【喘息】風邪に隠れた喘息を見逃すな
風邪と間違えやすい咳の正体
咳喘息・気管支喘息とは
「風邪は治ったのに、咳だけ何週間も続いている…」そんな経験はありませんか?実はその咳、単なる風邪ではなく、「咳喘息」や「気管支喘息」が隠れている可能性があります。咳喘息は、ヒューヒュー・ゼイゼイといった喘鳴を伴わないことが多く、風邪やアレルギーと間違われやすいのが特徴です。特に夜間や明け方に咳が強くなりやすく、会話や運動で悪化する傾向もあります。放置すると、将来的に本格的な喘息へと進行することもあるため、早めの診断と治療が重要です。当院では、隠れた喘息を見逃さないために、症状と検査の両面から丁寧に評価を行っています。
風邪による咳と喘息の咳の違いとは?
風邪による咳は、ウイルスが気道に炎症を起こすことで一時的に起こるもので、発熱や鼻水、喉の痛みなどと一緒に現れることが多く、数日から1週間程度で自然に治まります。一方、咳喘息や喘息では、こうした症状がなくなった後も咳だけが続くのが特徴です。特に夜中から明け方にかけて、また冷たい空気や運動などで悪化する傾向があります。さらに、気道の過敏性が背景にあるため、煙や香水など些細な刺激でも咳が誘発されます。咳の原因が風邪なのか、それとも喘息に関連するものなのかを見極めることはとても大切です。当院では、それぞれの特徴を丁寧に問診し、必要に応じて検査を組み合わせて診断しています。
隠れ喘息の見抜き方
診断のポイントとは?
咳が長引く原因は多岐にわたります。まずは「いつから咳が出ているか」「どの時間帯に強くなるか」「何がきっかけで咳が出るか」を把握することが重要です。また、アレルギー体質や家族歴、過去に喘息を指摘されたことがあるかどうかも診断の鍵になります。加えて、薬の副作用や胃酸逆流など、呼吸器以外の原因が隠れていることもあるため、全身の視点で見極める必要があります。当院では詳細な問診と診察に加え、必要に応じて血液検査や呼吸機能検査、レントゲン検査を行い、根本原因を丁寧に探ります。大人の「咳喘息」は見逃されやすいですが、正確な診断があれば適切に治療することができます。
当院の強み ― FeNO検査とモストグラフ(FOT)の有用性
当院では、咳や喘息の診断に「FeNO(一酸化窒素濃度)」と「モストグラフ(FOT)」という2つの検査を導入しています。FeNO検査は、息を吐くだけで気道の炎症レベルを測定でき、好酸球性炎症の有無を高精度に把握できます。数値が高ければ喘息の可能性が高く、逆に低ければ別の原因を疑う指標になります。さらにモストグラフ(FOT)は、呼吸中の気道抵抗を測定し、肺の奥の状態まで把握できる画期的な検査です。どちらも痛みがなく、短時間で行える検査のため、小児や高齢者にも安心して実施できます。これらの検査を併用することで、目に見えにくい「隠れ喘息」を見逃さず、根拠に基づいた診断と治療方針の決定が可能になります。
参考文献
- Niimi A, Ohbayashi H, Sagara H, et al.
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