メタボと肥満症に夏から挑戦!—生活習慣病リスクとその対策
■メタボリックシンドロームとは?
メタボリックシンドローム、通称「メタボ」は、内臓脂肪型肥満に加え、高血圧・高血糖・脂質異常のうち2つ以上を併せ持つ状態を指します。これは、動脈硬化をはじめとする生活習慣病の温床となり、心筋梗塞や脳卒中のリスクを大きく高めます。日本では、40歳以上の方を対象に「特定健診(メタボ健診)」が実施されており、内臓脂肪や生活習慣のチェックが可能です。夏は薄着になり、自分の体型や体調と向き合う良い機会でもあります。夏の強い紫外線は、ビタミンD生成、体内時計の調整、ホルモンバランスの正常化など身体の代謝を高めるチャンスです。暑さを理由に運動を控えがちな季節だからこそ、特定健診を受けて生活習慣を変えることが、将来の大きな病気を防ぐ第一歩となるのです。
■肥満症とは?
「肥満」は体重過多の状態を示しますが、「肥満症」とは単なる体重増加にとどまらず、健康障害が伴う医学的な疾患です。具体的には、糖尿病・高血圧・睡眠時無呼吸症候群などが発症している、あるいはそのリスクが明確な場合に「肥満症」と診断されます。特にBMI(体格指数)が30以上の方は、体重に関係する健康リスクを医学的に抱えている可能性が高く、医師の評価と治療が推奨されます。肥満症は見た目の問題ではなく、れっきとした「病気」として扱われるべきです。
■体重過多と17の慢性疾患(NCDs)
イギリスのUKバイオバンクによる約40万人規模の調査では、BMIが25以上の「過体重」の人は、適正体重の人に比べて以下のような17の疾患(NCDs:非感染性疾患)リスクが上昇していました:糖尿病、高血圧、脂質異常症、関節炎、うつ病、がんなどです。これらの病気は互いに関連し合いながら進行し、いずれも生活の質を著しく下げ、死亡リスクも上昇させる重大な疾患です。つまり、見た目にとどまらず、体重の増加は確実に「病気の引き金」となっているのです。
■肥満症と27の生活習慣病(NCDs)リスク
さらに、BMIが30以上の「肥満症」に該当する人では、17の疾患に加え、慢性腎臓病、心不全、痛みを伴う疾患などを含む27のNCDsにおいて有意にリスクが上昇していました。糖尿病のリスクはなんと6.6倍、関節炎は2.6倍に跳ね上がっており、より多くの疾患が若年期から始まる傾向がありました。つまり、単に「重い」だけでなく、多数の病気に繋がる危険なサインを体が発している状態と言えます。
■肥満症は「複雑な病気の道筋(complex disease trajectories)」を1.9倍に
肥満症の人では、病気の進行パターンが非常に複雑で、適正体重の人に比べてその経路の「複雑さ」は約1.9倍にもなっていました。これは、1つの病気が引き金となり、複数の病気を次々と引き起こしていく様子を指します。たとえば、最初は高血圧として発症し、やがて糖尿病、慢性腎臓病、心不全へと進行していく「多病併存」の流れが明らかにされています。
■若くして、糖代謝疾患、脂質代謝疾患、心血管疾患が始まる
高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病が、肥満症の方では通常より早い年齢で発症し、病気のスタート地点が早まるという深刻な事実を示しています。発症年齢が早いほど、長期間にわたる疾患管理が必要となり、がんなどの合併症リスクも増大します。早期介入による予防が何よりも重要であることが示唆されています。
■アクション:夏こそ、体を変える第一歩を
太陽の力が強い夏は、体を見直す絶好のタイミングです。少しの運動と食生活の改善、そして特定健診の受診と医師によるカウンセリングから始めてみましょう。肥満は見た目の問題ではなく、重大な病気の「起点」であることが明らかになっており、早めの対応が未来の健康を守ります。
参考文献
- Lu Q, Bao Y, Lu F, et al. Exploring population and sex‐specific disease trajectories for multimorbidities among individuals with overweight or obesity: A retrospective cohort study in UK Biobank. Diabetes Obesity and Metabolism. 2025;1–12. doi:10.1111/dom.16576