【片頭痛】春に増える片頭痛:〜季節の変わり目に頭痛が増える理由と、最新のエビデンスに基づく対策〜
■1. 春になると片頭痛が悪化する? その実態と理由
「桜が咲く季節になると決まって頭痛がひどくなる」「年度始めは毎年、頭が痛くて仕事にならない」そんなお悩みを抱えている方は少なくありません。片頭痛は、単なる「ひどい頭痛」ではなく、世界で約12億人が抱える神経疾患であり、Global Burden of Disease研究では、50歳未満の成人において障害の第1位の原因と位置付けられています(Martinelli et al., Lancet Neurology, 2026)。日本でも多くの患者さんが片頭痛に苦しんでおり、仕事・家事・育児など日常生活に大きな支障をきたしています。
春に片頭痛が悪化しやすい背景には、複数のリスク因子が重なりやすい季節的特性があります。気温や気圧の急激な変動、環境アレルギー(花粉症など)、新年度に伴うストレスの急増と生活リズムの乱れ、睡眠の質の低下、食事パターンの変化——これらが複合的に重なることが、春の片頭痛悪化を招く主な原因です。
気圧の変化については、気圧低下が脳の血管系および三叉神経血管系(後述)を刺激し、頭痛発作を誘発する可能性があることが知られています。また、春は年度替わりの時期でもあり、進学・転職・異動・引っ越しなどのライフイベントが集中します。ストレスは、ストレスレベルの上昇だけでなく、「ストレスが急に下がる(ゴールデンウィークの連休初日など)」という変化そのものも片頭痛の誘発因子になりえることが報告されています(Hilliard et al., MedicineToday, 2022)。さらに、春は新入学・新学期など生活時間が大きく変わることで、睡眠時間の乱れが起こりやすく、睡眠障害と片頭痛は双方向の悪化関係にあることもわかっています。 このように春は、片頭痛を悪化させる要因が一度に押し寄せる【嵐の季節】です。正しい知識を持ち、早めに対策を立てることが大切です。
■2. 片頭痛のメカニズム——なぜ頭痛が起きるのか
かつて片頭痛は「血管が拡張して起こる頭痛」と考えられていましたが、現在ではこの考え方は不完全であることがわかっています(Hilliard et al., MedicineToday, 2022)。最新の研究によると、片頭痛は脳の感覚処理の異常を根本とした複雑な神経疾患です。
片頭痛の4つのフェーズ
片頭痛は、前駆期・前兆期・頭痛期・後発期という4つのフェーズで構成されます。
前駆期(数時間〜数日前)
頭痛が始まる24〜72時間前から、視床下部をはじめとする複数の脳領域が活性化します。これが前駆症状として現れ、首のこり・食欲亢進・あくび・疲労感・光・音への過敏などを引き起こします。「甘いものが食べたくなると頭痛が来る」という患者さんがいますが、これは食欲亢進が前駆症状として現れているためであり、チョコレートが「原因」なのではないことに注意が必要です。
前兆期(頭痛の5〜60分前)
約3割の患者さんに見られます。大脳皮質に「皮質拡延性抑制」と呼ばれる電気活動の波が広がり、視覚的なギラギラ・閃輝暗点(ジグザグ模様が視野に見える)、手足のしびれや感覚異常などが生じます。症状は通常5〜60分以内に完全に消えることが特徴です。
頭痛期(4〜72時間)
三叉神経頸部複合体が活性化し、CGRPをはじめとする複数の神経ペプチドが放出されます。拍動性・中等度〜重度の頭痛が生じ、体を動かすと悪化します。光・音・においへの過敏、吐き気・嘔吐を伴います。
後発期(頭痛消失後24〜48時間)
頭痛が治まった後も疲労感・集中力低下・抑うつ感などが続きます。
CGRPとは何か——片頭痛治療の革命をもたらしたターゲット
片頭痛のメカニズムにおいて特に重要な物質が「カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)」です(Martinelli et al., Lancet Neurology, 2026)。CGRPは三叉神経血管系に豊富に存在する強力な血管拡張ペプチドで、片頭痛発作中に血漿中の濃度が上昇し、頭痛の痛みや血管変化に深く関与しています。CGRPの発見は、片頭痛治療に革命をもたらしました。CGRPを標的とした薬剤(抗CGRP抗体・ゲパント類)が開発され、片頭痛に特異的な予防薬として世界中で使用されるようになっています。
■3. 春に実践したい! 片頭痛の生活習慣改善策
片頭痛の管理において、薬物療法と同じくらい重要なのが生活習慣の改善です。「SEEDS」という5つの柱(睡眠・運動・食事・頭痛日記・ストレス管理)が、エビデンスに基づく生活習慣管理のフレームワークとして推奨されています(Hilliard et al., MedicineToday, 2022)。春は特にこれらが乱れやすい季節なので、意識的に取り組むことが大切です。
Sleep(睡眠)
睡眠と片頭痛は双方向の悪化関係にあり、睡眠の質の低下は片頭痛の頻度・重症度と関連することが報告されています。春は生活リズムが変わりやすく、睡眠が乱れがちです。睡眠制限療法・睡眠衛生指導・認知行動療法(CBT for Insomnia)は、片頭痛の頻度改善に効果があることが示されています。就寝・起床時間を一定に保つ、就寝前のスマートフォン使用を控える、睡眠環境を整えるといった基本的な取り組みが重要です。いびきや日中の強い眠気がある場合は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)の可能性もあるため、専門医への相談をお勧めします。
Exercise(運動)
265件の研究を対象とした最新メタアナリシスによると、有酸素運動(週3〜5回、1回30〜50分)を6週間以上継続することで、片頭痛の発作頻度を有意に減少させることが示されています(Hilliard et al., MedicineToday, 2022)。また、運動療法は薬物療法に劣らない効果を持ち、両者を組み合わせることで相加的な効果が期待できるとされています。春は外に出やすく、ウォーキングや軽いジョギングを始めるのに絶好の季節です。ただし、急激な高強度の運動がかえって頭痛を誘発することもあるため、段階的に運動強度を上げていくことが重要です。
Eating(食事)
片頭痛患者の約3分の1が食事による誘発を報告していますが、その多くは「前駆症状による食欲変化」との混同であるとされています(Hilliard et al., MedicineToday, 2022)。例えば、チョコレートを食べて頭痛になる場合、実はチョコレートへの欲求自体が前駆症状として現れており、チョコレートが頭痛の原因ではない可能性が高いです。一方、確実に片頭痛の誘発因子となるのは「絶食・空腹」です。春は新生活で食事が不規則になりがちですが、血糖値を安定させる食事リズムを維持することが重要です。低脂肪食・低GI食・地中海式食事も頭痛頻度改善に関連するという報告もあります。カフェインについては、急な摂取中止が離脱症状として頭痛を引き起こすことがあるため、摂取している場合は1日200mg(コーヒー2杯程度)を上限に、急な変更を避けることが推奨されています。
Diary(頭痛日記
頭痛日記は、頭痛の発生頻度・持続時間・重症度・誘発因子・使用薬剤を記録するためのツールです。これにより、自分の頭痛のパターンや誘発因子を把握でき、主治医との情報共有にも役立ちます(Martinelli et al., Lancet Neurology, 2026)。また、急性期治療薬の過剰使用(薬物乱用頭痛:MOH)の早期発見にも不可欠です。スマートフォンアプリでも管理できる電子版の頭痛日記が広く利用されるようになっています。
Stress(ストレス管理)
ストレスと片頭痛は複雑な関係にあります。ストレスレベルの上昇だけでなく、「急な解放(ストレスが急に下がること)」も発作の誘発因子となりえます。これがゴールデンウィーク初日や週末に頭痛が出やすい理由のひとつです。緩和療法・認知行動療法(CBT)・バイオフィードバックはグレードAのエビデンスで片頭痛への有効性が支持されています(Hilliard et al., MedicineToday, 2022)。マインドフルネスを薬物療法に加えることで、慢性片頭痛・薬物乱用頭痛の改善に有効であることも示されています(Martinelli et al., Lancet Neurology, 2026)。春の環境変化の中で、無理をしすぎず、自分なりのリラクゼーション習慣を維持することが大切です。
■4. 片頭痛の薬物療法——急性期治療と予防療法
急性期治療(発作が起きたときの薬)
片頭痛の急性期治療の目標は、「2時間以内の完全な頭痛消失」です(Hilliard et al., MedicineToday, 2022)。
まず試みる薬として、アスピリン(900mg)・イブプロフェン(600mg)・ナプロキセン(750mg)・アセトアミノフェン(1g)などの解熱鎮痛薬があります。これらを早期(頭痛が軽いうちに)服用すること、また組み合わせて使用することで効果が高まります。吐き気が強い場合は、メトクロプラミドを制吐剤として使用することで、痛み止めの吸収が改善され、追加の鎮痛効果も得られます。
解熱鎮痛薬のみでは不十分な場合、トリプタン系薬が有効です。スマトリプタン、エレトリプタン、ナラトリプタン、リザトリプタンなどがあり、単剤でも18〜50%の患者さんで完全な頭痛消失が得られることが示されています。吐き気が強い場合は、スマトリプタン点鼻薬・皮下注射・リザトリプタンのウエハー錠など、内服以外の剤形も選択できます。
薬物乱用頭痛(MOH)に注意
頭痛のたびに急性期治療薬を頻繁に服用することで、慢性頭痛がさらに悪化する「薬物乱用頭痛(MOH)」が引き起こされることがあります(Hilliard et al., MedicineToday, 2022)。これは脳内の痛みを抑制する回路の機能低下によるものです。トリプタン系薬は、月に10日以内、解熱鎮痛薬は月に15日以内の使用にとどめることが重要です(Martinelli et al., Lancet Neurology, 2026)。市販の頭痛薬を長期間・頻繁に使用している方は、MOHが起きている可能性があるため、専門医への相談をお勧めします。
予防療法——なぜ予防が大切なのか
片頭痛予防療法の目的は、発作の頻度・重症度を減らし、日常生活への影響を最小化することです。月4日以上の頭痛がある方、生活の質が著しく低下している方、急性期治療薬が効きにくい方、急性期治療薬を頻繁に使用している方には、予防療法が推奨されます(Martinelli et al., Lancet Neurology, 2026)。
以前は他の病気のために開発された薬(β遮断薬・三環系抗うつ薬・抗てんかん薬など)が片頭痛予防に転用されてきましたが、これらは効果が限定的で副作用のために中断率が高く、片頭痛の予防療法が十分に活用されてこなかった歴史があります。
しかし過去8年で、CGRPを標的とした「片頭痛に特化した予防薬」が相次いで登場し、片頭痛治療は大きく変わりました(Martinelli et al., Lancet Neurology, 2026)。抗CGRP抗体(エレヌマブ・フレマネズマブ・ガルカネズマブ・エプチネズマブ)は皮下注射または点滴静注で投与され、月2〜3割の患者さんで月の片頭痛日数が50%以上減少するという高い効果が示されています。また、アトゲパントやリメゲパントといった経口のCGRP受容体拮抗薬(ゲパント類)も申請が行われ、今後の実用化が期待されています。これらのCGRPを標的とした薬剤は、副作用がプラセボと同程度と少なく、継続率も高いことが特徴です(Martinelli et al., Lancet Neurology, 2026)。
エビデンスに基づく国際的な学会(米国頭痛学会・欧州頭痛連盟)は、抗CGRP療法を片頭痛予防の第一選択肢として位置づけるよう、ガイドラインを更新しています(Martinelli et al., Lancet Neurology, 2026)。
■5. 2025年の最前線——片頭痛治療の新ターゲット
片頭痛治療の研究は急速に進んでいます。2025年には、CGRP以外の複数の新たな治療ターゲットについて重要な進展がありました(Haanes & Ashina, Cephalalgia, 2026)。CGRP標的薬でも効果が不十分な患者さんの存在を踏まえ、新しい治療の選択肢が模索されています。
PACAP(下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド)
PACAPは、片頭痛発作を誘発する強力な因子として知られていましたが、その作用がCGRPと独立したものであることが2025年にランダム化比較試験で確認されました。抗CGRP薬(エプチネズマブ)を事前に投与された状態でも、PACAPの点滴投与が片頭痛発作を誘発したのです(Haanes & Ashina, Cephalalgia, 2026)。これにより、PACAPはCGRPの下流ではなく、独立した片頭痛経路であることが証明されました。PACAPを標的とした抗体薬(Lu AG09222)は、すでに第2相試験で月の片頭痛日数を有意に減少させることが示されており(HOPE試験)、今後の臨床応用が期待されています。
サブスタンスP(物質P)
サブスタンスPは、片頭痛の三叉神経血管仮説において早期から注目されていた神経ペプチドですが、2000年代初頭に臨床開発が停滞していました。2025年の研究では、健康成人へのサブスタンスP点滴投与が頭痛および動脈拡張を引き起こすことが、コントロール試験で改めて確認されました(Haanes & Ashina, Cephalalgia, 2026)。この結果は、サブスタンスPが人間の頭痛において重要な役割を持つことを再証明するものであり、サブスタンスPを標的とした治療戦略への関心が再燃しています。
血管ATPキナーゼ感受性カリウムチャネル(KATP)
血管のKATPチャネルは、CGRPとPACAPの両方による片頭痛発作の下流に位置する「共通の収束点」として機能する可能性が示されています(Haanes & Ashina, Cephalalgia, 2026)。KATPチャネルの開口が硬膜侵害受容器を直接活性化・感作することが明らかになり、KATPチャネルを阻害することで、複数の片頭痛誘発因子に対して広く効果を示す新たな治療薬の開発が期待されています。
PAR2(プロテアーゼ活性化受容体2)
PAR2(プロテアーゼ活性化受容体2)は、神経系と免疫系の接点に位置する受容体であり、三叉神経ニューロン・硬膜線維芽細胞・内皮細胞・肥満細胞に発現しています。2025年の研究では、PAR2を標的とした抗体(MEDI0618)が複数の片頭痛動物モデルで効果を示し、しかもCGRP阻害の範囲を超えた効果が確認されました(Haanes & Ashina, Cephalalgia, 2026)。これは、既存のCGRP標的薬に反応しない患者さんにとっても効果が期待できることを示唆しています。
これらの知見は、片頭痛が単一の神経伝達物質によるものではなく、複数の独立した経路が関与する疾患であることを示しています。将来的には、個々の患者さんの病態に応じた「精密医療(Precision Medicine)」として、最適な治療ターゲットを選択できる時代が来ることが期待されています(Haanes & Ashina, Cephalalgia, 2026)。
■よくある質問(FAQ)
Q: 春になると毎年片頭痛がひどくなります。季節の変わり目と片頭痛は本当に関係があるのですか?
はい、関係があると考えられています。片頭痛の発作を誘発・悪化させる「修正可能な因子」として、ストレス、睡眠の乱れ、食事パターンの変化などが挙げられており(Martinelli et al., Lancet Neurology, 2026)、これらはいずれも春に重なりやすいものです。また、ストレスについては、ストレスレベルの上昇だけでなく、「ストレスの急な解放(連休初日など)」も片頭痛の誘発因子になりうることが示されています(Hilliard et al., MedicineToday, 2022)。さらに、気圧や気温の急変が三叉神経血管系を刺激して頭痛を誘発するメカニズムも研究されています。春は新年度のライフイベント(転職・入学・引っ越しなど)が重なり、睡眠リズムの乱れとストレス増加が同時に起こりやすい季節です。このような複数の誘発因子が重なることが、春の片頭痛悪化の背景にあると考えられています。毎年この時期に症状が悪化する場合は、「春が来る前から」予防的な生活習慣の調整と、必要に応じた予防療法の開始を検討することが重要です。
Q: 片頭痛と緊張型頭痛はどう違いますか? また、片頭痛かどうかは自分で判断できますか?
片頭痛と緊張型頭痛は特徴が異なります。緊張型頭痛は、「締め付けられるような」ずっしりとした頭痛で、発作時間が短く、吐き気・光や音への過敏は基本的にみられず、日常動作で悪化しないことが特徴です(Hilliard et al., MedicineToday, 2022)。一方、片頭痛は「拍動性(ドクンドクンと脈打つ)」の中等度〜重度の頭痛で、4〜72時間持続し、吐き気・嘔吐、光・音・においへの過敏のいずれかを伴い、体を動かすと悪化します(ICHD-3診断基準)。スクリーニングツールとして「ID-Migraine質問票」(①頭痛中の吐き気、②光への過敏、③1日以上の生活障害——この3項目のうち2項目以上あれば片頭痛の可能性が高い)が一次医療での有用なスクリーニング法として推奨されています(Hilliard et al., MedicineToday, 2022)。ただし、頭痛の種類の確定診断は医師が行うものです。特に「今まで経験したことがないほど突然激しい頭痛(雷鳴頭痛)」「神経症状を伴う頭痛」「50歳以降の新たな頭痛」「発熱・首の痛みを伴う頭痛」などの「レッドフラッグ(危険信号)」がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。
Q: 片頭痛の予防薬はいつから始めるべきですか? どのくらい続ければ効果が出ますか?
国際頭痛学会(IHS)のガイドラインによると、以下のいずれかに当てはまる場合に予防療法が推奨されます:①月4日以上の頭痛がある、②頭痛が仕事・社会生活・個人生活に支障をきたしている、③急性期治療薬が効きにくい、④急性期治療薬を頻繁に使用している(Martinelli et al., Lancet Neurology, 2026)。疫学データでは、反復性片頭痛患者の約30〜40%が予防療法の適応とされています。予防薬の効果判定には時間がかかります。抗CGRP抗体薬・オナボツリヌムトキシンA(ボトックス)は、少なくとも3か月(理想的には6か月)継続してから効果を判定することが推奨されています(Martinelli et al., Lancet Neurology, 2026)。また、より早期から治療を開始した患者さんの方が、より高い治療反応率(月の片頭痛日数50%以上減少)を示すことが、ドイツのリアルワールド研究やEUREKA Consortiumの大規模研究(参加者5,818名)で示されています(Martinelli et al., Lancet Neurology, 2026)。効果が出ている場合、治療サイクルは少なくとも12か月間継続することが推奨されています。
Q: 「CGRP抗体」という薬を聞いたことがあります。従来の薬とどう違うのですか? 副作用は心配ですか?
抗CGRP抗体(エレヌマブ・フレマネズマブ・ガルカネズマブ・エプチネズマブ)は、片頭痛の発症に深く関与するCGRPという神経ペプチドまたはその受容体を特異的に標的とした、初めて「片頭痛のために設計された」予防薬です(Martinelli et al., Lancet Neurology, 2026)。従来の予防薬(β遮断薬・抗てんかん薬・三環系抗うつ薬など)は、もともと高血圧・てんかん・うつ病のために開発された薬を転用したものであり、片頭痛への特異性が低く、オフターゲットの副作用(倦怠感・体重増加・認知機能低下など)による中断率が高いという問題がありました。抗CGRP抗体はこれらの問題を克服し、プラセボと同程度の副作用プロファイルを持ち、副作用による治療中断率は10%未満と低いことが、大規模なメタアナリシスで示されています(Martinelli et al., Lancet Neurology, 2026)。主な副作用は注射部位反応・便秘・上気道感染症で、多くの場合軽度です。一方、心血管系疾患(最近の脳卒中・心筋梗塞・不安定狭心症)のある方や、重篤な高血圧の方には慎重投与が必要です。また、妊娠中・授乳中の使用データが不十分なため、妊娠を希望する場合は少なくとも妊娠6か月前から中断することが推奨されています。
Q: 片頭痛には市販薬で対応していますが、いつ病院を受診すべきですか? また、当クリニックでどのような治療が受けられますか?
以下のような場合は、速やかに医療機関を受診することをお勧めします。「突然の激しい頭痛(雷鳴頭痛)」「手足の麻痺・言語障害・視力障害などの神経症状を伴う頭痛」「発熱・首の硬直を伴う頭痛」「50歳以降に初めて出現した頭痛」「体位によって変化する頭痛」「けいれん・意識消失を伴う頭痛」——これらは「レッドフラッグ(SNNOOP10リスト)」と呼ばれ、二次性頭痛(脳出血・髄膜炎など)の可能性があります(Hilliard et al., MedicineToday, 2022)。また、市販薬を月に10〜15日以上使用している場合も、薬物乱用頭痛(MOH)の可能性があるため受診をお勧めします。当クリニック(まんかいメディカルクリニック)では生活習慣指導から急性期治療薬の処方まで、エビデンスに基づいた包括的な片頭痛管理を提供しています。「頭痛は仕方ない」と諦めずに、ぜひご相談ください。
参考文献
- Martinelli D, De Icco R, Al-Khazali HM, Ashina S, Diener HC, Dodd-Glover F, Goicochea MT, Jenkins B, MaassenVanDenBrink A, Lee MJ, Özge A, Peres MFP, Pozo-Rosich P, Puledda F, Sacco S, Schwedt T, Terwindt GM, Tassorelli C. Advances in migraine prevention. Lancet Neurol. 2026;25:279–293.
- 2. Hilliard T, Ray JC, Hutton EJ, Stark RJ. Migraine in 2022: An update on management. MedicineToday. 2022;23(9):57–64.
- 3. Haanes KA, Ashina H. 2025 Highlights in new targets for migraine treatment. Cephalalgia. 2026;46(1):1–4. DOI: 10.1177/03331024251413488.
まんかいメディカルクリニック 生活習慣病・内分泌・甲状腺専門
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記事監修者田場 隆介
医療法人社団 青山会 まんかいメディカルクリニック 理事長
医療法人社団青山会代表。兵庫県三田市生まれ、三田小学校、三田学園中学校・同高等学校卒業。 1997(平成9)年岩手医科大学医学部卒業、町医者。聖路加国際病院、淀川キリスト教病院、日本赤十字社医療センター、神戸市立医療センター中央市民病院を経て、2009(平成21)年医療法人社団青山会を継承。 2025年問題の主な舞台である地方の小都市で、少子高齢化時代の主役である子どもと高齢者のケアに取り組んでいる。
