病気と健康の話

【GLP-1】いま話題のGLP-1は「炎症を鎮める薬」なのか?──最新研究が示す“抗炎症作用”の現在地とWHOのガイドライン2025

■はじめに

GLP-1受容体作動薬(GLP-1 receptor agonist, GLP-1 RA)は、本来、インスリン分泌を促進する消化管ホルモン「GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)」の作用を模倣する薬で、2型糖尿病の治療薬として開発されました。近年、このクラスの薬剤は肥満症治療にも用いられるようになり、血糖値や体重を改善する「代謝効果」だけでなく、体内の炎症を抑える作用があることが注目されています。実際、GLP-1 RAを使用すると心血管疾患や慢性腎臓病の発症率が低下することが大規模臨床試験で示されており、その背景に抗炎症作用が関与していると考えられています。本記事では、GLP-1 RAの抗炎症作用について、最新の医学論文にもとづき平易な言葉で解説します。医学的エビデンスに基づく内容ですが、専門的になりすぎないよう心がけました。

■GLP-1受容体作動薬の抗炎症作用(JCI 2025年レビューより)

2025年に『The Journal of Clinical Investigation』誌に掲載されたレビュー論文「Antiinflammatory actions of GLP-1–based therapies beyond metabolic benefits(「GLP-1製剤による抗炎症作用:代謝効果を超えて」)」では、GLP-1 RAの抗炎症効果について現在わかっている知見が総括されています。以下、この論文の内容を要点ごとに日本語でわかりやすくまとめます。

腸内L細胞による炎症センサー機能

GLP-1は小腸・大腸のL細胞から分泌されますが、これらの細胞は細菌由来の毒素(LPSなど)を感知する受容体(TLR4)を備えており、腸のバリア機能が損なわれ炎症が生じた際にGLP-1分泌を増やすことが報告されています。例えば、マウスにおいてLPS投与後わずか数時間で血中GLP-1濃度が上昇し、ヒトでも敗血症や重症感染症で血中GLP-1が上昇することが観察されています。これは腸管のホルモンであるGLP-1が免疫系との関連を持ち、炎症時に体内で増えることを示唆しています。

体重減少とは独立した直接的な抗炎症効果

GLP-1 RAの抗炎症作用には、「体重が減ることで結果的に炎症が下がる効果」(間接効果)だけでなく、「薬自体が免疫細胞に作用して炎症反応を抑制する効果」(直接効果)があることが分かっています。たとえば試験管内の実験では、GLP-1受容体作動薬のエキセナチドを免疫細胞(ヒト末梢血単核細胞)に投与すると、細胞内の炎症スイッチであるNF-κBという因子の活性化が阻害され、炎症性サイトカイン(TNF-αやIL-1βなど)の遺伝子発現が低下しました。注目すべき点は、こうした効果が数時間以内という短時間で現れ、体重減少が起こるより前に確認されることです。つまりGLP-1 RAは、体重減少を待たずとも直接的に抗炎症作用を発揮することが示唆されています。

免疫細胞に発現するGLP-1受容体

GLP-1受容体は膵臓や脳のみならず、免疫系の細胞(マクロファージ、T細胞など)にも存在します。GLP-1 RAはこれら免疫細胞上の受容体を刺激し、細胞から放出されるシグナルを調節することで炎症反応を抑える作用があります。実際、GLP-1受容体を刺激すると炎症性サイトカインであるTNF-α、IL-6、IL-1βなどの産生が抑えられ、一方でIL-10のような抗炎症性のサイトカイン産生が増加することが報告されています。IL-10は炎症を沈静化させ免疫のバランスを取る物質で、GLP-1 RAは免疫反応を単に弱めるだけでなく良い方向へ調整する作用も併せ持つと考えられます。

抗炎症作用のメカニズム(NF-κB経路の抑制など)

炎症のスイッチ役である転写因子NF-κBは、多くの炎症関連遺伝子をオンにすることで慢性的な炎症を維持します。GLP-1 RAはこのNF-κBの活性化経路を遮断し、結果として炎症性の物質(サイトカイン、接着分子、ケモカインなど)の産生を減少させることがわかっています。例えば肥満マウスの脂肪組織では、GLP-1 RA投与によりTNF-α、IL-6、IL-1βといった炎症メディエーターの生成が減少したとの報告があります。また腎臓の研究では、GLP-1 RAの一種であるエキセナチドが腎組織でNF-κBの活性化を抑制したとのデータもあります。さらに、細胞のエネルギーセンサーで抗炎症にも関与するAMPK経路をGLP-1 RAが活性化し、炎症を抑える経路を促進するという知見も得られています。加えて、GLP-1 RAは活性酸素(ROS)の発生を抑制し酸化ストレスを軽減することで、炎症による組織ダメージを和らげる作用も報告されています。

総じて、GLP-1 RAは、多角的なメカニズムで炎症を抑制することが明らかになりつつあります。

様々な臓器で認められる抗炎症効果

GLP-1 RAの抗炎症作用は全身の多くの臓器・疾患で報告されています。脳・神経系では、GLP-1受容体が中枢の神経細胞に存在することから、アルツハイマー病など神経変性疾患において炎症(神経炎症)を和らげる可能性が期待され、いくつかの臨床研究が進行中です。心血管系では、動脈硬化は慢性炎症が関与する病気ですが、GLP-1 RAはその抗炎症作用によって抗動脈硬化効果を発揮していると考えられます。実際、動物実験ではGLP-1の効果でコレステロール値の変化とは無関係に動脈硬化病変の進行が抑制されることが示されており、人の研究でもGLP-1 RA治療により血管の内皮機能が改善するなど炎症緩和による心血管保護効果が示唆されています。肝臓では、脂肪肝炎(NASHなど)においてGLP-1 RAが肝臓の炎症と線維化を軽減しうるとの報告があり、現在治験が行われています。腎臓では、2型糖尿病患者にGLP-1 RAを投与すると腎機能低下や蛋白尿の進行を抑える効果が確認されており、腎臓の慢性炎症や線維化を抑制することが一因と考えられます。肺に関しても興味深い知見があり、動物モデルではGLP-1 RA投与が急性肺損傷後の肺炎症(サイトカインの上昇)を軽減したとの報告があります。インフルエンザ感染モデルマウスでも、GLP-1 RAの投与で肺内の炎症性物質(IL-6や炎症性ケモカイン)が減少したことが示されています。消化管(腸)では、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)に対してGLP-1 RAが有望視されています。前述の通り腸管のバリア機能改善や抗炎症作用(サイトカイン産生抑制)を通じて腸の炎症を和らげ、肥満合併のIBD患者で入院や手術率が下がったとの報告も初期研究で出てきています。関節リウマチなど関節の炎症についても、GLP-1 RAに保護的な作用がある可能性があります。関節炎モデルマウスの研究では、GLP-1 RA(リラグルチド)投与群で関節滑膜の炎症が軽減し、関節破壊の指標が改善しました。このように、GLP-1 RAの抗炎症効果は体中の様々な臓器・疾患領域で確認されつつあり、「糖尿病薬・肥満症薬」の枠を超えた広範な臨床応用の可能性が議論されています。

将来の展望

GLP-1受容体とGIP受容体の両方を刺激する二重作動薬(例:チルゼパチド)が最近登場しましたが、抗炎症効果の面でも注目されています。興味深いことに、動物実験ではGLP-1受容体を欠損したマウスでもチルゼパチドが炎症性サイトカインの上昇を抑えたという報告があり、GIP経路や他のメカニズムが関与する可能性が示唆されています。今後、GLP-1単独作動薬とこうした複合作動薬との抗炎症効果の違いや、より詳しい作用メカニズムの解明が期待されます。レビュー論文の結論としては、GLP-1 RAは非常に幅広い抗炎症作用を示すものの、その作用機序や長期的影響には未解明な部分も残されており、更なる研究が必要であると述べられています。特に、「どの疾患に最も有効か」「副作用とのバランス」などを見極めるため、慎重かつ大規模な臨床試験や長期観察研究が求められています。今後の研究によっては、GLP-1 RAが糖尿病・肥満以外の慢性炎症疾患(例:動脈硬化疾患、NASH、リウマチ、認知症など)の治療に役立つ可能性も広がるでしょう。

■WHOによるGLP-1 RAの肥満治療ガイドライン(2025年)

2025年12月1日、世界保健機関(WHO)は成人の肥満症治療にGLP-1受容体作動薬を用いることに関する初のグローバルガイドラインを発表しました。これは同日付で医学誌『JAMA』に「World Health Organization Guideline on the Use and Indications of GLP-1 Therapies for the Treatment of Obesity in Adults(成人肥満治療におけるGLP-1療法の使用および適応に関するWHOガイドライン)」として掲載されています。このガイドラインのポイントをわかりやすく解説します。

肥満症は慢性疾患であり包括的ケアが必要

ガイドラインではまず、肥満症(BMI 30以上)は再発を繰り返す慢性疾患であり、生涯にわたるケアが必要だと強調しています。肥満症は世界で10億人以上が抱える重大な公衆衛生上の課題で、心血管疾患や2型糖尿病、一部の癌など様々な病気のリスクを高めます。そのため早期診断と、食事・運動療法、薬物療法、外科治療などを組み合わせた統合的で患者中心のアプローチが重要だと述べられています。WHOは各国に対し、肥満症に対する差別のない誰でもアクセス可能な体制整備と、併存症予防も含めた包括的対策を取るよう呼びかけています。

GLP-1療法に関する2つの条件付き推奨

このガイドラインの中核は、GLP-1 RAの肥満治療への活用についての2つの「条件付き推奨」です。

一つ目は、「GLP-1受容体作動薬を妊婦を除く成人の肥満症患者に長期治療として用いることができる」というものです。大規模臨床試験でGLP-1 RAの肥満治療効果(体重減少や合併症リスクの低減)は明らかになっているものの、長期的な有効性・安全性のデータが限られること、治療コスト、医療体制の準備状況、医療アクセスの平等性などの課題があるため、推奨の確実性は「条件付き」とされています。

もう一つは、「GLP-1 RAを処方された肥満症患者に対して、集中的行動介入(食事・運動指導など)を併用することを提案する」という推奨です。これは強固なエビデンスではないものの、薬物療法に加えて生活習慣改善を並行すると効果が高まる可能性があることに基づいた提案で、こちらもエビデンス確実性が低いため条件付きとなっています。要するに、「GLP-1薬は使って良いが慎重な運用を。併せて生活習慣の改善も重要」というメッセージです。

「薬だけでは解決しない」

包括的アプローチの必要性: WHOは、たとえGLP-1 RAという有効な薬が登場しても、「肥満の問題は薬だけでは解決しない」と明言しています。肥満は個人の問題であると同時に社会全体の課題でもあり、食品環境の改善や予防策などマルチセクターの取り組みが必要です。ガイドラインでは肥満対策の包括戦略として3本の柱が提唱されています。

(1) 健康的な環境作り(政策による予防)、(2) ハイリスク者への介入(スクリーニングと早期介入)、(3) 生涯にわたる個別ケアへのアクセス保証。GLP-1 RAの普及はこのうち主に(3)の一部を担うものですが、それだけでは不十分で、(1)や(2)の施策と組み合わせて初めて持続可能な解決につながると強調されています。薬の登場を契機に、社会全体で肥満症に立ち向かう「公正で統合的で持続可能なエコシステム」を構築すべきだ、との提言です。

実施上の課題

アクセスと公平性の確保など: ガイドラインは、GLP-1 RAを真に有効活用するには医薬品への公平なアクセス確保と医療体制の準備が不可欠だと述べています。現状では薬価が高く供給量も限られるため、このままでは2030年までに恩恵を受けられるのは必要患者の1割未満とも予測されています。そのため、国際的な協力による医薬品生産の拡大、価格引き下げ策(共同購入や階層的価格設定、ライセンス供与等)の検討、各国の医療体制整備が急務です。また、現状では裕福な一部の層だけが治療を受けられるといった健康格差が生じかねないため、意図的に公平性に配慮した政策を講じる必要があるとしています。WHOは加盟国からの要請を受けこのガイドラインを作成しましたが、発表後も新たなエビデンスに応じて改訂し続けるとしています。さらに2026年には、限られた資源の中で「最も必要性の高い人」から優先的にGLP-1治療を提供するための国際的な基準作りにも着手すると述べられています。これは、少しでも早く公平に重症肥満者への治療提供を開始し、徐々に対象を広げていく道筋を示すための取り組みです。

対象薬剤と背景

なお、このWHOガイドラインの対象として言及されている薬剤はリラグルチド、セマグルチド、チルゼパチドという3つの注射薬です。いずれも肥満症に対して長期使用が認可された薬剤で、2025年9月にはWHOの必須医薬品リストにも高リスクの2型糖尿病向け治療薬として追加されています。GLP-1 RAは食欲低下と満腹感亢進をもたらし大きな体重減少効果を示すため、従来の生活指導のみでは減量が難しかったケースに新たな選択肢を提供すると期待されています。一方で、需要の高まりによる偽造薬の流通なども問題化しており、安全に正規ルートで医療提供する重要性も訴えられています。

(以上、WHOプレスリリースおよびJAMA誌掲載の特別コミュニケーションwho.intの内容を基に作成しました)

■最新研究が示すGLP-1 RAの抗炎症効果

GLP-1受容体作動薬の抗炎症作用については、欧米からの最新の査読付き論文でも数多く報告されています。そのいくつかを紹介しながら、客観的なエビデンスを説明します。

炎症性サイトカインの低減

複数の研究で、GLP-1 RAは炎症性サイトカイン(免疫細胞が放出する炎症促進物質)を減少させることが示されています。先述のとおりGLP-1受容体は免疫細胞にも存在し、GLP-1 RAによりTNF-α、IL-6、IL-1βといった主要な炎症性サイトカインの産生が抑制されます。その結果、慢性炎症が和らぎ、例えば血管の炎症が軽減すると動脈硬化の進行抑制につながる可能性があります。興味深いことに、GLP-1 RAは炎症を抑える抗炎症性サイトカイン(IL-10など)の分泌を促す作用も持つため、免疫反応全体のバランスを整える効果があると考えられています。

CRPなど炎症マーカーの改善

CRP(C反応性タンパク)は体内の炎症の程度を反映する血中マーカーです。臨床研究において、2型糖尿病と心血管疾患を併せ持つ患者にGLP-1 RA(セマグルチド)を投与したところ、高感度CRP(hs-CRP)が有意に低下したとの報告があります。これはGLP-1 RAが全身性の炎症負荷を下げたことを示唆する所見です。さらに、この研究ではGLP-1 RA投与群で関節リウマチの炎症指標も改善しており、例えばリウマチモデルマウスではリラグルチド投与によって関節の滑膜炎が減少し関節破壊が抑制されたことが示されています。これらの結果から、GLP-1 RAは糖尿病患者のみならず炎症性疾患一般においても有用な抗炎症効果を発揮しうると期待されています。

炎症経路(NF-κBやAMPK)への作用

基礎研究レベルでは、GLP-1 RAが細胞内の主要な炎症経路に作用することが確認されています。特に前述したNF-κBの活性化抑制は、GLP-1 RAの重要な抗炎症メカニズムです。GLP-1 RAを投与されたマウスの脂肪組織や腎組織ではNF-κBの活性低下と、それに伴う炎症性物質の減少が観察されています。加えて、AMPK経路(細胞のエネルギー・炎症調節に関与)をGLP-1 RAが活性化し、炎症を鎮める方向に細胞内シグナルをシフトさせることも報告されています。これらの作用により、GLP-1 RAは組織レベルでの慢性炎症や酸化ストレスを軽減し、臓器障害の進行を遅らせる効果があると考えられます。

心血管疾患における効果の一端

冠動脈疾患(動脈硬化による心臓病)の分野でも、GLP-1の抗炎症作用に注目が集まっています。2024年のレビューでは、「GLP-1は糖代謝だけでなく炎症経路(サイトカイン産生や脂肪毒性、マクロファージ分化)を調節し、動脈硬化に対する抗炎症効果を示す」とまとめられています。動物実験ではGLP-1による抗アテローム(抗動脈硬化)作用が確認されており、それは血中脂質を下げる作用とは独立して炎症反応を抑えることによって達成されているとされています。ヒトの臨床研究は小規模なものが多いものの、GLP-1 RAによって血管の内皮機能改善や微小循環の改善が報告されており、これは抗炎症による血管保護効果の現れかもしれません。今後、大規模試験でGLP-1 RAのこうした心血管イベント抑制効果を裏付け、炎症との関連を明確にすることが期待されています。

客観的エビデンスの蓄積

総じて、最新の研究はGLP-1 RAの抗炎症作用を裏付ける定量的なエビデンスを蓄積しつつあります。もちろん、すべての炎症疾患に効果があるわけではなく、限界や不明点もあります。しかし、糖尿病・肥満治療薬として登場したGLP-1 RAが「炎症制御薬」としても有望であることは医学界でも認識が広がっています。今後の研究次第では、GLP-1 RAが従来の抗炎症薬とは異なる新しい作用機序を持つ薬剤クラスとして、慢性炎症疾患の治療体系に組み込まれていく可能性があります。

■よくある質問(FAQ)

Q1. 医療保険は適用されますか?

GLP-1受容体作動薬は、現時点では2型糖尿病と診断された場合にのみ保険適用となります。肥満や体重減少目的で使用する場合は保険が利かず自費診療になります。当院でも、糖尿病治療として処方する場合には保険適用となりますが、単なる減量目的で希望される場合には自由診療(自己負担)での対応となる点をご理解ください。

Q2. 副反応が気になります。

主な副作用には消化器症状があります。特に軽度の吐き気は多くの方に見られますが、これは使用を続けることで次第に慣れて軽減することが知られています(徐々に体が耐性を獲得します)。また容量依存的に便秘や下痢が生じることもありますが、これらは一般的な酸化マグネシウム剤(下剤)や整腸剤の併用で対処可能です。ごく稀な重篤な副作用として急性膵炎や胆道系疾患(胆石・胆嚢炎など)のリスク増加が指摘されています。しかし最新の大規模解析では、GLP-1製剤使用による膵炎リスクは統計的にほとんど増加せず、むしろ生涯膵炎リスクは低下したとの報告がありますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。一方で胆石や胆嚢炎など胆道系疾患のリスクはわずかに上昇することが確認されており(リスク比1.3倍程度)pubmed.ncbi.nlm.nih.gov、特に高用量を長期間使用する場合にその傾向が強まりますpubmed.ncbi.nlm.nih.gov。そのため当院ではGLP-1 RAを開始する前に腹部エコー検査や血液検査で膵臓・胆嚢のスクリーニングを行い、安全に治療できるか確認した上で処方しています。副作用が心配な方も、適切なモニタリングと対策のもとで安全に治療を受けていただけます。

Q3. 気をつけることはありますか?

GLP-1 RAを使い始めると食欲が低下し食事量が減るため、同時に喉の渇き(口渇)も感じにくくなる傾向があります。その結果、気付かないうちに水分摂取量が不足し脱水になったり、血圧が下がって立ちくらみの原因になることがあります。意識して十分な水分補給をすることが何より大切ですjamanetwork.com。具体的には、少なくとも1日あたりコップ8~12杯(約2〜3リットル)の水分を摂るよう心がけてくださいjamanetwork.com。特に暑い時期や運動時にはさらに多めの水分補給を意識しましょう。また、アルコールやカフェイン飲料は利尿作用で脱水を助長しがちなので控えめにしてくださいjamanetwork.com。食事量が減ることで低血圧になりやすい場合もありますので、起床時や入浴時の急な立ち上がりに注意する、必要に応じて減塩しすぎないようにするなど、日常生活でも留意してください。不安な点は遠慮なく主治医・スタッフにご相談いただき、安全に治療を続けていきましょう。

参考文献

  • Wong CK, Drucker DJ. Antiinflammatory actions of glucagon-like peptide-1–based therapies beyond metabolic benefits. J Clin Invest. 2025;135(21):e194751. (GLP-1受容体作動薬の抗炎症作用に関する総説論文)jci.orgjci.org
  • Celletti F, Farrar J, De Regil L. World Health Organization Guideline on the Use and Indications of Glucagon-Like Peptide-1 Therapies for the Treatment of Obesity in Adults. JAMA. 2025; published online Dec 1, 2025. (WHOによる肥満症治療GLP-1ガイドラインの解説)jamanetwork.comwho.int
  • Alharbi SH. Anti-inflammatory role of glucagon-like peptide 1 receptor agonists and its clinical implications. Ther Adv Endocrinol Metab. 2024;15:20420188231222367. (GLP-1 RAの抗炎症作用メカニズムに関するレビュー)pmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov
  • Skrobucha A, Pindlowski P, Krajewska N, Grabowski M, Jonik S. Anti-inflammatory effects of glucagon-like peptide-1 in coronary artery disease: a comprehensive review. Front Cardiovasc Med. 2024;11:1446468. (冠動脈疾患におけるGLP-1の抗炎症効果に関するレビュー)frontiersin.org
  • He L, Wang J, Ping F, et al. Association of GLP-1 Receptor Agonist Use With Risk of Gallbladder and Biliary Diseases: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Intern Med. 2022;182(5):513-519. (GLP-1 RA使用と胆嚢・胆管疾患リスクに関するメタ解析)pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
  • Ayoub M, Chela H, Amin N, et al. Pancreatitis Risk Associated with GLP-1 Receptor Agonists…: A Propensity Score-Matched Analysis. J Clin Med. 2025;14(3):944. (GLP-1 RA使用による膵炎リスクを検討したアメリカ大規模解析)pmc.ncbi.nlm.nih.gov
  • Mehrtash F, Dushay J, Manson JE. I Am Taking a GLP-1 Weight-Loss Medication—What Should I Know? JAMA Intern Med. 2025;185(9):1180. (GLP-1減量薬を使用中の患者向け情報)jamanetwork.com

記事監修者田場 隆介

医療法人社団 青山会 まんかいメディカルクリニック 理事長

医療法人社団青山会代表。兵庫県三田市生まれ、三田小学校、三田学園中学校・同高等学校卒業。 1997(平成9)年岩手医科大学医学部卒業、町医者。聖路加国際病院、淀川キリスト教病院、日本赤十字社医療センター、神戸市立医療センター中央市民病院を経て、2009(平成21)年医療法人社団青山会を継承。 2025年問題の主な舞台である地方の小都市で、少子高齢化時代の主役である子どもと高齢者のケアに取り組んでいる。

お知らせ一覧へ戻る