病気と健康の話

【健診】「BMI を測って終わり」の診療は、もう過去のもの―ウエスト・体脂肪・臓器機能で診るメタボ―

はじめに ― 「体重を落としましょう」で終わっていませんか

健康診断の結果票を受け取り、「BMI が少し高いですね、体重を落としましょう」と言われて、それきりになった経験はありませんか。逆に「BMI は正常範囲ですから大丈夫です」と言われ、なんとなく安心してしまった方もいらっしゃるでしょう。身長と体重を測り、BMI(体格指数)を計算し、数字が基準を超えていれば「減量指導」を行って診察は終わる。
しかしこの十数年で積み上がった研究は、この手順が多くのものを取りこぼしていることを明らかにしてきました。
そして 2025 年から 2026 年にかけて「公式の基準」として結実します。2025 年 1 月にはランセット委員会が肥満の定義そのものを書き換え(Rubino et al., Lancet DiabetesEndocrinol 2025)、ヨーロッパ肥満学会(EASO)は BMI を補うウエスト身長比を診断の柱に据
えました(Busetto et al., Nat Med 2024)。アメリカでも 2025 年に米国退役軍人省・国防総省(VA/DoD)が診療ガイドラインを全面改訂し、「BMI 単独から、体脂肪分布と臨床的文脈へ」という明確な方針転換を打ち出しています(Corrado et al., Ann Intern Med 2026)。
本コラムでは、なぜ BMI だけでは足りないのか、代わりに何を測るべきなのか、そして「測ったあと」に何をするのかを、2024 年以降の欧米の権威ある研究にもとづいて整理します。
読み終えるころには、ご自身の健診結果票の見え方が少し変わっているはずです。

1.BMI という物差しの正体 ― 個人を測るためには作られていない

BMI は体重(kg)を身長(m)の二乗で割った値です。この計算式は 19 世紀のベルギーの統計学者アドルフ・ケトレーが考案したもので、目的は「集団の平均的な体格を記述すること」でした。個々の人間の健康状態を判定するために設計された指標ではありません。1970 年代に「body mass index」と命名され、簡便さと安さ、そして集団レベルでの疾病・死亡との相関の良さから、世界中の診療現場に定着していきました。
問題は、BMI が「重さ」しか見ていないことにあります。添付論文である 2025 年 VA/DoD ガイドラインの解説論文は、この限界を率直に述べています。すなわち BMI は、脂肪と除脂肪(筋肉・骨)を区別できず、脂肪がどこに付いているかを表現できず、代謝的なリスクの個人差もとらえられない。その結果、BMI は真の体脂肪量を過大評価することも過小評価することもあり、「疾患の重症度を確定する指標ではなく、あくまで最初のスクリーニング指標として扱うべきである」と結論づけられています(Corrado et al., Ann Intern Med 2026)。
同じ結論に、より強い言葉で到達したのがランセット委員会です。56 名の国際的専門家と76 の学術団体が参加したこの報告書は、「BMI は集団レベルの健康リスクの代理指標としてのみ用いるべきであり、個人の健康リスク評価に用いるべきではない」と明記しました(Rubino et al., Lancet Diabetes Endocrinol 2025)。150 年以上使われてきた物差しが、公式に「個人には使えない」と宣言されたのです。

2.BMI が見逃す人たち

「BMI が不正確」という指摘は以前からありましたが、それが実際にどれほどの見落としを生むのかを鮮やかに示したのが、2025 年に Annals of Family Medicine 誌に発表された米国の研究です。研究チームは米国国民健康栄養調査(NHANES)に参加した 20〜49 歳の成人 4,252名を約 15 年間追跡し、BMI、ウエスト周囲径、そして生体電気インピーダンス法(体成分分析)による体脂肪率のどれが死亡を最もよく予測するかを比較しました(Mainous et al.,Ann Fam Med 2025)。結果は明快でした。体脂肪率が高い群(男性 27%以上、女性 44%以上)は、全死亡が 1.78 倍、心血管死が 3.62 倍に増加していました。ウエスト周囲径が大きい群でも全死亡 1.59 倍、心
血管死 4.01 倍と明確なリスク上昇が認められました。ところが BMI 25 以上という「肥満・過体重」の分類は、全死亡との関連が統計学的に有意ではなかったのです(ハザード比 1.25、95%信頼区間 0.85〜1.84)。つまり同じ集団を、BMI で切ると危険が見えず、体脂肪率やウエストで切ると危険がはっきり見えたということになります。
ここで見落とされるのは、いわゆる「かくれ肥満(正常体重肥満)」の方々です。体重は標準でも筋肉が少なく脂肪の割合が高い、あるいは内臓に脂肪が集中している。BMI だけを見る診療では、この方たちは「異常なし」として毎年素通りしていきます。ヨーロッパ肥満学会が 2024 年に BMI 25〜30 の層をあえて診断の枠に取り込んだのも、まさにこの取りこぼしを減らすためでした(Busetto et al., Nat Med 2024)。「体重が標準だから安心」という常識は、もはや通用しません。

3.ウエスト身長比 0.5 ― ヨーロッパが示した新しい線引き

では何を測ればよいのか。2024 年に Nature Medicine 誌に掲載されたヨーロッパ肥満学会(EASO)の新枠組みは、BMI に加えて「ウエスト身長比(waist-to-height ratio)」を診断の中心に据えることを提案しています(Busetto et al., Nat Med 2024)。基準は 0.5。すなわち、おへその高さで測ったウエスト周囲径が身長の半分を超えていれば、内臓脂肪の蓄積を疑うということです。身長 170cm の方ならウエスト 85cm、160cm の方なら 80cm が目安になります。
EASO がウエスト身長比を選んだ理由は、心血管代謝疾患のリスク指標としてウエスト周囲径単独よりも優れているためです。ウエスト周囲径は体格の影響を受けますが、身長で割ることで小柄な方も大柄な方も同じ基準で評価できます。そしてこの枠組みの最も画期的な点は、BMI 25〜30 という「肥満未満」の領域の扱いを変えたことにあります。BMI が 25〜30であっても、ウエスト身長比が 0.5 を超え、かつ身体的・機能的・精神的な支障があれば、それは肥満として診断し治療の対象とする。EASO はこれを「この層の治療機会の取りこぼしを減らすため」と説明しています。
添付論文の 2025 年 VA/DoD ガイドラインも同じ方向を向いています。同ガイドラインは BMIに加えてウエスト周囲径、ウエスト身長比、ウエスト・ヒップ比といった簡便な人体計測を日常診療に組み込むよう勧め、アジア系成人では BMI 23 以上でスクリーニングを開始すべきとしています。付表では、アジア人集団の肥満基準として BMI 27.5 以上、ウエスト周囲径は男性 90cm 以上・女性 80cm 以上、そしてウエスト身長比 0.5 以上という数値が明示されました(Corrado et al., Ann Intern Med 2026)。日本人を含むアジア系は、より低い BMIでも内臓脂肪型の代謝異常を起こしやすいことが知られており、この点は日本の診療にとって特に重要です。

4.「臨床的肥満」と「前臨床的肥満」 ― 肥満の定義そのものが変わ
った

2025 年 1 月、Lancet Diabetes & Endocrinology 誌に発表されたランセット委員会報告は、さらに踏み込みました。肥満を単一のカテゴリーとして扱うのをやめ、「臨床的肥満(clinical obesity)」と「前臨床的肥満(preclinical obesity)」という二つの状態に分け
たのです(Rubino et al., Lancet Diabetes Endocrinol 2025)。
臨床的肥満とは、過剰な脂肪蓄積によって組織や臓器の機能がすでに損なわれている状態を指し、それ自体が「慢性の全身性疾患」と定義されます。委員会は成人について 18 項目の臓器・機能別の診断基準を示しました。息切れ、心不全の徴候、膝や股関節の痛みと可動域制限、睡眠時無呼吸、脂肪肝、腎機能低下、日常生活動作の制限などが、その具体的な内容です。一方の前臨床的肥満は、脂肪は過剰でも臓器機能は保たれている状態で、疾患ではなくリスク状態として位置づけられ、将来の臨床的肥満や 2 型糖尿病・心血管疾患への進展を防ぐための健康管理の対象となります。
この区別が意味するところは大きく二つあります。第一に、「BMI が高いだけで一律に病人扱いする」ことをやめられること。第二に、逆に「BMI はさほど高くないが臓器はすでに傷んでいる」人を、きちんと治療の対象として拾い上げられることです。委員会は、脂肪過剰の確認には体脂肪測定を用いるか、BMI に加えてウエスト周囲径・ウエスト身長比・ウエスト・ヒップ比のいずれかを組み合わせること(BMI が 40 を超える場合は過剰脂肪と見なしてよい)を推奨しています。診断の重心が、体重計から「臓器がどう動いているか」へと移ったのです。

5.アメリカ ― VA/DoD 2025、AACE 2025、ADA 2026

アメリカの主要団体も相次いで基準を刷新しました。本コラムの主軸である 2025 年 VA/DoDガイドラインは、2019 年 4 月から 2025 年 1 月までの文献を系統的にレビューし、GRADE 法にもとづく 23 の推奨を策定。うち 8 項目が新規、7 項目が改訂という大幅な更新となりました(Corrado et al., Ann Intern Med 2026)。柱は五つ、すなわち①スクリーニングと評価、②行動介入を治療の土台とすること、③薬物療法の開始・中止のタイミング、④薬物療法、⑤内視鏡・外科的処置です。
米国臨床内分泌学会(AACE)は 2025 年、肥満を「脂肪組織を基盤とする慢性疾患(ABCD:adiposity-based chronic disease)」としてとらえるアルゴリズムを改訂しました(Nadolsky et al., Endocr Pract 2025)。特徴は、人種・民族ごとに異なる BMI 基準を採用
したこと、そして治療目標を「体重を何 kg 減らすか」ではなく「どの合併症をどこまで改善させるか」という合併症(complication-centric)の考え方に置いたことです。減量幅は目的ではなく手段である、という発想の転換がここにあります。
さらに米国糖尿病学会(ADA)は 2026 年、糖尿病の診療基準とは別に『Standards of Care inOverweight and Obesity』を独立して刊行し、成人肥満のスクリーニング・診断・評価・病期分類を体系化しました(American Diabetes Association, 2026)。肥満が「糖尿病の付随項目」ではなく、独自の診断体系と病期分類をもつ疾患として扱われるようになったことは、この分野の大きな節目といえます。ヨーロッパとアメリカが、別々の道筋をたどりながら同じ結論に到達したことの意味は小さくありません。

6.心臓を守ったのは「体重の減り」ではなかった ― SELECT 試験の
再解析

「体重を減らすこと」が本当に目的なのか。この問いに、2025 年に発表された大規模試験の再解析が衝撃的な答えを出しました。SELECT 試験は、BMI 27 以上で心血管疾患をもつ糖尿病のない成人 17,604 名を対象に、セマグルチド 2.4mg 週 1 回投与とプラセボを比較した試験で、主要心血管イベント(MACE)を 20%減少させたことが 2023 年に New England Journalof Medicine 誌で報告されています(Lincoff et al., N Engl J Med 2023)。
2025 年に Lancet 誌に発表された事前規定の追加解析では、この心血管イベント抑制効果が、開始時の体重やウエスト周囲径のどの階層でも一様に認められ、統計学的な効果の不均一性は認められませんでした。つまり、もともと軽度の過体重だった人も、高度肥満だった人と同じだけ心臓を守られていたのです。さらに驚くべきことに、投与 20 週時点での体重減少の大きさは、その後の心血管イベントの発生をまったく予測しませんでした。予測したのはウエスト周囲径の減少のほうで、媒介解析ではイベント抑制効果のうちウエスト減少で説明できるのは約 33%にとどまりました(Deanfield et al., Lancet 2025)。
残りのおよそ 3 分の 2 は、体重や脂肪の減少とは別の経路――血管の炎症の鎮静化や血圧・脂質・血糖の改善など――によるものと考えられています。研究責任者のディーンフィールド博士は、この結果は GLP-1 受容体作動薬を「やせ薬」ではなく「疾患修飾薬」としてとらえ直すものだと述べています。体重計の目盛りだけを見て治療の成否を判断することが、いかに的外れであるかを示す象徴的なデータです。

7.「指導して終わり」からの脱却 ― 生活習慣・薬物・内視鏡/手術
の統合

評価が変われば、治療も変わります。2025 年 VA/DoD ガイドラインが治療の土台に据えたのは、包括的生活習慣介入(CLI)です。これは「一般的な栄養指導と運動のすすめ」ではなく、自己モニタリング、目標の共同設定、問題解決、技能訓練を含む構造化された多要素の介入を意味します。対面での個人またはグループ形式の CLI が強く推奨され、減量を達成した後も体重維持のための CLI を継続することが推奨されました。運動については、あらゆる種類の身体活動が推奨されるうえで、最適な健康・体組成の観点からは中〜高強度の有酸素運動とレジスタンス運動(筋力トレーニング)の組み合わせが勧められています。筋肉量を保ちながら脂肪を落とすことが目的だからです(Corrado et al., Ann Intern Med 2026)。
薬物療法についても大きな変化がありました。同ガイドラインは、BMI 30 以上、または BMI27 以上で肥満関連疾患を併存する方に対し、セマグルチドとチルゼパチドを CLI と併用して減量および体重維持に用いることを「強い推奨」としています。臨床的に意味のある減量の閾値は体重の 5%とされ、これらの薬剤では総体重の約 15〜25%の減量が得られると総括されました。2025 年に NEJM 誌に発表された SURMOUNT-5 試験では、72 週間の比較でチルゼパチドが平均 20.2%、セマグルチドが 13.7%の体重減少をもたらし、ウエスト周囲径もそれぞれ18.4cm、13.0cm 減少しています(Aronne et al., N Engl J Med 2025)。
注目すべきは中止に関する推奨です。ガイドラインは、有効な薬剤を体重再増加の予防のために中止しないよう「弱い推奨(推奨に反対しない方向)」を示しました。肥満が慢性疾患である以上、血圧の薬を血圧が下がったからやめないのと同じ理屈です。また、生活習慣介入をやり切ってから薬を始めるべきだという従来の順序についても、それを支持する根拠はないと結論され、必要な方には速やかに治療を届ける柔軟な運用が支持されました。BMI 30以上で 2 型糖尿病を伴う場合や BMI 35 以上では代謝・減量手術、BMI 30 以上では内視鏡的スリーブ状胃形成術も選択肢として位置づけられています。

8.体は脂肪を「記憶」している ― リバウンドと、体重をめぐる偏見

「一度やせても必ず戻ってしまう」。多くの方が経験するこの現象は、意志の弱さの問題ではありません。2024 年に Nature 誌に発表されたチューリッヒ工科大学の研究は、その分子レベルの理由を明らかにしました。研究チームは、肥満状態を経験した脂肪組織の細胞が、減量後も長期にわたってエピジェネティックな(遺伝子のスイッチの)変化を保持し続けることを、マウスとヒトの両方で示したのです。この「肥満の記憶」を持つ細胞は、再び高脂肪食にさらされたときに、より速く脂肪を蓄えるように反応しました(Hinte et al., Nature2024)。
添付論文でも、CLI による減量は 6〜9 か月で頭打ちになり、失った体重の約 3 分の 1 が 1 年以内に戻ることが指摘されています。しかも大規模な生活習慣介入試験では、参加者の 35〜50%が臨床的に意味のある 5%の減量に到達しなかったことも報告されました。これは介入の質の問題というより、体重が減ると代謝が適応して戻そうとする、生体側の強力な仕組みを反映しています。だからこそ、減量後の維持期こそが本番であり、「指導して終わり」ではなく長期の伴走が必要になるのです。
もう一つ、2025 年ガイドラインが新たに加えた推奨があります。内在化した体重スティグマ(自分自身の体重や体型に対する否定的な信念)を抱える方に対して、認知行動的介入を提供するというものです。体重に関する偏見は、身体的・心理的な健康悪化と医療機関への受診回避に強く関連することが示されており、4 件のランダム化比較試験にもとづいてこの推奨が採用されました。ガイドラインは、医療者側が「患者中心・非スティグマ的な言葉づかい」を用い、体重の話題に入る前に本人の許可を得ることを明記しています(Corrado etal., Ann Intern Med 2026)。責める医療から、伴走する医療へ。この転換もまた、「測って終わり」の対極にあるものです。

おわりに ― 「測って終わり」から「伴走する」へ

ここまで見てきたように、2024 年から 2026 年にかけて、肥満医療の前提は静かに、しかし決定的に書き換えられました。BMI は出発点であって到達点ではない。次に測るべきはウエスト身長比であり体脂肪率であり、そして最終的に問うべきは「臓器の機能が保たれているか」です。心臓を守ったのが体重の減りではなくウエストの減りとそれ以外の作用だったという SELECT 試験の再解析は、その象徴といえるでしょう。
そしてもう一つ、すべてのガイドラインが共通して述べているのは、肥満が慢性・再発性の疾患であるということです。血圧や血糖と同じように、評価し、介入し、続けて診ていく。
一度の指導で完結する診療ではありません。ご自身の健診結果票に BMI しか書かれていないなら、まずはメジャーを一本用意して、おへその高さのウエストを測り、身長の半分と比べてみてください。それが 0.5 を超えていたら、体重が標準であっても一度ご相談いただく価値があります。
まんかいメディカルクリニックでは、体成分分析装置(InBody)による体脂肪量・筋肉量・内臓脂肪レベルの測定、腹部超音波検査や CT による内臓脂肪・脂肪肝の評価、血液検査による肝機能・脂質・血糖・腎機能の総合評価を組み合わせ、BMI だけでは見えない身体の状態を可視化しています。そのうえで、健康運動指導士による運動療法、必要な方には内分泌代謝の視点から GLP-1 受容体作動薬をはじめとする薬物療法までを、長期的な伴走の中で組み立てます。日曜・祝日も診療を行っており、平日にお時間の取れない方もご相談いただけます。気になる方は、どうぞお気軽にお声がけください。

FAQ ― よくあるご質問

Q1. BMI が正常範囲なら、肥満の心配はしなくてよいのでしょうか。

残念ながら、そうとは言い切れません。2025 年に Annals of Family Medicine 誌に発表された米国の研究では、20〜49 歳の成人 4,252 名を 15 年間追跡した結果、体脂肪率が高い群で全死亡が 1.78 倍・心血管死が 3.62 倍に増加した一方、BMI 25 以上という分類では全死亡との統計学的に有意な関連が認められませんでした(Mainous et al., Ann FamMed 2025)。体重が標準でも筋肉が少なく脂肪の割合が高い「かくれ肥満」は、BMI では検出できません。ヨーロッパ肥満学会が推奨するウエスト身長比 0.5(ウエストが身長の
半分)を目安に、ご自身で一度確認してみることをお勧めします(Busetto et al., NatMed 2024)。

Q2. 家庭で測れる指標のうち、最も信頼できるのはどれですか。

メジャー一本で測れるものの中では、ウエスト身長比が最も推奨されます。ヨーロッパ肥満学会は 2024 年の新枠組みで、心血管代謝リスクの指標としてウエスト周囲径単独より優れることを理由に、0.5 を基準値として採用しました(Busetto et al., Nat Med2024)。2025 年 VA/DoD ガイドラインも、BMI にウエスト周囲径を組み合わせることで代謝リスクの高い方をより確実に同定できるとし、アジア人の基準としてウエスト周囲径 男性 90cm 以上・女性 80cm 以上、ウエスト身長比 0.5 以上を示しています(Corrado et al.,Ann Intern Med 2026)。測定は、素肌の上に伸びない巻き尺を腸骨の少し上に水平に当て、締めつけずに、通常の呼気の終わりに立位で読み取ります。

Q3. GLP-1 受容体作動薬は「やせ薬」として使ってよいのですか。

美容目的の安易な使用は適切ではありません。2025 年 VA/DoD ガイドラインが「強い推奨」としているのは、BMI 30 以上、または BMI 27 以上で肥満関連疾患を併存する方に、包括的生活習慣介入と併用してセマグルチドやチルゼパチドを用いる場合です(Corrado etal., Ann Intern Med 2026)。一方で、これらの薬剤を単なる減量薬と見るのも実態に合いません。SELECT 試験の 2025 年再解析では、心血管イベント抑制効果のうち、ウエスト周囲径の減少で説明できるのは約 33%にとどまり、残りは体重や脂肪の減少とは別の機序によることが示されました(Deanfield et al., Lancet 2025)。適応を満たす方にとっては、体重を減らす薬というより臓器を守る薬と理解するのが正確です。

Q4. 薬をやめると必ずリバウンドすると聞きます。一生飲み続けるのでしょう
か。

2025 年 VA/DoD ガイドラインは、有効な肥満治療薬を体重再増加の予防のために中止しないよう推奨しています。SURMOUNT-4 試験と STEP 4 試験という 2 件のランダム化比較試験で、チルゼパチドやセマグルチドの継続が中止に比べて体重・代謝・精神的健康・生活の質のいずれにおいても優れていたことが根拠です(Corrado et al., Ann Intern Med2026)。生物学的な裏づけもあります。2024 年に Nature 誌に発表された研究は、肥満を経験した脂肪細胞が減量後もエピジェネティックな変化を保持し、再び太りやすい状態
が残ることを示しました(Hinte et al., Nature 2024)。肥満は高血圧や糖尿病と同じ慢性疾患であり、継続の可否は費用や副作用、ご本人の価値観を含めて個別に判断すべき事柄です。

Q5. 減量すると筋肉も落ちてしまうのではないかと心配です。

その懸念は妥当であり、だからこそ運動の併用が推奨されます。2025 年 VA/DoD ガイドラインは、最適な健康および体組成の改善のために、中〜高強度の有酸素運動とレジスタンス運動(筋力トレーニング)を組み合わせることを推奨しています。この組み合わせが、
除脂肪量を保ちながら脂肪の減少を進めるためです(Corrado et al., Ann Intern Med2026)。また同ガイドラインは、包括的生活習慣介入を薬物療法や手術と並行して行う理由の一つとして、栄養の充足、除脂肪量と身体機能の維持、減量中のサルコペニア(筋肉
減少)や微量栄養素欠乏のリスク低減を挙げています。体重計の数字ではなく体組成を追うことが、ここでも要点になります。

参考文献

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※本コラムは医学的情報の提供を目的としたものであり、個別の診断・治療を代替するものではありません。気
になる症状がある方は医療機関にご相談ください。

記事監修者田場 隆介

医療法人社団 青山会 まんかいメディカルクリニック 理事長

医療法人社団青山会代表。兵庫県三田市生まれ、三田小学校、三田学園中学校・同高等学校卒業。 1997(平成9)年岩手医科大学医学部卒業、町医者。聖路加国際病院、淀川キリスト教病院、日本赤十字社医療センター、神戸市立医療センター中央市民病院を経て、2009(平成21)年医療法人社団青山会を継承。 2025年問題の主な舞台である地方の小都市で、少子高齢化時代の主役である子どもと高齢者のケアに取り組んでいる。

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