【関節リウマチ】「手がこわばる」で受診される場合―「どの指が腫れているか」―
はじめに ― 「これ、リウマチでしょうか」という質問
朝、手を握ろうとすると指が思うように曲がらない。ペットボトルの蓋が開けにくい。パソコンを打っていると手首が痛む――。こうした手の症状をきっかけに、「関節リウマチではないでしょうか」と当院を受診される方は、決して少なくありません。インターネットで「手 こわばる」「指 腫れ」と検索すると、まず目に飛び込んでくるのが関節リウマチの文字ですから、不安になるのは自然なことだと思います。
関節リウマチは、確かに見逃してはならない病気です。2026 年 9 月に JAMA 誌に掲載されたSmolen らの総説(ウィーン医科大学・スタンフォード大学)は、関節リウマチが世界の成人の 0.53%、米国成人の 0.74%に生じ、軟骨と骨を不可逆的に破壊しうる慢性の自己免疫疾患であることを、あらためて明確に述べています。米国での発症率は年間 10 万人あたり18.3 人、世界全体では 11.8 人と報告されています。放置すれば関節の変形は元に戻りません。
しかし同時に、知っておいていただきたいことがあります。手の症状を訴えて医療機関を受診される方のうち、実際に関節リウマチと診断される方は、ごく一部にとどまるという事実です。英国デヴォン州(人口 46 万 3 千人)のプライマリケアを対象とした Allen らの研究(Rheumatology Advances in Practice 誌、2026 年)では、関節の症状で自己抗体検査を受けた方のうち、最終的に関節リウマチと診断されたのは 2.1%でした。裏を返せば、残りの大多数の方には、別の説明がつくということです。
本コラムでは、JAMA 誌 2026 年の最新総説を軸に、ヨーロッパとアメリカの権威ある論文を加えながら、「手の症状はどこまでがリウマチらしく、どこからが別の病気なのか」を、診察室でお伝えしている順序どおりに整理してご説明します。ご自身の症状と照らし合わせながら読み進めていただければ幸いです。
1. リウマチらしい手
関節リウマチの診察で、私たちが最初に見るのは「どの関節が腫れているか」です。これは単なる観察ではなく、診断の最も重要な手がかりになります。JAMA 誌 2026 年の総説によれば、関節リウマチで最も頻繁に侵されるのは手関節(手首)で約 75%、次いで指のつけ根の関節である中手指節関節(MCP 関節)が約 65%、膝が約 50%、足の指のつけ根の中足趾節関節(MTP 関節)が約 45%です。指では、つけ根の MCP 関節と、第二関節にあたる近位指節間関節(PIP 関節)が主戦場になります。
そして決定的に重要なのが、爪に最も近い第一関節――遠位指節間関節(DIP 関節)は、関節リウマチでは侵されないという点です。同総説は、変形性関節症や乾癬性関節炎とは異なり、関節リウマチでは DIP 関節が侵されないと明記しています。つまり「第一関節が腫れて痛い」という訴えは、それだけで関節リウマチから一歩遠ざかる所見なのです。
腫れ方にも違いがあります。関節リウマチの腫れは滑膜(関節を包む膜)の炎症によるもので、触れるとやわらかく、水がたまったような波動性を感じます。一方、変形性関節症の腫れは骨の変化によるもので、硬くごつごつしています。この「やわらかいか、硬いか」の違いは、実際に手を触らせていただければ、多くの場合その場で見当がつきます。
さらに関節リウマチでは、関節そのものだけでなく腱を包む鞘の炎症、すなわち腱鞘炎がしばしば併存します。同総説によれば、特に手首の小指側を走る尺側手根伸筋の腱鞘炎が、約20%の患者さんで臨床的に明らかになります。左右対称に、手首と MCP 関節・PIP 関節が、やわらかく腫れている――これが「リウマチらしい手」の典型像です。
2. 朝のこわばりは「30 分」がひとつの目安
「朝、手がこわばります」という訴えは、非常によく聞かれます。しかし、こわばりそのものは関節リウマチに特有のものではありません。変形性関節症でも、腱鞘炎でも、更年期でも、朝のこわばりは生じます。区別の手がかりになるのは、その持続時間です。
JAMA 誌 2026 年の総説は、関節リウマチでは 30 分を超える朝のこわばりが約 75%の患者さんに認められ、ときに数時間続くこともあると述べています。炎症性の関節炎では、夜間に関節周囲に炎症性の浮腫がたまり、動かし始めてもなかなか解消しないため、こわばりが長引くのです。一方、変形性関節症による朝のこわばりは、動かしているうちに数分から長くても 15 分程度で軽快することが一般的です。
もうひとつ、動かすと楽になるか、動かすと悪化するかという視点も有用です。炎症性の関節炎は「安静で悪化し、動かすと楽になる」傾向があり、変形性関節症や腱の障害は「使うと悪化し、休むと楽になる」傾向があります。朝いちばんが最もつらく、日中活動しているうちにむしろ調子がよくなるという経過は、炎症性の病態を示唆します。
診察室では、「起きてから、手が普通に使えるようになるまでどのくらいかかりますか」とお尋ねしています。「顔を洗っているうちに治ります」と「昼近くまで握れません」とでは、次に進む検査の組み立てが大きく変わってくるからです。ご自身でも、起床から手が動くようになるまでの時間を、数日分メモしてから受診していただけると、診断の精度が上がります。
3. ヘバーデン結節はリウマチではない ― ただし「炎症がない」わけ
でもない
手の痛みで受診される方の中で、最も多い原因のひとつが手の変形性関節症です。爪に近い第一関節(DIP 関節)が腫れて節くれ立つものをヘバーデン結節、第二関節(PIP 関節)に生じるものをブシャール結節と呼びます。親指のつけ根の母指手根中手関節(母指 CM 関節)の変形性関節症も頻度が高く、瓶の蓋を開ける、鍵を回すといった動作で強い痛みが出ます。
これらはいずれも関節リウマチとは別の病気で、進行の仕方も治療も異なります。ここで誤解が生じやすいのが、「変形性関節症=すり減りだけの病気で、炎症はない」という思い込みです。実際にはそうではありません。2023 年に Lancet 誌に発表された Wang らのMETHODS 試験は、この点を明快に示しました。MRI で滑膜炎を確認できた手の変形性関節症の患者 97 名を、メトトレキサート群 50 名とプラセボ群 47 名に無作為に割りつけたところ、6 か月後の痛み(VAS)の変化は、メトトレキサート群で−15.2mm、プラセボ群で−7.7mm と、
群間差−9.9mm(95%信頼区間 −19.3〜−0.6、p=0.037)でメトトレキサート群が有意に良好でした。
つまり、手の変形性関節症の一部には確かに滑膜の炎症が存在し、抗リウマチ薬が効く余地すらあるということです。2025 年に Nature Reviews Rheumatology 誌に掲載されたBerenbaum と Maheu の総説も、この 20 年で手の変形性関節症の理解が大きく変わり、炎症が関与する表現型やメタボリックシンドロームと関連する表現型など、多様なサブタイプが認識されるようになったと総括しています。
したがって、「炎症の所見があるからリウマチだ」と短絡することはできません。逆に、「変形性関節症だから炎症はないはず」と決めつけることもできません。大切なのは、どの関節に、どのような性状の腫れがあり、画像と血液検査がそれをどう裏づけるか――という総合判断です。
4. しびれを伴うなら、神経の問題かもしれない ― 手根管症候群
「手がこわばる」という表現の中には、しばしば「手がしびれる」「感覚が鈍い」という訴えが混ざっています。しびれが主役であれば、関節ではなく神経を疑わなければなりません。
その代表が手根管症候群です。2024 年に Nature Reviews Disease Primers 誌に掲載されたDahlin らの総説(スウェーデン・ルンド大学ほか)は、手根管症候群を世界で最も多い絞扼性神経障害と位置づけています。
手根管症候群では、手首の内側にある手根管というトンネルの中で正中神経が圧迫されます。
症状は正中神経の支配領域、すなわち親指・人差し指・中指と薬指の親指側に生じ、小指はしびれないのが特徴です。夜間や明け方に強くなり、手を振ったり垂らしたりすると楽になるという訴えは、極めて特徴的です。進行すると親指のつけ根の膨らみ(母指球)が痩せ、細かい作業がしづらくなります。
同総説は、手根管症候群の診断において、問診と診察が世界的にみて最も重要であり、神経伝導検査や超音波検査はあくまでそれを裏づける補助的な位置づけであると強調しています。
また、糖尿病、肥満、甲状腺機能の異常、妊娠、そして手首を繰り返し使う作業などが危険因子として挙げられています。糖尿病や甲状腺疾患を背景に持つ方は少なくないため、手のしびれをきっかけに全身の代謝の問題が見つかることもあります。
当院では、内科・内分泌の視点から糖尿病や甲状腺機能を評価しつつ、超音波装置を用いて手首の正中神経や腱鞘の状態を、その場で確認することができます。しびれが主体なのか、関節の腫れが主体なのかを分けることが、遠回りをしないための第一歩です。
5. 更年期の手のこわばり ― エストロゲンが減るときに起きること
40 代後半から 50 代の女性が、朝の手のこわばりや指の痛みを訴えて受診されることは、日常的によくあります。この年代は関節リウマチの好発年齢とも重なるため、鑑別は容易ではありません。JAMA 誌 2026 年の総説によれば、関節リウマチは女性に多く(男女比は 2 対 1から 3 対 1)、発症のピークは 55 歳から 75 歳です。一方で、この年代の手の症状には、更年期そのものが関与している場合があります。
2024 年に Climacteric 誌に発表された Wright らの総説は、この一群の症状を「更年期の筋骨格症候群(musculoskeletal syndrome of menopause)」という枠組みで捉えることを提唱しました。同総説によれば、世界で年間 4,700 万人以上の女性が更年期移行期に入り、その 70%以上が筋骨格系の症状を経験し、約 25%は日常生活に支障をきたすほどの障害を抱えるとされています。エストロゲンの低下は、関節痛、筋肉量の減少、骨密度の低下、変形性関節症の進行といった形で現れます。
臨床的に紛らわしいのは、更年期の手の症状にも朝のこわばりがあり、ばね指や手根管症候群の頻度もこの時期に増えるという点です。ただし、更年期に伴う手のこわばりは、多くの場合こわばりの持続が短く、関節の明らかな腫れを伴わず、血液検査で炎症反応や自己抗体が陰性です。
重要なのは、「更年期だから仕方がない」と切り捨てないことと、「更年期のせいに違いない」と決めつけないことの両方です。実際に、更年期の症状だと思って様子を見ているうちに関節リウマチの診断が遅れる例は、決して珍しくありません。この年代の手の症状は、一度きちんと評価しておく価値があります。
6. リウマチと見分けにくい、ほかの関節の病気 ― 偽痛風・乾癬性関
節炎
関節リウマチによく似た手の症状を示しながら、まったく別の病気であるものがあります。
その代表が、いわゆる偽痛風、すなわちピロリン酸カルシウム結晶沈着症(CPPD)です。2023 年に Arthritis & Rheumatology 誌に発表された Abhishek らによる米国リウマチ学会(ACR)と欧州リウマチ学会(EULAR)の合同分類基準は、この病気を系統的に分類する初めての枠組みを示しました。
偽痛風は膝に起きるという印象をお持ちの方が多いのですが、実際には手関節や MCP 関節にも好発し、複数の関節が同時に腫れる経過をとると、関節リウマチと極めて紛らわしくなります。この合同分類基準は、関節液中のピロリン酸カルシウム結晶の証明、あるいは頸椎の歯突起周囲に石灰化を生じるクラウンド・デンス症候群を決定的所見とし、それ以外は臨床像・代謝性疾患・画像所見を重みづけした点数方式で判定します。基準の性能は、導出コホート(CPPD 190 例、類似疾患 148 例)で感度 92.2%・特異度 87.9%、検証コホート(CPPD
251 例、類似疾患 162 例)で感度 99.2%・特異度 92.5%と報告されています。鍵を握るのはレントゲンや超音波で捉えられる関節軟骨の石灰化であり、当院の超音波検査が力を発揮する領域です。
もうひとつ注意すべきは乾癬性関節炎です。JAMA 誌 2026 年の総説が指摘するとおり、乾癬性関節炎は変形性関節症と同様に DIP 関節を侵します。指全体がソーセージのように腫れる指趾炎や、爪の点状のくぼみ・剥離といった所見があれば、皮膚に目立った発疹がなくても乾癬性関節炎を疑う必要があります。
このほか、痛風、リウマチ性多発筋痛症、シェーグレン症候群や全身性エリテマトーデスに伴う関節炎など、手の症状で始まる病気は多岐にわたります。「リウマチではありませんでした」で診察を終わらせず、では何なのかを突き止めることが、本当の意味での診断です。
7. 血液検査の読み方 ― リウマトイド因子と抗 CCP 抗体はまったく別
物
健診で「リウマトイド因子(RF)が陽性でした」と指摘され、不安を抱えて受診される方が数多くいらっしゃいます。ここで最も大切なことを申し上げます。リウマトイド因子が陽性であっても、関節リウマチであるとは限りません。リウマトイド因子は、加齢、慢性肝疾患、慢性感染症、他の膠原病などでも陽性になり、健康な方でも一定の割合で陽性を示します。
この問題に正面から取り組んだのが、2026 年に Rheumatology Advances in Practice 誌に発表された Allen らの研究です。英国デヴォン州のプライマリケアで、従来のリウマトイド因子検査を抗 CCP 抗体(抗シトルリン化ペプチド抗体)検査に置き換え、紹介経路を再設計したところ、陽性率は 10.6%から 3.9%へ低下し、陽性を受けての専門医紹介は 39%減少(6か月で 57 件減)、紹介された患者さんのうち実際には関節リウマチでなかった割合(偽陽性)は 59%から 32%へ低下しました。それでいて関節リウマチの検出率は、どちらの検査
でも 2.1%と同等でした。見逃しを増やさずに、不要な不安と待ち時間だけを減らせたということです。
一方で、抗体が陰性であっても関節リウマチは否定できません。JAMA 誌 2026 年の総説によれば、診断時点で自己抗体(リウマトイド因子あるいは抗 CCP 抗体)が陽性となるのは約 40〜60%で、罹病期間が 3 年以上になると約 80%に上昇します。つまり早期であるほど、抗体は陰性でありうるのです。さらに同総説は、関節リウマチには正式な診断基準が存在せず、ACR/EULAR の 2010 年基準はあくまで研究のための分類基準であり、診断は病歴と特徴的な関節の腫れ、自己抗体、CRP などの炎症反応を統合して下されるものだと明記しています。
レントゲンについても同様の注意が必要です。同総説は、早期に診断された場合、レントゲンは通常正常であると述べています。骨のびらん(欠損)が写るということは、すでに破壊が始まっているということであり、「レントゲンで異常がないから安心」とは言えません。
当院では、必要に応じて超音波で滑膜の炎症や腱鞘炎、血流(パワードプラ)を評価し、レントゲンでは見えない段階の炎症を捉えるようにしています。
8. 早期に見つける意味 ― 「関節が壊れる前」に手を打てる時代
ここまで「多くはリウマチではない」というお話をしてきましたが、だからこそ、本当に関節リウマチである方を早く見つけることが重要になります。JAMA 誌 2026 年の総説は、症状出現から 6 週間以内という早期の診断が理想であり、それにより抗リウマチ薬(DMARD)を速やかに開始でき、炎症を抑えて関節破壊のリスクを下げられると述べています。治療目標は、3 か月時点で疾患活動性が少なくとも 50%改善し、6 か月時点で寛解または低疾患活動性に達することです。
第一選択薬はメトトレキサートです。2026 年に Annals of the Rheumatic Diseases 誌に掲載された EULAR(欧州リウマチ学会)の 2025 年改訂版推奨は、週 7.5〜10mg で開始し 4〜8週かけて週 20〜25mg まで増量すること、短期間の少量ステロイドの併用を検討し 3 か月以内に減量中止することを推奨しています。同総説によれば、新規に診断された患者さんの約40%が 6 か月以内に寛解に達し、効果不十分な場合に生物学的製剤や JAK 阻害薬を追加すると、寛解または低疾患活動性に達する割合は全体で約 80%に達します。
さらに近年、「関節が腫れる前」の段階に介入する研究が進んでいます。2024 年に Lancet誌に発表された APIPPRA 試験(Cope らによる英国・オランダの第 2b 相無作為化比較試験)では、自己抗体陽性で関節痛のある高リスクの方にアバタセプトを 12 か月投与したところ、12 か月時点で関節炎に進展した割合はアバタセプト群 7.2%に対しプラセボ群 30.8%、投与終了後の 24 か月時点でも 25%対 37%と、効果は投与終了後も持続していました。
この「発症前の段階」を臨床で見極めるための道具も整いました。2025 年に Annals of theRheumatic Diseases誌に発表されたEULARとACRの合同による関節痛リスク層別化基準(vanSteenbergen らほか)は、関節痛の段階にある方の中から関節リウマチへ進展するリスクの高い方を選び出す枠組みを提示しています。「手が痛いけれど腫れていない」という段階は、もはや様子を見るしかない段階ではなくなりつつあるのです。
おわりに ― 心配しすぎず、しかし放置もしない
手の症状で「リウマチかもしれない」と感じて受診される方の多くは、結果的に関節リウマチではありません。ヘバーデン結節や母指 CM 関節症といった手の変形性関節症、腱鞘炎、手根管症候群、更年期に伴う筋骨格症状――これらのほうがはるかに高い頻度で見つかります。ですから、まずは過度に心配なさらないでください。
同時に、放置してよいということでもありません。関節リウマチは症状出現から 6 週間以内の診断が理想とされ(JAMA 誌 2026 年)、関節が壊れる前に治療を始められるかどうかで、その後の人生の関節機能が変わります。手の症状は、どの関節が、どのように腫れ、どれだけこわばるかという情報の宝庫であり、正しく読み解けば多くのことがわかります。
受診の目安として、次のいずれかに当てはまる方は、一度ご相談ください。朝のこわばりが30 分以上続く。手首や指のつけ根が左右対称に、やわらかく腫れている。症状が 6 週間以上続いている。手のしびれが夜間に強く、手を振ると楽になる。健診でリウマトイド因子が陽性と指摘された。指全体がソーセージのように腫れている。
まんかいメディカルクリニックでは、必要に応じて CT や血液検査(リウマトイド因子・抗CCP 抗体・CRP など)を組み合わせて評価しています。専門的な治療が必要と判断した場合には、速やかに専門医療機関へおつなぎします。日曜・祝日も診療しておりますので、平日に時間の取りにくい方もご相談いただけます。「この手の痛みは何なのか」を、一緒に整理していきましょう。
FAQ ― よくあるご質問
Q1. 朝、手がこわばります。何分以上続いたらリウマチを疑うべきですか?
ひとつの目安は 30 分です。JAMA 誌 2026 年の Smolen らの総説によれば、関節リウマチでは 30 分を超える朝のこわばりが約 75%の患者さんに認められ、ときに数時間続きます。
一方、変形性関節症によるこわばりは動かしているうちに数分から 15 分程度で軽快することが一般的です。また、炎症性の関節炎は「安静で悪化し動かすと楽になる」、変形性関節症や腱の障害は「使うと悪化し休むと楽になる」という違いもあります。起床から手が普通に使えるようになるまでの時間を数日分メモしてご持参いただくと、診断の精度が上がります。
Q2. 健診でリウマトイド因子が陽性でした。関節リウマチでしょうか?
陽性イコール関節リウマチではありません。リウマトイド因子は加齢、慢性肝疾患、慢性感染症などでも陽性になります。2026 年に Rheumatology Advances in Practice 誌に発表された英国デヴォン州の Allen らの研究では、プライマリケアでのリウマトイド因子陽性率が 10.6%であったのに対し、抗 CCP 抗体に切り替えると陽性率は 3.9%に下がり、専門医に紹介された方のうち実際には関節リウマチでなかった割合も 59%から 32%へ低
下しました。それでいて関節リウマチの検出率は 2.1%で同等でした。関節の腫れがないのに抗体だけ陽性という場合は、まず診察で腫れの有無を確認することが先決です。
Q3. 指の第一関節(爪に近い関節)が腫れています。リウマチですか?
関節リウマチの可能性は低いと考えられます。JAMA 誌 2026 年の総説は、変形性関節症や乾癬性関節炎とは異なり、関節リウマチでは遠位指節間関節(DIP 関節)は侵されないと明記しています。第一関節の腫れで最も多いのはヘバーデン結節、すなわち手の変形性関節症です。ただし、指全体がソーセージのように腫れていたり、爪に点状のくぼみや剥離があったりする場合は、乾癬性関節炎の可能性を考える必要があります。皮膚に目
立った発疹がなくても起こりうるため、爪と指全体の形を含めて診察することが大切です。
Q4. レントゲンで異常なしと言われました。リウマチは否定できますか?
否定はできません。JAMA 誌 2026 年の総説は、早期に診断された場合レントゲンは通常正常であると述べています。骨のびらん(欠損)が写るということは、すでに破壊が進行し始めているということであり、早期診断の目的はまさにその手前で捉えることにあります。同総説は、超音波や MRI がレントゲンでは見えない滑膜炎や腱鞘炎を検出しうると述べており、当院でも必要に応じて超音波で滑膜の腫れや血流(パワードプラ)、腱鞘
炎を評価しています。レントゲン正常は「まだ間に合う」というサインと捉えるのが適切です。
Q5. 更年期の手のこわばりと関節リウマチは、どう見分けますか?
確実に見分けるには診察と検査が必要ですが、手がかりはあります。2024 年にClimacteric 誌に発表された Wright らの総説は、更年期の女性の 70%以上が筋骨格系の症状を経験し、約 25%は日常生活に支障をきたす障害を抱えると報告しています。更年期に伴う手のこわばりは、持続が比較的短く、関節の明らかな腫れを伴わず、炎症反応や自己抗体が陰性であることが多いという特徴があります。一方、関節リウマチは女性に多く発症のピークは 55〜75 歳で、年代が重なるため紛らわしくなります。左右対称に手首や指のつけ根がやわらかく腫れている場合は、更年期だけでは説明できません。自己判断で様子を見ず、一度評価を受けてください。
参考文献
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※本コラムは医学的情報の提供を目的としたものであり、個別の診断・治療を代替するものではありません。気
になる症状がある方は医療機関にご相談ください。
記事監修者田場 隆介
医療法人社団 青山会 まんかいメディカルクリニック 理事長
医療法人社団青山会代表。兵庫県三田市生まれ、三田小学校、三田学園中学校・同高等学校卒業。 1997(平成9)年岩手医科大学医学部卒業、町医者。聖路加国際病院、淀川キリスト教病院、日本赤十字社医療センター、神戸市立医療センター中央市民病院を経て、2009(平成21)年医療法人社団青山会を継承。 2025年問題の主な舞台である地方の小都市で、少子高齢化時代の主役である子どもと高齢者のケアに取り組んでいる。
