病気と健康の話

【帯状疱疹】誰の体にも眠る無数のウィルス―ストレスやコロナが体内の「同居ウイルス」を起こす仕組みと免疫への影響、そしてワクチンという備え―

はじめに ― あなたの体にも、ウイルスが「眠って」います

子どものころに水ぼうそうにかかった方は、そのウイルスがいまも体の中に残っています。水ぼうそうのウイルスは治ったあとも神経の奥にひっそりと潜み、何十年もたってから「帯状疱疹」として目を覚ますことがあります。実は、こうした「眠っているウイルス」は水ぼうそうに限りません。私たちはほぼ全員が、複数のウイルスを生涯にわたって体内に住まわせています。ふだんは免疫がしっかり見張っているため悪さをしませんが、強いストレスや病気で見張りがゆるむと、ウイルスが再び動き出す(再活性化する)ことが知られています。
2026 年 8 月、英科学誌 Nature に、この問題を扱った大規模研究が発表されました。米国 20病院で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により入院した 1,154 人を 1 年間追跡したところ、約半数(47.9%)で、もともと体内に眠っていたウイルスが目を覚ましていたのです(Maguire et al., Nature 2026)。米 Science 誌はこの研究を「コロナは体内の眠れるウイルスを起こしうる――大規模研究で確認」と報じ(Offord, Science 2026)、米公共放送NPR も、イェール大学の免疫学者岩崎明子教授を招いて「眠れるウイルスがコロナ後遺症を説明するかもしれない」と特集しました(NPR Short Wave, 2026)。本コラムでは、ストレスやコロナが眠っていたウイルスを起こす仕組み、目覚めたウイルスが免疫系に与える影響、そして私たちが「あらかじめ出来ること」――とりわけワクチンについて、欧米の最新論文をもとに解説します。

1. 誰の体にも「同居ウイルス」がいる ― 潜伏感染という共存のかた
ち

一度かかると体内に住みつき、生涯にわたって潜み続けるウイルスの代表がヘルペスウイルスの仲間です。NPR の番組で岩崎教授は、ワクチンが普及する前は 90〜98%の人が水ぼうそう(水痘・帯状疱疹)ウイルスを保有しており、成人の約 95%が伝染性単核球症の原因となる EB ウイルス(エプスタイン・バー・ウイルス)を、約 60%がサイトメガロウイルス(CMV)を持っていると説明しています(NPR Short Wave, 2026)。口唇ヘルペスの原因となる単純ヘルペスウイルス 1 型(HSV-1)も、日本を含め世界中で多くの人が保有しています。
Nature 論文の著者らは、人は常に 8〜12 種類程度の慢性感染ウイルスを抱えていると述べています。さらに、ヘルペスウイルスほど知られていない「アネロウイルス」という一群もあり、その代表であるトルクテノウイルス(TTV)は人口の 80〜90%に見つかります(Maguire et al., Nature 2026)。これらのウイルスは、ふだんは自らの目印を消して免疫の攻撃をかわす、いわば「冬眠」の状態にあります。岩崎教授はこれを、人類とともに進化してきた古いウイルスが免疫の仕組みを分子レベルで知り尽くした結果だと表現しています。
大切なのは、こうした同居ウイルスの存在そのものは「異常」ではないということです。健康な若い成人にとって、眠っているウイルスが直ちに脅威になることはほとんどありません(NPR Short Wave, 2026)。問題になるのは、免疫の「見張り」がゆるんだ時に、ウイルスが眠りから覚めて増え始める場面です。次章では、その引き金となるものを見ていきます。

2. ストレスが「見張り」をゆるめる ― 宇宙飛行士が教えてくれたこと

ウイルスの再活性化を起こす要因として、強いストレス、睡眠不足、手術、ホルモンバランスの乱れ、そして重い病気が挙げられています(Maguire et al., Nature 2026)。強いストレスがかかると、体はコルチゾール(ステロイドホルモン)やアドレナリンなどのストレスホルモンを分泌します。これらは短期的には体を守る反応ですが、長く続くとウイルス感染細胞を見張る T 細胞(リンパ球の一種)の働きを抑え、潜んでいたウイルスが動き出す隙を生みます。
この現象をはっきり示したのが、米航空宇宙局(NASA)の研究チームによる宇宙飛行士の調査です。Rooney らの総説によると、宇宙飛行中の宇宙飛行士の唾液や尿を調べたところ、半数を超える人で EB ウイルス、サイトメガロウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルスなどの再活性化が確認され、複数のウイルスが同時に目を覚ますことも珍しくありませんでした(Rooney et al., Front Microbiol 2019)。打ち上げの緊張、微小重力、睡眠リズムの乱れ、閉鎖空間での生活といった複数のストレスが重なることで、極めて健康な人でもウイルスの見張りがゆるむことが分かったのです。
では、日常のストレスでも同じことが起こるのでしょうか。岩崎教授は、子育て中の寝不足のような日々のストレスそのものを過度に心配する必要はないと述べています。再活性化の引き金となるのは、多くの場合、外傷や事故、重い感染症、免疫を抑える薬などの「大きなストレス」であり、加齢も重要な要因です(NPR Short Wave, 2026)。言い換えれば、「強いストレス」「重い病気」「年齢」が重なる場面こそ要注意であり、その代表例が重症のCOVID-19 だったのです。

3. コロナが眠りを覚ます ― 1,154 人を 1 年追跡した Nature 論文

Maguire らの研究は、米国国立衛生研究所(NIH)が支援する IMPACC 研究の一環として行われました。2020 年 5 月から 2021 年 3 月に米国 20 病院へ入院した、ワクチン未接種の COVID19 患者 1,154 人から、鼻ぬぐ液、血液中の免疫細胞(末梢血単核球)、人工呼吸器装着者の気管吸引液を最大 10 回採取し、ウイルスの遺伝子の「読み取り(転写)」を網羅的に解析しました(Maguire et al., Nature 2026)。抗体ではなく、実際に増殖しているウイルスの RNA を直接とらえた点が、従来研究との大きな違いです。
その結果、新型コロナウイルス以外に、EB ウイルス、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス 1 型、そしてアネロウイルスなどが高い頻度で検出されました。入院後 40 日以内に少なくとも 1 種類のウイルスが目を覚ましていた人は 47.9%に達しました。興味深いのは、ウイルスごとに「目覚める時期」が違っていたことです。EB ウイルスは入院直後に最も多く(入院 1〜8 日目で 24%)、その後ゆっくり減少しました。一方、単純ヘルペスウイルス 1 型とサイトメガロウイルスは入院 19〜23 日目ごろに遅れて増え、人工呼吸器装着者の気管吸引液では 43%にヘルペスウイルス 1 型が検出されました(Maguire et al., Nature2026)。
さらに、ウイルスの再活性化は重症度と強く相関していました。重症になるほど EB ウイルス、サイトメガロウイルス、ヘルペスウイルス 1 型、アネロウイルスの検出率が上がり、長期入院を要した重症群では、気道にサイトメガロウイルスが見つかった人の 1 年以内の死亡が多くなっていました。著者らが特に強調しているのは、免疫抑制薬を使っていた人はアネロウイルス陽性者のわずか 17.4%にすぎず、再活性化の多くは「免疫がもともと正常な人」に起きていたという点です。Science 誌の取材に対し、責任著者のメラメド博士は「免疫が正常な人でも、ほぼ半数で、もともと持っていたウイルスが目を覚ましていた」と語っています(Offord, Science 2026)。

4. 目覚めたウイルスは免疫系に何をするのか ― 炎症の「上乗せ」

眠りから覚めたウイルスは、免疫系にどのような影響を与えるのでしょうか。Nature 論文では、重症度・年齢・性別の影響を統計的に取り除いたうえでも、再活性化したウイルスごとに特徴的な炎症性物質(サイトカイン)の上昇が見られました。複数のウイルスに共通して増えていたのは、免疫細胞を炎症の現場に呼び寄せる CXCL10、CXCL11 と、強い炎症を起こす IL-18 でした。血液中の EB ウイルスは、COVID-19 の重症化との関連が知られる IL-6 やIL-10 の上昇とも結びついていました(Maguire et al., Nature 2026)。
免疫細胞のレベルでも変化が確認されています。EB ウイルスが動き出した人では、ウイルスの住み家である B 細胞系の形質芽球が増え、サイトメガロウイルスや EB ウイルスが検出された人では、活性化した T 細胞(CD4 陽性・CD8 陽性)が増えていました。血液中の代謝物を調べると、サイトメガロウイルスでは尿素や長鎖脂肪酸、血管の働きを調整する一酸化窒素に関わる物質(ジメチルアルギニン)の変化など、最も多くの代謝変化が見られました(Maguire et al., Nature 2026)。つまり、目覚めたウイルスは新型コロナウイルスによる炎症に「もう一段の炎症」を上乗せしている可能性があるのです。
臨床的な合併症との関連も報告されています。血液中のサイトメガロウイルスは菌血症、腎合併症、ショック、脳卒中と、EB ウイルスは肝不全や合併する感染症と、鼻のヘルペスウイルス 1 型は静脈血栓塞栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)と関連していました(Maguire et al., Nature 2026)。ただし、著者ら自身が明記しているとおり、これは「関連」であって「原因」を証明したものではありません。カリフォルニア大学サンフランシスコ校のヘンリック博士は、重症の炎症状態にある人で他のウイルスが目を覚ますのは驚くことではないと慎重な見方を示しています(Offord, Science 2026)。ウイルスが重症化を招くのか、重症化の結果としてウイルスが目覚めるのか――この「鶏と卵」の解明が今後の課題です。

5. コロナ後遺症とのつながり ― アネロウイルスと EB ウイルス

COVID-19 の後に、だるさ、息切れ、集中力の低下(ブレインフォグ)などが数か月以上続く状態を「ロング COVID(罹患後症状)」と呼びます。米国の Al-Aly らによる総説では、世界で延べ約 4 億人がロング COVID を経験し、経済的損失は年間約 1 兆ドルに及ぶと推計されています(Al-Aly et al., Nat Med 2024)。その原因の候補として、ウイルスの体内残存、自己免疫、微小血栓と並んで注目されているのが「眠れるウイルスの再活性化」です。
Nature 論文では、退院後の回復期にアネロウイルスが検出された人ほど、身体機能の低下を中心とするロング COVID の症状群に属しやすいことが示されました。この関連は、年齢、性別、免疫抑制薬、急性期の重症度を調整しても統計的に有意でした(Maguire et al.,Nature 2026)。アネロウイルスはこれまで「無害な同乗者」と考えられてきましたが、活性化した T 細胞の中で増えやすく、好中球の脱顆粒(炎症反応)に関わる遺伝子の変化とも関連していたことから、メラメド博士は「単なる傍観者ではなく、免疫の乱れに関与しているかもしれない」と述べています(Offord, Science 2026)。
一方、EB ウイルスについては、これまでの研究でロング COVID との関連が繰り返し報告されてきました。岩崎教授らの Nature 誌の研究では、ロング COVID の人は EB ウイルスに対する抗体反応が強く(最近の再活性化を示唆)、ストレスホルモンであるコルチゾールが低いという特徴が見つかっています(Klein et al., Nature2023)。米国の Peluso らも、EB ウイルスの最近の再活性化を示す抗体が、ロング COVID の倦怠感や認知症状と関連することを報告しています(Peluso et al., J Clin Invest 2023)。今回の Nature 論文では急性期の EBウイルス RNA とロング COVID の関連は見られませんでしたが、著者らは測定方法の違い(抗体か RNA か)が影響した可能性を指摘しています。岩崎教授は、コロナが EB ウイルスなどを目覚めさせ、それが自己免疫を誘発する「ドミノ倒し」のような連鎖がロング COVID の根本原因の一つかもしれないと述べています(NPR Short Wave, 2026)。

6. 目覚めたウイルスは全身の病気にも関わる ― 帯状疱疹・多発性硬
化症・心血管

眠れるウイルスの再活性化として最も身近なのが帯状疱疹です。水ぼうそうのウイルスが神経に沿って再び増え、痛みを伴う発疹を起こします。年齢とともに免疫の見張りが弱まるため、50 歳を過ぎると急に増え、皮膚の症状が治った後も「帯状疱疹後神経痛」として何か月も痛みが残ることがあります。そして COVID-19 は、この帯状疱疹の引き金にもなります。
米国の 50 歳以上約 39 万 5 千人の COVID-19 患者を、感染していない約 158 万人と比較した研究では、COVID-19 の後に帯状疱疹を発症するリスクが 15%高く、入院した人では 21%高くなっていました(Bhavsar et al., Open Forum Infect Dis 2022)。
眠れるウイルスの影響は、皮膚や神経の痛みにとどまりません。米ハーバード大学のBjornevik らは、1,000 万人以上の米軍兵士を最長 20 年にわたって追跡し、保存血液を解析した結果、EB ウイルスに感染した後に多発性硬化症(脳や脊髄の神経が自己免疫で傷つく病気)を発症するリスクが約 32 倍に高まることを示しました(Bjornevik et al., Science2022)。岩崎教授は、EB ウイルスの成分が自分の体の成分と似ているため、免疫が誤って自分の神経を攻撃してしまう「分子相同性」の仕組みを指摘し、全身性エリテマトーデス(SLE)など他の自己免疫疾患との関連にも触れています(NPR Short Wave, 2026)。
心臓や血管への影響も見逃せません。帯状疱疹の発症後しばらくは脳卒中や心筋梗塞が起こりやすくなることが知られており、2025 年の欧州心臓病学会(ESC)年次総会では、19 研究を統合した解析で、帯状疱疹ワクチンの接種が心血管イベントのリスク低下(成人で 18%、50 歳以上で 16%)と関連したことが発表されました(ESC Congress 2025 発表)。なお、この報告はワクチン製造企業の研究者による学会発表段階の解析であり、今後の検証が待たれます。それでも、眠れるウイルスを「起こさない」ことが、皮膚だけでなく全身の健康を守ることにつながる可能性を示す知見といえます。

7. あらかじめ出来ること① ― ワクチン

眠れるウイルスに対して、現時点で最も確かな「備え」はワクチンです。岩崎教授も、帯状疱疹ワクチンは「非常に効果が高く、強く推奨される」と述べています(NPR Short Wave,2026)。不活化(組換え)帯状疱疹ワクチン(シングリックス)は、50 歳以上を対象とした大規模試験の長期追跡で、接種から約 10 年間にわたる発症予防効果が 89.0%、接種後 6〜10 年の期間に限っても 81.6%と、効果が長く続くことが示されています(Strezova et al.,Open Forum Infect Dis 2022)。日本では 2025 年 4 月から、65 歳の方などを対象に帯状疱疹ワクチンの定期接種が始まっており、自治体の公費助成を受けられる場合があります。
帯状疱疹ワクチンには、思わぬ「副次的効果」も報告されています。英国ウェールズでは、1933 年 9 月 2 日以降に生まれた人だけが帯状疱疹ワクチン(生ワクチン)の接種対象となりました。生まれた日がわずか 1 週間違うだけで接種の可否が分かれたこの「自然の実験」を解析したところ、ワクチン接種により 7 年間で新たに認知症と診断される確率が 3.5 ポイント(相対的に約 20%)低下していました(Eyting et al., Nature 2025)。眠れるウイルスを抑えることが脳の健康にもつながる可能性を示す、きわめて興味深い結果です。
そして、コロナワクチンも重要です。今回の Nature 論文の対象者は全員がワクチン未接種で重症化した方々でした。つまり、眠れるウイルスを目覚めさせる最大の引き金は「重症のCOVID-19」であり、その重症化を防ぐことこそが、連鎖の最初のドミノを倒さない方法です。
英国・スペイン・エストニアの 2,000 万人以上の電子カルテを解析した欧州の研究では、コロナワクチンの接種によりロング COVID のリスクが 29〜52%低下していました(Català et al., Lancet Respir Med 2024)。また、インフルエンザなど他の重い感染症も体にとって大きなストレスとなります。季節ごとの予防接種を、眠れるウイルスへの備えとして捉え直していただければと思います。

8. あらかじめ出来ること② ― 免疫の「見張り役」を支える暮らし

ワクチンと並んで大切なのは、免疫の見張りをゆるめる要因を減らすことです。Nature 論文の著者らは、再活性化の引き金として、ストレス、睡眠不足、手術、ホルモンバランスの乱れ、重い病気を挙げています(Maguire et al., Nature 2026)。このうち日常で整えられるのが睡眠です。宇宙飛行士の研究でも、睡眠リズムの乱れはウイルス再活性化に関わるストレス要因の一つと考えられています(Rooney et al., Front Microbiol 2019)。7 時間前後の規則正しい睡眠は、免疫のリズムを保つ基本です。
また、糖尿病や慢性腎臓病、慢性呼吸器疾患などの持病がある方は、COVID-19 が重症化しやすく、結果として眠れるウイルスを目覚めさせやすい状態にあるといえます。持病の管理を良好に保つことは、それ自体が再活性化の予防策になります。ロング COVID の総説でも、感染そのものを防ぐこと、重症化を防ぐこと、そしてワクチン接種が最も重要な対策として位置づけられています(Al-Aly et al., Nat Med 2024)。適度な運動を続けて体力と筋肉量を保つことも、重症化しにくい体づくりにつながります。
一方で、現時点では眠っているウイルスを体から完全に取り除く方法はありません。岩崎教授は、潜伏ウイルスに対するより強力な抗ウイルス薬の開発が必要だと述べており、米マウントサイナイ医科大学では、EB ウイルスの増殖を抑える可能性のある抗 HIV 薬を用いた小規模試験がロング COVID 患者で進められています(Offord, Science 2026)。また、水ぼうそう以外のヘルペスウイルスにはまだワクチンがなく、今後の開発が期待されています(NPRShort Wave, 2026)。だからこそ、すでにある「水ぼうそう・帯状疱疹のワクチン」「コロナワクチン」「インフルエンザワクチン」を上手に活用することが、いま私たちに出来る現実的で確実な備えなのです。

おわりに ― 眠れるウイルスを、眠らせたままに

私たちの体には、誰もが複数のウイルスを「同居」させています。ふだんは免疫がしっかり見張っていますが、宇宙飛行のような極度のストレスや、重症の COVID-19 のような大きな病気が加わると、その見張りがゆるみ、ウイルスが目を覚まします。2026 年の Nature 論文は、入院した COVID-19 患者のほぼ半数でこの現象が起き、重症度や炎症の強さ、さらにロング COVID と関連していることを、1,154 人という大規模なデータで示しました(Maguire et al., Nature 2026)。因果関係はまだ証明されていませんが、「眠れるウイルス」という視点は、コロナ後の不調を理解する新たな手がかりとなりつつあります。
あらかじめ出来ることはあります。帯状疱疹ワクチンで水ぼうそうウイルスの目覚めを防ぐこと、コロナワクチンやインフルエンザワクチンで重症化という最大の引き金を避けること、そして睡眠と持病の管理で免疫の見張り役を支えることです。まんかいメディカルクリニックでは、内科・呼吸器内科・内分泌内科の診療に加え、帯状疱疹ワクチン、新型コロナワクチン、インフルエンザワクチンの接種を行っています。ワクチンの種類や接種時期など、どうぞお気軽にご相談ください。

FAQ ― よくあるご質問

Q1. 仕事や家庭のストレスを感じているだけで、ウイルスが目を覚ましてしまうのですか?

日常的なストレスだけで過度に心配する必要はありません。岩崎教授は、再活性化の引き金となるのは多くの場合、外傷や事故、重い感染症、免疫を抑える薬などの「大きなストレス」であり、若い方が軽いストレスで帯状疱疹を起こすことは少ないと説明しています(NPR Short Wave, 2026)。ただし、強いストレスと睡眠不足が長く続く場合や、年齢が高い場合には、帯状疱疹などのリスクが高まります(Maguire et al., Nature2026)。ストレスそのものを気に病むよりも、睡眠を確保し、50 歳以上の方は帯状疱疹ワクチンを検討することが現実的な対策です。

Q2. コロナにかかった後は、帯状疱疹に気をつけたほうがよいのでしょうか?

はい、注意が必要です。米国の 50 歳以上約 39 万 5 千人を対象とした研究では、COVID-19の後に帯状疱疹を発症するリスクが 15%、入院した方では 21%高くなっていました(Bhavsar et al., Open Forum Infect Dis 2022)。体の片側にピリピリとした痛みや違和感が出て、数日後に赤い発疹や水ぶくれが帯状に現れたら、帯状疱疹の可能性があります。抗ウイルス薬は発疹が出てからできるだけ早く(目安として 72 時間以内に)始めるほど効果的で、帯状疱疹後神経痛の予防にもつながりますので、早めに受診してください。

Q3. 帯状疱疹ワクチンは何歳から、どのワクチンを受ければよいですか?

帯状疱疹ワクチンは 50 歳以上の方が対象で、免疫の病気や治療中の方は 18 歳以上でも接種できる場合があります。不活化(組換え)ワクチン(シングリックス)は 2 回接種で、約10年にわたり高い予防効果(全期間で89.0%)が続くことが示されています(Strezova et al., Open Forum Infect Dis 2022)。生ワクチンは 1 回接種で費用を抑えられますが、効果の持続は短めで、免疫が低下している方は接種できません。日本では 2025 年 4月から 65 歳の方などを対象とした定期接種が始まっています。持病やご年齢、費用のご希望に合わせて最適なワクチンをご提案しますので、ご相談ください。

Q4. いまもコロナワクチンを受ける意味はありますか?

あります。眠れるウイルスを目覚めさせる最大の引き金は重症の COVID-19 であり、今回の Nature 論文の対象者もワクチン未接種で重症化した方々でした(Maguire et al.,Nature 2026)。欧州 3 か国・2,000 万人以上のデータでは、コロナワクチンの接種によりロング COVID のリスクが 29〜52%低下していました(Català et al., Lancet Respir Med 2024)。特に 65 歳以上の方や、糖尿病・心臓病・慢性呼吸器疾患などの持病がある方は重症化しやすいため、秋冬のワクチン接種をおすすめします。日本では 65 歳以上の方などが定期接種の対象です。

Q5. EB ウイルスやサイトメガロウイルスを検査して、薬で消すことはできますか?

現時点では、体内に潜んでいるヘルペスウイルスを完全に取り除く薬はありません。岩崎教授も、潜伏ウイルスに対するより効果的な抗ウイルス薬の開発が必要だと述べています(NPR Short Wave, 2026)。ロング COVID に対して抗ウイルス薬を試す臨床研究は始まっていますが、まだ仮説を検証する段階です(Offord, Science 2026)。また、これらのウイルスは成人の大半が保有しているため、抗体検査で「陽性」と出ても多くは過去の感染を示すだけです(Peluso et al., J Clin Invest 2023)。だるさなどの症状が長引く場合は、貧血や甲状腺機能、糖尿病など他の原因も含めて総合的に評価することが大切ですので、まずはご相談ください。

参考文献

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参考記事

記事 1. Offord C. COVID-19 can wake up dormant viruses in the body, large study confirms.
Science (News). 2026 Aug 5. https://doi.org/10.1126/science.z5mhpv4
記事 2. McCoy B, Gordon E, Ramirez R, Rott N. The dormant viruses in all of us may help
explain long COVID (Short Wave, guest: Akiko Iwasaki). NPR. 2026 Oct 23.
https://www.npr.org/2026/10/23/nx-s1-5985807/dormant-viruses-stress-immune-covid

※本コラムは医学的情報の提供を目的としたものであり、個別の診断・治療を代替するものではありません。気
になる症状がある方は医療機関にご相談ください。

記事監修者田場 隆介

医療法人社団 青山会 まんかいメディカルクリニック 理事長

医療法人社団青山会代表。兵庫県三田市生まれ、三田小学校、三田学園中学校・同高等学校卒業。 1997(平成9)年岩手医科大学医学部卒業、町医者。聖路加国際病院、淀川キリスト教病院、日本赤十字社医療センター、神戸市立医療センター中央市民病院を経て、2009(平成21)年医療法人社団青山会を継承。 2025年問題の主な舞台である地方の小都市で、少子高齢化時代の主役である子どもと高齢者のケアに取り組んでいる。

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