病気と健康の話

【新型コロナ】2025年夏の波に備えを—NB.1.8.1(ニンバス)変異株とは?―

新たな夏の感染拡大「NB.1.8.1(ニンバス)」が世界で急増

2025年夏、世界では再び新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者が増加傾向にあります。今回の主な原因とされているのが、新たな変異株「NB.1.8.1(通称:ニンバス)」です。

この株は、オミクロン系統「JN.1」から派生した下位変異株で、中国やインド、タイ、ベトナムなど東南アジア各国で猛威を振るい、ヨーロッパやアメリカでも拡大が報告されています。

WHOも注目する変異株

世界保健機関(WHO)は、NB.1.8.1を「監視下の変異株(Variant Under Monitoring)」に指定。今後の感染状況によってはさらなる分類の引き上げも検討される可能性があります。

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)のデータによると、2025年6月時点で、アメリカ国内の新規感染の約3分の1がこの変異株によるものとなっており、1か月で5%→33%へと急増しています。

症状の特徴と感染力

現在のところ、NB.1.8.1が特に重症化しやすいという明確な証拠はありませんが、感染の広がりや優位性から見て、従来株より免疫系の回避能力が強い可能性が指摘されています。

報告されている主な症状:

  • 激しいのどの痛み(“カミソリのような”と表現されることも)
  • 倦怠感
  • 軽度の咳
  • 発熱
  • 筋肉痛
  • 鼻水・鼻づまり

「夏でも広がる」コロナ

「コロナは冬の病気」という常識は通用しなくなっています。実際に、毎年夏と冬の2回流行します。WHN(世界保健ネットワーク)は、ニンバス株が夏季、それも高温多湿な地域で感染拡大を引き起こしていることに警鐘を鳴らしており、季節にかかわらず感染対策の継続が求められています。

高精度な診断にはPCR検査を:当院での対応

当院では、以下の理由からPCR検査を推奨しています:

高感度・高精度

わずかなウイルス量でも検出可能で、無症状者や感染初期の方でも診断可能。特異性も非常に高く、偽陽性も稀です。

抗原検査との違い

原検査に比べてPCRは約2倍の感度があり、誤判定リスクの低減に貢献します。

多病原体同時検出可能

コロナ、インフルエンザ、百日咳、RSウイルスなど、複数の感染症を一度にチェックできる機種(ビオメリュー社製, BioFire SpotFire Rパネル)も導入しています。
PCRの一つである、Multiplex-Nested PCR法により、1度に同時に15種類の呼吸器感染症の病原体(ウイルス11種類、細菌4種類)の診断を可能とした最新の診断装置です。新型コロナウイルス、インフルエンザはもちろんの事、ヒトメタニューモウイルスなど呼吸器感染症病原体として重要なものを15分で確定診断できます。特に、百日咳やマイコプラズマなどは、今まで信頼性の高く迅速な検査法がありませんでしたが、BioFire SpotFire Rパネルの登場により、診断プロセスに革新をもたらす可能性が在ります。

新型コロナ治療薬:ゾコーバとラゲブリオを適切に処方

ゾコーバ(エンシトレルビル フマル酸)

  • 日本発の新薬(塩野義製薬)、2022年に緊急承認
  • 3日間でウイルス量を減少させ、他者への感染リスクを軽減
対象発症から72時間以内の軽症〜中等症の方に有効
投与方法初日3錠、2・3日目は1錠ずつ
主な副作用下痢、眠気、味覚異常など(多くは一時的)
注意点妊娠中・授乳中の方には使用できません
他の薬との併用には注意が必要(例:抗がん剤、抗不整脈薬)

ラゲブリオ(モルヌピラビル)

  • ウイルスの遺伝情報を破壊して複製を防ぐ
対象高齢者や持病を持つ方に特に推奨
投与方法発症5日以内に服用開始が必要。1日2回、1回4カプセル、5日間の服用
主な副作用下痢、眠気、味覚異常など(多くは一時的)
注意点妊娠中・授乳中の方には使用できません
他の薬との併用には注意が必要(例:抗がん剤、抗不整脈薬)

ワクチンと治療薬の二本柱で重症化予防

ワクチンは感染予防と重症化の抑制に、治療薬は発症後の症状悪化の防止に効果があります。「予防と治療」の両輪が、今後のコロナ対策の鍵です。ご高齢の方や持病のある方は、2025-2026年シーズン用に更新されたワクチンを接種すべきです。(ファイザーは5月28日に更新申請済み)世界保健機関(WHO)も高齢者を含むリスクグループに対し、COVID-19ワクチン接種を最新の状態に保つことを推奨しています。これは、変異株の出現や時間の経過とともにワクチンの効果が弱まる可能性があるためです。ワクチン接種と治療薬は、新型コロナウイルス感染症対策において相補的な役割を担っています。ワクチン接種で感染を予防し、万が一感染した場合には治療薬で重症化を防ぐという、多層的なアプローチが重要です。

ご相談は当院まで

夏の外出が増える季節。「風邪っぽい」「のどが痛い」と感じたら、まずはお気軽にご相談ください。PCR検査の実施、治療薬の適切な処方まで、迅速に対応いたします。

参考文献

  • Virological characteristics of the SARS-CoV-2 NB.1.8.1 variant Uriu, Keiya et al.The Lancet Infectious Diseases, Volume 0, Issue 0
  • Mukae H, Yotsuyanagi H, Ohmagari N, Doi Y,Imamura T, Sonoyama T, Fukuhara T, Ichihashi G,Sanaki T, Baba K, Takeda Y, Tsuge Y, Uehara T.2022.A Randomized Phase 2/3 Study of Ensitrelvir, a Novel Oral SARS-CoV-2 3C-Like Protease Inhibitor, in Japanese Patients with Mild-to-Moderate COVID-19 or Asymptomatic SARS-CoV-2 Infection: Results of the Phase 2a Part. Antimicrob Agents Chemother66
  • Highly sensitive detection of SARS-CoV-2 RNA by multiplex rRT-PCR for molecular diagnosis of COVID-19 by clinical laboratories Takayuki Ishige a, Shota Murata,Toshibumi Taniguchi,Akiko Miyabe,Kouichi Kitamura, Kenji Kawasaki, Motoi Nishimura a,

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