病気と健康の話

【糖尿病】喘息は「気道だけの病気」ではなかった―内臓脂肪が起こす炎症と「喘息発作 40%減」という 2026 年の報告―

はじめに ― 吸入薬を増やしても、なぜ発作は止まらないのか

「吸入ステロイドをきちんと続けているのに」これまで喘息は『気道(空気の通り道)に起きるアレルギー性の炎症』として理解され、治療もほぼすべて気道に向けられてきました。吸入ステロイド、長時間作用性気管支拡張薬、そして重症例には生物学的製剤。いずれも気道を標的にした薬です。
ところが 2026 年、この常識に大きな修正が加えられつつあります。2026 年 9 月 8 日、スペイン・バルセロナで開催された欧州呼吸器学会(ERS)国際会議で、英国インペリアル・カレッジ・ロンドンの Chloe Bloom 教授らの研究グループが、肥満・2 型糖尿病の治療に用いられる GLP-1 受容体作動薬セマグルチドを開始した人では、喘息発作が約 40%少なかったと報告したのです。さらに同じ 2026 年、欧州呼吸器学会の公式誌『European RespiratoryJournal』には、『肥満は喘息を引き起こし、悪化させる』と正面から題した総説が掲載されました(Riemann ら, 2026)。
本コラムでは、内臓脂肪と喘息発作をつなぐメカニズムと最新のエビデンスを、ヨーロッパとアメリカの権威ある研究 10 件をもとに整理します。

1. 気道と GLP-1 RA

2026 年 9 月の ERS 国際会議で発表された Bloom 教授らの研究は、英国の電子診療録データベースを用いた大規模な実地(リアルワールド)解析です。GLP-1 受容体作動薬を新たに開始した人と、従来型の糖尿病治療薬であるスルホニル尿素薬を開始した人を比較する 4 つの並行研究が行われ、それぞれ約 2 万〜2 万 2 千人が解析対象となりました。
結果は明快でした。GLP-1 受容体作動薬を使用した気道疾患のある方では、比較薬を使用した方に比べて呼吸器の発作が少なく、なかでもセマグルチドで効果が最も大きく、喘息発作は約 40%、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の増悪は約 20%少なかったのです。Bloom 教授は『効果はセマグルチドで最も強く、とくに喘息のある方で、喘息発作の約 40%減少と関連していた』と述べています。
重要なのは、この研究が糖尿病治療のために薬を始めた人を追跡したものであり、喘息を治すために使われたわけではないという点です。つまり『代謝を整えたら、結果として気道が落ち着いた』という現象が観察されたことになります。研究者自身も『この結果は勇気づけられるものだが、これだけで治療方針を変えるべきではない』と慎重な姿勢を崩していません。なぜ効いたのか。体重が減ったからなのか、それとも薬そのものに抗炎症作用があるのか。この問いこそが、内臓脂肪と喘息の物語の入口になります。

2. 肥満で喘息リスクは 30〜50%上がる ― 欧州呼吸器学会誌が描いた
全体像

2026 年、ベルギー・ヘント大学の Riemann ら(責任著者は Guy Brusselle 教授)は『EuropeanRespiratory Journal』誌に、肥満と喘息の関係を総括する大型総説を発表しました(Riemann ら, 2026;67:2502687)。そこに示された数字は、私たち呼吸器内科医にとっても率直に重いものです。
肥満のある方は、そうでない方に比べて喘息を発症するリスクが 30〜50%高い。米国の一般人口では、肥満のある方の喘息有病率は 14.6%に達し、全体の 6〜10%を大きく上回ります。
逆方向から見ると、臨床試験やレジストリに登録されている成人喘息患者の平均 BMI は一貫して 28〜30kg/m²の範囲にあり、およそ 70%が過体重または肥満に該当します。つまり『喘息の患者さんの多数派は、すでに体重の問題を抱えている』のが世界の現実なのです。
さらにこの総説が強調したのは、従来の理解の修正です。かつて肥満合併喘息は『タイプ 2炎症(アレルギー型の炎症)が乏しいタイプ』と分類されてきました。しかし Riemann らは、肥満はタイプ 2 炎症の全スペクトラムにわたって喘息を悪化させると結論づけています。著者らの言葉を借りれば、肥満は『炎症の型を一つに寄せるのではなく、既存の気道免疫経路の上に、全身の代謝と脂肪組織由来の炎症シグナルを重ね書きする』のです。そして総説は、肥満を喘息における『治療可能な特性(treatable trait)』として扱うべきだと提言しています。

3. 体重計では見えない ― 内臓脂肪 200g ごとに、リスクは 20.8%上
がる

ここで一歩踏み込みます。問題は『体重』なのか、それとも『脂肪のつく場所』なのか。この問いに正面から答えたのが、米国の国民健康栄養調査(NHANES)2011〜2018 年のデータを解析した Lin らの研究です(Scientific Reports, 2024;14:23217)。11,137 人を対象に、DXA法で測定した内臓脂肪組織(VAT)の重量と喘息の関係が調べられました。
結果は、内臓脂肪が 200g 増えるごとに喘息のリスクが 20.8%上昇するというものでした(人口統計学的因子で調整、p<0.001)。年齢・性別・喫煙・その他の要因をすべて調整したモデルでも 20.3%の上昇が維持されています(p=0.004)。喘息のある群の内臓脂肪の中央値は529g で、ない群の 455g を有意に上回っていました(p<0.001)。
注目すべきは、その影響が誰にでも一律ではないことです。女性では 200g あたり 24.7%の上昇(p=0.002)、40 歳以上では 26.5%の上昇(p=0.004)と、影響がさらに大きくなっていました。
中高年の女性ほど、内臓脂肪と気道の結びつきが強いことになります。
この知見の実践的な意味は大きいと考えています。体重や BMI が正常範囲でも、内臓脂肪だけが多い『隠れ肥満(サルコペニア肥満を含む)』の方は珍しくありません。当院では CT・腹部超音波検査と体成分分析装置(InBody)を組み合わせ、内臓脂肪の量を実際の数値としてお示ししています。『体重は変わっていないのに、喘息が良くならない』方こそ、一度お腹の中身を見ておく価値があります。

4. 脂肪は「沈黙の臓器」ではない

では、なぜお腹の脂肪が肺に影響するのでしょうか。その答えを最初に示したのが、米国バーモント大学の Sideleva らによる研究です(American Journal of Respiratory andCritical Care Medicine, 2012;186:598-605)。論文のタイトルは挑発的でした。『肥満と喘息:それは気道ではなく脂肪組織の炎症性疾患である』。
研究チームは、肥満のある喘息患者さんの内臓脂肪を直接調べ、マクロファージ(貪食細胞)の浸潤が増加し、レプチンの発現が高く、アディポネクチンが低下していることを見出しました。しかもこれらの変化は BMI で調整しても残りました。一方で気管支肺胞洗浄液中のサイトカインは健常者と同等か、むしろ低いという意外な結果でした。つまり炎症の火元は気道ではなく、お腹の脂肪組織にあったのです。そして内臓脂肪のレプチン発現量は、気道の過敏性の強さと強く相関していました。
2026 年の ERJ 総説は、この機序をさらに詳細に描き出しています。肥満ではレプチンが増える一方でアディポネクチンが減り、両者のバランスが崩れます。白色脂肪組織の ILC2(2 型自然リンパ球)が減少し、抗炎症の調整が効かなくなります。血中では IL-6、TNF-α、MCP1 といった炎症性サイトカインや、HMGB1、Hsp72 などの危険信号分子が上昇します。さらに内臓脂肪はアロマターゼ活性が高く、ホルモンバランスをエストロゲン優位へ傾け、ILC2のエストロゲン受容体を介してタイプ 2 反応を強めます。喀痰中では IL-1β、NLRP3 インフ
ラマソーム、IL-17/IL-23 系の活性化が確認され、好中球性から好酸球・好中球混合型まで幅広い炎症像をつくり出します。お腹の脂肪は静かな貯蔵庫ではなく、全身に炎症シグナルを送り続ける『内分泌・免疫臓器』なのです。

5. 血液中の IL-6 が語る「代謝型の喘息」という顔

脂肪組織から放出される炎症シグナルのうち、最も臨床に近いところまで研究が進んでいるのが IL-6(インターロイキン 6)です。米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校の Petersらは、二つのコホート(UCSF コホート 249 人、重症喘息研究プログラム SARP 387 人、計 636人)を解析し、その成果を『Lancet Respiratory Medicine』誌に報告しました(2016;4:574-584)。
健常者 93 人の血漿 IL-6 濃度の 95 パーセンタイル値は 3.1pg/mL で、これを基準にするとUCSF コホートの 14%、SARP コホートの 26%が『IL-6 高値』に該当しました。IL-6 高値の方は BMI が高く、高血圧・糖尿病の合併も有意に多い(それぞれ p<0.0001、p<0.0001、p=0.04)。
実際、IL-6 高値の喘息患者の 80%(111/138 人)が肥満でした。
そして肝心の呼吸機能と発作です。肥満のある喘息患者のうち、IL-6 高値群では 1 秒量(FEV1)が予測値の 70.8%と IL-6 低値群の 78.3%より低く(p=0.002)、発作を起こした割合は66%対 48%と明らかに高いものでした(p=0.003)。
しかしこの研究の真価は、もう一つの数字にあります。肥満のある喘息患者の 62%(178/289人)は、IL-6 が低値だったのです。つまり『肥満だから炎症が強い』と一括りにはできません。同じ体型でも、代謝性の炎症が燃えている方と、そうでない方がいる。そして非肥満の方でもIL-6が高ければ、FEV1は66.4%対83.2%(p<0.0001)、発作率は59%対34%(p=0.01)と、やはり明らかに不利でした。体型ではなく、体の中で実際に何が燃えているかを測ることが大切だ、というのがこの研究の最大のメッセージです。

6. お腹の脂肪は、物理的にも肺を押し込めている

内臓脂肪が喘息を悪くする経路は、炎症だけではありません。もっと素朴な、しかし見落とされがちな理由があります。物理的な圧迫です。
腹腔内に脂肪が蓄積すると横隔膜が押し上げられ、息を吐き切ったあとに肺に残る空気の量(機能的残気量:FRC)が減少します。肺が常に少ししぼんだ状態で呼吸することになるため、細い気道(小気道)が閉じやすくなります。2026 年の ERJ 総説は、この小気道機能障害がスパイロメトリー(通常の呼吸機能検査)では正常に見えても、モストグラフなどの強制オシレーション法では明確に検出されることを指摘しています。『検査は正常なのに、息苦しい』という訴えには、こうした背景があるのです。
その結果、肥満のある喘息患者さんは、呼吸機能の数値が同等でも、症状の負担が重く、コントロールが不良で、発作の頻度が高くなります。そして厄介なことに、ここには悪循環が組み込まれています。発作が起きれば全身性ステロイド(飲み薬・点滴)を使わざるを得ず、その全身性ステロイドが体重増加と代謝の悪化を招き、次の発作の土台をつくる。ERJ 総説はこれを明確に『悪循環(vicious circle)』と表現しています。
さらに治療反応性の問題もあります。抗タイプ 2 の生物学的製剤は、BMI によらず発作を減らします。しかし症状と呼吸機能の改善幅は、肥満のある方では小さくなりがちです。著者らはその理由を『機械的負荷の増大、身体デコンディショニング、肥満関連の併存疾患といった、非炎症性の寄与が大きいため』と説明しています。高価な生物学的製剤を使っても、体が重いままでは十分に効ききらないのです。

7. 減量は「治療」になる ― 5%、10%、そして外科手術が示した数字

ここまでが『悪い知らせ』だとすれば、ここからが『良い知らせ』です。内臓脂肪が喘息を悪くしているのなら、減らせば良くなるはずです。そしてその予測は、実際のデータで裏づけられています。
2026 年の ERJ 総説は、喘息の転帰に意味のある変化をもたらす目安として 5%以上の減量を挙げています。食事と行動変容を組み合わせた構造的な生活習慣プログラムでは、穏やかではあるものの確かな改善が得られます。そして減量幅が大きくなるほど、効果は劇的になります。
最も強い証拠は、肥満外科手術(メタボリックサージェリー)の領域から得られています。Osorio Manyari らは 33 件の観察研究・計 3,731 人の肥満合併喘息患者を統合したメタ解析を『Obesity Surgery』誌に発表しました(2026;36:3390-3402)。手術後、47%の患者が喘息の薬を完全に中止でき(95%CI 0.38-0.56)、58%が臨床的寛解に到達しました(95%CI 0.45-0.70)。呼吸機能も改善し、FEV1 は 8.5%(95%CI 4.5-12.6)、努力肺活量(FVC)は 9.4%(95%CI6.3-12.6)の上昇が確認されています。ERJ 総説も、20%を超える減量を実現する外科手術では喘息薬の使用と入院が 50%以上減少すると記しています。
もちろん、すべての方に手術を勧めるわけではありません。しかしこの数字が教えてくれるのは、減量は『ダイエット』という美容的な営みではなく、喘息そのものに対する治療的介入だということです。当院では運動療法(通所リハビリテーション『あした』を含む)と栄養指導を組み合わせ、筋肉量を維持しながら内臓脂肪を落とす減量をお手伝いしています。急激に体重だけを落とすと呼吸筋を含む筋肉まで失われ、かえって息切れが強くなることがあるため、InBody による体成分のモニタリングを重視しています。

8. GLP-1 受容体作動薬の存在

そして冒頭のセマグルチドに戻ります。GLP-1 受容体作動薬と喘息発作の関係は、実はバルセロナの発表が最初ではありません。米国ハーバード大学・ブリガム&ウィメンズ病院のFoer らは 2021 年、『American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine』誌に先駆的な報告を行っています(2021;203:831-840)。喘息と 2 型糖尿病を併せもつ成人のうち、GLP-1 受容体作動薬を開始した 448 人と、他剤(SGLT2 阻害薬、DPP-4 阻害薬、スルホニル尿素薬、基礎インスリン)を開始した 4,492 人を比較したところ、6 か月時点の喘息発作率
は GLP-1 群で一貫して低く、発作の発生率比は SGLT2 阻害薬に対して 2.98 倍(95%CI 1.30-6.80)、DPP-4 阻害薬に対して 2.45 倍(95%CI 1.54-3.89)、スルホニル尿素薬に対して 1.83倍(95%CI 1.20-2.77)、基礎インスリンに対して 2.58 倍(95%CI 1.72-3.88)でした。いずれも GLP-1 群のほうが発作が少ないという意味です。著者らはこの時点ですでに、GLP-1 受容体作動薬は『代謝異常を伴う喘息に対する新しい治療となりうる』と述べていました。
その後、2026 年には多国籍の電子カルテデータベースを用いた後ろ向きコホート研究が『Pharmacotherapy』誌に発表され(Hung ら, 2026)、糖尿病治療薬の種類と喘息増悪リスクの関係が国際的に再検証されています。また 2026 年の米国アレルギー・喘息・免疫学会(AAAAI)年次総会では、糖尿病のない肥満者を対象とした TriNetX データベース解析(Patelら, Rutgers 大学)が報告され、過体重・肥満・高度肥満のいずれの区分でも GLP-1 受容体作動薬使用者の喘息増悪リスク比が 0.75〜0.79 と低いことが示されました(いずれもp<0.0001)。糖尿病がなくても効く可能性がある、という点が重要です。
作用機序については、イタリアの Menzella らの総説(Journal of International MedicalResearch, 2025;53:03000605251392717)が整理しています。GLP-1 受容体は膵臓だけでなく肺、血管、免疫細胞にも発現しており、体重減少による機械的負荷の軽減に加えて、直接的な抗炎症作用、免疫調節、インスリン抵抗性の改善といった複数の経路が想定されています。
ただし、冷静さも必要です。ERJ 総説(2026)は『GLP-1 アナログが、体重減少とは独立して喘息コントロールに追加の利益をもたらすのかが鍵となる問い』であると明記し、ある実地観察研究では GLP-1 使用者で体重減少と喘息コントロールスコアの改善は得られたものの、発作頻度に有意差はなかったとも報告されています。現在、2 型糖尿病のない喘息患者を対象に週 1 回セマグルチド 2.4mg を検証する第 II 相試験(GATA-3 試験)が進行中で、2026 年中の結果公表が見込まれています。著者らは『肥満とコントロール不良の重症喘息を有する方を対象とした、ランダム化プラセボ対照試験が必要である』と結んでいます。現時点でGLP-1 受容体作動薬は喘息の治療薬として承認されておらず、喘息を目的とした使用は確立していません。

おわりに ― 吸入薬を増やす前にお腹を測る

本コラムでたどってきた道筋を、もう一度整理します。肥満のある方は喘息の発症リスクが30〜50%高く(Riemann ら, 2026)、内臓脂肪が 200g 増えるごとにリスクは約 20%上がります(Lin ら, 2024)。その炎症の火元は気道ではなくお腹の脂肪組織にあり(Sideleva ら, 2012)、血中 IL-6 が高い方では FEV1 が低く発作が多い(Peters ら, 2016)。一方で減量は治療になり、外科手術では 47%が薬を中止できています(Osorio Manyari ら, 2026)。そして GLP-1 受容体作動薬では、喘息発作が約 40%少ないという報告が 2026 年の ERS 国際会議から届きました。
これは『喘息は気管支の病気ではない』という意味ではありません。吸入ステロイドは今も治療の柱であり、自己判断での中止は絶対に避けてください。気道の外側にある『治療可能な特性』を整えていくことが、結果として発作の回数を変えていきます。
まんかいメディカルクリニックでは、呼吸器内科と糖尿病内分泌内科の双方の視点から、喘息と代謝の両面を同時に診る体制を整えています。CT・腹部超音波検査による内臓脂肪の評価、体成分分析(InBody)による筋肉量と脂肪量の把握、スパイロメトリーや FeNO(呼気一酸化窒素)による気道炎症の評価、そして運動療法と栄養指導、必要な方には GLP-1 受容体作動薬を用いた医学的減量プログラムまで、日曜・祝日も診療しており発作時の対応にも備えています。

FAQ ― よくあるご質問

Q1. BMI は標準なのですが、それでも内臓脂肪は喘息に関係しますか?

はい、関係する可能性があります。NHANES 2011〜2018 年の 11,137 人を解析した研究では、内臓脂肪(VAT)が 200g 増えるごとに喘息リスクが約 20%上昇し、この関係は BMI とは別に成立していました(Lin ら, Scientific Reports 2024)。BMI は体重と身長だけの指標であり、脂肪がどこについているかを区別できません。体重が標準でも内臓脂肪だけが多い、いわゆる『隠れ肥満』の方は少なくありません。当院では CT・腹部超音波検査と
体成分分析(InBody)で内臓脂肪量を実測し、BMI では見えない部分を数値化しています。
喘息のコントロールが安定しない方は、一度評価しておくことをおすすめします。

Q2. 内臓脂肪はどのように測るのですか。健診の腹囲だけでは不十分でしょうか?

腹囲は簡便で有用なスクリーニングですが、皮下脂肪と内臓脂肪を区別できないという限界があります。より正確な評価には、腹部 CT(臍の高さの断層で内臓脂肪面積を測定)、腹部超音波、体成分分析装置(InBody)などを用います。研究の場では DXA 法も使われます。
当院には CT と超音波装置、InBody がすべて院内に揃っており、受診したその日に内臓脂肪の状態をお示しできます。数値として見えると、減量の目標も具体的になり、半年後・一年後の変化を同じ物差しで追いかけられるという利点があります。

Q3. 喘息を良くするには、どれくらい体重を減らせばよいのでしょうか?

2026 年の欧州呼吸器学会誌の総説は、喘息の転帰に意味のある変化をもたらす目安として 5%以上の減量を挙げています(Riemann ら, ERJ 2026)。体重 70kg の方なら 3.5kg です。
減量幅が大きくなるほど効果は明確になり、20%以上の減量を実現する肥満外科手術では、喘息薬の使用と入院が 50%以上減少し、33 研究 3,731 人のメタ解析では 47%が薬を中止、58%が臨床的寛解に至っています(Osorio Manyari ら, Obesity Surgery 2026)。ただし急激に体重だけを落とすと呼吸筋を含む筋肉まで失われ、かえって息切れが強くなることがあります。筋肉を守りながら内臓脂肪を落とすことが大切で、当院では運動療法と栄養指導を組み合わせてお手伝いしています。

Q4. 喘息のためにセマグルチドなどの GLP-1 受容体作動薬を使えますか?

現時点では、喘息の治療を目的とした GLP-1 受容体作動薬の使用は承認されておらず、標準治療でもありません。ERS 国際会議 2026 での報告や Foer ら(AJRCCM 2021)の観察研究は有望ですが、いずれも実際の診療データを後から解析したものであり、ランダム化比較試験による確認が必要です。欧州呼吸器学会誌の総説も『肥満とコントロール不良の重症喘息を有する方を対象としたランダム化プラセボ対照試験が必要』と明記していま
す。現在、糖尿病のない喘息患者を対象とした第 II 相試験(GATA-3 試験)が進行中です。
一方で、肥満や 2 型糖尿病の治療として GLP-1 受容体作動薬の適応がある方では、喘息への副次的な良い影響が期待できます。当院では GLP-1 を用いた医学的減量プログラムを行っており、適応の可否を含めてご相談を承ります。

Q5. 吸入ステロイドで太るのが心配です。減らしてもよいですか?

自己判断での中止・減量は絶対に避けてください。体重増加と強く関連するのは、吸入ステロイドではなく、発作時に使う全身性ステロイド(飲み薬・点滴)です。欧州呼吸器学会誌の総説は、発作で全身性ステロイドを使う→体重と代謝が悪化する→次の発作が起きやすくなる、という悪循環を指摘しています(Riemann ら, ERJ 2026)。つまり吸入ステロイドをきちんと続けて発作を防ぐことこそが、結果的に体重を守る道でもあるので
す。吸入薬は必要最小限まで段階的に減らしていく方針(ステップダウン)が原則ですが、それは症状が安定していることを確認しながら医師と一緒に進めるものです。体重が気になる場合は、まず内臓脂肪と代謝の評価からご相談ください。

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※本コラムは医学的情報の提供を目的としたものであり、個別の診断・治療を代替するものではありません。気
になる症状がある方は医療機関にご相談ください

記事監修者田場 隆介

医療法人社団 青山会 まんかいメディカルクリニック 理事長

医療法人社団青山会代表。兵庫県三田市生まれ、三田小学校、三田学園中学校・同高等学校卒業。 1997(平成9)年岩手医科大学医学部卒業、町医者。聖路加国際病院、淀川キリスト教病院、日本赤十字社医療センター、神戸市立医療センター中央市民病院を経て、2009(平成21)年医療法人社団青山会を継承。 2025年問題の主な舞台である地方の小都市で、少子高齢化時代の主役である子どもと高齢者のケアに取り組んでいる。

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