【高血圧】献立は毎日の処方箋―メニュー選びが変える高血圧・糖尿病・心臓病のリスク 最新 10 論文から―
はじめに ― 昼ごはん、何を選びましたか?
コンビニの棚の前で、あるいは外食のメニュー表を眺めながら、私たちは一日に何度も「何を食べるか」を選んでいます。一回一回の選択は小さなものですが、それが一年で千回以上、十年で一万回以上積み重なると、血圧、血糖値、コレステロール、体重という形で確実に体に刻まれていきます。高血圧、2 型糖尿病、脂質異常症、肥満といった生活習慣病は、その名のとおり「食事と運動の選択」の総和として現れる病気であり、なかでも食事は薬と同じように、毎日欠かさず体に作用し続ける“処方箋”だといえます。
2026 年 9 月、BMJ グループの学術誌 Family Medicine and Community Health に、51 の前向きコホート研究・約 882 万人を統合した大規模メタ解析が発表されました(Liu et al.,2026)。超加工食品を多く食べる人ほど、心血管イベント、肥満、メタボリックシンドローム・糖尿病、がん、うつ・不安、消化器疾患、そして総死亡のリスクが高いという結果です。
その少し前には、Clinical Nutrition 誌に、米国の名門フラミンガム心臓研究のデータを用いて血圧を下げる食事法「DASH 食」を現代版にアップデートした研究も報告されました(Yiannakou et al., 2026)。
本コラムでは、この 2 本の論文を軸に、欧米の権威ある学術誌に掲載された最新の研究 8 本を加えた計 10 本のエビデンスから、「メニューの選び方」と生活習慣病の関係を整理します。特定の食品を「悪者」にするのではなく、どのような組み立ての食事が病気を遠ざけるのか、そして日本の食卓で明日から実践できる工夫は何かを、内科医の視点でお伝えします。
1. 「何を食べるか」から「どう組み立てるか」へ ― 食事パターンと
いう考え方
かつての栄養指導は「塩分を控える」「脂肪を減らす」といった、栄養素ごとの足し算・引き算が中心でした。しかし人は栄養素ではなく「料理」や「献立」を食べています。そこで近年の栄養疫学は、食事全体の組み合わせを点数化する「食事パターン(dietary pattern)」という考え方を重視するようになりました。地中海食、DASH 食、そしてハーバード大学が開発した代替健康食指数(AHEI)などが代表例です。
2025 年に Nature Medicine 誌に発表された研究(Tessier et al., 2025)は、米国の看護師・医療従事者約 10 万 5 千人を最長 30 年間追跡し、中年期の食事パターンと「健康な老い」との関係を調べました。ここでいう健康な老いとは、70 歳の時点で主要な慢性疾患がなく、認知機能・身体機能・心の健康がいずれも保たれている状態を指します。その結果、AHEIの点数が最も高い群は最も低い群に比べ、健康に 70 歳を迎える可能性が約 1.9 倍(オッズ比1.86)高いことが示されました。果物、野菜、全粒穀物、ナッツ、豆類、不飽和脂肪酸、低脂肪乳製品が多い食事ほど有利で、逆にトランス脂肪酸、塩分、加工肉・赤身肉の摂取が多いほど不利という傾向でした。
この研究が示す重要なメッセージは、「どれか一つの“健康食品”が効く」のではなく、「複数の良い選択が重なった献立」こそが長期的な健康を支えるという点です。そして同じ研究では、超加工食品の摂取が多い人ほど健康な老いを迎えにくいことも報告されています。
次章では、この超加工食品について、最新の大規模データを詳しく見ていきます。
2. 超加工食品の影 ― 約 882 万人のデータが示すもの
超加工食品(ultra-processed foods:UPF)とは、ブラジルの研究者が提唱した「NOVA 分類」において、工業的な加工工程を経て、家庭の台所では通常使わない添加物(乳化剤、香料、甘味料、着色料など)を含む食品を指します。菓子パン、スナック菓子、清涼飲料水、インスタント麺、ハム・ソーセージなどの加工肉、冷凍の調理済み食品などが典型例です。手軽でおいしく安価であるため、欧米では摂取エネルギーの半分以上を占める国もあります。
添付論文の Liu らのメタ解析(Liu et al., Fam Med Com Health 2026)は、2026 年 4 月までに発表された 51 の前向きコホート研究、合計 881 万 9,894 人を統合したものです。超加工食品の摂取が最も多い群は最も少ない群と比べ、心血管イベントが 24%(ハザード比 1.24)、肥満・過体重が 23%(1.23)、メタボリックシンドローム・糖尿病が 24%(1.24)、うつ・不安が 27%(1.27)、消化器疾患が 31%(1.31)、がんが 12%(1.12)、総死亡が 18%(1.18)高いという結果でした。さらに「量が増えるほどリスクが増える」という用量反応関係も確認され、超
加工食品を 1 日 100g 多く食べるごとに心血管イベントは 14%、高血圧は 11%高くなると推定されています。100g とは、菓子パン 1 個、ソーセージ数本程度の量です。
同様の結果は、2024 年に BMJ 誌に掲載された「アンブレラレビュー」(複数のメタ解析をさらに統合・格付けした研究)でも示されています(Lane et al., BMJ 2024)。延べ約 990 万人のデータから、超加工食品の多い食事は心血管疾患による死亡(相対リスク 1.50)、2 型糖尿病、不安や抑うつなど 32 の健康被害と関連しており、特に心血管死亡・2 型糖尿病・精神的な不調については「確実性の高い(convincing)」エビデンスと評価されました。もっとも、これらは観察研究であり、Liu らも証拠の確実性は「低〜中等度」と慎重に述べています。超加工食品を好む人は運動不足や喫煙など他の要因を併せ持つことも多いため、「超加工食品そのものが原因なのか」を確かめるには、介入試験の結果も合わせて見る必要があります。
3. 栄養バランスが同じでも結果は違う ― 加工度を比べた介入試験
「超加工食品が悪いのは、単に脂肪・糖・塩が多いからではないか」という疑問に答えようとしたのが、英国ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの研究グループが Nature Medicine誌に発表した UPDATE 試験です(Dicken et al., Nat Med 2025)。この試験では、過体重・肥満の成人 55 人に、英国の公式食事ガイドライン(Eatwell Guide)に沿った栄養バランスの食事を 8 週間ずつ 2 種類提供しました。一方は手作りの料理を中心とした「最小限の加工食品」、もう一方は栄養成分を合わせた市販の「超加工食品」で構成された献立です。
注目すべきは、どちらも好きなだけ食べてよい条件で、しかも栄養バランスは同等に整えられていた点です。それでも、最小限の加工食品の期間には体重が約 2%減少したのに対し、超加工食品の期間は約 1%の減少にとどまり、減量効果にはおよそ 2 倍の差がつきました。最小限加工食品の期間では、体脂肪や中性脂肪の低下、食べ物への渇望のコントロール改善もみられています。超加工食品は柔らかく噛む回数が少なくて済み、短時間で多く食べやすいことから、食品の「形」や「食べやすさ」が食べる量そのものを変える可能性が考えられています。
一方で、この試験は短期間・小規模であり、専門家からは結論の解釈に慎重さを求める意見も出ています。それでも、「同じカロリー・同じ栄養素表示でも、素材から調理された料理のほうが体重管理に有利かもしれない」という知見は、メニュー選びを考えるうえで大きなヒントになります。成分表の数字だけでなく、「その料理が素材の形をどれだけ残しているか」という視点を持つことが大切です。
4. 血圧を下げるメニュー ― 進化する DASH 食「mDASH」
DASH 食(Dietary Approaches to Stop Hypertension)は、1990 年代に米国で開発された「高血圧を止めるための食事法」です。野菜、果物、低脂肪乳製品を多くとり、カリウム、カルシウム、マグネシウム、食物繊維をしっかり確保する食事で、臨床試験で降圧薬 1 剤に匹敵する血圧低下が確認されました。ただし原型は 30 年前の知見に基づいており、「乳製品は低脂肪に限るべきか」「じゃがいもは野菜に含めてよいか」「魚や肉はどう扱うか」といった点が課題として残されていました。
添付論文の Yiannakou ら(Clin Nutr 2026)は、フラミンガム心臓研究の第 2 世代コホートの食事データを用い、最新の知見を取り入れた修正版 DASH 指数「mDASH」を開発しました。
mDASH は 8 つの要素――果物、野菜(じゃがいもを含む)、乳製品(全脂肪・低脂肪の両方)、魚介類、全粒穀物、豆類・ナッツ・種実類、赤身肉・加工肉、砂糖入り飲料――で構成され、8〜40 点で評価されます。特徴的なのは、魚を初めて DASH の構成要素に加えたこと、乳製品の脂肪分を問わなくなったこと、そして赤身肉・加工肉については「ゼロが最良」ではなく「適量」に最高点を与える J 字型の採点を採用したことです。
中央値 11.2 年の追跡で 712 人が新たに高血圧を発症し、mDASH の点数が最も高い群は最も低い群に比べ、高血圧の発症リスクが 27%低いことが示されました。これは従来の DASH 指数と同等以上の予測力です。さらに、mDASH が高く、かつ BMI が低い人では発症リスクが 54%低く(ハザード比 0.46)、喫煙者でも mDASH が高い場合にはリスクが 35%低下していました。より若い第 3 世代コホートでも 20%のリスク低下という同じ方向の結果が得られています(統計学的有意差には届かず)。つまり、「食べてはいけないもの」を増やすのではなく、選択肢を広げながら血圧を守る、より続けやすい DASH 食が提案されたといえます。
5. 塩とカリウム ― 1 週間で変わる血圧
血圧とメニューの関係を語るうえで、食塩は避けて通れません。米国の CARDIA 研究参加者を対象に JAMA 誌に発表されたクロスオーバー試験(Gupta et al., JAMA 2023)では、50〜75歳の 213 人が「高塩分食」と「低塩分食(ナトリウム 1 日約 500mg=食塩約 1.3g)」をそれぞれ 1 週間ずつ実施しました。その結果、低塩分食では高塩分食に比べて収縮期血圧が中央値で 8mmHg 低下し、普段の食事と比べても約 6mmHg 低下しました。この効果は、すでに降圧薬を服用している人でも、高血圧のない人でも同様にみられ、約 4 人に 3 人で血圧が下がりま
した。わずか 1 週間で降圧薬 1 剤に近い効果が得られたことになります。
2024 年に改訂された欧州心臓病学会(ESC)の高血圧ガイドライン(McEvoy et al., Eur Heart J 2024)では、ナトリウム摂取を 1 日 2g 未満(食塩換算で約 5g)に抑えること、そしてナトリウムを減らしてカリウムを増やす「カリウム強化型の減塩調味料(塩代替品)」の使用が推奨されています。また、野菜・果物・豆類などカリウムの多い食品をとることも勧められています(腎機能が低下している方や一部の薬を服用中の方は、カリウム制限が必要な場合があるため主治医にご相談ください)。
日本人の食塩摂取量は 1 日 10g 前後と、欧米のガイドラインが示す目標の約 2 倍です。その多くは味噌汁、漬物、麺類のスープ、しょうゆ、そして加工食品や外食から来ています。一方で、mDASH の研究では食塩を指数に含めず、食品の組み合わせだけで高血圧の予防効果が示されました。これは、野菜・果物・乳製品・豆類などカリウムの多い食品を増やすこと自体が、減塩と並ぶもう一本の柱になることを意味します。「塩を減らす」と「カリウムを増やす」を同時に進めることが、日本人の血圧対策の要です。
6. 肉と飲み物の選び方 ― 糖尿病リスクの分かれ道
2 型糖尿病の予防において、メニューの中で特に差がつきやすいのが「肉の種類」と「飲み物」です。英国ケンブリッジ大学を中心とする国際共同研究 InterConnect(Li et al.,Lancet Diabetes Endocrinol 2024)は、20 か国・31 コホート、約 197 万人の個人データを統合し、肉の摂取と糖尿病の関係を解析しました。その結果、ハムやソーセージなどの加工肉を 1 日 50g(ハム 2 枚程度)多く食べるごとに 2 型糖尿病のリスクが 15%、加工していない赤身肉を 1 日 100g 多く食べるごとに 10%高くなることが示されました。鶏肉にも弱い関連がみられましたが、その結果は解析方法によって一貫しませんでした。
注目すべきは、この「加工肉」が第 2 章の超加工食品の代表格でもある点です。一方、mDASH では赤身肉を完全に排除せず、週に女性で約 270〜400g、男性で約 400〜800g 程度の「適量」に最高点が与えられています。この 2 つの研究を合わせて読むと、「加工肉はできるだけ減らし、肉を食べるなら加工していないものを適量に、そして魚や豆類と置き換える日をつくる」というメニュー戦略が見えてきます。
飲み物についても、強いエビデンスがあります。米国タフツ大学のグループが Nature Medicine 誌に発表した研究(Lara-Castor et al., Nat Med 2025)は、184 か国のデータから、2020 年の 1 年間に世界で約 220 万人の新たな 2 型糖尿病と約 120 万人の新たな心血管疾患が、砂糖入り飲料(清涼飲料水、加糖のジュース、スポーツドリンク、加糖のコーヒー・紅茶飲料など)に起因すると推計しました。これは新規糖尿病の約 10 人に 1 人に相当します。
液体の糖は満腹感を生みにくく、血糖値を急上昇させるため、「食事」よりも先に「飲み物」を見直すことが、最も手軽で効果の大きいメニュー改善といえるでしょう。mDASH でも、砂糖入り飲料は少ないほど高得点となる要素に位置づけられています。
7. メニュー+量+運動 ― 糖尿病を約 3 割減らした地中海食試験
では、良いメニューに「食べる量の調整」と「運動」を組み合わせると、どこまで生活習慣病を予防できるのでしょうか。その答えを示したのが、スペインで行われた大規模ランダム化比較試験 PREDIMED-Plus の解析です(Ruiz-Canela et al., Ann Intern Med 2025)。メタボリックシンドロームを持つ 55〜75 歳の成人 4,746 人を、①エネルギーを約 600kcal 減らした地中海食+身体活動の促進+専門家による減量支援を行う群と、②カロリー制限なしの地中海食のみの群に分け、6 年間追跡しました。
その結果、①の群では 2 型糖尿病の発症リスクが 31%低下しました(相対リスク 0.69)。体重は①の群で平均 3.3kg、腹囲は 3.6cm 減少したのに対し、②の群ではそれぞれ 0.6kg、0.3cmの減少にとどまりました。地中海食はオリーブオイル、野菜、果物、豆類、ナッツ、魚を中心とする食事で、もともと心血管疾患の予防効果が知られていますが、そこに「適切な量」と「体を動かすこと」を加えることで、糖尿病予防の効果がさらに上積みされたのです。
この結果は、「何を食べるか(質)」「どれだけ食べるか(量)」「どう体を使うか(活動)」の3 つがそろって初めて、生活習慣病予防の効果が最大化されることを示しています。良いメニューは土台であり、その上に量のコントロールと運動を積み重ねることが大切です。当院が運動療法に力を入れているのも、食事と運動は車の両輪であるというこうしたエビデンスに基づいています。
8. 日本の食卓への応用 ― 今日からできるメニュー設計
ここまでの 10 本の論文から見えてくる「生活習慣病を遠ざけるメニュー」の原則は、決して難しいものではありません。第一に、主食・主菜・副菜がそろった「定食型」の献立を基本とし、副菜で野菜・海藻・きのこ・豆類をしっかりとることです。これは DASH 食や地中海食の考え方と重なり、日本の伝統的な食卓がもともと持っている強みでもあります。主食は白米だけでなく、麦ごはんや玄米、全粒粉のパンなどを取り入れると、食物繊維とミネラルが増えます。
第二に、主菜は魚・大豆製品。時々は卵・加工していない肉をローテーションし、ハム・ベーコン・ソーセージなどの加工肉は今日からやめる。第三に、飲み物は水かお茶を基本とし、清涼飲料水や加糖の缶コーヒーを習慣にしないことです。第四に、減塩の工夫として、麺類のスープは残す、しょうゆは極力やめる、だしや酢、香辛料、柑橘で味にメリハリをつけることが役立ちます。乳製品は、mDASH の知見のとおり脂肪分にこだわりすぎない、時々牛乳を飲む。
そして第五に、コンビニや外食で選ぶときは「原材料表示が極力短いもの」「素材の形が見えるもの」を選ぶという視点です。おにぎりとサラダとゆで卵、焼き魚定食、具だくさんの味噌汁といった選び方は、同じ手軽さでも超加工食品への依存を大きく減らせます。完璧を目指す必要はありません。UPDATE 試験や Liu らのメタ解析が示すように、加工度の高い食品を「少しずつ置き換える」だけでも、体重や疾患リスクは量に応じて変わっていきます。
おわりに ― メニューは、毎日選び直せる処方箋
最新の 10 本の論文が一致して示しているのは、生活習慣病のリスクは「一つの食品」ではなく「メニュー全体の組み立て」によって決まるということです。超加工食品や加工肉、砂糖入り飲料を減らし、野菜・果物・全粒穀物・豆類・魚・乳製品を中心とした献立を組むことで、高血圧、糖尿病、心血管疾患、さらには健康な老いにまで良い影響が期待できます。
そして食事の質に、量の調整と運動を組み合わせることで、その効果はさらに大きくなります。
薬の処方箋と違い、献立という処方箋は、今日の夕食からご自身の手で書き換えることができます。一方で、すでに血圧や血糖値、コレステロールが高めの方は、食事の工夫だけでなく、現在のリスクを正確に把握することが大切です。まんかいメディカルクリニックでは、内科・内分泌内科の専門的な診療に加え、InBody による体組成測定、CT・超音波による内臓脂肪の評価、運動療法、GLP-1 受容体作動薬を用いた体重管理プログラムまで、食事と生活習慣の改善を多角的にサポートしています。日曜・祝日も診療しておりますので、健康診断の結果が気になる方は、どうぞお気軽にご相談ください。
FAQ ― よくあるご質問
Q1. 超加工食品は、まったく食べてはいけないのでしょうか?
A. 完全にゼロにする必要はありません。Liu らのメタ解析(2026)では、超加工食品の摂取量が増えるほどリスクが段階的に高まる「用量反応関係」が示されており、裏を返せば、減らした分だけリスクを下げられる可能性があります。例えば 1 日 100g(菓子パン 1個程度)を減らすことは、心血管イベントのリスク約 14%の差に相当すると推定されています。まずは毎日食べている加工食品を 1 品、素材に近いものに置き換えることから始め
ましょう。食パンや納豆、無糖ヨーグルトのように加工はされていても添加物の少ない食品もありますので、原材料表示を確認する習慣が役立ちます。
Q2. 血圧が高めです。減塩以外に食事でできることはありますか?
A. あります。Yiannakou ら(2026)が開発した mDASH 指数では、食塩を含めずに、果物、野菜、乳製品、魚、全粒穀物、豆類・ナッツ、適量の肉、砂糖入り飲料の少なさという食品の組み合わせだけで、高血圧の発症リスクが 27%低いことが示されました。これらの食品に多いカリウムやマグネシウムは、体から余分なナトリウムを排出する働きがあります。もちろん減塩も重要で、Gupta ら(JAMA 2023)の試験では 1 週間の低塩分食で収縮
期血圧が約 6〜8mmHg 低下しました。「減塩」と「カリウムの多い食品を増やす」の両方を意識することが効果的です。ただし腎臓病のある方はカリウム制限が必要な場合がありますので、主治医にご確認ください。
Q3. 肉は体に悪いのですか?食べないほうがよいのでしょうか?
A. 肉の「種類」と「量」が重要です。約 197 万人を解析した InterConnect 研究(Li et al., 2024)では、ハムやソーセージなどの加工肉を 1 日 50g 多く食べるごとに 2 型糖尿病のリスクが 15%高くなり、加工していない赤身肉でも 1 日 100g ごとに 10%高くなりました。一方で、mDASH では赤身肉の「適量」に最高点が与えられており、良質なたんぱく質源としての役割も認められています。加工肉はできるだけ控え、肉は加工していないも
のを適量に、魚や大豆製品と日替わりで組み合わせるのが現実的でおすすめの方法です。
Q4. ジュースやスポーツドリンクは、そんなに問題なのですか?
A. 砂糖入り飲料は、生活習慣病への影響が特に大きい食品の一つです。Nature Medicine誌の研究(Lara-Castor et al., 2025)では、2020 年に世界で約 220 万人の新規 2 型糖尿病と約 120 万人の新規心血管疾患が砂糖入り飲料に起因すると推計されました。液体の糖は吸収が速く血糖値を急上昇させるうえ、満腹感が得られにくいため、食事量を減らさないまま余分なエネルギーをとることになります。スポーツドリンクや加糖の缶コーヒー、野菜ジュースも糖分が多いものがあります。日常の水分補給は水やお茶を基本にし、甘い飲み物は「嗜好品」として楽しむのがよいでしょう。
Q5. 食事に気をつけているのに体重や血糖値が下がりません。どうすればよいですか?
A. 食事の「質」に加えて、「量」と「運動」を組み合わせることが大切です。PREDIMEDPlus 試験(Ruiz-Canela et al., 2025)では、地中海食だけの群に比べ、エネルギーを控えた地中海食に運動と減量支援を組み合わせた群で 2 型糖尿病の発症が 31%少なく、体重も平均 3.3kg 減少しました。また、体質、睡眠、ストレス、服用中の薬、甲状腺などのホルモンの病気が影響している場合もあります。自己流で頑張り続けるよりも、一度医療
機関で体組成や血液検査を確認し、必要に応じて運動療法や薬物療法も含めた計画を立てることをおすすめします。
参考文献
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※本コラムは医学的情報の提供を目的としたものであり、個別の診断・治療を代替するものではありません。気
になる症状がある方は医療機関にご相談ください。
記事監修者田場 隆介
医療法人社団 青山会 まんかいメディカルクリニック 理事長
医療法人社団青山会代表。兵庫県三田市生まれ、三田小学校、三田学園中学校・同高等学校卒業。 1997(平成9)年岩手医科大学医学部卒業、町医者。聖路加国際病院、淀川キリスト教病院、日本赤十字社医療センター、神戸市立医療センター中央市民病院を経て、2009(平成21)年医療法人社団青山会を継承。 2025年問題の主な舞台である地方の小都市で、少子高齢化時代の主役である子どもと高齢者のケアに取り組んでいる。
