病気と健康の話

【生活習慣】がんの4割は「生活」で決まる ―28万人の追跡が描き出した、27のがんと5つの習慣の地図―

はじめに ― 「運がわるい」で終わらせないために

遺伝なのか、それとも日々の積み重ねなのか。この問いに対して、医学は長いあいだ歯切れのよい答えを返せずにいました。個々の生活習慣と個々のがんとの関係は少しずつ明らかになってきたものの、「どのがんに、どの習慣が、どれだけ効くのか」を一望できる地図が存在しなかったからです。
その空白を埋める研究が、2026年9月にBritish Journal of Cancer誌に発表されました。ドイツがん研究センター(DKFZ)のDingらは、英国の一般住民28万7745人を中央値11.5年にわたって追跡し、27 種類すべてのがんについて「健康的な生活習慣」との関係を一度に検証しました(Ding et al., Br J Cancer, 2026)。追跡期間中に1万2947人ががんを発症しており、解析の結果、生活習慣のよい群では全がんの発症リスクが29%低く、27種のうち13 種で統計学的に有意なリスク低下が確認されたのです。
同じ2026年には、欧州の専門家が10年ぶりに改訂した「欧州がん予防コード第5版」も公表されました(Espina et al., Lancet Reg Health Eur, 2026)。そこには、ヨーロッパにおけるがんの 40〜50%、がん死の 44%は予防しうるという踏み込んだ記述があります。本コラムでは、これら欧米の最新エビデンス 10 件をもとに、喫煙・体重・飲酒・食事・運動という5つの習慣が、どのがんに、どれほどの大きさで効くのかを整理していきます。

1. がんの「4割」は防ぎうる ― 予防の余地を数字で見る

予防医学の議論は、しばしば「気をつけるに越したことはない」という曖昧な結論に着地しがちです。しかし近年の疫学研究は、その「余地」を具体的な数値で示せるようになりました。米国がん協会のIslamiらは、2019年の米国における30歳以上のがん症例のうち40.0%、がん死の約 44%が、修正可能な危険因子に起因すると推計しています(Islami et al., CA Cancer J Clin, 2024)。症例数にして年間71万3340例、まさに「防ぎえたがん」が毎年70万件規模で発生している計算になります。
内訳を見ると、最大の寄与因子は喫煙で全症例の19.3%を占め、以下、過体重・肥満が7.6%、飲酒が5.4%、紫外線曝露が4.6%、身体不活動が3.1%と続きます。男性では予防しうるがんの実に 56%が喫煙に帰せられ、女性でも 39.9%を占めていました。喫煙対策が依然として「一つの介入で最も多くのがんを減らせる手段」であることを、この数字は端的に物語っています。
欧州でも結論は一致しています。国際がん研究機関(IARC)が主導した欧州がん予防コード第5 版は、現在わかっている発がん要因への曝露を減らすことで、欧州のがんの 40〜50%が予防可能であると述べ、個人向けの14項目の推奨を提示しました(Espina et al., Lancet Reg Health Eur, 2026)。その第 1 項から第6項までが、禁煙・受動喫煙の回避・適正体重・身体活動・食事・飲酒という、まさに生活習慣に関する項目で占められている点は象徴的です。

2. 28 万人・27のがんを一枚の地図に ― 生活習慣スコアが示した全体像

今回ご紹介する中心的な研究、Ding らの解析では、「健康的生活習慣スコア(Healthy Lifestyle Score:HLS)」という指標が用いられました(Ding et al., Br J Cancer, 2026)。非喫煙(または 30 パックイヤー未満の元喫煙者)、適度な飲酒(女性 12g/日以下、男性 24g/日以下)、良好な食事スコア(集団の上位40%)、十分な身体活動、適正BMI(18.5を超え25未満)の5項目をそれぞれ1点とし、0〜5点で評価する単純な指標です。
この 4〜5 点群を 0〜1 点群と比べたところ、全がんの発症ハザード比は 0.71(95%信頼区間0.68〜0.74)。年齢・性別に加え、民族、地域、社会経済指標、世帯収入、学歴、がん検診歴、家族歴、高血圧、糖尿病、身長まで調整したうえでの数字です。特筆すべきは、リスク低下が有意だったがんの顔ぶれが 13 種類に及び、そこに大腸がんや閉経後乳がんといった「よくあるがん」だけでなく、口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、食道がん、軟部肉腫、腎がんといった、これまで生活習慣との関連がほとんど検討されてこなかった「少ないがん」が含まれていたことです。
個別の数字を見ると、その差は決して小さくありません。喉頭がんはハザード比 0.12(0.06〜0.26)、すなわちリスクが約88%低く、肺がんは0.19(0.16〜0.22)で約81%低下。咽頭がん0.41、食道がん 0.41、肝がん 0.44、胃がん 0.49、膵がん 0.52、膀胱がん 0.52、口腔がん0.57、軟部肉腫0.61、大腸がん0.65、腎がん0.73、閉経後乳がん0.79という結果でした。一方で、前立腺がんだけはハザード比 1.11(1.02〜1.21)とわずかに高く出ています。著者らは、健康意識の高い人ほどPSA検査を受ける頻度が高いことによる「発見されやすさ」の差が一因ではないかと考察しています。

3. 喫煙 ― 27がん中12種に影を落とす、最大の一手

5 つの習慣のうち、単独で最も多くのがん種に関与していたのが喫煙でした。Dingらの解析では、非喫煙であることが27がん中12種で有意なリスク低下と関連し、そのハザード比は0.13 から0.82の範囲に分布していました(Ding et al., Br J Cancer, 2026)。肺がんでは0.13(0.11〜0.14)、喉頭がんでは 0.18(0.12〜0.26)、咽頭がんでは 0.33(0.25〜0.43)と、上気道・呼吸器のがんで特に強い関連が認められています。
同研究は「人口寄与危険割合(PAF)」という指標も算出しています。これは、その集団全体で生活習慣が不十分であったことに起因すると推定されるがんの割合を示すものです。喉頭がんでは65.5%、肺がんでは51.9%、咽頭がんでは30.2%、食道がんでは29.9%、胃がんでは25.9%、膵がんでは 24.0%、肝がんでは 22.3%、大腸がんでは 16.6%という推計値が示されました。喉頭がんと肺がんの高い数値は、そのほとんどが喫煙によって説明されます。
注意しておきたいのは、この研究における「非喫煙」の定義が、現在喫煙していないことに加えて「元喫煙者であっても 30 パックイヤー未満」という条件を含んでいる点です。つまり、長く吸ってきた方でも、禁煙によってリスク曲線の傾きは確実に変わります。欧州がん予防コード第5版が、第1項に「喫煙しない・たばこ製品や電子たばこを使わない・吸っているならやめる」を、第2項に「家と車を受動喫煙のない環境に保つ」を掲げているのは、この一手の重みを反映したものです(Espina et al., Lancet Reg Health Eur, 2026)。当院では呼吸器内科専門医が、胸部CTによる評価と併せて禁煙のご相談に対応しています。

4. 体重 ― 脂肪が「がんを育てる土壌」になるとき

喫煙に次いで多くのがん種に関与していたのは、体重でした。Ding らの解析で、過体重は10種類のがんで有意な人口寄与危険割合を示しています。適正BMIを保っていることは、食道がん(ハザード比 0.73)、大腸がん(0.85)、膵がん(0.77)、肝がん(0.65)、中枢神経系腫瘍(0.76)、閉経後乳がん(0.77)、子宮体がん(0.52)という7種のがんのリスク低下と関連していました(Ding et al., Br J Cancer, 2026)。とりわけ子宮体がんでリスクがおよそ半減している点は、脂肪組織がエストロゲンの産生場所となることを考えれば理解しやすい結果です。
脂肪組織は単なるエネルギーの貯蔵庫ではなく、炎症性サイトカインやアディポカインを分泌し、インスリン抵抗性を介して細胞増殖シグナルを慢性的に刺激する、いわば「内分泌臓器」です。この慢性的な代謝環境が、発がんの土壌をつくると考えられています。だからこそ、体重を落とす介入が発がんそのものを減らしうるかどうかが、いま最も注目される臨床上の問いとなっています。
その問いに初期の答えを示したのが、2025年にJAMA Oncology誌に報告された大規模な観察研究です。Daiらは、肥満を有する成人8万6632人を傾向スコアでマッチさせ、GLP-1受容体作動薬の使用者と非使用者を比較しました。その結果、肥満関連 14 がんを合わせた発症リスクはハザード比0.83(0.76〜0.91)と有意に低く、子宮体がん 0.75、卵巣がん 0.53、髄膜腫0.69で個別にも有意な低下が認められています(Dai et al., JAMA Oncol, 2025)。一方で腎がんは 1.38 と上昇傾向を示しており、著者らはより長期の追跡が必要だと慎重に結論づけています。あくまで観察研究であり因果を確定するものではありませんが、体重管理ががん予防の文脈で語られる時代に入ったことを示す研究といえます。当院では InBody による体組成評価とGLP-1プログラム、運動療法を組み合わせた体重管理に取り組んでいます。

5. お酒 ― 「少量なら健康に良い」は、がんには当てはまらない

飲酒については、2025年1月に米国公衆衛生局長官(Surgeon General)が発表した勧告が、議論の潮目を変えました。この勧告は、アルコールが口腔・咽頭・喉頭・食道・肝臓・大腸・乳房という少なくとも7つの部位のがんの確立した原因であること、米国では年間約2万人のがん死がアルコールに起因すること、そしてリスク上昇は「1日1杯未満」の少量域からすでに始まっていることを明記し、酒類にがん警告表示を導入するよう議会に求めました(U.S. Surgeon General’s Advisory, 2025)。
同じ立場は欧州でも採られています。欧州がん予防コードは第4版まで「飲酒量を制限する」という表現でしたが、第 5 版では「アルコール飲料を避ける」へと踏み込みました(Espina et al., Lancet Reg Health Eur, 2026)。「赤ワインは体に良い」という言説は心血管イベントを念頭に語られてきたものであり、発がんという評価軸では成立しない、というのが現在の国際的な合意です。
興味深いことに、Ding らの研究では「適度な飲酒」が腎がん(ハザード比 1.17)や多発性骨髄腫(1.25)でむしろリスク上昇と関連するという、一見逆説的な結果も観察されました(Ding et al., Br J Cancer, 2026)。著者らは、アルコールがインスリン感受性を高めることを介した間接的な機序の可能性に触れつつ、さらなる検証が必要だと述べています。いずれにせよ、飲酒量を減らすことが口腔から大腸にいたる消化管がんのリスクを下げるという中心的な事実は揺らいでいません。

6. 食事 ― 何を食べるか、そして「どう作られたか」

食事とがんの関係は、長らく「野菜を多く、赤身肉や加工肉を控えめに」という枠組みで語られてきました。この枠組み自体の有効性は、2025年にeClinicalMedicine誌に掲載された包括的なメタ解析で改めて確認されています。Fuらは28のコホート研究を統合し、世界がん研究基金/米国がん研究機構(WCRF/AICR)などのがん予防推奨への遵守度が最も高い群では、最も低い群と比べて全がん発症リスクが14%低い(ハザード比0.86、0.83〜0.88)と報告しました。さらに、スコアが 1 点上がるごとにリスクが 6%ずつ下がるという量反応関係も示されています(Fu et al., eClinicalMedicine, 2025)。部位別では大腸がんで31%、食道がんで39%、腎がんで38%、子宮体がんで35%の低下が認められました。
近年これに加わったのが、「加工の程度」という新しい視点です。IARCのKliemannらは、欧州10か国の大規模コホートEPICのデータを用い、食品の加工度で分類したうえでがんリスクとの関連を検討しました。その結果、超加工食品を 10%分だけ最小限加工の食品に置き換えることが、頭頸部がん、大腸がん、肝細胞がんのリスク低下と関連することが示されています(Kliemann et al., Lancet Planet Health, 2023)。栄養素の含有量だけでは説明しきれない、加工プロセスそのものの影響が示唆される結果です。
こうした知見を受け、欧州がん予防コード第5版は第3項で「超加工食品を制限する」という文言を新たに盛り込み、第5項では「全粒穀物・野菜・豆類・果物を日常的に、赤身肉は控えめに、加工肉は避ける」と推奨しています(Espina et al., Lancet Reg Health Eur, 2026)。特別な食材を足すことよりも、日常的に口にしているものの加工度を一段下げること。これが現時点で最も現実的な食事戦略といえるでしょう。

7. 運動 ― 予防の手段であり、治療そのものでもある

身体活動については、「まとまった運動時間を確保しなければ意味がない」という思い込みが根強く残っています。しかしこの前提は、加速度計を用いた研究によって覆されつつあります。Stamatakis らは、UK Biobank の参加者のうち「運動習慣がない」と自己申告した 2万2398 人を対象に、日常生活の中に紛れ込む短時間の高強度活動(VILPA:階段を駆け上がる、急ぎ足で歩くなど)を計測しました。その結果、1日わずか4.5分のVILPAが全がん発症のハザード比 0.80(0.69〜0.92)、身体活動関連がんでは 0.69(0.55〜0.86)と関連していたのです(Stamatakis et al., JAMA Oncol, 2023)。
そして 2025 年、運動が「予防」の域を越えて「治療」であることを、ランダム化比較試験が証明しました。カナダがん臨床試験グループが実施したCHALLENGE試験では、術後補助化学療法を終えたステージIII・高リスクステージIIの大腸がん患者889人を、3年間の構造化運動プログラム群と健康教育資材のみの群に無作為に割り付けました。5 年無病生存率は80.3%対 73.9%(ハザード比 0.72、0.55〜0.94)、8 年全生存率は 90.3%対 83.2%(ハザード比0.63、0.43〜0.94)と、運動群が明確に上回っています(Courneya et al., N Engl J Med, 2025)。
この数字は、多くの分子標的薬の上乗せ効果に匹敵する大きさです。運動が補助療法として、薬剤と同じ土俵で語られうることを示した点で、CHALLENGE 試験はがん治療の考え方を変える研究となりました。当院では運動療法に力を入れ、通所リハビリテーション「あした」とも連携しながら、予防の段階から治療後のフォローアップまで、身体活動を継続していただく体制を整えています。

8. 診断された後も、生活習慣は効き続ける

「がんと診断されてしまったら、もう生活習慣を変えても遅いのではないか」。外来でしばしば伺う言葉です。この問いに対しても、2026 年に明確なデータが示されました。英国ニューカッスル大学のMalcomsonらは、UK Biobank参加後に初めてがんと診断された2万8550人を対象に、診断前の WCRF/AICR 推奨への遵守度(適正体重、身体活動、全粒穀物・野菜・果物・豆類の摂取、赤身肉・加工肉の制限、飲酒の制限の 5 項目)と、その後の生存との関連を解析しました(Malcomson et al., Cancer, 2026)。
結果は、遵守スコアが1点上がるごとに全死因死亡リスクが8%低下し、スコア上位3分の1の群では下位3分の1の群に比べて死亡リスクが16%低いというものでした。がん種別では、肝がんで1点あたり14%、食道がんで11%、前立腺がんで8%、乳がんで6%、肺がんで5%の死亡リスク低下が認められ、喫煙状況にかかわらず同様の傾向が観察されています。
また、前述のCHALLENGE試験が示したように、診断後に開始した運動プログラムそのものが生存を改善します(Courneya et al., N Engl J Med, 2025)。予防と治療は連続した一本の線であり、生活習慣への介入に「手遅れ」という時点は存在しない、というのが現在のエビデンスが伝えるメッセージです。なお、Dingらの研究では、膵がんは60歳未満で、腎がんと閉経後乳がんは 60 歳以上で、生活習慣との関連がより強く現れるという年齢差も報告されており、年代に応じた重点の置き方も今後の課題となります(Ding et al., Br J Cancer, 2026)。

おわりに ― 「5点満点」を目指さなくてよい

28 万7745人を11年半追跡した今回の研究が教えてくれるのは、生活習慣という一見ありふれた要素が、27 種類ものがんに対して、部位ごとに異なる大きさで、しかし一貫して同じ方向に作用しているという事実です(Ding et al., Br J Cancer, 2026)。喉頭がんで88%、肺がんで81%というリスク低下の幅は、どんな薬剤の予防効果をも上回ります。
同時に、Fu らのメタ解析が示した「1 点ごとに 6%」という量反応関係は、もう一つの重要な示唆を含んでいます(Fu et al., eClinicalMedicine, 2025)。5 点満点を取る必要はなく、いま0点の方が1点になるだけでも、確かな意味があるということです。禁煙、体重を数キロ減らす、飲酒を週に何日か休む、加工度の低い食品を選ぶ、1 日数分でも息が弾む活動を加える。そのうちのどれか一つから始めていただければ十分です。
ただし、生活習慣の改善はがん検診の代わりにはなりません。欧州がん予防コード第5版も、14 番目の推奨として大腸・乳房・子宮頸部・肺の組織型検診への参加を明記しています(Espina et al., Lancet Reg Health Eur, 2026)。まんかいメディカルクリニックでは、CT・超音波検査による画像評価、InBody を用いた体組成の可視化、管理栄養士・運動療法との連携、GLP-1 プログラム、そして禁煙のご相談まで、生活習慣とがん予防を一体としてサポートしています。日曜・祝日も診療しておりますので、平日にお時間の取れない方もどうぞお気軽にご相談ください。

FAQ ― よくあるご質問

Q1. 家族にがんの人がいます。生活習慣に気をつけても意味はないのでしょうか。

意味はあります。Ding らの解析では、がんの家族歴を調整因子に含めたうえで、健康的生活習慣スコアの高い群の全がんハザード比は0.71(0.68〜0.74)でした(Ding et al., Br J Cancer, 2026)。つまり家族歴の有無とは独立して、生活習慣の効果が観察されています。遺伝的素因は変えられませんが、その素因の上に乗る修正可能なリスクは減らせます。米国のデータでも、30歳以上のがんの40.0%は修正可能な因子に起因すると推計されています(Islami et al., CA Cancer J Clin, 2024)。むしろ家族歴のある方こそ、検診と生活習慣の両輪で臨むことに大きな意義があります。

Q2. たばこは何年前にやめれば「吸っていない人」と同じになりますか。

完全に同一になる時点を示すことは難しいのですが、今回ご紹介した研究では、現在喫煙していない方のうち「生涯の喫煙量が 30 パックイヤー未満」であれば非喫煙として扱われ、その群で肺がんのハザード比が0.13(0.11〜0.14)と報告されています(Ding et al., Br J Cancer, 2026)。裏を返せば、累積喫煙量が少ないほど、また早く禁煙するほど有利だということです。喉頭がんでは、集団全体のリスクの 65.5%が不十分な生活習慣に起因すると推計されており、その大部分は喫煙で説明されます。「もう遅い」ということはありませんので、まずはご相談ください。

Q3. お酒は「適量」なら体にいいと聞きましたが、本当ですか。

少なくともがんに関しては、その考え方は現在否定されています。2025 年の米国公衆衛生局長官勧告は、アルコールが口腔・咽頭・喉頭・食道・肝臓・大腸・乳房の少なくとも7 部位のがんの確立した原因であり、リスク上昇は1日1杯未満の少量域からすでに始まると明記しました(U.S. Surgeon General’s Advisory, 2025)。欧州がん予防コードも第5 版で「飲酒量を制限する」から「アルコール飲料を避ける」へと表現を改めています(Espina et al., Lancet Reg Health Eur, 2026)。心血管に対する議論とは評価軸が異なる点にご注意ください。

Q4. 忙しくて運動の時間が取れません。それでもがん予防はできますか。

できます。Stamatakis らは、運動習慣がないと申告した2万2398人を加速度計で計測し、1 日わずか4.5分の短時間高強度活動(階段を駆け上がる、急ぎ足で歩くなど)が全がん発症のハザード比 0.80(0.69〜0.92)、身体活動関連がんでは 0.69(0.55〜0.86)と関連することを示しました(Stamatakis et al., JAMA Oncol, 2023)。ジムに通う必要はなく、通勤や家事の動作を少し強度の高いものに置き換えるだけでも効果が期待できます。当院の運動療法では、こうした日常への組み込み方も含めてご提案しています。

Q5. がんと診断された後に生活習慣を変えても、もう手遅れではないでしょうか。

手遅れではありません。UK Biobankでがんと診断された2万8550人を追跡した研究では、がん予防推奨への遵守スコアが1点高いごとに全死因死亡リスクが8%低く、上位3分の1の群では下位3分の1に比べて16%低いことが示されました(Malcomson et al., Cancer, 2026)。さらにランダム化比較試験である CHALLENGE 試験では、術後補助化学療法後に 3年間の構造化運動プログラムを行った大腸がん患者の8年全生存率が90.3%と、対照群の83.2%を上回りました(Courneya et al., N Engl J Med, 2025)。診断後の生活習慣は、治療の一部として位置づけられる時代になっています。

参考文献

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※本コラムは医学的情報の提供を目的としたものであり、個別の診断・治療を代替するものではありません。気になる症状がある方は医療機関にご相談ください。

記事監修者田場 隆介

医療法人社団 青山会 まんかいメディカルクリニック 理事長

医療法人社団青山会代表。兵庫県三田市生まれ、三田小学校、三田学園中学校・同高等学校卒業。 1997(平成9)年岩手医科大学医学部卒業、町医者。聖路加国際病院、淀川キリスト教病院、日本赤十字社医療センター、神戸市立医療センター中央市民病院を経て、2009(平成21)年医療法人社団青山会を継承。 2025年問題の主な舞台である地方の小都市で、少子高齢化時代の主役である子どもと高齢者のケアに取り組んでいる。

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