新型コロナウィルス感染症
新型コロナウイルス感染症は、感染しても全く症状が現れない無症状感染から、風邪のような軽い症状、肺炎のような重い症状まで、実に多様な症状が現れます。症状の重さや経過は、年齢や持病の有無、感染したウイルス株、ワクチン接種歴など、様々な要因によって大きく変わるため、一人ひとり異なった経過をたどります。
ご自身の症状について少しでも気になることがあれば、自己判断せずに速やかに医療機関にご相談ください。
代表的な初期症状
新型コロナウイルス感染症の初期症状は、ありふれた風邪やインフルエンザと非常によく似ており、見分けるのが難しい場合があります。
代表的な初期症状としては、発熱、咳、のどの痛み、鼻水、鼻づまり、倦怠感(だるさ)、頭痛、関節痛、下痢などが挙げられます。その他、味覚や嗅覚の異常も初期症状として現れることがあります。これらの症状は、数日から数週間続く場合があり、症状の現れ方や期間も人それぞれです。
軽症・中等症・重症の症状
新型コロナウイルス感染症は、症状の重さによって、軽症、中等症、重症に分類されます。
—1.軽症
発熱、咳、のどの痛み、鼻水、鼻づまり、倦怠感、頭痛、関節痛、下痢、味覚や嗅覚の異常など、比較的軽い症状が見られます。肺炎の症状は見られません。安静を保ち、水分を十分に摂取することで、多くの場合、自然に回復します。
—2.中等症
呼吸困難や肺炎の症状が現れます。 呼吸困難とは、息苦しさや呼吸をするのがつらい状態のことです。肺炎とは、肺に炎症が起こり、呼吸機能が低下する病気です。酸素飽和度(血液中の酸素の濃度)が93%以下になることもあり、入院が必要となるケースもあります。
—3.重症
呼吸不全や多臓器不全に陥るなど、生命に危険が及ぶ状態です。
呼吸不全とは、肺の機能が著しく低下し、十分な酸素を取り込めなくなる状態のことです。多臓器不全とは、複数の臓器が機能不全に陥る状態のことです。人工呼吸器やECMO(エクモ:体外式膜型人工肺)による集中治療が必要となります。
変異株(オミクロン株など)の症状の特徴
新型コロナウイルスは、常に変異を繰り返しており、オミクロン株をはじめ、さまざまな変異株が出現しています。変異株によって症状の特徴が異なる場合もあります。例えば、初期の流行で主流だった株と比べて、オミクロン株やその亜系統(LP.8.1など)、最新のNB.1.8.1, XFGなどは、上気道症状(のどの痛み、鼻水など)が多く、下気道症状(肺炎など)は少ない傾向があるという報告があります。P.8.1は現在最も支配的で、アメリカや欧州では5月中旬時点で約70%を占める主要株になりました。従来のJN.1よりも感染力はやや低いものの、免疫系からの回避能力は高いとされています。NB.1.8.1(別名 “Nimbus”)は急速に台頭中の変異株で、WHOがその「監視対象」に格上げ(5月23日)。感染力も増強されているが、既存のLP.8.1と比べ免疫系の回避能力は比較的低く、重症化リスクも上昇の兆しはないとされています。 XFG(別名 “Stratus”)は、NB.1.8.1とともに競合株とされ、現在NB.1.8.1とともに増加中です。
上気道とは、鼻腔、咽頭、喉頭などを指し、下気道とは、気管、気管支、肺などを指します。上気道症状とは、これらの上気道に炎症などが起こることで生じる症状で、咳、のどの痛み、鼻水などが代表的です。下気道症状とは、下気道に炎症などが起こることで生じる症状で、肺炎などが代表的です。高齢者や基礎疾患のある方などは重症化する可能性もあるため、注意が必要です。
後遺症の種類と症状
新型コロナウイルス感染症から回復した後も、倦怠感、咳、息切れ、脱毛、味覚・嗅覚障害、思考力の低下(ブレインフォグ)、不安感、抑うつ症状、動悸、胸痛など、実にさまざまな症状が続くことがあります。これらの症状は「後遺症」と呼ばれ、数週間から数ヶ月、場合によってはそれ以上続くこともあります。
さらに、新型コロナウイルス感染症罹患後、心血管疾患(心臓や血管の病気)や自己免疫疾患(免疫システムが自分の体を攻撃してしまう病気)の増加も報告されており、長期的な健康への影響が懸念されています。後遺症の症状や期間は人それぞれであり、まだ解明されていない部分も多いです。
後遺症の種類と症状
新型コロナウイルス感染症から回復した後も、倦怠感、咳、息切れ、脱毛、味覚・嗅覚障害、思考力の低下(ブレインフォグ)、不安感、抑うつ症状、動悸、胸痛など、実にさまざまな症状が続くことがあります。これらの症状は「後遺症」と呼ばれ、数週間から数ヶ月、場合によってはそれ以上続くこともあります。
さらに、新型コロナウイルス感染症罹患後、心血管疾患(心臓や血管の病気)や自己免疫疾患(免疫システムが自分の体を攻撃してしまう病気)の増加も報告されており、長期的な健康への影響が懸念されています。後遺症の症状や期間は人それぞれであり、まだ解明されていない部分も多いです。
■新型コロナウイルス感染症の検査と診断
新型コロナウイルス感染症の検査は、ご自身の感染を早期に発見し、適切な対応をとるためだけでなく、感染拡大を防ぐためにも重要です。検査にはいくつかの種類があり、それぞれに特徴があります。検査を受けるタイミングや場所、陽性判定後の対応なども含めて、正しく理解しておきましょう。
検査の種類(PCR検査、抗原検査など)
新型コロナウイルス感染症の検査には、大きく分けてPCR検査と抗原検査の2種類があります。それぞれの検査の特徴を詳しく見ていきましょう。
—PCR検査
鼻の奥(鼻咽頭)や唾液などから検体を採取し、ウイルスの遺伝物質を増幅して検出する方法です。極微量のウイルスでも検出が可能で、精度は非常に高いとされています。検査結果は、迅速検査キットでは数十分、通常は数時間から数日かかる場合があります。
—抗原検査
鼻の奥(鼻咽頭)などから検体を採取し、ウイルスに含まれる特定のタンパク質(抗原)を検出する方法です。PCR検査に比べて迅速に結果が得られることがメリットですが、精度はPCR検査より劣るとされています。体内のウイルス量が少ないと検出できない可能性もあるため、偽陰性(実際は感染しているにもかかわらず、検査結果が陰性となること)となるリスクがあります。
検査の精度
PCR検査は感度と特異度が高く、精度の高い検査方法です。偽陰性や偽陽性のリスクが低いことから、確定診断に用いられます。当院では、コバスLiat、BioFire SpotFireシステム、ID NOW v2.0の3種類、計5台のPCR検査機器を導入しており、的確かつ迅速な診断が可能です。
検査を受けるタイミングと場所
新型コロナウイルス感染症の検査は、以下の場合に受けることをおすすめします。
- 37.5度以上の発熱が2日以上続いている場合
- 強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある場合
- 咳、のどの痛み、鼻水、鼻づまりなどの症状がある場合
- 味覚や嗅覚に異常を感じている場合
- 新型コロナウイルス感染症の濃厚接触者と判断された場合
- 発熱などの症状はないものの、感染不安がある場合
陽性判定後の対応
PCR検査で陽性判定が出た場合は、医療機関の指示に従ってください。症状の程度や年齢、基礎疾患の有無などに応じて入院が必要となる場合があります。感染拡大を防ぐため、周りの方への感染対策を徹底することが重要です。
また、新型コロナウイルス感染症は、回復後も様々な症状が続く後遺症が残る場合があります。倦怠感、咳、息切れ、脱毛、味覚・嗅覚障害、思考力の低下(ブレインフォグ)、不安感、抑うつ症状、動悸、胸痛など、多岐にわたる症状が報告されています。さらに、新型コロナウイルス感染症罹患後、咳喘息、心血管疾患(心臓や血管の病気)、自己免疫疾患(皮膚疾患、甲状腺疾患、気管支喘息など)のリスク増加も報告されています。後遺症の症状や期間は人それぞれであり、まだ解明されていない部分も多いですが、長期的な健康への影響が懸念されています。
■新型コロナウイルス感染症の予防と治療
ワクチンの種類と効果、副反応
新型コロナウイルス感染症の予防において、ワクチン接種は効果的な手段の一つです。日本では、mRNAワクチンとウイルスベクターワクチンが接種されています。
mRNAワクチンは、ウイルスの遺伝情報の一部を体内に送り込み、体内でウイルスのタンパク質を生成させることで、免疫システムにウイルスを認識させ、抗体を作らせます。これは、いわば敵の情報を事前に教えておくことで、本番での攻撃に備えさせるようなものです。
一方、ウイルスベクターワクチンは、無害なウイルスを運び屋として利用し、新型コロナウイルスの遺伝情報の一部を体内に送り込みます。これも同様に、免疫システムにウイルスを認識させ、抗体産生を促します。
それぞれのワクチンには、効果と副反応があります。効果としては、新型コロナウイルス感染症の発症予防、重症化予防、死亡リスクの軽減などが期待できます。副反応としては、接種部位の痛み、発熱、倦怠感(だるさ)などが報告されていますが、これらの症状は通常、一時的なものです。まれに、重いアレルギー反応などが起こる可能性もありますので、接種前に医師とよく相談することが大切です。
家庭内感染の予防方法
感染者が家庭内にいる場合、どうしても濃厚接触のリスクが高まります。家庭内感染を防ぐためには、以下の対策を徹底することが重要です。
まず、こまめな換気は不可欠です。窓を開けて空気の入れ替えを行うことで、ウイルス濃度を下げ、感染リスクを低減できます。可能であれば、窓を複数開けて、空気の通り道を作るのが効果的です。
次に、手洗いは基本中の基本です。流水と石鹸で丁寧に手を洗うことで、手に付着したウイルスを物理的に除去できます。アルコール消毒液も有効ですが、手洗いができない場合の代替手段と考えるべきです。
さらに、マスクの着用も重要です。マスクは、ウイルスを含む飛沫の拡散を防ぐだけでなく、ウイルス吸入のリスクも低減します。不織布マスクは、布マスクに比べてウイルス飛沫の捕集効率が高いことが示されています。
治療薬の種類と効果、副作用
新型コロナウイルス感染症の治療には、抗ウイルス薬や抗炎症薬、ステロイド薬などが用いられます。抗ウイルス薬は、ウイルスの増殖を抑える薬であり、体内のウイルス量を減少させることで、症状の悪化を防ぎます。
当院では、新型コロナウイルス感染症に対する治療薬として、「ゾコーバ」および「ラゲブリオ」を適切な条件のもとで処方しています。いずれも軽症~中等症の方を対象に、ウイルスの増殖を抑える効果が期待される内服薬です。
—ゾコーバ(一般名:エンシトレルビル フマル酸)
作用機序 | SARS-CoV-2の「3CLプロテアーゼ」という酵素の働きを阻害することで、ウイルスの増殖を抑えます。 |
対象 | 発症から原則として72時間以内の軽症~中等症の患者さんが対象です。 |
投与方法 | 初日は一度に3錠、2日目・3日目は1錠ずつ服用(計5錠)。 3日間の短期投与です。 |
特徴 | ウイルスの排出量を早期に低下させる効果があり、症状の改善や他者への感染リスク低下が期待されます。 |
—ラゲブリオ(一般名:モルヌピラビル)
作用機序 | ウイルスの遺伝情報(RNA)にエラーを蓄積させることで、ウイルスの複製を防ぎます。 |
対象 | 発症から5日以内の軽症~中等症の患者さんで、重症化リスクのある方(高齢者、基礎疾患のある方など)に使用されます。 |
投与方法 | 1日2回、1回4カプセルを5日間服用します(合計40カプセル)。 |
特徴 | 重症化予防効果が確認されており、高齢者や持病をお持ちの方への早期投与が推奨されています。 |
-注意点
- どちらの薬剤も、妊娠中または妊娠の可能性がある方には使用できません。
- 他のお薬との併用や体調により、使用を見送る場合もございます。
- 処方は医師の診察に基づき、適応を慎重に判断いたします。
抗炎症薬は、炎症を抑え、発熱や痛みなどの症状を緩和する効果があります。ステロイド薬は、強い抗炎症作用を持つ薬で、重症化した肺炎の治療などに用いられます。これらの治療薬は、医師の処方のもと、適切な用法・用量を守って使用することが重要です。副作用として、吐き気や下痢、眠気などが起こる可能性もあります。少しでも気になる症状があれば、医師や薬剤師に相談しましょう。
最新の治療方法と自宅療養の方法
新型コロナウイルス感染症の治療は常に進歩しており、日々新しい治療薬や治療方法が開発されています。重症例では、入院が必要となることもありますが、軽症から中等症の場合は、自宅療養で経過観察を行うことが一般的です。
自宅療養中は、安静を保ち、十分な水分と栄養を摂取することが重要です。また、医師の指示に従い、呼吸困難や高熱、強い倦怠感などの症状が現れた場合は、速やかに医療機関に連絡してください。
新型コロナウイルス感染症は、回復後も倦怠感、咳、息切れ、脱毛、味覚・嗅覚障害、思考力の低下(ブレインフォグ)、不安感、抑うつ症状、動悸、胸痛など、多様な後遺症が残る場合があります。また、感染後に心血管疾患や自己免疫疾患のリスクが増加するとの報告もあります。
現在流行しているLP.8.1などの変異株においても、基本的な感染対策は有効です。ワクチン接種、マスク着用、手洗いなど感染対策を継続して実践しましょう。
PCR検査は、より感度の高い検査方法です。
■まとめ
新型コロナウイルス感染症は、軽症から重症まで、様々な症状が現れます。発熱、咳、のどの痛みといった風邪のような症状から、肺炎、呼吸不全などの重篤な症状まで、一人ひとりの症状は大きく異なります。感染が疑われる場合や少しでも不安な場合は、自己判断せずに医療機関に相談しましょう。検査方法にはPCR検査や抗原検査があり、それぞれ特徴が異なります。感染予防には、ワクチン接種に加え、マスク着用、手洗い、換気などの基本的な対策が重要です。家庭内感染を防ぐためにも、これらの対策を徹底しましょう。また、罹患後の後遺症についても理解し、適切な対応をすることが大切です。正しい知識を身につけて、感染予防と健康管理に努めましょう。