容体作動薬は主要心血管イベント(MACE)を約 14%、腎不全を含む腎複合アウトカムも有意に減少させました(Badve et al., Lancet Diabetes Endocrinol 2025)。2 型糖尿病と慢性腎臓病の方を対象とした FLOW 試験では、セマグルチド注射により腎臓病の進
行・腎不全・腎臓や心血管による死亡の複合リスクが 24%低下しました(Perkovic et al., NEngl J Med 2024)。
飲み薬のセマグルチドを用いた SOUL 試験でも、動脈硬化性疾患や慢性腎臓病をもつ方の心血管イベントが 14%減少しています(McGuire et al., N Engl J Med 2025)。さらに SURPASS-CVOT 試験では、チルゼパチドが心血管保護効果の確立したデュラグルチドに対して非劣性(ハザード比 0.92)を示しました(Nicholls et al., N Engl J Med 2025)。こうした薬の恩恵は血糖値の高さとは独立していることが多く、「HbA1c がまだそれほど高くないから」という理由で使用を先延ばしにしない、というのが最新の考え方です。
3. メトホルミンはもう不要なのか ― 「第一選択」の再定義
メトホルミン(メトグルコなど)は、血糖を下げる効果が高く、単独では低血糖を起こしにくく、体重を増やさず、安価で安全性の実績も豊富なことから、長年にわたり 2 型糖尿病の「第一選択薬」とされてきました。2026 年版コンセンサスもこの評価自体は変えていません。ただし、GLP-1 受容体作動薬と SGLT2 阻害薬の心血管・腎保護効果はメトホルミンの使用の有無にかかわらず認められているため、心血管疾患・心不全・慢性腎臓病がある方やそのリスクが高い方では、メトホルミンを先に使っているかどうかに関係なく、これらの薬を
使うべきだとしています(Davies et al., 2026)。
一方でコンセンサスは、この結論が無作為化で守られていないサブグループ解析に基づくため決定的ではないことも認め、「GLP-1 関連薬や SGLT2 阻害薬を始める際にメトホルミンを継続したいと考える人もいる」と記しています。つまり、メトホルミンは「必ず最初に使う薬」から「状況に応じて併用する有力な選択肢」へと位置づけが変わったと理解するのが適切です。その価値を裏付けるのが、英国 UKPDS 試験の 44 年間にわたる追跡結果です。診断直後からメトホルミンで血糖を厳格に管理した群では、従来治療群に比べて総死亡が約 20%、
心筋梗塞が約 31%少ない状態が数十年後も続いていました(Adler et al., Lancet 2024)。早期の良好な管理がのちの人生に効き続ける「レガシー効果」です。
なお、メトホルミンは腎機能(eGFR)が 30 未満の方には使用できず、45 未満では減量を検討します。また長期使用でビタミン B12 が低下し、神経障害の症状が悪化することがあるため、定期的な測定と必要に応じた補充が推奨されています(Davies et al., 2026)。当院では、腎機能・ビタミン B12・肝機能などを血液検査で確認しながら、一人ひとりに合った組み合わせを検討しています。
4. 心血管疾患・慢性腎臓病・心不全がある方は「早期の併用療法」を
2026 年版コンセンサスの要約でもう一つ強調されているのが、心血管疾患(CVD)、慢性腎臓病(CKD)、心不全(HF)を合併している方では、SGLT2 阻害薬と GLP-1 関連薬の早期併用を検討すべきという点です。コンセンサスは「効果は相加的である可能性があるため、心血管リスクが高い方、または心血管疾患や腎臓病が確立している方では、HbA1c の値にかかわらず両者の併用を考慮しうる」と述べています(Davies et al., 2026)。心不全(駆出率の低下の有無を問わない)では、SGLT2 阻害薬を心不全・腎アウトカム改善のために使用すべきとされ
ています。
併用の根拠となるデータも増えています。SGLT2 阻害薬の大規模試験を統合した SMART-C メタ解析では、SGLT2 阻害薬の心血管・腎保護効果は、GLP-1 受容体作動薬を併用しているかどうかにかかわらず一貫して認められ、安全性の問題も増えませんでした(Apperloo et al., Lancet Diabetes Endocrinol 2024)。また、アルブミン尿を伴う 2 型糖尿病の方を対象とした推計研究では、SGLT2 阻害薬・GLP-1 受容体作動薬・非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(フィネレノン〈ケレンディア〉)を組み合わせることで、従来治療と比べて
心血管イベントや腎不全のない期間が数年単位で延びる可能性が示されています(Neuen et al., Circulation 2024)。
ただしコンセンサス自身も、「両者を全員にルーチンで併用すべきか、どの順番で追加するのが最適かについての決定的なエビデンスはまだない」と率直に述べています(Davies et al., 2026)。そのため、心臓・腎臓の状態、体重、副作用、費用、ご本人の希望を踏まえた「共同意思決定(シェアード・ディシジョン・メイキング)」が欠かせません。当院では CTや超音波検査、尿アルブミン測定などで心臓・血管・腎臓の状態を評価し、併用のメリットが大きい方を見極めています。
5. 見落とされやすい併存疾患 ― 脂肪肝(MASLD)と筋肉量
併存疾患のなかでも近年注目されているのが、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD、いわゆる脂肪肝)です。2 型糖尿病の方の 7 割以上が MASLD を合併しているとされ、ADA/EASD コンセンサスも、肝硬変に至ってからでは有効な治療が乏しいことから、早期の介入を求めています。セマグルチドは、中等度以上の線維化を伴う脂肪肝炎(MASH)に対して肝組織の改善が示された唯一の血糖降下・肥満治療薬として位置づけられています(Davies et al.,2026)。
一方で、同じ Diabetologia 誌に掲載されたヘルシンキ大学の Qadri 博士の総説は、冷静な視点を提示しています。これまで 2 型糖尿病の方の 20〜40%に進行した肝線維化があると報告されてきましたが、データを再解析すると実際には 5〜10%未満である可能性が高く、現行の血液検査によるスクリーニングでは 30〜50%もの方が追加検査に回される一方、進行線維化の 3 分の 1 以上を見逃してしまうと指摘しています(Qadri, Diabetologia 2026)。つまり「数値だけで振り分ける」のではなく、画像検査などを組み合わせた丁寧な評価が重要だということです。
もう一つ見落とされやすいのが筋肉です。コンセンサスによれば、SURMOUNT-1 試験などの体組成解析で、GLP-1 関連薬による体重減少のうち約 25〜40%が除脂肪量(筋肉など)の減少によるものでした(Davies et al., 2026)。体重が減っても筋肉が落ちれば、身体機能の低下や将来のフレイルにつながりかねません。当院では体成分分析装置 InBody で筋肉量と脂肪量を分けて評価し、超音波検査で肝臓の状態も確認しながら、運動療法と組み合わせた治療を行っています。
6. 生活習慣こそ治療の土台 ― 「5 つの S」と医学的栄養療法
薬の話が続きましたが、2026 年版コンセンサスが繰り返し強調しているのは、健康的な生活習慣こそが糖尿病ケアの「基本中の基本」だということです。食事、24 時間の身体行動(睡眠を含む)、禁煙、心理的サポート、体重管理が、薬物療法と並ぶ柱として明記されています。新たに導入された枠組みが「5 つの S」――立つ(Standing)、歩く(Stepping)、汗をかく有酸素運動(Sweating)、筋力トレーニング(Strengthening)、そして睡眠(Sleep)です(Davies et al., 2026)。
具体的には、週 150 分以上の中〜高強度の有酸素運動と、週 2〜3 回の筋力トレーニングの組み合わせが推奨され、両者を組み合わせたプログラムは HbA1c を約 0.7〜0.9%低下させます。座りっぱなしの時間を短い歩行や簡単な筋トレで区切るだけでも食後血糖が下がり、1日の歩数が 500〜1000 歩増えるごとに死亡や心血管イベントが減ることが示されています。
睡眠についても、量・質・タイミングを整えることで HbA1c の改善が期待できます(Davies et al., 2026)。とくに GLP-1 関連薬で減量する際は、筋肉を守るために筋力トレーニングが強く勧められています。
食事面では、エネルギー不足を生む持続可能な食事パターンが基本で、10%以上の減量を目指す集中的な生活療法は「寛解」も視野に入ります。英国の DiRECT 試験では、プライマリケアでの構造化された食事療法により 1 年後に 46%が寛解しましたが、5 年後に寛解を維持していたのは当初の介入群の 7%にとどまりました(Lean et al., Lancet Diabetes Endocrinol 2024)。生活習慣の改善は「一度やれば終わり」ではなく、継続を支える仕組みが必要です。薬が良くなった時代だからこそ、生活習慣という土台を絶対に忘れてはいけません。
7. GLP-1 受容体作動薬を使う女性へ ― 知っておきたい 5 つの注意点
米国の処方データを解析した研究では、2021 年に肥満症治療薬としてセマグルチド(ウゴービ)が承認されて以降、GLP-1 受容体作動薬の使用は女性で急増し、使用者の多数を女性が占めるようになっています(Daggolu et al., Diabetes Obes Metab 2026)。2026 年に Lancet誌の女性医療専門誌(The Lancet Obstetrics, Gynaecology, & Women’s Health)が GLP-1 受容体作動薬のシリーズを組んだ背景にも、「女性が主な使用者でありながら、女性特有の問題についての研究が不足している」という問題意識があります。ここでは女性が特に知っておきたいポイントを整理します。
(1) 妊娠を希望する場合・妊娠中の使用
GLP-1 関連薬は妊娠中の使用は推奨されていません(Davies et al., 2026)。同シリーズに掲載された Dib らの系統的レビュー・メタ解析と国際専門家コンセンサスでは、糖尿病のある女性が妊娠初期に使用していた場合でも、先天異常、早産、妊娠高血圧症候群、死産などのリスク上昇は明らかではありませんでした。しかし研究数は少なく、「増えるとも減るとも結論できない」段階です(Dib et al., Lancet Obstet Gynaecol Womens Health 2026)。北欧・米国の大規模コホート研究でも、妊娠初期の曝露はインスリンと比べて大きな先天異常のリスク上昇と関連しませんでした(Cesta et al., JAMA Intern Med 2024)。万一使用中に妊娠がわかっても過度に慌てる必要はありませんが、計画妊娠の段階では主治医と中止のタイミングを相談することが大切です。
(2) 避妊と「飲む避妊薬」の効き目
ADA/EASD コンセンサスは、妊娠の可能性がある女性に GLP-1 関連薬などを処方する前に、子宮内避妊具やインプラントなどの確実性の高い避妊法を確保するよう求めています(Davies et al., 2026)。とくにチルゼパチド(マンジャロ/ゼップバウンド)は胃の排出を遅らせることで経口避妊薬の吸収を低下させる可能性があるため、添付文書では開始時と増量時の一定期間、非経口の避妊法への切り替えや避妊具の併用が勧められています。また、減量によって排卵が回復し、「思いがけない妊娠」が起こることも報告されています(Maslin et al., Obes Rev 2026)。
(3) 授乳中の使用
授乳中の安全性については、現時点で使用を支持する十分なエビデンスがありません。英国を中心とする 23 施設の多職種チームによるスコーピングレビューと診療ガイドラインでも、母乳への移行や子どもの長期的な発達に関するデータが不足しているとして、さらなる研究の必要性を強調しています(Maslin et al., Obes Rev 2026)。産後の体重管理を急ぎたい気持ちは自然ですが、授乳期間中は食事と運動を中心とし、薬の開始は授乳終了後に検討するのが現実的です。
(4) 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と妊孕性
一方で、肥満を伴う多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の女性では、GLP-1 関連薬による減量が月経周期や妊孕性(妊娠しやすさ)の改善につながる可能性が示されています(Maslin et al., Obes Rev 2026)。これは「メリット」であると同時に、前述の予期せぬ妊娠のリスクとも表裏一体です。妊娠を望むかどうかを主治医と共有し、薬の開始・中止の計画を立てておくことが大切です。
(5) 更年期・閉経後の女性
更年期以降は内臓脂肪が増えやすく、心血管リスクも上昇します。米国メイヨー・クリニックの研究では、閉経後の女性でホルモン補充療法を併用していた方は、チルゼパチド単独の方に比べて 12 か月後の体重減少率が約 35%大きかったと報告されました(Castaneda et al., Lancet Obstet Gynaecol Womens Health 2026)。ただし観察研究であり因果関係は証明されていません。閉経後は骨量や筋肉量も落ちやすいため、急激な減量を避け、筋力トレーニングとたんぱく質摂取を十分に行うことが重要です。
8. 男性こそ治療の機会を逃さないで ― 性別で変わらない薬の選び方
GLP-1 受容体作動薬の利用が女性に偏っている一方で、心血管疾患や慢性腎臓病を合併し、本来もっとも恩恵を受けるはずの男性の 2 型糖尿病患者さんに、臓器保護薬が十分に届いていない可能性があります。ADA/EASD コンセンサスは、SGLT2 阻害薬、GLP-1 関連薬、フィネレノンの心血管・腎保護効果に性差は認められず、「心血管・腎アウトカム改善のための薬剤選択は性別によって変えるべきではない」と明言しています(Davies et al., 2026)。
また、女性は閉経前には男性より心血管疾患が少ないとされますが、2 型糖尿病になるとその「守り」が弱まり、糖尿病による心血管リスクの上昇幅はむしろ女性のほうが大きいことも指摘されています(Davies et al., 2026)。つまり、GLP-1 関連薬は「痩せるための薬」ではなく、性別を問わず「心臓・腎臓・肝臓を守るための治療薬」として、必要な方に適切に使われるべきものです。見た目の体重だけでなく、臓器の状態を評価したうえで判断することが何より大切です。
おわりに ― 血糖値の先にある「臓器と人生」を守るために
ADA/EASD 2026 コンセンサスが示したのは、2 型糖尿病の治療目標が「血糖値を下げること」から「併存疾患を防ぎ、生活の質を守ること」へと移ったという明確なメッセージです。診断時から SGLT2 阻害薬や GLP-1 受容体作動薬を検討し、必要に応じてメトホルミンを併用する。心血管疾患・慢性腎臓病・心不全がある方では早期の併用療法を考える。そして、どれほど薬が進歩しても、食事・運動・睡眠という生活習慣の土台を決して忘れない――これが現在の欧米の標準的な考え方です。
まんかいメディカルクリニックでは、内科・糖尿病内科の専門性を活かし、CT・超音波検査による心臓・血管・肝臓の評価、InBody による筋肉量の測定、運動療法、GLP-1 プログラムを組み合わせた包括的な糖尿病診療を行っています。日曜・祝日も診療しておりますので、健診で血糖値を指摘された方、現在の治療内容を見直したい方は、どうぞお気軽にご相談ください。
FAQ ― よくあるご質問
Q1. HbA1c がそれほど高くなくても、SGLT2 阻害薬や GLP-1 受容体作動薬を使ったほうがよいのですか?
心血管疾患・慢性腎臓病・心不全がある方、またはそのリスクが高い方では、HbA1c の値にかかわらず使用が推奨されています。ADA/EASD 2026 コンセンサスは、これらの薬の臓器保護効果は血糖値の改善とは独立しているとし、診断時からの使用も視野に入れるよう提言しています(Davies et al., 2026)。一方、合併症リスクが低い方では、生活習慣の改善や他の薬剤も選択肢となるため、検査結果をもとに主治医と相談して決めることが大切です。
Q2. メトホルミンを飲んでいますが、やめて GLP-1 の薬に切り替えるべきですか?
必ずしもやめる必要はありません。GLP-1 受容体作動薬や SGLT2 阻害薬の心血管・腎保護効果はメトホルミンの有無にかかわらず認められていますが、コンセンサスはメトホルミンを継続する選択も認めています(Davies et al., 2026)。英国 UKPDS 試験では、早期からのメトホルミン治療による死亡や心筋梗塞の減少が 44 年後も続いていました(Adler et al., Lancet 2024)。腎機能やビタミン B12、胃腸症状などを確認しながら、併用か切り替えかを判断します。
Q3. SGLT2 阻害薬と GLP-1 受容体作動薬は一緒に使えますか?
併用は可能で、心血管疾患や腎臓病がある方では効果が相加的である可能性から、早期の併用が検討されます。SMART-C メタ解析では、SGLT2 阻害薬の効果は GLP-1 受容体作動薬併用の有無にかかわらず一貫しており、安全性の問題も増えませんでした(Apperloo et al., Lancet Diabetes Endocrinol 2024)。ただし全員に併用すべきかどうかの最終的なエビデンスはまだないため、メリットと副作用・費用を比較して決めていきます。
Q4. GLP-1 の薬を使っている間に妊娠がわかったら、赤ちゃんに影響はありますか?
妊娠中の使用は推奨されていないため、妊娠がわかった時点で中止し、すぐに主治医にご相談ください。ただし、これまでの研究では妊娠初期の使用で先天異常などのリスクが明らかに上昇するという結果は出ていません(Dib et al., Lancet Obstet Gynaecol Womens Health 2026; Cesta et al., JAMA Intern Med 2024)。研究数がまだ少ないため、妊娠を希望される方は事前に計画的な中止と確実な避妊について相談しておくことをお勧めします。
Q5. 薬で体重が減るなら、食事や運動はそこまで頑張らなくてもよいのでは?
いいえ、生活習慣は今も治療の土台です。GLP-1 関連薬による体重減少の約 25〜40%は筋肉などの除脂肪量の減少によるもので、筋力トレーニングを組み合わせないと身体機能の低下につながる可能性があります(Davies et al., 2026)。また、食事療法による寛解も長期維持には継続的な支援が必要であることが DiRECT 試験で示されています(Lean et al., Lancet Diabetes Endocrinol 2024)。「5 つの S」(立つ・歩く・汗をかく・鍛える・眠る)を意識した生活が、薬の効果を最大限に引き出します。
参考文献
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※本コラムは医学的情報の提供を目的としたものであり、個別の診断・治療を代替するものではありません。気
になる症状がある方は医療機関にご相談ください。
記事監修者田場 隆介
医療法人社団 青山会 まんかいメディカルクリニック 理事長
医療法人社団青山会代表。兵庫県三田市生まれ、三田小学校、三田学園中学校・同高等学校卒業。 1997(平成9)年岩手医科大学医学部卒業、町医者。聖路加国際病院、淀川キリスト教病院、日本赤十字社医療センター、神戸市立医療センター中央市民病院を経て、2009(平成21)年医療法人社団青山会を継承。 2025年問題の主な舞台である地方の小都市で、少子高齢化時代の主役である子どもと高齢者のケアに取り組んでいる。
