【健診】「貧血ではない」も安心材料ではない―ヘモグロビン正常でも隠れている鉄欠乏、ASH 2026 ガイドラインが変えた診断の物差し―
はじめに ― 鉄が足りていますか
健康診断の結果票を開いて、ヘモグロビンの欄に「基準範囲内」と印字されているのを見れば、多くの方が鉄についても心配ないと受け取られると思います。ところが 2026 年に米国血液学会(American Society of Hematology:ASH)が公表した鉄欠乏の診断ガイドライン(Powers et al., Blood Adv 2026)は、その常識を書き換えました。このガイドラインが最も重視したのは、貧血の有無にかかわらず、鉄欠乏そのものを拾い上げることであり、既存の診断基準は「エビデンスに基づいていない(not evidence based)」と明確に指摘されています。
背景には、鉄欠乏が世界で最も多い微量栄養素欠乏でありながら、著しく見逃されているという現実があります。2025 年に JAMA 誌に掲載された総説(Auerbach, DeLoughery, Tirnauer,JAMA 2025)によれば、絶対的鉄欠乏は世界で約 20 億人、米国成人の約 14%に及び、高所得国の生殖年齢女性ではおよそ 38%が「貧血のない鉄欠乏」の状態にあると報告されています。
つまり、貧血という段階に到達していない鉄欠乏のほうが、数のうえでははるかに多いのです。
本コラムでは、なぜヘモグロビンだけでは鉄欠乏を判断できないのか、ASH 2026 ガイドラインがフェリチンの閾値をどこまで引き上げたのか、そして炎症があるときに検査値をどう読むのかを、欧米の最新のエビデンスに沿って解説します。疲れやすさ、集中力の低下、脚のむずむず感といった症状を「年齢のせい」「気のせい」として片づけてしまう前に、ぜひ一度お読みいただければと思います。
1. 貧血は「鉄欠乏の最終段階」 ― ヘモグロビンが下がるまでに起き
ていること
体内の鉄は、まず肝臓や脾臓、骨髄のマクロファージに貯蔵鉄として蓄えられ、必要に応じて血液中へ供給されます。鉄の収支がマイナスに傾くと、体はまずこの貯蔵鉄を取り崩して赤血球産生を維持しようとします。したがって、鉄が不足し始めても、しばらくの間ヘモグロビンは正常範囲にとどまります。貯蔵が底をつき、赤血球をつくる材料が本格的に枯渇して初めて、ヘモグロビンは低下し始めます。ASH ガイドライン(Powers et al., Blood Adv2026)が「鉄欠乏は治療されなければ貧血へ進行する」と記述しているのは、この時間差を指しています。
重要なのは、鉄が担っている仕事が赤血球づくりだけではないという点です。同ガイドラインは、鉄が DNA 複製、ミトコンドリアでのエネルギー産生、神経伝達物質の合成といった全身の基本的な機能に関わる必須微量元素であることを明記しています。貯蔵鉄が減った段階では、酸素を運ぶ能力は保たれていても、筋肉や脳がエネルギーを生み出す効率はすでに落ち始めていると考えられます。貧血になる前から不調が出るのは、この理屈からすれば当然のことです。
言い換えれば、ヘモグロビンは鉄欠乏の「早期警報」ではなく、むしろ最後に鳴る警報です。
ヘモグロビンが下がってから対応するということは、貯蔵鉄がゼロになるまで待ってから動くということにほかなりません。ASH ガイドラインが、貧血の有無にかかわらず鉄欠乏の診断を優先すべきだと述べているのは、この順序を逆転させるためです。
2. ASH 2026 ガイドラインが引き上げた診断ライン ― フェリチン 30
ng/mL という新しい物差し
ASH 2026 ガイドライン(Powers et al., Blood Adv 2026)は、GRADE 手法に基づく系統的レビューを経て、5 つの推奨を提示しました。中心となるのは血清フェリチンの閾値の引き上げです。月経も妊娠もない成人では、これまで広く用いられてきた 15 ng/mL 以下ではなく、30 ng/mL 以下を鉄欠乏の診断基準とすることが提案されました。月経のある方でも同じく30 ng/mL 以下、妊娠中の方についても 30 ng/mL 以下が提案され、15 ng/mL 以下という基準を用いることには明確に反対の推奨(強い推奨)が出されています。
さらに実臨床で重要なのは、その先の但し書きです。鉄欠乏を示唆する症状がある方、あるいは鉄欠乏のリスク因子を持ち続けている方では、50 ng/mL 以下を鉄欠乏と判断して治療方針を決めることが適切だとされました。月経量が多い方(過多月経)、異常子宮出血のある方、手術を控えている方、妊娠を計画している方も同様に 50 ng/mL という高めの閾値が想定されています。小児(生後 9 か月から 4 歳)では、従来の 12 ng/mL 以下ではなく 20 ng/mL以下が提案されました。
これらはいずれも「条件付き推奨」であり、根拠となるエビデンスの確実性は低いと率直に記されています。しかしパネルが明示したのは、鉄欠乏を見つけそこねる不利益のほうが、やや広めに診断する不利益より大きいという価値判断です。2025 年に Lancet Haematology誌に掲載された国際的な専門家コンセンサス(Benson et al., Lancet Haematol 2025)も、小児・成人・妊婦それぞれについて診断と治療の推奨を整理しており、鉄欠乏を早期に認識して介入する方向性は欧米で共通しています。
3. 「基準値内」の落とし穴 ― 検査室の正常範囲が鉄欠乏を見逃す理
由
ASH ガイドラインが繰り返し警告しているのは、検査室が印字する基準範囲そのものが鉄欠乏を覆い隠しているという構造的な問題です。ガイドラインは、施設ごとに参照範囲がばらつき、しかもその範囲の下限側に鉄欠乏に相当する値が含まれているために、過小診断と治療の遅れが生じていると述べています。フェリチンが 12 や 15 といった値でも「基準範囲内」と表示される検査票は、日本でも珍しくありません。
この問題を数量的に示したのが、米国 NHANES データを用いた研究です(Mei et al., LancetHaematol 2021)。研究チームは、赤血球産生が鉄不足の影響を受け始める生理学的な変曲点からフェリチン閾値を逆算しました。その結果、生後 12〜59 か月の小児では約 20 μg/L、15〜49 歳の非妊娠女性では約 25 μg/L という値が導かれ、WHO が用いてきた 12 μg/L・15μg/L という閾値よりはるかに高い水準であることが示されました。著者らは、従来の閾値は鉄欠乏の「より進行した段階」を捉えているにすぎないと結論づけています。
つまり「基準値内だから鉄は足りている」という読み方は、基準値そのものが低く設定されている以上、成り立ちません。2025 年の JAMA 総説(Auerbach et al., JAMA 2025)も、炎症のない方における鉄欠乏の診断はフェリチン 30 ng/mL 未満、あるいはトランスフェリン飽和度(TSAT)20%未満で行うと整理しており、ASH の推奨と一致しています。当院では、症状やリスク因子のある方について、ヘモグロビンだけでなくフェリチンと鉄・TIBC(総鉄結合能)を併せて確認することを基本としています。
4. 数字で見る見逃し ― 女性の 38.6%が鉄欠乏、しかし貧血は 6.3%
「貧血がなければ鉄欠乏もない」という前提がどれほど危ういかを、最も鮮明に示したのがJAMA 誌の報告です(Weyand et al., JAMA 2023)。米国の 12〜21 歳の女性を対象とした全国調査の解析では、フェリチン 25 μg/L 未満を基準とした鉄欠乏の有病率は 38.6%(95%信頼区間 35.8〜40.9%)に達しました。より厳しい 15 μg/L 未満という基準でも 17%です。一方で、鉄欠乏性貧血と診断される割合は 6.3%にとどまりました。
この二つの数字の差が意味するところは明白です。ヘモグロビンだけを指標にすれば、鉄欠乏のある若年女性の大多数は「異常なし」として帰されることになります。初経前の参加者に限っても鉄欠乏は 27.1%と報告されており、月経だけが原因ではないことも示唆されました。成人全体でも状況は変わらず、JAMA 総説(Auerbach et al., JAMA 2025)は高所得国の生殖年齢女性の約 38%が貧血のない鉄欠乏、約 13%が鉄欠乏性貧血であると整理しています。
ASH ガイドライン(Powers et al., Blood Adv 2026)は、高リスク集団に対するスクリーニングが行われていないこと自体を、鉄欠乏が認識されない主要な理由として挙げています。リスクが高いのは、乳幼児、月経のある方、妊娠中の方に加え、セリアック病や炎症性腸疾患などの消化管疾患をお持ちの方、減量手術を受けた方、食事制限のある方、そして心不全・リウマチ性疾患・慢性腎臓病といった慢性疾患をお持ちの方です。該当する方は、ヘモグロビンが正常であっても一度フェリチンを測る価値があります。
5. 貧血がなくても体は困っている ― 倦怠感・集中力低下・むずむず
脚
ASH ガイドライン(Powers et al., Blood Adv 2026)は、鉄欠乏のある方が経験する症状として、倦怠感、異食症(氷を食べたくなる衝動)、いらだち、集中力の低下、頭痛、そしてレストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)を挙げています。いずれも貧血の有無を問わず生じうる症状であり、ガイドラインは鉄欠乏が健康関連 QOL の低下と関連することを明記しています。
頻度は決して低くありません。JAMA 総説(Auerbach et al., JAMA 2025)によれば、貧血を伴わない鉄欠乏の方のうちレストレスレッグス症候群は 32〜40%、異食症は 40〜50%に認められると報告されています。このほか、息切れ、立ちくらみ、運動耐容能の低下、抑うつ気分も挙げられており、症状の出方は年齢や基礎疾患、鉄欠乏が進行する速さによって変わるとされています。
むずむず脚については、米国睡眠医学会(AASM)の診療ガイドラインがさらに踏み込んだ基準を示しています(Winkelman et al., J Clin Sleep Med 2025)。臨床的に問題となるレストレスレッグス症候群のある方では、フェリチンと TSAT を定期的に測定し、フェリチンが 75ng/mL 以下または TSAT が 20%未満であれば経口または静注鉄剤を検討する、フェリチンが 75〜100 ng/mL の場合は静注鉄剤を検討する、とされています。一般人口の基準よりはるかに高い水準であり、脳における鉄の需要が造血とは別の物差しで評価されるべきことを示しています。夜間に脚が落ち着かず眠れないという訴えは、鉄の指標を確認すべきサインです。
6. 炎症があるときフェリチンは当てにならない ― TSAT を併せて読
む
フェリチンには大きな弱点があります。急性期蛋白として、感染症、悪性腫瘍、自己免疫疾患、慢性腎臓病、心不全などの炎症状態では、体内の鉄が不足していても値が上昇してしまうのです。ASH ガイドラインの推奨 5 は、この問題に正面から取り組みました。炎症性貧血のある成人では、フェリチン単独ではなく、フェリチンとトランスフェリン飽和度(TSAT)の両方を測定して鉄欠乏を評価することが提案されています。
具体的な目安として、炎症性貧血のある成人では TSAT が 20%未満、またはフェリチンが 100ng/mL 未満であれば鉄欠乏を考慮しうる、と記されています。注意点として、TSAT は直前の食事やサプリメントの影響を受けやすいため、鉄剤やマルチビタミンを含めて 5〜9 時間の絶食下で採血することが望ましいとされています。また、炎症は連続的なもので明確な線引きが難しいことも率直に述べられており、病歴・身体所見・基礎疾患を含めた全体像のなかで数値を解釈するという良質実践声明(good practice statement)が添えられています。
この考え方は循環器領域でも共有されています。欧州心臓病学会の 2023 年心不全ガイドライン改訂(McDonagh et al., Eur Heart J 2023)は、フェリチン 100 ng/mL 未満、または 100〜299 ng/mL かつ TSAT20%未満を心不全患者の鉄欠乏と定義しています。さらに Circulation誌の論考(Packer et al., Circulation 2024)は、心不全では炎症や薬剤の影響でフェリチンが信頼できなくなるため、TSAT20%未満という「低鉄血症」こそが最も試験で検証された定義であると主張しています。数字の読み方が、そのまま治療対象の見極めに直結する領域です。
7. 鉄を補うだけでは終わらない ― 「なぜ足りないのか」を突き止め
る
鉄欠乏が見つかったとき、鉄剤を飲んで数値が戻れば解決、とはなりません。ASH ガイドライン(Powers et al., Blood Adv 2026)は、管理には経口または静注の鉄補充に加えて、背景にある原因への対応、すなわち食事の調整や出血のコントロールが含まれると明記しています。鉄欠乏は、体からの持続的な鉄の喪失や吸収障害という「原因のある結果」であることが多いためです。
月経のある方については、同ガイドラインが良質実践声明として、詳細な月経歴の聴取が異常子宮出血、とくに過多月経の診断に不可欠であり、それが確認された場合には必ず対処すべきだと述べています。一方で、消化管からの出血は自覚されないまま進行することがあり、胃・十二指腸潰瘍、大腸ポリープ、そして大腸がんが背景にある可能性を常に念頭に置く必要があります。セリアック病や炎症性腸疾患、減量手術後、萎縮性胃炎やピロリ菌感染による吸収低下も、鉄欠乏の原因として挙げられています。
妊娠期については、米国予防医学専門委員会(USPSTF)が 2024 年、無症状の妊婦に対する鉄欠乏・鉄欠乏性貧血のスクリーニングおよびルーチンの鉄補充について、利益と害を判断するには現在のエビデンスが不十分であるとするI声明を公表しました(USPSTF, JAMA 2024)。
これは「検査しなくてよい」という意味ではなく、研究の空白を指摘したものです。ASH ガイドラインは妊婦でフェリチン 30 ng/mL 以下を鉄欠乏とし、貧血を伴う場合には 50 ng/mL以下という閾値も適切としており、個々の状況に応じた判断が求められます。
8. いつ、誰が、何を測るか
以上を踏まえると、鉄の評価で確認すべき項目は整理できます。まずヘモグロビンとMCV(赤血球の大きさ)、そして血清フェリチンです。炎症が疑われる場合、あるいは慢性疾患をお持ちの場合には、血清鉄と TIBC から TSAT を算出し、CRP などの炎症マーカーと併せて解釈します。ASH ガイドライン(Powers et al., Blood Adv 2026)の枠組みに沿えば、炎症のない成人ではフェリチン 30 ng/mL 以下、症状やリスク因子があれば 50 ng/mL 以下、炎症性貧血がある場合は TSAT20%未満またはフェリチン 100 ng/mL 未満が、鉄欠乏を考える目安となります。
治療としては、多くの方で経口鉄剤が第一選択となりますが、消化器症状で継続が難しい方、吸収障害のある方、出血が続いている方、あるいは早期の補充が必要な方では静注鉄剤が選択肢となります。心不全領域では、欧州の FAIR-HF2 試験(Anker et al., JAMA 2025)が 1105名を対象に静注フェリックカルボキシマルトースを検討し、心血管死や心不全入院といった主要評価項目では有意差に至らなかったものの、生活の質の改善が示され、安全性は対照群と同等でした。鉄補充の目的を症状や QOL に置くのか、予後に置くのかを区別して考える必要があります。
当院では、疲れやすさや息切れ、動悸といった訴えに対して血液検査による鉄の評価を行っております。また、鉄欠乏が改善しても運動耐容能が戻りにくい方には、運動療法の枠組みのなかで段階的な負荷設定を行っています。日曜・祝日も診療しておりますので、平日に受診が難しい方もご相談ください。
おわりに ― 数字の見方が変われば、見つかる人が変わる
ASH 2026 ガイドライン(Powers et al., Blood Adv 2026)が示したのは、新しい薬でも新しい検査でもなく、すでに手元にある検査値の読み方を変えるという提案でした。フェリチンの閾値を 30 ng/mL へ、症状やリスクがあれば 50 ng/mL へ引き上げ、炎症があるときにはTSAT を併せて読む。それだけで、これまで「異常なし」として見送られてきた多くの方が、治療可能な鉄欠乏として拾い上げられることになります。
米国の若年女性の 38.6%が鉄欠乏である一方、貧血に至っているのは 6.3%という報告(Weyand et al., JAMA 2023)は、ヘモグロビンという単一の数字がいかに多くを取りこぼしてきたかを物語っています。疲れやすい、集中できない、脚がむずむずして眠れない――こうした訴えに医学的な説明がつく可能性は、決して低くありません。
健康診断で「貧血なし」と言われた方も、月経量が多い方、妊娠を計画されている方、慢性疾患をお持ちの方、原因のはっきりしない倦怠感が続く方は、一度フェリチンを含めた鉄の評価をお受けになることをお勧めします。
FAQ ― よくあるご質問
Q1. 健診でヘモグロビンが正常なら、鉄不足の心配はないのでしょうか。
残念ながら、そうとは言えません。ヘモグロビンが下がるのは貯蔵鉄が枯渇した後の段階であり、鉄欠乏の最終局面を示す指標です。米国の 12〜21 歳女性を対象とした全国調査では、鉄欠乏が 38.6%に認められた一方、鉄欠乏性貧血は 6.3%にとどまりました(Weyand et al., JAMA 2023)。ASH 2026 ガイドライン(Powers et al., Blood Adv 2026)も、貧血の有無にかかわらず鉄欠乏を診断することを優先すべきだとしています。倦怠
感や集中力低下が続く場合には、ヘモグロビンではなくフェリチンを確認することが必要です。
Q2. フェリチンが「基準値内」と書かれていました。それでも鉄欠乏のことがありますか。
あり得ます。ASH ガイドライン(Powers et al., Blood Adv 2026)は、検査室ごとの参照範囲にばらつきがあり、しかもその範囲の下限側に鉄欠乏相当の値が含まれていることが過小診断の一因だと指摘しています。米国 NHANES の解析では、赤血球産生が鉄不足の影響を受け始める生理学的な変曲点から算出した閾値は、小児で約 20 μg/L、非妊娠女性で約 25 μg/L であり、WHO の 12・15 μg/L より明らかに高い値でした(Mei et al.,
Lancet Haematol 2021)。表示上の「基準値内」は、鉄が充足している保証にはなりません。
Q3. 炎症や持病があると、フェリチンは当てにならないと聞きました。どう判断するのですか。
フェリチンは急性期蛋白であり、感染症、悪性腫瘍、自己免疫疾患、慢性腎臓病、心不全などでは鉄が不足していても高値になります。そのため ASH ガイドライン(Powers etal., Blood Adv 2026)は、炎症性貧血のある成人ではフェリチンとトランスフェリン飽和度(TSAT)の両方を測定することを提案し、TSAT20%未満またはフェリチン 100 ng/mL 未満であれば鉄欠乏を考慮しうるとしています。TSAT は食事やサプリメントの影響を受ける
ため、5〜9 時間の絶食下での採血が望ましいとされています。心不全領域でも、TSAT20%未満を重視する立場が示されています(Packer et al., Circulation 2024)。
Q4. 脚がむずむずして眠れません。鉄と関係がありますか。
関係している可能性があります。貧血を伴わない鉄欠乏の方の 32〜40%にレストレスレッグス症候群が認められると報告されています(Auerbach et al., JAMA 2025)。米国睡眠医学会のガイドライン(Winkelman et al., J Clin Sleep Med 2025)は、臨床的に問題となるレストレスレッグス症候群の方ではフェリチンと TSAT を定期的に測定し、フェリチン75 ng/mL 以下または TSAT20%未満であれば鉄補充を検討するとしています。一般人口の基準より高い水準が設定されている点が重要で、「貧血がないから関係ない」と考えるべきではありません。
Q5. 鉄剤を飲んで数値が戻れば、それで解決でしょうか。
数値の改善は必要条件ですが十分条件ではありません。ASH ガイドライン(Powers et al.,Blood Adv 2026)は、鉄補充に加えて背景にある原因への対応が管理に含まれると明記し、過多月経が確認された場合には必ず対処すべきだとしています。消化管出血は自覚されないまま進むことがあり、潰瘍やポリープ、大腸がんが背景にある場合もあります。吸収障害としてはセリアック病、炎症性腸疾患、減量手術後などが挙げられます。国際的
な専門家コンセンサス(Benson et al., Lancet Haematol 2025)も、年齢や妊娠の有無に応じた診断・治療の道筋を整理しています。原因検索を省略しないことが、再発を防ぐ最短の道です。
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※本コラムは医学的情報の提供を目的としたものであり、個別の診断・治療を代替するものではありません。気
になる症状がある方は医療機関にご相談ください。
記事監修者田場 隆介
医療法人社団 青山会 まんかいメディカルクリニック 理事長
医療法人社団青山会代表。兵庫県三田市生まれ、三田小学校、三田学園中学校・同高等学校卒業。 1997(平成9)年岩手医科大学医学部卒業、町医者。聖路加国際病院、淀川キリスト教病院、日本赤十字社医療センター、神戸市立医療センター中央市民病院を経て、2009(平成21)年医療法人社団青山会を継承。 2025年問題の主な舞台である地方の小都市で、少子高齢化時代の主役である子どもと高齢者のケアに取り組んでいる。
