病気と健康の話

【小児】小児の夏風邪・虫刺され

■はじめに:夏は子どもの感染症の季節です

夏休みや外遊びが増えるこの季節、子どもたちはさまざまな感染症にさらされやすくなります。特に注意したいのが、「ウイルス性胃腸炎」「夏風邪(手足口病・ヘルパンギーナなど)」「マダニ媒介感染症(重症熱性血小板減少症候群:SFTS)」です。この記事では、保護者の皆さまに向けて、各感染症の原因、症状、そして家庭でできる予防法をわかりやすく解説します。

【1】マダニ媒介感染症:日本で増えている「SFTS」に注意

日本では、ライム病の報告は少ないものの、「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」というウイルス感染症が西日本を中心に増えています。原因は、SFTSウイルスを保有するマダニに咬まれること。発熱、嘔吐、意識障害、出血傾向など重篤な症状を起こし、致死率も高いことから注意が必要です。

SFTSは成人に多いとされていますが、小児の発症例も散見されており、特に山間部や草むらで遊ぶ機会のある地域では、虫除けスプレーの使用、長袖長ズボン・帽子の着用、屋外活動後のシャワーと皮膚チェックが非常に重要です。

【2】夏に多いウイルス性胃腸炎:嘔吐が先に出ることも

夏に流行するウイルス性胃腸炎の原因は、ノロウイルス、サポウイルス、アストロウイルスなどです。冬のイメージがあるノロウイルスですが、実は夏にも小児施設や家庭内で流行します。特徴的な症状は「突然の嘔吐」に始まり、下痢、腹痛、発熱を伴います。

乳幼児では脱水症状を起こしやすいため、嘔吐が始まったら水分摂取(経口補水液)をこまめに行いましょう。また、感染予防には、手洗いの徹底と、嘔吐物の適切な処理(次亜塩素酸などによる消毒)が不可欠です。

【3】子どもに多い夏風邪

夏風邪は、冬のインフルエンザとは違い、エンテロウイルス系のウイルスが原因で、以下の3疾患が代表的です。

手足口病手のひらや足、口の中に小さな水疱ができ、微熱や食欲不振を伴います。2歳以下の乳幼児に多く、保育園や幼稚園で集団感染することもあります。
ヘルパンギーナ突然の高熱と、喉の奥(口蓋垂付近)に小さな水疱や潰瘍ができます。飲食が困難になり、脱水に注意が必要です。
咽頭結膜熱(プール熱)高熱、咽頭痛、目の充血(結膜炎)が3大症状です。アデノウイルスが原因で、プールの水やタオルの共用によって感染します。
いずれも、特効薬はなく、安静と対症療法が基本となります。感染予防には、こまめな手洗いと、タオル・食器の共用を避けることが重要です。

【4】夏の「風邪」に見えるウイルス感染:実は気管支炎や肺炎の可能性も

夏場でも、ライノウイルス、アデノウイルス、一般型コロナウイルスなどによる呼吸器感染症が流行します。咳が長引いたり、ゼーゼーという喘鳴が出たりする場合には、気管支炎や喘息様気管支炎の可能性もあるため注意が必要です。

また、慢性の呼吸器疾患(喘息など)をもつお子さまは、夏でも発作が起こる可能性があります。救急外来での受診が増える一因にもなっています。お子さまに吸入薬やレスキュー薬が処方されている場合は、使用方法を家庭で再確認しておくことが推奨されます。

【5】予防接種と健診:夏の体調管理は“先手必勝”

夏休みは、小児科での定期予防接種を受ける絶好のタイミングでもあります。定期予防接種歴を見直し、未接種のものは夏休み期間を利用して済ませることをお薦めします。また、冬に流行するインフルエンザワクチン接種時期について、夏のうちに計画することが大切です。

■まとめ:子どもたちが安心して夏を過ごせるように

子どもたちの夏の体調管理は、家族全体の健康にも関わります。外出前の準備、帰宅後の衛生習慣、感染症に関する正しい知識があれば、多くの夏の病気は予防できます。まんかいメディカルクリニックでは、地域の皆さまが安心して夏を過ごせるよう、小児医療・予防医療の観点からサポートを行っております。

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