【動脈硬化】血管は 30 代から、子宮は 50 代から―老いは臓器ごとバラバラに進む―
はじめに ― 私たちの体には、時計がいくつあるのか
「もう歳だから」という言葉を、私たちは日常のなかで何気なく使います。そこには、体全体が同じ速度で、なだらかに衰えていくという暗黙の前提があります。しかし近年の研究は、この前提が事実とは異なることを次々と示しています。老化は体という一つの単位で進むのではなく、臓器ごとに異なる速度と異なるタイミングで進む、きわめて不均一な現象なのです。
2026 年 8 月、Nature Aging 誌に発表された Yadav らの研究は、21〜70 歳の 970 人から得られた 40 臓器・25,306 枚の病理組織画像を人工知能で解析し、臓器ごとの「構造老化」の軌跡を初めて全身規模で描き出しました(Yadav et al., 2026)。そこで浮かび上がったのは、動脈が 30 代にもっとも速く老いる一方で、子宮と腟は 50 代の閉経前後まで構造的にほとんど変化せず、そこから一気に変わるという、驚くほどばらばらの時間割でした。
同じ時期に New England Journal of Medicine 誌に掲載されたデンマーク・スペインの大規模研究(REACT 研究)は、この「血管の早い老化」を生きた人間の画像で裏づけました。心血管疾患の既往のない 18〜70 歳の 16,808 人を超音波と CT で調べたところ、実に 57.1%に無症状の動脈硬化が見つかり、18〜29 歳の若年層でもすでに男性の 8.7%、女性の 6.7%にプラーク(血管壁のこぶ)が存在していたのです(Bundgaard et al., 2026)。
本コラムでは、これら二つの最新研究を軸に、欧米の権威ある研究が明らかにしてきた「老化は一律ではない」という新しい医学の常識を、8 つの視点から整理します。そして最後に、その知見が私たち一人ひとりの健康診断や生活にどう結びつくのかを考えます。
1. 老化は「なだらかな下り坂」ではない ― 40 臓器が描いた三つの
時間割
これまでの老化研究の主役は、DNA メチル化などを用いた「分子時計」でした。しかし分子時計の多くは、実年齢を正確に当てるように設計されているため、構造上どうしても直線的な変化を前提としてしまいます。Yadav らが開発した PathStAR(パススター)という手法は、この発想を逆転させました。実年齢を予測するための学習をあえて行わず、組織の形そのものが 1 年あたりどれだけ変化するかを測るのです(Yadav et al., 2026)。
その結果、ヒトの臓器は少なくとも三つの異なる時間割に沿って老いることが示されました。第一は「早老型」で、動脈や神経のように 30 代に変化のピークを迎え、その後は緩やかになる群です。第二は「晩老型」で、子宮や腟のように成人期を通じて安定し、50 代に大きな変化が集中する群です。第三は「二相型」で、消化管や男性生殖器のように 30 代と 50 代前後の二回、加速期が訪れる群であり、検討された 14 臓器のうち 9 臓器がこのパターンを示しました。
重要なのは、これらの加速期に共通してみられた分子の変化です。どの臓器でも炎症関連経路(TNF シグナル、インターフェロン応答、補体)が広く活性化する一方、エネルギー産生(酸化的リン酸化)、細胞の増殖能、そしてタンパク質の品質管理や DNA 修復といった「修理と保守」の機能が同時に低下していました。老化とは、単に何かが減っていく現象ではなく、炎症が増えながら修復力が落ちるという二重の変化が、臓器ごとに異なる時期に起こる現象なのです。
2. 血管は最も早く老いる ― 30 代がターニングポイント
PathStAR 解析で最も早い老化を示したのが、大動脈・冠動脈・脛骨動脈といった血管系でした。構造老化の速度は 30 代でピークに達し、その後は相対的に低下していきます(Yadavet al., 2026)。これは「若いうちは血管の話は関係ない」という一般的な感覚とは正反対の所見です。血管は、私たちが健康診断を気にしはじめるよりずっと早い時期に、すでに変化を積み重ねているのです。
この研究はさらに、なぜ血管がこれほど早く老いるのかについても手がかりを示しました。
脂肪酸の酸化やプラスマローゲン合成、活性酸素の解毒を担うペルオキシソームの機能が、全 40 臓器のうち大動脈と脛骨動脈でのみ選択的に低下していたのです。血管壁で脂質が処理しきれずに蓄積し、酸化ストレスが増えるという、動脈硬化のごく初期のプロセスが分子レベルで可視化されたことになります。
加えて、遺伝子解析では長寿遺伝子として知られる SIRT6 の変異が、血管の加速老化と特異的に関連していました(Yadav et al., 2026)。SIRT6 は NAD⁺依存性の脱アセチル化酵素で、テロメアの維持と DNA 修復を担い、マウスでは欠損により早期の動脈硬化が起こることが知られています。同じ遺伝的背景が、脳や腎臓ではなく血管にだけ影響していたという事実は、老化のメカニズムが全身一律ではなく臓器選択的であることを、遺伝子のレベルからも裏づけるものです。
3. 沈黙のうちに進む動脈硬化 ― 16,808 人が示した現実
では、血管の早い老化は生きた人間ではどのように現れるのでしょうか。REACT 研究は、動脈硬化性疾患の既往がない 18〜70 歳の一般成人 16,808 人に対して、頸動脈・大腿動脈の三次元超音波と冠動脈 CT を実施しました。その結果、57.1%(95%信頼区間 56.3〜58.0)に無症状の動脈硬化が検出されました。男性で 63.4%、女性で 50.9%です(Bundgaard et al., 2026)。
年齢別に見ると、変化の連続性がよくわかります。18〜29 歳ではすでに男性の 8.7%、女性の 6.7%にプラークがあり、30〜39 歳では男性 34.6%、女性 21.3%に増えます。そして 60〜70歳になると、どの血管にもプラークがまったくない人は男性でわずか 1.9%、女性で 8.1%にすぎませんでした。つまり 60 代を過ぎれば、動脈硬化は例外ではなく標準状態なのです。
さらに臨床的に重要なのは、若年層では動脈硬化が心臓の冠動脈ではなく、頸動脈や大腿動脈といった末梢の血管に先に現れる点です。冠動脈だけに孤立して存在する例はどの年齢層でも少なく、男性で最大 9.3%、女性で最大 5.0%にとどまりました。また 30〜39 歳で冠動脈プラークをもつ人のうち、男性の 41.8%、女性の 48.4%はカルシウムスコアがゼロでした。
若い世代では、カルシウムスコアが 0 であっても動脈硬化がないとは言い切れないということです。
4. 女性の臓器は「遅れて、急に」老いる
老化の不均一さは、臓器の間だけでなく、男女の間にも明確に存在します。PathStAR 解析では、子宮と腟は成人期を通じて構造的に安定しており、50 代前半に急峻な変化が集中する「晩老型」に分類されました(Yadav et al., 2026)。卵巣はさらに特徴的で、35〜40 歳(妊孕性の低下期)と 55〜60 歳(閉経期)の二つの加速期をもつ二峰性の軌跡を描きました。
分子時計ではとらえられなかったこの非線形性を、組織の形は正確に記録していたのです。
2026 年に Nature Aging 誌に発表されたスペイン・バルセロナのグループによる研究も、独立して同じ結論に達しました。20〜70 歳の 300 人以上のドナーから得た 7 つの女性生殖器の組織画像 1,112 枚と RNA 配列 659 検体を解析したところ、卵巣は緩やかに老いる一方で、子宮は閉経前後に分子・形態の両面で急激な転換を示したのです(Soldatkina et al., 2026)。
特に子宮筋層では細胞外基質の再構築と免疫の活性化が顕著で、腟上皮も閉経期に鋭い移行を示しました。注目すべきは、この子宮の老化シグナルが血液中のタンパク質からも検出可能だったことです。
この「遅れて、急に」というパターンは、血管でも観察されます。REACT 研究では、男性の動脈硬化有病率は 30 代からすでに上昇しはじめて中年期には頭打ちになるのに対し、女性は 40 歳以降にもっとも急峻な増加を示し、男女差が年齢とともに縮まっていきました(Bundgaard et al., 2026)。男性の動脈硬化表現型は女性より 5〜10 年早く進行する一方で、女性は閉経の時期に一気に追いつくのです。閉経を単なる月経の終わりではなく、全身の老化速度が切り替わる節目としてとらえる必要があります。
5. しかし連動して老いる ― 個人の中の相関
臓器ごとに時間割が違うのなら、一人の人間の中では老化はまったく無秩序に進むのでしょうか。答えは「いいえ」です。PathStAR 解析では、同じ個人の中で臓器の老化速度を比較すると、機能的に関連するシステム内では明確な正の相関がみられました。消化管(結腸・食道・胃)では相関係数 r=0.20〜0.43、女性生殖器(子宮と腟)では r=0.48、血管系(脛骨動脈・冠動脈・大動脈)では r=0.14〜0.16 です(Yadav et al., 2026)。ある臓器が早く老いる人は、その系統に属する別の臓器も早く老いる傾向があるということです。
さらに予想外だったのが、消化管と生殖器の間に見つかった連関でした。結腸や食道の老化が加速している人は、前立腺の老化も加速していたのです(r=0.14〜0.43)。分子レベルの解析では、この二つの系統に共通してエストロゲン応答・アンドロゲン応答といったホルモン関連経路が第一の加速期に強く働いており、消化管と生殖器がホルモンという共通のシグナル軸で結ばれている可能性が示唆されました。
この「臓器ごとの差」と「個人内の連動」という二重構造は、血液を用いた研究でも確認されています。2023 年に Nature 誌に発表されたスタンフォード大学のグループの研究では、血漿タンパク質から 11 の臓器の生物学的年齢を推定したところ、18.4%の人が特定の一臓器だけが際立って老いている「臓器特異的パターン」を示し、複数臓器が同時に極端に老いている人はわずか 1.7%でした(Oh et al., 2023)。老化は個人ごとに固有の「弱点臓器」をもつ、と言い換えることができます。
6. 血液一滴で「臓器年齢」がわかる時代 ― 臓器別プロテオミクス時
計
臓器ごとの老化を測る技術は、この数年で急速に実用に近づいています。前述のスタンフォードの研究では、心臓の生物学的年齢が加速している人は 15 年間の追跡で心不全の発症リスクが約 2.5 倍に上昇し、心臓・脂肪・肝臓・膵臓・脳・肺・免疫・筋肉のいずれについても、年齢ギャップが 1 標準偏差増えるごとに総死亡リスクが 15〜50%上昇しました(Oh etal., 2023)。
2024 年に Nature Medicine 誌に発表されたオックスフォード大学らの研究は、この手法を大規模コホートで検証しました。英国バイオバンクの 45,441 人から 204 のタンパク質を選んで作られた「プロテオミクス年齢時計」は、実年齢との相関が r=0.94 に達し、中国・フィンランドの独立コホートでも同等の精度を示しました。実年齢より老いている上位 5%の人は、平均的な人と比べて総死亡リスクが 1.9 倍、アルツハイマー病が 2.6 倍、慢性腎臓病が1.8 倍高く、18 の主要な慢性疾患の発症と関連していました(Argentieri et al., 2024)。
さらに2026年、Nature Aging誌に発表された研究は、2,916種類の血漿タンパク質から脳・心臓・肺・免疫・動脈・腸・肝臓・腎臓・筋肉・膵臓の 10 臓器別時計を構築し、英国バイオバンク 43,616 人に加え、中国と米国(Nurses’ Health Study)の独立集団でも検証しました。臓器別の加速老化は、検討した疾患アウトカムの 65%を予測したと報告されています(Wang et al., 2026)。血液検査から臓器単位で老化を評価するという発想は、すでに研究の域を出つつあります。
7. 脳と免疫の年齢が、健康寿命を最も強く決める
複数の臓器のうち、どの臓器の老化が最も寿命を左右するのでしょうか。2025 年に NatureMedicine 誌に発表された英国バイオバンク 44,498 人の解析は、この問いに明快な答えを出しました。脳の年齢ギャップが1標準偏差大きくなるごとに総死亡リスクは1.59倍になり、11 臓器のなかで最も強い死亡予測因子でした(Oh et al., 2025)。
アルツハイマー病についてはさらに劇的です。脳が極端に老いている人の発症リスクは 3.1倍で、これは APOE4 遺伝子を 1 つもつのとほぼ同等でした。逆に脳が極端に若い人ではリスクが 74%低く(ハザード比 0.26)、APOE2 を 2 つもつのに相当する効果が、実際の遺伝子型とは独立して認められました。免疫系についても、若々しい免疫をもつ人は死亡リスクが 42%低く(ハザード比 0.58)、脳と免疫の両方が若い人では 56%低下しました(ハザード比 0.44)。
一方で、老いた臓器の数が積み重なるほどリスクは急速に高まります。老化が進んだ臓器が2〜4 個の人ではハザード比 2.3、5〜7 個で 4.5、8 個以上では 8.3 にまで上昇しました(Ohet al., 2025)。2026 年の Nature Aging 誌の研究でも、脳の時計が死亡(ハザード比 1.44)と認知症(ハザード比 1.88)の最も強い予測因子であり、臨床指標や遺伝的指標を上回ったと報告されています(Wang et al., 2026)。脳と免疫という二つの系統は、老化のなかでも特別な位置を占めているようです。
8. 老化は変えられる ― 介入のエビデンス
臓器別の老化評価は、画像診断の分野でも進んでいます。2026 年に Nature Medicine 誌に発表された MULTI コンソーシアムの研究は、313,645 人の MRI データから脳・心臓・肝臓・脂肪組織・脾臓・腎臓・膵臓の 7 臓器について老化時計を構築しました。これらの臓器年齢は将来の糖尿病発症や総死亡と関連し、遺伝解析からは 9 つの創薬可能な標的遺伝子が同定されています(Cao et al., 2026)。
では、この老化速度は変えられるのでしょうか。米国で行われた CALERIE 試験は、健康な成人を対象に約 2 年間の適度なカロリー制限(約 12%)を行う無作為化比較試験で、DNA メチル化から算出される老化速度の指標 DunedinPACE が 2〜3%有意に低下したことを示しました(Waziry et al., 2023)。数字としては小さく見えますが、疫学的には死亡リスクの 10〜15%低下に相当する変化です。前述の 10 臓器時計の研究でも、健康的な生活習慣の遵守度が高い人ほど脳と腸の老化が緩やかであることが示されています(Wang et al., 2026)。
2026 年に Nature Medicine 誌に掲載された Wyss-Coray と Topol の総説は、生物学的年齢の測定が臨床で果たしうる役割を三つに整理しています。すなわち、高リスクの個人を同定す
ること、予防と早期発見を可能にすること、そして生活習慣の改善や治療が老化そのものを変えているかを評価することです。同じ年に生まれた集団のなかにある臓器老化の「ばらつき」こそが、実年齢よりも死亡リスクをよく予測する。これが現時点での到達点です(WyssCoray & Topol, 2026)。
おわりに
ここまで見てきたように、老化は全身が同じ速度で進む現象ではありません。血管は 30 代から、消化管と男性生殖器は 30 代と 50 代の二回、女性生殖器は 50 代の閉経前後に、それぞれ固有のタイミングで変化を加速させます(Yadav et al., 2026)。そして血管の変化は、症状がまったくないまま静かに積み重なり、60 代までに 9 割以上の人に及びます(Bundgaardet al., 2026)。
この事実がもつ実践的な意味は明快です。第一に、平均的なリスクスコアだけでは自分の血管の状態はわからないということ。REACT 研究では、SCORE2 という欧州の標準的リスク評価で高リスクと判定されたのは、実際に動脈硬化をもつ人のごく一部にすぎませんでした。第二に、評価はできるだけ早く始めたほうがよいということ。そして第三に、老化速度は生活習慣によって確かに変わりうるということです(Waziry et al., 2023;Wang et al., 2026)。
「もう歳だから」と一括りにする前に、自分の体のどこが先に時を刻んでいるのかを、一度確かめてみてください。
FAQ ― よくあるご質問
Q1. 健康診断の結果がすべて正常なら、動脈硬化の心配はいらないのでしょう
か。
残念ながら、そうとは言い切れません。REACT 研究では、欧州で標準的に用いられるリスク評価ツール SCORE2 で高リスクと判定された人は、実際に動脈硬化をもつ人のうち単一血管領域では0.5%、複数領域でも3.8%にすぎませんでした。特異度は99.8%と高い一方、感度はわずか 1.9%です(Bundgaard et al., 2026)。つまりリスクスコアは「高リスクと出れば確かに危ない」が、「低リスクでも安心とは限らない」性質をもちます。コレステロールや血圧といった危険因子の数値と、実際に血管に起きている変化は別の情報であり、超音波や CT による直接的な画像評価が両者の隙間を埋める役割を果たします。
Q2. 血管の検査は何歳から受けるべきでしょうか。
明確な年齢の線引きはありませんが、データは「思っているより早く」を示しています。
REACT 研究では 30〜39 歳の時点で男性の 34.6%、女性の 21.3%にすでにプラークが認められました(Bundgaard et al., 2026)。組織学的にも血管の構造老化は 30 代にピークを迎えます(Yadav et al., 2026)。この時期は、生活習慣の是正がもっとも効果を発揮する時
期でもあります。家族歴のある方、喫煙者、脂質異常症や高血圧・糖尿病を指摘されている方は、30 代のうちに一度、頸動脈超音波検査を受けておくことをお勧めします。
Q3. 「臓器年齢」は今すぐ病院で測れるのですか。
血漿プロテオミクスによる臓器別の年齢測定は、大規模コホートで有効性が確認された段階であり、日常診療で一般に提供される検査にはまだなっていません(Argentieri etal., 2024;Wang et al., 2026)。ただし、その考え方は今日から応用できます。頸動脈エコーで血管を、腹部 CT で肝臓と内臓脂肪を、スパイロメトリーで肺を、eGFR で腎臓を、というように、既存の検査を臓器ごとに組み合わせれば「どの臓器が先行して老いているか」の輪郭は十分につかめます。Wyss-Coray と Topol も、生物学的年齢の測定は高リスク者の同定と予防的介入の評価に価値があると述べています(Wyss-Coray & Topol,2026)。
Q4. 老化の速度は、生活習慣で本当に変えられるのでしょうか。
変えられるという証拠が蓄積しつつあります。米国の CALERIE 試験では、約 2 年間の適度なカロリー制限により DNA メチル化に基づく老化速度指標 DunedinPACE が 2〜3%有意に低下しました。これは疫学的には死亡リスクの 10〜15%低下に相当します(Waziry et al.,2023)。また 10 臓器の血漿時計を用いた研究では、健康的な生活習慣の遵守度が高い人ほど脳と腸の老化が緩やかでした(Wang et al., 2026)。数値の変化は小さくとも、方向性は一貫しています。禁煙・適正体重の維持・有酸素運動と筋力トレーニング・良質な睡
眠は、現時点でもっとも確実な「抗老化介入」です。
Q5. 女性は閉経前後に、特に何に気をつければよいですか。
閉経は、複数の臓器で老化のスピードが切り替わる節目です。組織学的には子宮と腟が50 代前半に急激な構造変化を示し(Yadav et al., 2026)、子宮筋層では細胞外基質の再構築と免疫の活性化が起こります(Soldatkina et al., 2026)。同時に血管でも、女性の
動脈硬化有病率は 40 歳以降にもっとも急峻に増加します(Bundgaard et al., 2026)。したがって閉経前後の時期は、婦人科的な症状への対応だけでなく、血圧・脂質・血糖と血管そのものの状態を改めて評価する好機です。この時期に生活習慣を整え、必要なら治療を開始することの意味は、他のどの年代よりも大きいと考えられます。
参考文献
- Yadav A, Alvarez K, Chechenina A, et al. Mapping structural aging across human tissues
reveals tissue-specific trajectories and coordinated deterioration. Nat Aging. 2026.
https://doi.org/10.1038/s43587-026-01200-4 - Bundgaard H, García-Lunar I, Kofoed KF, et al. Prevalence of Silent Atherosclerosis
across Adult Life (REACT). N Engl J Med. 2026. https://doi.org/10.1056/NEJMoa2609059 - Oh HS, Rutledge J, Nachun D, et al. Organ aging signatures in the plasma proteome track
health and disease. Nature. 2023;624(7990):164-172. https://doi.org/10.1038/s41586-
023-06802-1 - Oh HS, Le Guen Y, Rappoport N, et al. Plasma proteomics links brain and immune system
aging with healthspan and longevity. Nat Med. 2025;31(8):2703-2711.
https://doi.org/10.1038/s41591-025-03798-1 - Wang Y, Xiao S, Liu B, et al. Organ-specific proteomic aging clocks predict disease and
longevity across diverse populations. Nat Aging. 2026;6(1):162-180.
https://doi.org/10.1038/s43587-025-01016-8 - Argentieri MA, Xiao S, Bennett D, et al. Proteomic aging clock predicts mortality and
risk of common age-related diseases in diverse populations. Nat Med. 2024;30(9):2450- - https://doi.org/10.1038/s41591-024-03164-7
- Cao H, Song Z, Duggan MR, et al. MRI-based multi-organ clocks for healthy aging and
disease assessment. Nat Med. 2026;32(1):82-92. https://doi.org/10.1038/s41591-025-
03999-8 - Soldatkina O, Ventura-San Pedro L, Pujol-Gualdo N, et al. Multimodal data analysis
reveals asynchronous aging dynamics across female reproductive organs. Nat Aging.
2026;6(5):1177-1192. https://doi.org/10.1038/s43587-026-01098-y - Wyss-Coray T, Topol EJ. Biological aging clocks in health and disease. Nat Med.
2026;32(7):2383-2394. https://doi.org/10.1038/s41591-026-04495-3 - Waziry R, Ryan CP, Corcoran DL, et al. Effect of long-term caloric restriction on DNA
methylation measures of biological aging in healthy adults from the CALERIE trial.
Nat Aging. 2023;3(3):248-257. https://doi.org/10.1038/s43587-022-00357-y
※本コラムは医学的情報の提供を目的としたものであり、個別の診断・治療を代替するものではありません。気
になる症状がある方は医療機関にご相談ください。
記事監修者田場 隆介
医療法人社団 青山会 まんかいメディカルクリニック 理事長
医療法人社団青山会代表。兵庫県三田市生まれ、三田小学校、三田学園中学校・同高等学校卒業。 1997(平成9)年岩手医科大学医学部卒業、町医者。聖路加国際病院、淀川キリスト教病院、日本赤十字社医療センター、神戸市立医療センター中央市民病院を経て、2009(平成21)年医療法人社団青山会を継承。 2025年問題の主な舞台である地方の小都市で、少子高齢化時代の主役である子どもと高齢者のケアに取り組んでいる。
