【新型コロナ】2025–26年 冬の波に備えて ― 秋の追加接種をおすすめします
■夏の波総括と冬の予測
記録的に暑かった今夏。密閉冷房環境が減るにつれて、当地ではようやく新型コロナの「夏の波」がピークアウトしつつあります。今季の夏の流行は主にアジアで年始に拡大した「Nimbus(ニンバス)」が、沖縄経由でお盆前後に本州へ広がったものと説考えられます。
一転して、2025–26年の冬は「寒い冬」の予報。暖房で密閉環境が増える前に、今秋の追加接種で備えることが重要です。冬の波として、現在ヨーロッパで存在感を増しているXFG(Stratus/“フランケンシュタイン”)株の動向が気になります。
■XFG(Stratus/Frankenstein)株とは?
XFGはオミクロン系統の組換え株で、2025年1月に初検出され、6月にWHOが「監視下の変異株(Variant Under Monitoring, VUM)」に指定しました。現在のところ、既存ワクチンの重症化予防効果は維持される見通しです。
分子進化・抗原性の解析では、XFGはLF.7 × LP.8.1.2 の組換えで、スパイク蛋白にS31P/K182R/R346T/V445R/F456L/N487D/Q493E/T572Iなどの変異を持ち、中和抗体回避(免疫逃避)がやや強い一方、ACE2結合効率は相対的に低下する可能性が示されています。これが「感染しやすいが重症度は従来株並み」というバランスの背景と考えられます。
症状の特徴:「かすれ声」
XFG(Stratus)は上気道優位の症状が目立ち、とくに「かすれ声(hoarse/raspy voice)」が初期から出やすいのが特徴と報告されています。咳・咽頭痛・発熱・倦怠感・筋肉痛・鼻汁・頭痛・消化器症状などは従来と同様ですが、「かすれた声」は見逃されやすく、早期の検査・隔離のタイミングを遅らせる要因になり得ます。
欧州のいま:アイルランドとフランスの最新動向
アイルランドでは、9月に入りStratus(XFG)が新規感染の多数を占めるとの報道が相次ぎ、“かすれ声”の早期症状に注意喚起が出ています。公式サーベイランスでも、救急経由入院などの重症急性呼吸器感染(SARI)指標が成人で増加に転じた週が確認され、秋の流行への警戒感が高まっています(値は週報で毎週更新)。
フランスでも、8月末以降陽性率・疑い例の受診・救急外来でのCOVID関連受診の増加が報告され、西部〜北西部を中心にXFG(“Frankenstein”)の影響が指摘されています。国内公衆衛生当局の定例資料やサマリーでも、9月第2週〜第3週にかけて年少者・成人とも受診が増の傾向が示されています。10月からの秋の接種キャンペーンに合わせ、ワクチンで重症化を抑える方針が再確認されています。
これら欧州の事例は、日本が冬を迎える前の“先行指標”である可能性があります。天気予報通り12月から一気に気温が低下した場合、屋内滞在時間の増加に伴って地域流行の立ち上がりが早まる可能性を示唆します。早めの追加接種と基本対策の「再起動」が有効です。
■なぜ「秋の追加接種」なのか
英国保健安全庁(UKHSA)のサーベイランスでは、昨秋の接種者は非接種者に比べ入院が約43%少ないことが示されています。ワクチン効果は徐々に低下するため、秋に追加接種をして冬の重症化を抑えるのが合理的です。今季(2025年秋)の英国の対象は75歳以上・高齢者施設入所者・免疫抑制のある6か月以上に重点化されています(日本と制度は異なりますが、「高リスク層に確実に届ける」という考え方は共通しています)。
日本でも、厚生労働省は定期接種ワクチンの抗原組成を毎年度見直し、流行株に対応した一価(例:JN.1/KP.2/LP.8.1 など)の使用方針を示しています。「毎年秋冬に定期接種」の枠組みの中で、対象者に確実に接種を行う方針です。
三田市の制度(令和7年度):対象・手続き
三田市でも令和7年度の新型コロナ定期予防接種が実施されます。対象は65歳以上、および60–64歳で心臓・腎臓・呼吸器の機能障害など一定の条件に該当する方です。自己負担や手続きの詳細、接種医療機関一覧は市公式サイト・配布資料をご確認ください(受付開始・発行時期・持参物などの案内有)。
受ける前にチェック(簡易フロー)
1.対象確認・書類準備:市の案内に従い、必要書類(接種券・依頼書・本人確認等)を確認。 |
2.医療機関へ予約:在庫・日程・自己負担の有無(公費/任意)を確認のうえ予約。 |
3.同時接種の可否:医師が必要と認めれば同時接種可(インフル等)。接種間隔の制限はありません。 |
日常でできる感染対策(再起動リスト)
追加接種 | 前回から6か月以上空いていれば秋に接種を。重症化リスクの高い方は優先的に。 |
マスク | 人混み・医療機関・高齢者施設などでは着用を検討。 |
換気 | 窓開け+換気扇/空気清浄機の併用で空気の入替えを。 |
手指衛生 | 石けん手洗い/アルコール消毒をこまめに。 |
基礎疾患の管理 | 持病のコントロールと早めの抗ウイルス治療相談を。 |
■まとめ
- XFG(Stratus)は2025年に台頭したオミクロン系組換え株。免疫逃避はやや強いが、重症度は従来株と同程度と評価。既存ワクチンの重症化予防効果は維持されます。
- 症状では、「かすれ声」が初期から目立つ報告が多く認められます。見逃さずに検査を。
- アイルランド/フランスでは晩夏以降に指標上昇とXFG優位の報道がされています。日本の冬前の先行事例として要警戒。
- 秋の追加接種は、入院予防効果(英:約43%)など実データで裏付けられています。高齢者・ハイリスク層ほどメリットは大きいです。
- 三田市では令和7年度の定期接種を実施。対象・手続き・医療機関は市公式情報を確認のうえ、10〜12月のうちに接種を計画してください。
[ 令和7年度 新型コロナウイルス感染症定期予防接種 ]
参考(主要ソース)
- WHO. Risk Evaluation for SARS-CoV-2 Variant Under Monitoring: XFG世界保健機関
- WHO. XFG has been designated a SARS-CoV-2 variant under monitoring (PDF)。世界保健機関
- Guo C, et al. Antigenic and virological characteristics of SARS-CoV-2 variants BA.3.2, XFG, and NB.1.8.1(bioRxiv/Lancet Infect Dis 2025)BioRxiv+1
- WIREᴅ. Feeling Hoarse? You Might Have the New ‘Stratus’ Covid VariantWIRED
- HPSC(アイルランド). SARI Surveillance Report Week 35, 2025HPSC
- The Connexion(仏). ‘Frankenstein’ expected to spike in France this autumnConnexion France
- Journal des Femmes Santé. Covid France: sante.journaldesfemmes.fr
- UKHSA Blog. Who’s eligible for the 2025 COVID-19 vaccine, or ‘Autumn Booster’? ukhsa.blog.gov.uk
- 厚生労働省. 新型コロナワクチンQ&A(抗原組成の年次見直し/同時接種可)。厚生労働省+1
- 厚労省資料. 2025/26シーズンの抗原組成に関する審議資料(JN.1/KP.2/LP.8.1等)。厚生労働省
- 三田市. 令和7年度 新型コロナウイルス感染症定期予防接種(制度案内)。三田市公式サイト
- 三田市. 令和7年度 個別接種実施医療機関一覧(PDF)。三田市公式サイト
- アイルランドでのXFG優位化を伝える報道The Sun