肺がんリスクが潜む!?超加工食品に要注意—“炎症性食品”の正体とその怖さ—
■超加工食品(UPF)とは何か?
「超加工食品(Ultra-Processed Foods, UPF)」とは、工場で作られた成分を組み合わせて作られる食品で、自然の形をとどめていない加工品です。例えば、インスタントラーメン、スナック菓子、加工肉、清涼飲料水、食パン、菓子パン、冷凍ピザ、人工甘味料入り飲料などが該当します。これらの食品は、高カロリーで糖分や塩分、飽和脂肪が多いことが特徴です。これらは、食品である以上に「商品」であり、各企業のブランディングとマーケティングの対象です。脳に働いて依存を形成させるため、口にしたら最後、必要以上に食べすぎてしまいます。
■慢性炎症と病気の関係性
UPFの最大の問題点は、「体に見えない慢性炎症を引き起こす」ことです。体内の微弱な炎症が持続すると、がん、心血管疾患、糖尿病、認知症などさまざまな非感染性疾患(NCDs)のリスクが高まるとされます。特に添加物や高度な加熱処理で生じる化学物質(アクリルアミドやアクロレインなど)は、細胞にダメージを与え、DNA損傷やミトコンドリア異常を引き起こすことも報告されています。
■非喫煙者もリスクが上がる!肺がんとの関連性
Wang Kらの大規模前向きコホート研究(米国PLCO試験)では、UPFの摂取量が多い人ほど、肺がんの発症リスクが有意に高まることが明らかになりました。具体的には、UPF摂取が最も多い層は、最も少ない層に比べて肺がん全体で41%、非小細胞肺がん(NSCLC)で37%、小細胞肺がん(SCLC)で44%リスクが高くなっていました。驚くべきことに、この影響は喫煙歴のない人でも確認されており、「非喫煙者の肺がん増加」にUPFが関与している可能性が示唆されています。
■なぜUPFが肺に悪いのか?
UPFが肺がんリスクを高める理由は複数考えられています。第一に、UPFに含まれる添加物(グルタミン酸ナトリウムやカラギーナン)が腸内環境を悪化させ、腸-肺軸を通じて慢性炎症を引き起こすこと。第二に、アクロレインやポリ塩化ビフェニル(PCB)などの加工食品由来の汚染物質が、DNA損傷やミトコンドリア障害をもたらすことが指摘されています。また、これらの化学物質はタバコの有害物質と類似した毒性を持つため、非喫煙者にも害を及ぼすのです。
■政策の視点から:世界で進む「脱・UPF」への取り組み
南米チリでは、「警告ラベル制度」や「学校での販売禁止」、「広告制限」など複合的な政策によってUPFの消費削減に成功しています。メキシコや南アフリカも、砂糖入り飲料や加工食品への課税によって消費量の大幅減を実現しました。こうした制度は、健康格差の是正にもつながり、特に低所得層において健康指標の改善が顕著です。日本でも同様の法制度の導入が求められます。
■私たちにできる「脱・UPF」アクション
まずは加工度の低い「シンプルな食材」を選ぶことが第一歩です。野菜、果物、魚、豆類、全粒穀物などを中心に食卓を構成しましょう。また、スーパーで購入する際には「原材料表示」を必ず確認し、「○○エキス」「人工甘味料」「乳化剤」「安定剤」「ショートニング」「生クリーム」などが含まれる食品は避けるのが賢明です。
日常的な食習慣の選択が、がんの予防につながるのです。
参考文献
- Popkin BM, Barquera S, Corvalan C, et al. Toward unified and impactful policies for reducing ultra-processed food consumption and promoting healthier eating globally. Lancet Diabetes Endocrinol. 2021;9(7):462–470. doi:10.1016/S2213-8587(21)00078-4.
- Wang K, Zhao J, Yang D, et al. Association between ultra-processed food consumption and lung cancer risk: a population-based cohort study. Thorax. 2025. doi:10.1136/thorax-2024-222100.