MRワクチン(麻しん・風しん)
麻しん(はしか)について
麻しんは麻しんウイルスによって引き起こされる感染症で、一般的には「はしか」と呼ばれることもあります。感染経路は、空気感染・飛沫感染・接触感染です。その感染力はきわめて強く、免疫を持っていない人が感染すると、ほぼ100%が発症します。そのため小児だけではなく、大人も注意が必要な感染症です。
通常38℃程度の発熱やかぜ症状がはじまります。2~4日発熱が続いたあと、39℃以上の高熱と発疹が出てきます。また発疹が出る前に頬の粘膜に「コプリック斑」という白い斑点を認めることもあります。通常は7日~10日で回復しますが、免疫力の回復には1か月程度必要です。
そして注意したいのが合併症。肺炎や中耳炎、脳炎などを合併することもあるので十分注意する必要があります。また、麻しんにかかった人は数千人に1人の割合で死亡することがあります。
風しんについて
風しんとは、風疹ウイルスによる感染症で、一般的に「三日はしか」と呼ばれることもあります。麻しんと同じく春先から初夏にかけて多く発生し、飛沫感染や接触感染が主な感染経路です。2012年~2013年に20~40代の男性を中心に全国で大規模発生が見られており、予防接種を受けていない方や風しんにかかったことがない方などは流行に注意が必要になります。
風しんは、約2週間の潜伏期間の後、発熱や首の後ろのリンパ節の腫れを認めます。発熱は半分に見られる程度です。その後、顔面から始まり、2~3日で体幹・四肢に拡大するような発疹が出てきます。通常3~5日でなくなります。
基本的に予後は良好であり、感染しても明らかな症状がでることがない(不顕性感染)人が15%から30%程度います。そして一度感染し治癒すると、大部分の人は終生免疫を獲得します。
しかし、特に注意が必要な点があります。
- 大人で感染すると関節炎・急性脳炎などの合併症を起こす可能性がある
- 風しん胎児症候群:妊娠初期に母親が風しんに感染すると、胎児に聴覚障害、視覚障害、心臓の欠陥、精神遅滞などの先天的な障害を引き起こす可能性がある
妊婦さんとそのパートナーの予防は特に重要とされています。
麻しん風しん混合ワクチン(MRワクチン)とは
麻しん(はしか)と風しんを両方予防するためのワクチンです。現在では、混合されたワクチンが主流になっています。ワクチンの種類は「生ワクチン」で、麻しんウイルスと風しんウイルスを無力化(弱毒化)したものを含んでいます。
接種方法は皮下注射です。1回の接種で麻しん・風しん両方に対して95%の確率で十分な免疫を獲得でき、2回接種すると免疫獲得率は97%~99%以上とされています。
接種対象と推奨スケジュール
| 対象 | 接種時期 | 費用 |
|---|---|---|
| 第1期(定期接種) | 生後12か月(1歳)~24か月(2歳)未満に1回 | 無料 |
| 第2期(定期接種) | 5歳以上7歳未満で小学校就学の前年度に1回(幼稚園・保育所年長児) | 無料 |
| 任意接種 | 上記以外の方 | 8,140円(税込) |
○成人への接種について
近年、成人における麻しんと風しんの感染が増えているため、成人への接種も強く推奨されています。特に以下の方には接種をお勧めします。
- 妊娠を計画している女性(接種後2か月は妊娠を避ける必要があります)
- 妊婦のパートナー
- 30代後半~50代の男性(風しんに対する免疫が不十分な場合が多い)
- 医療従事者、教育関係者
○副反応について
| 一般的な副反応 (接種後30日以内) | ・発熱:27.3%(38.1℃以上は17.6%、39.1℃以上は5.9%) ・発疹:12.2%(接種後から数日中に現れ、1~3日で消失) ・鼻汁:9.3% ・せき:7.8% ・注射部位発赤:7.3% |
| 重篤な副反応 (まれ) | ・ショック、アナフィラキシー様症状(じんましん、喉頭浮腫など) ・急性血小板減少性紫斑病:100万人接種あたり1人程度 ・脳炎:100万人接種あたり1人以下 ・けいれん:まれに熱性けいれんを起こすことがあります |
○接種を受けられない方
- 明らかな発熱を呈している方
- 重篤な急性疾患にかかっている方
- 本剤の成分によってアナフィラキシーを呈したことがある方
- 免疫機能に異常のある方や免疫を抑える治療をしている方
- 妊娠していることが明らかな方
- 予防接種を行うことが不適当な状態の方
○持ち物
- マイナンバーカード、保険証など本人確認書類
- 母子手帳(お子様のみ)
- ご記入済みの予診票(※任意接種の方のみ)
- 院内ではマスク着用をお願いいたします
